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130.噂
『永那、熱出したから明日行けないって聞いた?』
優里ちゃんから連絡がきた。
『うん、私のせいで風邪引かせちゃったから…』
返事をすると、優里ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし」
「大丈夫!?穂ちゃんは風邪引いてない?平気?」
「あ、うん。私は大丈夫…ありがとう」
「そっか~、よかった~!…穂ちゃんは明日行けそう?」
「行っても平気なのかな?…永那ちゃんが行けないのに」
「えー!そんなの気にしなくて平気だよー!永那、よく風邪引くし。高1のときもしょっちゅう休んでたよ?特に夏と冬ね…。夏は公園で寝てるとか言ってて、風邪引くの当たり前じゃんね~」
優里ちゃんが笑う。
…ああ、そういえば佐藤さんも公園で寝てるって言ってたっけ。
優里ちゃんの笑い声で少し安心する。
「明日は私が守るから、安心して!」
「…わかった。ありがとう」
「んじゃ、また明日ねー!」
「うん」
電話越しに人の声が聞こえたし、時間的にも部活動中だったのかもしれない。
申し訳ない気持ちとありがたい気持ちが混ざり合う。
次の日、やっぱり永那ちゃんはプールに来られなかった。
でも『熱はもうないんだけど、咳がすごいんだ』と言われて、物凄く安心した。
誉が熱を出すたびに“死ぬかも”なんて言って、“大丈夫だよ”って返すけど、永那ちゃんのこととなると、全く大丈夫と思えなかった。
駅前で優里ちゃんと待ち合わせる。
クラス全体の待ち合わせ場所はプールの入り口だから、そこまで一緒に行く。
「本当、永那はあんなに楽しみにしてたのに何やってんのかね~」と優里ちゃんが言うから「いや、でもあれは私のせいで」と返した。
「ああ、電話のときもそんなこと言ってたね?何があったの?」
「弟が熱出しちゃって、その看病をしてくれてたの」
「え、あ、そうなんだ!…それはしょーがないね」
優里ちゃんは眉を下げて言った。
いつも通り、途中駅で佐藤さんが乗ってくる。
イヤホンを取って、優里ちゃんの隣に座った。
優里ちゃんは先週1週間部活の夏合宿があったらしく、これから試合もあると話してくれる。
優里ちゃんがいなかったら、私は不参加にしていたんだろうな…と思うと、優里ちゃんの存在のありがたさを感じる。
予想していた通り、みんなでスライダーに行こうという話になったけど、優里ちゃんが断ってくれた。
前回4人でプールに行ったとき、優里ちゃんと佐藤さんは2人でスライダーに乗りに行っていたから、なんだかすごく申し訳なかった。
「佐藤さん、俺らと行こうよ」
それでも、クラスの中でもノリの良い人達が佐藤さんを誘う。
「無理」
佐藤さんが容赦なく拒絶する。
でもなぜか彼らは諦めない。
「えー、ちょっとくらい良いじゃん?佐藤さんも楽しもうよ?」
佐藤さんは一度も彼らを見ていない。
「さっきから流れるプールとかしか行ってないじゃーん、ね?千陽ちゃん」
佐藤さんの眉間にシワが寄る。
彼らが佐藤さんの肩に手を置く。
「ちょいちょいちょい…女子同士の戯れに入ってこないでもらえるかな?男子禁制!」
「うるせーよ、篠田」
「あー?」
「今日は両角もいないんだし、暇だろー?」
その言葉で、どれだけ永那ちゃんが佐藤さんを守ってきたかがわかって、胸が痛んだ。
「スライダー行こうぜー」
「そうだよー、空井さんも!ね?」
急に手を掴まれて、体が強張る。
「えー、なになにー?」
「千陽スライダー乗らないの?」
ノリの良い女子達が参加してくる。
「乗らないって。マジめんどいんだけど」
「去年乗ってたじゃん」
私のせいで優里ちゃんと佐藤さんがノリの悪い人みたいになってしまっている…。
「あの…私はいいから、2人は行ってきていいよ?」
私が言うと「空井さんも来たらいいじゃん」と肩を抱かれた。
全身にゾワッと鳥肌が立つ。
「やめて!」
気づいたら、彼を押していた。
「いったー、え?なに?」
ドクドクと鼓動が速まる。
私は俯いて、足早にその場から去る。
「穂ちゃん!」
プールの隅、誰も見ていないようなところでうずくまる。
…やっぱり来なければよかった。
ガヤガヤとプールが賑わうなか、暗い感情がグルグルグルグル心を支配する。
目を閉じて、膝に顔を埋める。
「穂」
突然、いないはずの人の声が上から降ってきた。
顔を上げると、マスクをつけた永那ちゃんがいた。
「こんなとこにいた」
マスク越しでも笑っているのがわかって、目の下のクマもなくなっていて、目に涙がたまっていく。
「なんで?」
「いや、やっぱちょっと心配になって…」
彼女はTシャツとスキニーパンツで立っていた。
「来てよかったよ」
ゲホゲホと咳をしながら、しゃがんで目線を合わせてくれる。
私は思わず彼女に抱きついた。
ギュッと抱きしめられて、涙がポロポロ溢れ出て来る。
「よしよし」
「ごめんね、私のせいで…私の…」
「なにが?穂が悪いことなんて1つもないよ?」
「でも」
「でもじゃない」
ギュゥッと強く抱きしめられて、彼女の首に顔をうずめた。
「穂、千陽のとこ一緒に来てくれない?あいつも大変だからさ…ごめんね?」
私は首を振って、一緒に立ち上がった。
佐藤さん達のところに行くと、さっきのクラスメイト達はいなくなっていたけど、知らない人に話しかけられていた。
「千陽、優里」
「あ、穂ちゃん見つかった!?」
「うん」
「よかった~、ごめんね?穂ちゃん」
「え、あ、いや、私こそ、本当に、ごめんなさい」
「穂ちゃんは悪くないよー!」
優里ちゃんが抱きしめてくれる。
その間に永那ちゃんがマスクを外す。
優里ちゃんから連絡がきた。
『うん、私のせいで風邪引かせちゃったから…』
返事をすると、優里ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし」
「大丈夫!?穂ちゃんは風邪引いてない?平気?」
「あ、うん。私は大丈夫…ありがとう」
「そっか~、よかった~!…穂ちゃんは明日行けそう?」
「行っても平気なのかな?…永那ちゃんが行けないのに」
「えー!そんなの気にしなくて平気だよー!永那、よく風邪引くし。高1のときもしょっちゅう休んでたよ?特に夏と冬ね…。夏は公園で寝てるとか言ってて、風邪引くの当たり前じゃんね~」
優里ちゃんが笑う。
…ああ、そういえば佐藤さんも公園で寝てるって言ってたっけ。
優里ちゃんの笑い声で少し安心する。
「明日は私が守るから、安心して!」
「…わかった。ありがとう」
「んじゃ、また明日ねー!」
「うん」
電話越しに人の声が聞こえたし、時間的にも部活動中だったのかもしれない。
申し訳ない気持ちとありがたい気持ちが混ざり合う。
次の日、やっぱり永那ちゃんはプールに来られなかった。
でも『熱はもうないんだけど、咳がすごいんだ』と言われて、物凄く安心した。
誉が熱を出すたびに“死ぬかも”なんて言って、“大丈夫だよ”って返すけど、永那ちゃんのこととなると、全く大丈夫と思えなかった。
駅前で優里ちゃんと待ち合わせる。
クラス全体の待ち合わせ場所はプールの入り口だから、そこまで一緒に行く。
「本当、永那はあんなに楽しみにしてたのに何やってんのかね~」と優里ちゃんが言うから「いや、でもあれは私のせいで」と返した。
「ああ、電話のときもそんなこと言ってたね?何があったの?」
「弟が熱出しちゃって、その看病をしてくれてたの」
「え、あ、そうなんだ!…それはしょーがないね」
優里ちゃんは眉を下げて言った。
いつも通り、途中駅で佐藤さんが乗ってくる。
イヤホンを取って、優里ちゃんの隣に座った。
優里ちゃんは先週1週間部活の夏合宿があったらしく、これから試合もあると話してくれる。
優里ちゃんがいなかったら、私は不参加にしていたんだろうな…と思うと、優里ちゃんの存在のありがたさを感じる。
予想していた通り、みんなでスライダーに行こうという話になったけど、優里ちゃんが断ってくれた。
前回4人でプールに行ったとき、優里ちゃんと佐藤さんは2人でスライダーに乗りに行っていたから、なんだかすごく申し訳なかった。
「佐藤さん、俺らと行こうよ」
それでも、クラスの中でもノリの良い人達が佐藤さんを誘う。
「無理」
佐藤さんが容赦なく拒絶する。
でもなぜか彼らは諦めない。
「えー、ちょっとくらい良いじゃん?佐藤さんも楽しもうよ?」
佐藤さんは一度も彼らを見ていない。
「さっきから流れるプールとかしか行ってないじゃーん、ね?千陽ちゃん」
佐藤さんの眉間にシワが寄る。
彼らが佐藤さんの肩に手を置く。
「ちょいちょいちょい…女子同士の戯れに入ってこないでもらえるかな?男子禁制!」
「うるせーよ、篠田」
「あー?」
「今日は両角もいないんだし、暇だろー?」
その言葉で、どれだけ永那ちゃんが佐藤さんを守ってきたかがわかって、胸が痛んだ。
「スライダー行こうぜー」
「そうだよー、空井さんも!ね?」
急に手を掴まれて、体が強張る。
「えー、なになにー?」
「千陽スライダー乗らないの?」
ノリの良い女子達が参加してくる。
「乗らないって。マジめんどいんだけど」
「去年乗ってたじゃん」
私のせいで優里ちゃんと佐藤さんがノリの悪い人みたいになってしまっている…。
「あの…私はいいから、2人は行ってきていいよ?」
私が言うと「空井さんも来たらいいじゃん」と肩を抱かれた。
全身にゾワッと鳥肌が立つ。
「やめて!」
気づいたら、彼を押していた。
「いったー、え?なに?」
ドクドクと鼓動が速まる。
私は俯いて、足早にその場から去る。
「穂ちゃん!」
プールの隅、誰も見ていないようなところでうずくまる。
…やっぱり来なければよかった。
ガヤガヤとプールが賑わうなか、暗い感情がグルグルグルグル心を支配する。
目を閉じて、膝に顔を埋める。
「穂」
突然、いないはずの人の声が上から降ってきた。
顔を上げると、マスクをつけた永那ちゃんがいた。
「こんなとこにいた」
マスク越しでも笑っているのがわかって、目の下のクマもなくなっていて、目に涙がたまっていく。
「なんで?」
「いや、やっぱちょっと心配になって…」
彼女はTシャツとスキニーパンツで立っていた。
「来てよかったよ」
ゲホゲホと咳をしながら、しゃがんで目線を合わせてくれる。
私は思わず彼女に抱きついた。
ギュッと抱きしめられて、涙がポロポロ溢れ出て来る。
「よしよし」
「ごめんね、私のせいで…私の…」
「なにが?穂が悪いことなんて1つもないよ?」
「でも」
「でもじゃない」
ギュゥッと強く抱きしめられて、彼女の首に顔をうずめた。
「穂、千陽のとこ一緒に来てくれない?あいつも大変だからさ…ごめんね?」
私は首を振って、一緒に立ち上がった。
佐藤さん達のところに行くと、さっきのクラスメイト達はいなくなっていたけど、知らない人に話しかけられていた。
「千陽、優里」
「あ、穂ちゃん見つかった!?」
「うん」
「よかった~、ごめんね?穂ちゃん」
「え、あ、いや、私こそ、本当に、ごめんなさい」
「穂ちゃんは悪くないよー!」
優里ちゃんが抱きしめてくれる。
その間に永那ちゃんがマスクを外す。
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