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間接キス
しおりを挟む月山さんが驚いた顔をしている。
まさか、戸崎さんが口を滑らせるなんて思ってもみなかった?
「他の人に手出しておいて、やっぱり私と……なんて、虫が良すぎやしませんか?」
……お前が言うなよ。そう、もう一人の私が囁いている。
それに、
「……聞いたのか……。でも、あれはただ単に流されたようなもので……」
戸崎さんも、″ もういい ″ と言った大人の関係なのに、私はなにが気に入らないんだろう?
「月山さんにとって、そういう行為は、″ あれ″ で済む事なんですか?」
わかってる。
私が気に入らないのは、
「そんなことで、ずっと想っていた人を忘れられたんですか?」
たとえ、一時的な感情だったとしても、私ではなく、戸崎さんを ″ 女″として見て、触れたことーー。
「男とまともに恋愛したことないくせに、分かった風な事言うなよ」
月山さんが、今までにないくらい冷たい言葉を吐く。
「……今、それ、関係あります?」
正直、ムッときたのだけど、確かに男とそういう関係になったことのない私には、流されるとかそういうのは分からない。
「人間、誰もが感情求めて、ヤるとは限らないだろ?」
″ 女なんて、男の欲を満たす生き物だ ″
この親にしてこの子ありとは、良く言ったもの……。
この人、付き合って浮気がバレてもこんな言い訳をするんだろうか?
″ アイツ俺の母さん以外にも女いたらしいしな ″
……そもそも、この人は、本当にヨシのお母さんだけを愛してたの?
「……なんだよ? そんな目で見るなよ」
自分の気持ち以上に、月山さんがわからなくなってきた。
「……今日、私、二人の人とキスをしました」
「……は?」
私は、どうしたらいい?
「タコ課長と、ヨシと……」
「……」
「その私と、月山さん、キス出来ますか?」
ならば。時には、消去法も必要なのかもしれない。
「……なんでそんな事言うんだ?」
顔をひきつらせ、月山さんが、まだ残っていた缶コーヒーをイッキ飲みする。
ええ、ええ。考えたら気持ち悪いでしょうね。
もし、ヨシにタコ課長のこと話してたら、キスはしなかったかもしれない。
あ、いや。
言ったらまたキレてたかもしれない。
また、殴りかかってたかも。
言わなくて正解だっ……
「……ンっ!?」
一人納得していたら、突然、口の中がコーヒーの味でいっぱいに。
私を玄関のドアに押し付けるようにして、月山さんが唇を重ねてきたからだ。
びっくりして、目を閉じるのを忘れた。
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