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理想と現実2 (神城視点)
これが恋?
しおりを挟むやっぱり俺は、恋愛には向いてないのかもしれない。
恋人を父親や兄にも会わせたことのない俺は、たまに正月に帰れば、「恋愛下手」「欠陥品」などと冷やかされる。
「啓は頭も顔もいいのに、男としては残念だよなぁ。きっと思春期に母さん亡くしたのが悪影響出たんだろうー」
兄にいたっては、さも同情した顔で言うから腹が立った。
―――でも、確かに俺は何か欠陥してるのかもしれない。何人女性と付き合っても、肉体関係を結んでも、いまだに愛って感情の輪郭がハッキリ分からないのだから。
「じゃあ、僕が送っていくから。梶田くん、あっちの車に乗って帰社な」
だからといって、あの時、鈴木さんに欲情したのは、何も濡れたシャツから下着が透けて見えていたからだけじゃない。
そういう彼女を、他の男の目に晒したくなかった。
「ジャケット脱いだら? それが一番濡れてる」
「そうですね」
梶田に限って間違いは起きないだろうとも思ったが、性のコントロール力というのは人それぞれだし、何かあったら嫌なので、彼女は俺が乗せていくことにしたのだ。
(こういう気持ちが恋なんじゃないのか?)
なるべく鈴木さんの方を見ないで話しかけた。視線が透けた下着にいくのを避けたかったから。
「俺は、やはり梶田くんに鈴木さんを自宅まで送り届けさせるのは、どうかと思ったんだ」
「……え」
「男女なんて何が起こるかわからないだろ?」
彼女が不可解そうな目を向けた。
「濡れた女性と車内二人きり。自宅までの間に何か起こる可能性はある」
「……それはあり得ないですよ」
「なぜ?」
「その女性が ″私″だからです」
出た。
相変わらず自己評価の低い彼女。
自分のことを世間一般論で言う ″冴えない女″だと言う。
世の中には、VRカフェ・バーのオーナーのように、若く見た目が派手な女性以外をぞんざいに扱う男もいるが、それはごく一部に過ぎない。逆に控えめな女性が好きな男もいるし、それに何より俺は知っている。
「梶田さんに失礼ですよ」
俯いた鈴木さんの頬と首筋に、そっと指で触れ、彼女の前髪から落ちる雫を拭う。
「その発言も含めて、俺に失礼だとは思わない?」
俺を値踏みするような他の女性達とは違う、鈴木さんの素朴さや価値観。飾りたてない容姿は愛嬌があるし、身体に至っては、何もつけてない時ほど綺麗だ。
「そんな ″女性″に欲情する俺はおかしいのか?」
自分でも引くくらい、低い声だった。
その圧に屈したように鈴木さんは黙り込んだ。
今思えば、そんな言葉を口にするのだって充分恥ずかしい。
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