美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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フェス

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  加納さんが、出社してくるなりこちらへ寄ってきた。
 この人、一緒に仕事すること知ってたんだ。

「ちゃんとあちらにも紹介してやってな、後藤」 

「……は……はい」

 何も知らない月山さんは、加納さんに仕事の説明を始めていた。

「おはようございまぁす」

 そこへ、戸崎さんも出社してきて男子社員が釘付けになる。
 昨日よりうんと短いスカートに網タイツだったからだ。
 本山さん女子達も後ろから、彼女の足を疎ましそうに睨んでいた。

「月山さん、今日のクライアント回り宜しくお願いしますね」

「あぁ」

 なんと、月山さんと客先回りをするらしい。

 あの脚で?

 月山さんをロックオンしてる戸崎さんはとても嬉しそうだ。
 ……月山さんも男だもの。
 あんなにクールな顔してるけど、内心は……。

 そう思うと、こっちはこっちで気持ち穏やかでいられなかった。

 わたしは、やっばり、まだ月山さんのことを好きなのかもしれない。

――――


  開演、一時間前。

 雨の野外フェス。

 会場には溢れんばかりの人。
ライヴハウスを主に参戦してきた私は、これだけで酔ってしまいそうだった。

「ライヴの表情なんて、MVで十分なんだよ」

 CM制作のディレクターが、クライアントから受けたこの仕事には不満をぶつけていた。

「まぁまぁ、他にも上手いバンドが沢山出るし、遊びだと思って撮影しましょうよ」


先に自己紹介を済ませた加納さんが、早速、ディレクターのご機嫌を取りはじめている。

「では、ちょっと ヨシに挨拶してこようかね」

 本番前のヨシ……。
 一体どんな顔をしているだろう?
 気持ちは集中出来てるだろうか?

 こちらまでドキドキしながら、アーティストの控え室となるプレハブ小屋へと向かった。

 「お忙しいところ申し訳ありません」

 許可を取っているとはいえ、ライヴ前のアーティストの楽屋に入るなんて本当におそれ多い。

 野外フェスということで、設備も不十分な場所での準備。

 湿気もこもったそこでメイク中のVirtueのメンバーは不機嫌な顔で私たちを見ていた。

 ドラムのアキさんが、私に気づいて会釈してくれた。
 一番年上だけに、周りが見えてるイイ人。

 「今日は撮影させていただきますので宜しくお願いしますね、あ!ヨシさん!」

 飯田くんに代わり、チャラ男の加納さんがメイク中のヨシに声をかけている。

「……誰、あんた」

 今日のヨシは、いつもに輪をかけて近寄り難いオーラを放ちまくっていた。










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