20 / 595
1.恋愛初心者
20.彼女
しおりを挟む
日住君が汗を拭いて座っていた。膝には唐揚げ弁当が乗っている。
生徒会メンバーと体育祭委員にはお弁当とお茶が支給される。
生徒会用のテントの端では、いつも購買でお会計をしてくれる女性がお弁当を渡していた。
生徒会メンバーと体育祭委員は腕章をつけているから、それが目印だ。
私もお弁当とお茶を受け取って、椅子に座る。
「なんとなくわかってましたけど…空井先輩、完全に両想いなんですね」
日住君が周りを見ながら小声で言う。
私はどう答えればいいかわからず、苦笑する。
日住君の隣に金井さんが座った。
少し身を乗り出して私に顔を向ける。
「空井先輩、さっき答えをハッキリ聞けなかったので、もう一度聞きます」
目が怖いよ、金井さん!
美人な顔立ちなだけに、睨むように見られると背筋がゾワリとする。
「あれはlikeですか?loveですか?」
しかも無駄に発音がいい!なんで!?
続々と生徒会メンバーが集まってきて「私も気になるー!」「あの子けっこうカッコ良かったよね」とかなんとか、3年生の先輩までもが悪ノリする。
タラタラと汗が落ちてくる。
「今まで空井さんの恋愛トークなんて聞いたことなかったもんねえ」
「私達が恋愛の話しても“恋をしたことがないのでわかりません”の一点張りだったもんね」
先輩達がこんなにも生き生きと話しかけてくれるのはいつぶりだろう…と、少し寂しく感じる。
「ま、まあ…みんなも、先輩方も、空井先輩が困ってるじゃないですか」
日住君が助け船を出してくれる。
「いやあ!空井さん、攫われてたね!」と、空気を読まない生徒会長がドッカリ椅子に座って言った。
「あれは盛り上がったね!」
せっかくの助け船が…と思っていたら、生徒会長はそのまま話し続ける。
「今年は点差がほとんどなくて良かったよ。大きな問題も今のところ起きていないし、このまま順調に体育祭を終えよう。みんな気を抜くなよ~!さあ!食べよう!そして午後を乗り切ろう!…いただきます!」
ガツガツとお弁当を食べ始め、豪快にお茶を飲む。
生徒会長の我が道を行くスタイルに救われる。
みんなも生徒会長に続いて「いただきます」と各々口にしてからお弁当を食べ始めた。
ホッとして、私もお弁当を食べる。
こまめに水分補給して、塩飴も舐めるようにしていたけれど、やっぱりご飯を食べると回復する感じがする。
食べながら、永那ちゃんの手のぬくもり、ゴールした時の嬉しさ、抱きしめられた時の恥ずかしさを思い出す。
永那ちゃんは今頃佐藤さん達とご飯を食べているんだろうな。…彼女達に何か言われてないかな?少し心配になる。
昼休憩が終わると、それぞれの組の応援団が応援合戦を始めた。
私達の学校には“応援団”という部活は存在しない。だからダンス部とチアダンス部が主体になって、毎年応援団員を募集する。
毎年校庭の真ん中で凝ったダンスを踊って、両脇で旗を振るのが恒例になっている。
勝っている組から先に披露して、最後はお互いの健闘を祈る。
私は綱引きに参加するので、スタート地点で待機する。
体育の授業中、体育祭の練習をした。綱引き、大縄跳び、リレーだけは練習をさせてもらえて、当日これらの競技に参加しない生徒達も一緒になってやった。
そこで声がけの仕方や、綱を持つ順番も決めた。
綱引きが始まり、クラスメイトからの声援が聞こえた。体育の授業で既に一体感が高まっていたからか、アドバイスするような声も聞こえてくる。
かけ声に合わせて、体ごと倒すように綱を引く。
クラスの待機場所からもかけ声が聞こえてくる。
そして、一気にグググと綱を引けた瞬間がきた。
相手の、1番手前に立っていた人が足を滑らせて体勢を崩したようだった。
そして私達は見事勝ち、赤組に貢献することができた。
その後も体育祭は順調に進んだ。
数人転んだ人もいたけれど、どれも大きな怪我ではなかった。
部活対抗リレーは、各部活を象徴する格好で行われる。例えば野球部であれば、試合のユニフォームを着てグローブを手につけながら走る。そしてそのグローブがリレーバトンの役割を果たす。
運動部と文化部は分けてレースを行った。
アニメ・漫画部はアニメキャラのコスプレをして、漫画をリレーバトンにしていた。
教員リレーでは、かなり年配の先生まで参加していて、生徒ウケも良かった。
最終競技のリレーも、1年生、2年生、3年生の部に分かれて行われ、大いに盛り上がった。
予定終了時間は4時半だった。
全ての競技が終わったのがちょうど4時半だったため、閉会式を含めると若干過ぎてしまった。
結果、優勝したのは白組だった。
接戦だったけど、最終的には30点の差をつけられて赤組は負けた。
勝っても負けても生徒達から不満の声は特に出ず、みんなやり切った表情をしていたのは確かだった。
大成功と言える。
生徒会メンバーと体育祭委員にはお弁当とお茶が支給される。
生徒会用のテントの端では、いつも購買でお会計をしてくれる女性がお弁当を渡していた。
生徒会メンバーと体育祭委員は腕章をつけているから、それが目印だ。
私もお弁当とお茶を受け取って、椅子に座る。
「なんとなくわかってましたけど…空井先輩、完全に両想いなんですね」
日住君が周りを見ながら小声で言う。
私はどう答えればいいかわからず、苦笑する。
日住君の隣に金井さんが座った。
少し身を乗り出して私に顔を向ける。
「空井先輩、さっき答えをハッキリ聞けなかったので、もう一度聞きます」
目が怖いよ、金井さん!
美人な顔立ちなだけに、睨むように見られると背筋がゾワリとする。
「あれはlikeですか?loveですか?」
しかも無駄に発音がいい!なんで!?
続々と生徒会メンバーが集まってきて「私も気になるー!」「あの子けっこうカッコ良かったよね」とかなんとか、3年生の先輩までもが悪ノリする。
タラタラと汗が落ちてくる。
「今まで空井さんの恋愛トークなんて聞いたことなかったもんねえ」
「私達が恋愛の話しても“恋をしたことがないのでわかりません”の一点張りだったもんね」
先輩達がこんなにも生き生きと話しかけてくれるのはいつぶりだろう…と、少し寂しく感じる。
「ま、まあ…みんなも、先輩方も、空井先輩が困ってるじゃないですか」
日住君が助け船を出してくれる。
「いやあ!空井さん、攫われてたね!」と、空気を読まない生徒会長がドッカリ椅子に座って言った。
「あれは盛り上がったね!」
せっかくの助け船が…と思っていたら、生徒会長はそのまま話し続ける。
「今年は点差がほとんどなくて良かったよ。大きな問題も今のところ起きていないし、このまま順調に体育祭を終えよう。みんな気を抜くなよ~!さあ!食べよう!そして午後を乗り切ろう!…いただきます!」
ガツガツとお弁当を食べ始め、豪快にお茶を飲む。
生徒会長の我が道を行くスタイルに救われる。
みんなも生徒会長に続いて「いただきます」と各々口にしてからお弁当を食べ始めた。
ホッとして、私もお弁当を食べる。
こまめに水分補給して、塩飴も舐めるようにしていたけれど、やっぱりご飯を食べると回復する感じがする。
食べながら、永那ちゃんの手のぬくもり、ゴールした時の嬉しさ、抱きしめられた時の恥ずかしさを思い出す。
永那ちゃんは今頃佐藤さん達とご飯を食べているんだろうな。…彼女達に何か言われてないかな?少し心配になる。
昼休憩が終わると、それぞれの組の応援団が応援合戦を始めた。
私達の学校には“応援団”という部活は存在しない。だからダンス部とチアダンス部が主体になって、毎年応援団員を募集する。
毎年校庭の真ん中で凝ったダンスを踊って、両脇で旗を振るのが恒例になっている。
勝っている組から先に披露して、最後はお互いの健闘を祈る。
私は綱引きに参加するので、スタート地点で待機する。
体育の授業中、体育祭の練習をした。綱引き、大縄跳び、リレーだけは練習をさせてもらえて、当日これらの競技に参加しない生徒達も一緒になってやった。
そこで声がけの仕方や、綱を持つ順番も決めた。
綱引きが始まり、クラスメイトからの声援が聞こえた。体育の授業で既に一体感が高まっていたからか、アドバイスするような声も聞こえてくる。
かけ声に合わせて、体ごと倒すように綱を引く。
クラスの待機場所からもかけ声が聞こえてくる。
そして、一気にグググと綱を引けた瞬間がきた。
相手の、1番手前に立っていた人が足を滑らせて体勢を崩したようだった。
そして私達は見事勝ち、赤組に貢献することができた。
その後も体育祭は順調に進んだ。
数人転んだ人もいたけれど、どれも大きな怪我ではなかった。
部活対抗リレーは、各部活を象徴する格好で行われる。例えば野球部であれば、試合のユニフォームを着てグローブを手につけながら走る。そしてそのグローブがリレーバトンの役割を果たす。
運動部と文化部は分けてレースを行った。
アニメ・漫画部はアニメキャラのコスプレをして、漫画をリレーバトンにしていた。
教員リレーでは、かなり年配の先生まで参加していて、生徒ウケも良かった。
最終競技のリレーも、1年生、2年生、3年生の部に分かれて行われ、大いに盛り上がった。
予定終了時間は4時半だった。
全ての競技が終わったのがちょうど4時半だったため、閉会式を含めると若干過ぎてしまった。
結果、優勝したのは白組だった。
接戦だったけど、最終的には30点の差をつけられて赤組は負けた。
勝っても負けても生徒達から不満の声は特に出ず、みんなやり切った表情をしていたのは確かだった。
大成功と言える。
35
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる