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ぬくもり
しおりを挟むダンベルが当たった時よりも、加納は苦痛に歪んだ顔をしていた。
「……お前、何しにこの会社に来たんだ?」
月山さんの低い声が事務所内に響く。
「は?……仕事しに決まってるだろ? 」
加納は顔を紅潮させたまま、声を張り上げた。
「 あんたが言う広告製作会社に潰されない代理店になるために貢献してやろうって転職してきたんじゃないか!それを………こんなの職権乱用だろ? 不祥事まで起こし挙げ句に引き抜いてきた部下に暴力なんてよ!」
鼻から血を出しながら、加納は早口で捲し立てる。
聞いてて呆れる。
あんたがそんなこと言う権利あんの?
「お前よりマシだ。女にこんなケガさせた奴がほざくな」
月山さんが、ぐいっと掴んで、私の顔を加納に見せつけた。
え? 私の顔、どうなってるの?
「頬と顎が内出血してる。明日にはアザになってるだろう。誰かに突っ込まれたり、後藤が訴えれば、お前は婦女暴行と傷害で検挙される」
内出血……どうりで痛いわけだ。
「検挙……?」
少し動揺を見せても、加納は反省の色は見せない。
「大袈裟だよ。 勝手に転んで血流してるだけじゃん。こんなブス、ちょっとからかっただけトラブルに巻き込まれるなんてゴメンだぜ」
「いい加減にしろ!」
月山さんが、今まで聞いたこともないような声を張り上げた。
「後藤がお前を追放したいといえば、俺はこの状況を上に話してお前をここから消すこともできる」
冷たい顔だった。
怒りを通り越して、軽蔑してる目をしている。
「お前をKanedoの件からは外す」
強く言い放つと、私の腕を取り、
「送るよ」
戸崎さんをも残して帰ろうとする。
「……は、はい」
私の肩を抱く月山さんの手は温かった。
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