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2.変化
84.友達
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「嬉しい」
そう言うと、永那ちゃんが嬉しそうに笑う。
「よかった。…着けてくれる?」
「うん。…うん!」
彼女のあたたかい手が、私の髪に触れる。
そのまま指で髪を梳いてくれて、なんだか、心がふわふわする。
でも、途端に不安になる。
「…あの、私、何も」
「いいんだよ」
頭を撫で続けてくれる。
「穂はずっと“違う日に”って言ってたんだし、めっちゃ楽しみにしてるから」
違う日っていつ!?
何も考えておらず、誰も参考にする人がおらず、直近の土日だとすると、時間がない。
「…いつ?」
「いつがいい?」
「来週の土」
「遅い」
“来週の土日”と言おうとして、遮られる。
“いつがいい?”って聞いたのに!
「明日は?」
「え?そんなすぐ用意できないよ…」
「穂と穂のご飯食べたい」
私は何度も瞬きをして、永那ちゃんを見つめる。
「何かプレゼント」
「穂がほしい」
また遮られる。私の言いたいこと、考えてることが、全て把握されているみたいに。
「明日って、佐藤さん達はいいの?」
永那ちゃんは宙を見る。
「…まあ、そうか。何人かで遊ぼうって話になるかもしれないなあ」
少しホッとする。
「そうなったら、穂も来るでしょ?」
「え、いいのかな?私がいるとみんな」
「穂が行かないなら、私も行かない」
「…じゃあ、考えとく」
「いつ答えが出るの?」
「テスト終わり…」
永那ちゃんがフッと笑う。
「わかった」
永那ちゃんが立ち上がる。
手を差し伸べてくれるから手を重ねると、強く引っ張られて、私は起き上がる。
「まあいいや。来週1週間、授業早く終わる日もあるだろうし…一緒に過ごそうね?」
彼女の左眉が上がる。
私が頷くと、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
土日は会わないのかな?なんて思ったけど、先週家に来てもらったし、お母さんのこともあるだろうから、あんまり頻繁にはだめなのだろうと自分のなかで結論を出す。
唐突に、永那ちゃんが「ジプロックかなんかある?」と聞く。
「え?うん。キッチンに」
「1枚貰っていい?」
「うん。…なんで?」
永那ちゃんはニコッと笑ってドアを開ける。
私はどういうことかわからず、彼女の背中をただ見送る。
フゥッと息を吐いて、立ち上がる。
その瞬間、足りない物に気づく。
背筋がゾワリとして、全身に鳥肌が立つ。
スカートの中がスースーして、気持ち悪い感覚。
「穂ー、どこー?…ねー?」
声の先に顔を向けるけど、足は動かないし、声も出ない。
「何探してるの?」
優里ちゃんの声が聞こえる。
念のため、私は部屋のなかを見渡す。
「ジプロック」
「え?なんで?」
…やっぱりない。
優里ちゃんが笑いながら席を立つ音がする。
「昨日は冷蔵庫の隣にあった気が…」
「あ、ホントだ!サンキュー」
私は立っていられなくなって、布団に潜った。
もう出られない…。
なにやってるの?バカなの?っていうか、なんでジプロック?なにする気なの?
誰かが近づいてくる音がする。
「穂、ちゃん…?」
優しい優里ちゃんの声が胸に沁みる。
「大丈夫?」
「だいじょばない」
「えぇ!?」
「近寄らないで…」
「えぇぇ!?…ど、どうすれば」
「とにかく、永那ちゃんを殴ってきて」
「穂ちゃん!?ホントにどうしたの!?」
私は布団に包まったまま、羞恥心に殺されそうになった。
そう言うと、永那ちゃんが嬉しそうに笑う。
「よかった。…着けてくれる?」
「うん。…うん!」
彼女のあたたかい手が、私の髪に触れる。
そのまま指で髪を梳いてくれて、なんだか、心がふわふわする。
でも、途端に不安になる。
「…あの、私、何も」
「いいんだよ」
頭を撫で続けてくれる。
「穂はずっと“違う日に”って言ってたんだし、めっちゃ楽しみにしてるから」
違う日っていつ!?
何も考えておらず、誰も参考にする人がおらず、直近の土日だとすると、時間がない。
「…いつ?」
「いつがいい?」
「来週の土」
「遅い」
“来週の土日”と言おうとして、遮られる。
“いつがいい?”って聞いたのに!
「明日は?」
「え?そんなすぐ用意できないよ…」
「穂と穂のご飯食べたい」
私は何度も瞬きをして、永那ちゃんを見つめる。
「何かプレゼント」
「穂がほしい」
また遮られる。私の言いたいこと、考えてることが、全て把握されているみたいに。
「明日って、佐藤さん達はいいの?」
永那ちゃんは宙を見る。
「…まあ、そうか。何人かで遊ぼうって話になるかもしれないなあ」
少しホッとする。
「そうなったら、穂も来るでしょ?」
「え、いいのかな?私がいるとみんな」
「穂が行かないなら、私も行かない」
「…じゃあ、考えとく」
「いつ答えが出るの?」
「テスト終わり…」
永那ちゃんがフッと笑う。
「わかった」
永那ちゃんが立ち上がる。
手を差し伸べてくれるから手を重ねると、強く引っ張られて、私は起き上がる。
「まあいいや。来週1週間、授業早く終わる日もあるだろうし…一緒に過ごそうね?」
彼女の左眉が上がる。
私が頷くと、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
土日は会わないのかな?なんて思ったけど、先週家に来てもらったし、お母さんのこともあるだろうから、あんまり頻繁にはだめなのだろうと自分のなかで結論を出す。
唐突に、永那ちゃんが「ジプロックかなんかある?」と聞く。
「え?うん。キッチンに」
「1枚貰っていい?」
「うん。…なんで?」
永那ちゃんはニコッと笑ってドアを開ける。
私はどういうことかわからず、彼女の背中をただ見送る。
フゥッと息を吐いて、立ち上がる。
その瞬間、足りない物に気づく。
背筋がゾワリとして、全身に鳥肌が立つ。
スカートの中がスースーして、気持ち悪い感覚。
「穂ー、どこー?…ねー?」
声の先に顔を向けるけど、足は動かないし、声も出ない。
「何探してるの?」
優里ちゃんの声が聞こえる。
念のため、私は部屋のなかを見渡す。
「ジプロック」
「え?なんで?」
…やっぱりない。
優里ちゃんが笑いながら席を立つ音がする。
「昨日は冷蔵庫の隣にあった気が…」
「あ、ホントだ!サンキュー」
私は立っていられなくなって、布団に潜った。
もう出られない…。
なにやってるの?バカなの?っていうか、なんでジプロック?なにする気なの?
誰かが近づいてくる音がする。
「穂、ちゃん…?」
優しい優里ちゃんの声が胸に沁みる。
「大丈夫?」
「だいじょばない」
「えぇ!?」
「近寄らないで…」
「えぇぇ!?…ど、どうすれば」
「とにかく、永那ちゃんを殴ってきて」
「穂ちゃん!?ホントにどうしたの!?」
私は布団に包まったまま、羞恥心に殺されそうになった。
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