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決意
サヨナラ
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✜
週明け。
「退職か転属か、それはこっちで決めていいの?」
社長室へ相談に行くと、神城くんは淡々とした口調でこう返した。理由も尋ねられない。
ずっと帰宅していない彼との距離が日に日に広がってる気がする。
まるで当てつけのようなタイミングだけど、妊娠してることはもう神城くんには言わないと決めていた。
もし、「堕ろしてくれ」なんて言われたら悲しいし、たとえ知られても、中絶不可能な月数になってから、と思ったのだ。
「はい。もし可能なら事務職を希望してますが、空きがなければ退職でも構いません」
厚かましいだろうか?
会社が大変な時にこんな申し出をするのは……。
しかし、子供を産み育てるとなると、お金が要るし、なるべく親の手助けは受けたくないから仕事はしていたい。
「わかった。山内くんに事務課のこと訊いてみるよ」
「ありがとうございます」
一礼して社長室を出ようと背中を向けた途端、声を掛けられた。
「やっぱり初めてで、専属秘書はキツかったかな?」
「…………」
それは本心から訊いてる?
本当は理由が別だと分かってるのに、建前上の質問なの?
――ここには二人しかいないのに。
なるべく顔が強張らないように、声が弱々しくならないように心がけた。
「そうですね。私より適任の方がいらっしゃいますし、社が大変な時にこそ有能な方を側に置いたほうが宜しいかと思います」
″……本当に仕事してるの?″
″そこはほんとに会社なの?″
あんな嫉妬剥き出しの電話してるんだから、凄い皮肉に聞こえるよね。
「鈴木さんだって有能だった。それを発揮できる環境じゃなくなって申し訳ない」
それなのに。
神城くんは、ちょっと寂しそうな顔して、ボスらしい言葉で返す。
やつれた頬。
ますます鋭くなった目元。
だけど、少し濡れてるような気がする。
そんなあなたに、私は、プライベートでもサヨナラをしないといけない。
「……あと、部屋も無事に見つかりまして、週末に引っ越します。本当にお世話になりました……」
最後までしっかりと言いたかったのに、語尾は声が掠れてしまった。
「そう」
神城くんは、私から視線を逸らして、卓上カレンダーを見ながら言った。
「午後から少し時間あるから引っ越し手伝うよ」
「大丈夫です。荷物少ないので業者さんだけで。では、失礼します」
ペコリと頭を下げた時に、不覚にも堪えていた涙がポロッと落ちた。
彼がそれを見たかはわからない。
そして、その日の夕方には、「事務課に空きがある」と山内さんから連絡が入った。
週明け。
「退職か転属か、それはこっちで決めていいの?」
社長室へ相談に行くと、神城くんは淡々とした口調でこう返した。理由も尋ねられない。
ずっと帰宅していない彼との距離が日に日に広がってる気がする。
まるで当てつけのようなタイミングだけど、妊娠してることはもう神城くんには言わないと決めていた。
もし、「堕ろしてくれ」なんて言われたら悲しいし、たとえ知られても、中絶不可能な月数になってから、と思ったのだ。
「はい。もし可能なら事務職を希望してますが、空きがなければ退職でも構いません」
厚かましいだろうか?
会社が大変な時にこんな申し出をするのは……。
しかし、子供を産み育てるとなると、お金が要るし、なるべく親の手助けは受けたくないから仕事はしていたい。
「わかった。山内くんに事務課のこと訊いてみるよ」
「ありがとうございます」
一礼して社長室を出ようと背中を向けた途端、声を掛けられた。
「やっぱり初めてで、専属秘書はキツかったかな?」
「…………」
それは本心から訊いてる?
本当は理由が別だと分かってるのに、建前上の質問なの?
――ここには二人しかいないのに。
なるべく顔が強張らないように、声が弱々しくならないように心がけた。
「そうですね。私より適任の方がいらっしゃいますし、社が大変な時にこそ有能な方を側に置いたほうが宜しいかと思います」
″……本当に仕事してるの?″
″そこはほんとに会社なの?″
あんな嫉妬剥き出しの電話してるんだから、凄い皮肉に聞こえるよね。
「鈴木さんだって有能だった。それを発揮できる環境じゃなくなって申し訳ない」
それなのに。
神城くんは、ちょっと寂しそうな顔して、ボスらしい言葉で返す。
やつれた頬。
ますます鋭くなった目元。
だけど、少し濡れてるような気がする。
そんなあなたに、私は、プライベートでもサヨナラをしないといけない。
「……あと、部屋も無事に見つかりまして、週末に引っ越します。本当にお世話になりました……」
最後までしっかりと言いたかったのに、語尾は声が掠れてしまった。
「そう」
神城くんは、私から視線を逸らして、卓上カレンダーを見ながら言った。
「午後から少し時間あるから引っ越し手伝うよ」
「大丈夫です。荷物少ないので業者さんだけで。では、失礼します」
ペコリと頭を下げた時に、不覚にも堪えていた涙がポロッと落ちた。
彼がそれを見たかはわからない。
そして、その日の夕方には、「事務課に空きがある」と山内さんから連絡が入った。
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