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味見
しおりを挟む長いキスだった。
時間的にはそうでもないのかもしれないし、ヨシに初めてキスされた時より余裕があったせいでそう感じたのかもしれない。
月山さんは、舌を絡ませつつ、私の身体を抱き込んで、ドア側へ押し付けるようにキスをつづけていた。
そうすることで、もし、誰かがドアを開けようとしたら、直ぐに反応できるからだろうと思っていた。
大胆で、尚且つ、大人のキスだった。
コンコン!と、ドアを叩く音がした。
「ドアなんか閉めて、何してるの?」
ドアに背中を押し付けていたおかけで、俊敏に反応し、離れて湯飲みを片付ける体勢に入った私。
「……あら、こんなところで……」
不自然に閉められたドアを開けて入ってきたのは、戸崎さんだった。
「……月山さん、福岡店の喜田村さんからお電話ですよ?」
「あぁ……」
月山さんもまた、俊敏にスマホを触る素振りをしていたために、特に詮索されることもなく、彼が給湯室から出ていくのを見守っていたのだけれど、
「お別れのキスでもしてたの?」
勘のさえた戸崎さんの言葉に、自然と顔は紅くなっていった。
自分を向上させてくれる男性を求めていた戸崎さんは、才能を買って呼んでくれた月山さんのことをロックオンしていたはず……。
左遷が決まった彼の事、本当にもうどうでも良いのだろうか?
「戸崎さん……」
コーヒーメーカ―にフィルターと粉をセットする彼女に、それとなく聞いてみる。
「月山さんのこと、もう、なんとも思ってないんですか?」
「え? また、その質問?」
色っぽい彼女の胸元から、ほのかのに漂うムスク系の香り……。
作りたての珈琲の匂いと混ざって酔ってしまいそうだった。
「本当に、もういいの。興味なくなったから」
再びサクッと返されて戸惑う私に、
「後藤さん、色々悩み過ぎなんじゃないの?迷った時は、味見するのが一番なのよー」
意味深な言葉と、
「はい、あげる」
「え」
ミントミルクの飴と、レモンミルクの飴を私のポッケに入れてきた。
「食べてみなきゃわかんないでしょ?」
女のオーラを出しまくった戸崎の言う″ 味見 ″ は、
きっと、飴のことじゃないと思った。
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