30 / 595
1.恋愛初心者
30.彼女
しおりを挟む
ゴール前に立っていたのは、あの憎き後輩だった。
私は握っている穂の手に、そっと指を絡ませた。
彼女は全校生徒から突然注目されて緊張しているのか、絡ませた指に気づいていないみたいだった。
気づいてたら、きっと離されていただろうな。
後輩君が、カードと穂を交互に見る。
穂は私の好きな人、穂も私が好きなんだ。認めろ!そして諦めろ!
彼はニコリと笑顔を作って「OKです」と言った。
そのまま私達はゴールテープを切って、1位でゴール。
彼女がなんのカードだったのか聞いてくるから正直に答えたら、叩かれた。
ボサボサになった髪を指で梳いてくれ、鼻の汚れも拭ってくれる。
そのときの表情がどことなく嬉しそうで、可愛くて堪らなくなる。
クラスの待機場所に戻ると、千陽が引っ付いてきた。
「ねえ、“好きな人”で空井さん連れてくってどういうこと~?」
唇を尖らせて、お得意の上目遣いで私を見る。
「めっちゃ意外な選択だったよね」と周りの人達も言う。
「んー…」
まだみんなに彼女と付き合ってることは言っていない。
今のところ、言うつもりもない。
穂が公表したいと言うなら、それはそれでかまわないけど、まだ確認してないし、下手なことは言わないほうがいいだろう。
「なんであたしじゃないの~?」
千陽が少し不機嫌そうにする。面倒だな。
「まあ…ここ、最終地点のとこからめっちゃ遠いし?」
そう言うと「確かに」と言う笑い声が聞こえてくる。
「だからって…」
千陽が俯く。本当、面倒くさすぎる。
「まあまあ、そう怒るなって」
頭をポンポンと撫でてあげると、千陽の頬がピンク色に染まる。
体育祭は無事終わる。
穂が汗を流しながら真剣に綱を引く姿が愛しくて、大声を出して応援した。
全競技が終了して、最終的に、赤組は負けてしまったけど、正直そんな勝敗はどうでもいい。
みんな盛り上がれればそれでいいんだし、この後の打ち上げを1番の楽しみにしてる人もいるくらいだ。
穂は片付けがあるから参加できない。生徒会と体育祭委員は土曜日に打ち上げをするようだ。
…と、そこで憎き後輩のことを思い出す。
土曜日ということは、たぶん私服で参加することになるんだろう。
穂の私服…。デートのときの彼女を思い出す。
そんな…。地面に膝をつきたくなる。絶対に変な目で見られるからグッと堪えるけど。
そういえば生徒会の活動で、たまに土曜日もあるって言っていた。
だとするなら、あの可愛い姿を、あの憎き後輩のほうが先に見ていたということか…。
なんか、悔しい。何が悔しいのかわからないけど、なんか悔しい。
そして必然的に、後輩が穂の手を握っていたことを思い出して、怒りが再燃する。
あいつ、絶対わざと、あえて、全校生徒の前で穂の手を握っただろ!?
私が穂に告白したと知って、慌てて彼女をものにしようとしたんだ。
…穂は、私だけだよね?
奥歯を強く噛む。
そういえば、穂はなんで私を好きになってくれたんだろう?
1週間も夜遅くまで体育祭の準備して、例えばあいつが帰り道とかで穂の手を握ったりして、そしたら穂がポッと照れて…なんてことになってないよね!?…なってないよね?
私に言ってくれた“好き”が、たかだか1週間でなくなるわけないよね?
自分でも自分が面倒な性格してるってわかってる。恋をするとこんなふうになるなんて、今まで知らなかったけど。
でも一度考え始めたら止まらなくて、気づいたら彼女に電話していた。
打ち上げは二次会に移行したばかりで、カラオケはこれから盛り上がる…というところだった。
千陽が引き止めようとしたけど、思わず手を振り払ってしまった。
適当に謝って、走って出ていく。
会いたい。
早く君に会いたい。
1週間も我慢したんだ。
このくらいのわがまま、いいよね?
私は握っている穂の手に、そっと指を絡ませた。
彼女は全校生徒から突然注目されて緊張しているのか、絡ませた指に気づいていないみたいだった。
気づいてたら、きっと離されていただろうな。
後輩君が、カードと穂を交互に見る。
穂は私の好きな人、穂も私が好きなんだ。認めろ!そして諦めろ!
彼はニコリと笑顔を作って「OKです」と言った。
そのまま私達はゴールテープを切って、1位でゴール。
彼女がなんのカードだったのか聞いてくるから正直に答えたら、叩かれた。
ボサボサになった髪を指で梳いてくれ、鼻の汚れも拭ってくれる。
そのときの表情がどことなく嬉しそうで、可愛くて堪らなくなる。
クラスの待機場所に戻ると、千陽が引っ付いてきた。
「ねえ、“好きな人”で空井さん連れてくってどういうこと~?」
唇を尖らせて、お得意の上目遣いで私を見る。
「めっちゃ意外な選択だったよね」と周りの人達も言う。
「んー…」
まだみんなに彼女と付き合ってることは言っていない。
今のところ、言うつもりもない。
穂が公表したいと言うなら、それはそれでかまわないけど、まだ確認してないし、下手なことは言わないほうがいいだろう。
「なんであたしじゃないの~?」
千陽が少し不機嫌そうにする。面倒だな。
「まあ…ここ、最終地点のとこからめっちゃ遠いし?」
そう言うと「確かに」と言う笑い声が聞こえてくる。
「だからって…」
千陽が俯く。本当、面倒くさすぎる。
「まあまあ、そう怒るなって」
頭をポンポンと撫でてあげると、千陽の頬がピンク色に染まる。
体育祭は無事終わる。
穂が汗を流しながら真剣に綱を引く姿が愛しくて、大声を出して応援した。
全競技が終了して、最終的に、赤組は負けてしまったけど、正直そんな勝敗はどうでもいい。
みんな盛り上がれればそれでいいんだし、この後の打ち上げを1番の楽しみにしてる人もいるくらいだ。
穂は片付けがあるから参加できない。生徒会と体育祭委員は土曜日に打ち上げをするようだ。
…と、そこで憎き後輩のことを思い出す。
土曜日ということは、たぶん私服で参加することになるんだろう。
穂の私服…。デートのときの彼女を思い出す。
そんな…。地面に膝をつきたくなる。絶対に変な目で見られるからグッと堪えるけど。
そういえば生徒会の活動で、たまに土曜日もあるって言っていた。
だとするなら、あの可愛い姿を、あの憎き後輩のほうが先に見ていたということか…。
なんか、悔しい。何が悔しいのかわからないけど、なんか悔しい。
そして必然的に、後輩が穂の手を握っていたことを思い出して、怒りが再燃する。
あいつ、絶対わざと、あえて、全校生徒の前で穂の手を握っただろ!?
私が穂に告白したと知って、慌てて彼女をものにしようとしたんだ。
…穂は、私だけだよね?
奥歯を強く噛む。
そういえば、穂はなんで私を好きになってくれたんだろう?
1週間も夜遅くまで体育祭の準備して、例えばあいつが帰り道とかで穂の手を握ったりして、そしたら穂がポッと照れて…なんてことになってないよね!?…なってないよね?
私に言ってくれた“好き”が、たかだか1週間でなくなるわけないよね?
自分でも自分が面倒な性格してるってわかってる。恋をするとこんなふうになるなんて、今まで知らなかったけど。
でも一度考え始めたら止まらなくて、気づいたら彼女に電話していた。
打ち上げは二次会に移行したばかりで、カラオケはこれから盛り上がる…というところだった。
千陽が引き止めようとしたけど、思わず手を振り払ってしまった。
適当に謝って、走って出ていく。
会いたい。
早く君に会いたい。
1週間も我慢したんだ。
このくらいのわがまま、いいよね?
34
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる