74 / 110
決意
最後のアドバイス
しおりを挟む
❇ ❇ ❇
「元々、鈴木さんは事務で派遣されてくるはずだった。それをCEOが半ば強引に派遣元から引抜いて秘書にしたのは、やっぱり個人的な事情だったんでしょうね」
数日後、初めの案内をしてくれた山内さんと面談をし、改めて事務職の説明を受けた。
社長に対して不信感をあらわにしている山内さんに、私は、何て返していいかわからなかった。
「私が適任ではないとわかられたんでしょう」
「ここだけの話ですが」
面談室には他には社員はいないのに、山内さんは声を落とした。
「最近の業績悪化を理由に、近々、取締役会によって神城CEOは解任されてしまうはずです」
「………え……?!」
なんで?
ハッキングされたり競合会社にステマされたりは、彼に非はないのに?
「だって、神城社………CEOは創業者ですよ?」
「CEOは、大きな権限を持っていても企業を自由に操れるわけではありませんから。水面下で彼を解任する動きが活発化してるんです」
まだ証拠はないけれど、副社長が何処かのスパイである可能性があるのに。
「貴女のことも含めて、若い経営者は何かと判断を間違う、そのいい例になると思いますよ」
大変な事なのに、どこか俯瞰した視線で話す山内さんは、もしかしたら副社長に丸め込まれたのだろうか。
複雑な思いで面談室を出ると、廊下で倉林さんとバッタリ会った。相変わらず美しいクールな顔で話しかけられる。
「事務課へ移られるんですね」
「ええ、ご迷惑おかけするかと思いますが……」
神城くんが解任されなければ、たぶん、この方が彼の専属になるだろう。
山内さんの話は倉林さんは御存知だろうか。
ふつう、役員でもない限り知り得ないか。
私が言いかけて俯くと、倉林さんが先に会釈して通り過ぎようとした。
「あ、あの!」
思わず彼女の腕を取る。
その動作に倉林さんが大きな目をさらに見開く。
「鈴木さんて案外力があられるんですね」
「す、すみません。不躾な呼び止め方して」
何をどう切り出せばいいのか。
無責任だと責めない倉林さんに言い訳のようなことはしたくない。
でも。
「私は、秘書でなくなっても、神城社長の力になれることがあればするつもりです」
私は赤ちゃんを守るため、″嫉妬″という心の負担から逃げようとしている。
それは神城くんのことが好きだという紛れもない証拠だ。
その好きな人が窮地に立たされるのを、黙って見てるなるんて出来ない。
「私は何をしたらいいですか?」
先輩である倉林さんに最後のアドバイスを求めた。
だけど――
「以前も言いましたが、他人にばかり答えを求めても成長しませんよ」
倉林さんは、やっぱり優しく突き放す。
こういうところも神城くんに似ているんだからキライになれるはずがない。
「でも、もう、秘書として成長する必要はないし、悠長にしてる場合でもないので」
倉林さんは、長い睫毛を一度下げて、「私の個人的な考えですけど」と前置きして言った。
「今の会社にしがみつくことだけが、社長の今後ではないと思います」
「……どういうことですか?」
この会社には、神城くんの夢と、良しとする未来が詰まっている、はず―――……
「元々、鈴木さんは事務で派遣されてくるはずだった。それをCEOが半ば強引に派遣元から引抜いて秘書にしたのは、やっぱり個人的な事情だったんでしょうね」
数日後、初めの案内をしてくれた山内さんと面談をし、改めて事務職の説明を受けた。
社長に対して不信感をあらわにしている山内さんに、私は、何て返していいかわからなかった。
「私が適任ではないとわかられたんでしょう」
「ここだけの話ですが」
面談室には他には社員はいないのに、山内さんは声を落とした。
「最近の業績悪化を理由に、近々、取締役会によって神城CEOは解任されてしまうはずです」
「………え……?!」
なんで?
ハッキングされたり競合会社にステマされたりは、彼に非はないのに?
「だって、神城社………CEOは創業者ですよ?」
「CEOは、大きな権限を持っていても企業を自由に操れるわけではありませんから。水面下で彼を解任する動きが活発化してるんです」
まだ証拠はないけれど、副社長が何処かのスパイである可能性があるのに。
「貴女のことも含めて、若い経営者は何かと判断を間違う、そのいい例になると思いますよ」
大変な事なのに、どこか俯瞰した視線で話す山内さんは、もしかしたら副社長に丸め込まれたのだろうか。
複雑な思いで面談室を出ると、廊下で倉林さんとバッタリ会った。相変わらず美しいクールな顔で話しかけられる。
「事務課へ移られるんですね」
「ええ、ご迷惑おかけするかと思いますが……」
神城くんが解任されなければ、たぶん、この方が彼の専属になるだろう。
山内さんの話は倉林さんは御存知だろうか。
ふつう、役員でもない限り知り得ないか。
私が言いかけて俯くと、倉林さんが先に会釈して通り過ぎようとした。
「あ、あの!」
思わず彼女の腕を取る。
その動作に倉林さんが大きな目をさらに見開く。
「鈴木さんて案外力があられるんですね」
「す、すみません。不躾な呼び止め方して」
何をどう切り出せばいいのか。
無責任だと責めない倉林さんに言い訳のようなことはしたくない。
でも。
「私は、秘書でなくなっても、神城社長の力になれることがあればするつもりです」
私は赤ちゃんを守るため、″嫉妬″という心の負担から逃げようとしている。
それは神城くんのことが好きだという紛れもない証拠だ。
その好きな人が窮地に立たされるのを、黙って見てるなるんて出来ない。
「私は何をしたらいいですか?」
先輩である倉林さんに最後のアドバイスを求めた。
だけど――
「以前も言いましたが、他人にばかり答えを求めても成長しませんよ」
倉林さんは、やっぱり優しく突き放す。
こういうところも神城くんに似ているんだからキライになれるはずがない。
「でも、もう、秘書として成長する必要はないし、悠長にしてる場合でもないので」
倉林さんは、長い睫毛を一度下げて、「私の個人的な考えですけど」と前置きして言った。
「今の会社にしがみつくことだけが、社長の今後ではないと思います」
「……どういうことですか?」
この会社には、神城くんの夢と、良しとする未来が詰まっている、はず―――……
3
あなたにおすすめの小説
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
*全28話完結
*辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
*他誌にも掲載中です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
椿蛍
恋愛
念願のデザイナーとして働き始めた私に、『家のためにお見合いしろ』と言い出した父と継母。
断りたかったけれど、病弱な妹を守るため、好きでもない相手と結婚することになってしまった……。
夢だったデザイナーの仕事を諦められない私――そんな私の前に現れたのは、有名な美女モデル、【リセ】だった。
パリで出会ったその美人モデル。
女性だと思っていたら――まさかの男!?
酔った勢いで一夜を共にしてしまう……。
けれど、彼の本当の姿はモデルではなく――
(モデル)御曹司×駆け出しデザイナー
【サクセスシンデレラストーリー!】
清中琉永(きよなかるな)新人デザイナー
麻王理世(あさおりせ)麻王グループ御曹司(モデル)
初出2021.11.26
改稿2023.10
元遊び人の彼に狂わされた私の慎ましい人生計画
イセヤ レキ
恋愛
「先輩、私をダシに使わないで下さい」
「何のこと?俺は柚子ちゃんと話したかったから席を立ったんだよ?」
「‥‥あんな美人に言い寄られてるのに、勿体ない」
「こんなイイ男にアピールされてるのは、勿体なくないのか?」
「‥‥下(しも)が緩い男は、大嫌いです」
「やだなぁ、それって噂でしょ!」
「本当の話ではないとでも?」
「いや、去年まではホント♪」
「‥‥近づかないで下さい、ケダモノ」
☆☆☆
「気になってる程度なら、そのまま引き下がって下さい」
「じゃあ、好きだよ?」
「疑問系になる位の告白は要りません」
「好きだ!」
「疑問系じゃなくても要りません」
「どうしたら、信じてくれるの?」
「信じるも信じないもないんですけど‥‥そうですね、私の好きなところを400字詰め原稿用紙5枚に纏めて、1週間以内に提出したら信じます」
☆☆☆
そんな二人が織り成す物語
ギャグ(一部シリアス)/女主人公/現代/日常/ハッピーエンド/オフィスラブ/社会人/オンラインゲーム/ヤンデレ
Catch hold of your Love
天野斜己
恋愛
入社してからずっと片思いしていた男性(ひと)には、彼にお似合いの婚約者がいらっしゃる。あたしもそろそろ不毛な片思いから卒業して、親戚のオバサマの勧めるお見合いなんぞしてみようかな、うん、そうしよう。
決心して、お見合いに臨もうとしていた矢先。
当の上司から、よりにもよって職場で押し倒された。
なぜだ!?
あの美しいオジョーサマは、どーするの!?
※2016年01月08日 完結済。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる