美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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もう少しだけ

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「いや……観てない」

「そうですか……」


 息子の活躍は録画でも何でもして見たいわけじゃないのかな?

 ……でも、あれは見なくて良かったかも。親としてハラハラ心配になるし。

  少しだけホッとしたのもつかの間、

「ヨシノリがワガママで、ちょっと歪んでるかもしれないと……アイツから聞いてはいたんだけどな」

 月山さんは、難しい顔をして呟いた。

 どうやら、ヨシやバンドがテレビに出た後からマスコミに叩かれているのは知っているようだ。


「″アイツ ″って ヨシのお母さんですか?」

「そう……最近、頻繁に顔合わせてるんでね」

「ヨシが怒りますよ? 会社に爆弾しかけちゃいますよ?」

「知るか。勝手にせぇって」

「……」


 頻繁に顔を合わせなきゃいけないほど、ヨシのお母さんは、重たい病気なんだろうか?

 だから、月山さんはヨシを振り切ってでも会いたいのかな?

 ーーそれって……

「……聞いていいですか?」
 
 駅からタクシーを拾う月山さんの背中に問いかけた。

「なんだ?」

 胸がドキドキする。
 理由はわからないのだけれど、


「月山さんは、まだ  ヨシのお母さんのこと……」


 ″ 好きなんですか?″


 そう聞くだけなのに、胸がズキズキと、とても、痛くなってきた。


「……そんなこと聞いてくんな、あほか」

  月山さんは答えないで、手を挙げてタクシーを捕まえ、私を押し込む。

「もう会社には寄らなくていいから真っ直ぐ帰りな」

  しかも、自分だけ会社に戻ろうとする。


「え、なに言ってるんですか? 雑務なら私が……」

「俺も雑務なんてもうする気力はないよ。酔いを醒まして、ゆっくり帰るから」

「なら方角一緒じゃないですか? タクシー代もったいないです、途中まで一緒に……」

「今日は何かおかしな気分なんだよ」

「え?」

「一緒には、ヤバイかもしれない」

 ……ほんとうに、おかしな事を言う。


「ねー!お客さん、走らせていいの?」

 二人のやり取りを迷惑そうに聞いていたタクシーの運転手がイライラし始めたようた。

 ……今日の月山さんがおかしいのなら、

「すみません、降ります!」

 それは、きっと私も。


「おい、後藤……」


 もう少しだけ、そばにいたいと思ってしまった。














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