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夢ならさめないで
イタズラ
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三川さんと冬美と三人で料理を運び、打ち合わせ通りに三川さんがカメラの前で料理の説明を始める。
……と、そのとき、隣にいた冬美が、あろうことか私に膝カックンをした。
「あっ、」
と、体勢を崩した私。
何が起こったのかわからないといった表情のスマート・グッドの御三方と農協の人。
かろうじてグラスを倒したり皿を落とすことは無かったが、「なつみちゃん!」と、咄嗟に三川さんが私の背を支えてくれたのだ。
「も、申し訳ありません!」
勿論、いまのは放送できないのでカット。
テレビ局の人から睨まれながら、何度も頭を下げ、私はその場を後にした。
「ちょ、なんてことしてくれんのよ? あれがへんな事でなくてなんなのよ?」
厨房に戻って小声で冬美を叱る。
「カットされるんだからいいじゃない。それより………」
悪びれもなく冬美がニタニタとした。
「″なつみちゃん″だって」
「!」
「あのときのオーナーと、イケメン社長の顔、見ものだったわ」
「……え……」
「オーナーが抱き支えたのと同じタイミングで社長も一瞬、腰を上げたのよ! でも、先越されて失意してた。カメラ回ってるっていうのに、いい大人が何やってんだかー」
「あんたが言うな」
冬美のイタズラは常識外れで許されないものだ。
でも、冬美が言ったことが本当なら、――その時の神城くんを見たかった。
商談を兼ねた取材が終わり、食器を片付けていると、三川さんがチョンと私の背中をつついた。
「な、なんですか?」
「中庭にいるスマート・グッドの社長がなつみちゃんに農場を案内してもらいたいって」
「えっ」
農場の案内?
「それならもっと適任者がいると思うんですけど」
私は朝摘みを手伝うだけで、ファーマーじゃないし。
「元部下だから、頼みやすいんじゃない? 後の片付けはいいから行って来て」
「………はぃ」
オーナーがそう言うのだから、意気地になって行かないのもどうかと、中庭に足を運ぶ。
神城くんは、一人で外のベンチに座っていた。
風に揺れるシンボルツリーのエゴノキをボンヤリと見ている。
その横顔には、どこか少年ぽさが漂い、CEOとしての近寄り難さはなかった。
「おひさしぶりです……」
ずっと避けてきたのに、こんな形で話をすることになるなんて。
「……ほんとだよ」
……と、そのとき、隣にいた冬美が、あろうことか私に膝カックンをした。
「あっ、」
と、体勢を崩した私。
何が起こったのかわからないといった表情のスマート・グッドの御三方と農協の人。
かろうじてグラスを倒したり皿を落とすことは無かったが、「なつみちゃん!」と、咄嗟に三川さんが私の背を支えてくれたのだ。
「も、申し訳ありません!」
勿論、いまのは放送できないのでカット。
テレビ局の人から睨まれながら、何度も頭を下げ、私はその場を後にした。
「ちょ、なんてことしてくれんのよ? あれがへんな事でなくてなんなのよ?」
厨房に戻って小声で冬美を叱る。
「カットされるんだからいいじゃない。それより………」
悪びれもなく冬美がニタニタとした。
「″なつみちゃん″だって」
「!」
「あのときのオーナーと、イケメン社長の顔、見ものだったわ」
「……え……」
「オーナーが抱き支えたのと同じタイミングで社長も一瞬、腰を上げたのよ! でも、先越されて失意してた。カメラ回ってるっていうのに、いい大人が何やってんだかー」
「あんたが言うな」
冬美のイタズラは常識外れで許されないものだ。
でも、冬美が言ったことが本当なら、――その時の神城くんを見たかった。
商談を兼ねた取材が終わり、食器を片付けていると、三川さんがチョンと私の背中をつついた。
「な、なんですか?」
「中庭にいるスマート・グッドの社長がなつみちゃんに農場を案内してもらいたいって」
「えっ」
農場の案内?
「それならもっと適任者がいると思うんですけど」
私は朝摘みを手伝うだけで、ファーマーじゃないし。
「元部下だから、頼みやすいんじゃない? 後の片付けはいいから行って来て」
「………はぃ」
オーナーがそう言うのだから、意気地になって行かないのもどうかと、中庭に足を運ぶ。
神城くんは、一人で外のベンチに座っていた。
風に揺れるシンボルツリーのエゴノキをボンヤリと見ている。
その横顔には、どこか少年ぽさが漂い、CEOとしての近寄り難さはなかった。
「おひさしぶりです……」
ずっと避けてきたのに、こんな形で話をすることになるなんて。
「……ほんとだよ」
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