いたずらはため息と共に

常森 楽

文字の大きさ
177 / 595
3.成長

176.まだまだ終わらなかった夏

しおりを挟む
私は諦めて、彼女の指示でサスペンダータイプのものを身に着けた。
永那ちゃんに見つめられながら…。
着終えると、永那ちゃんに抱きしめられた。
「エロ…可愛い」
お尻を撫でられて、鳥肌が立つ。
「ねえ、永那ちゃん?」
「なに?」
「これ…少ししゃがんだら紐が浮いて、見えちゃうんだけど…」
永那ちゃんが離れる。
「やってみて?」
そう言われて火照る体を、知らないフリする。
私は前かがみになったり、しゃがんだり、いろんな姿勢をしてみる。
やっぱり胸の部分が浮いてしまって、すぐに布(紐?)が乳首から外れてしまう。
…こんなの普段使いするような物じゃないよ。
「ハァ…エロい…」
眉頭に力がこもる。
「そうじゃなくて…!やっぱりこれは使えないよ…。家でも無理」

永那ちゃんからのブーイングを浴びながら、ストラップレスブラをつける。
…うん、やっぱりこれが一番マシ。
それでもパッドが入っていない、ただの布に変わりなくて、心許ない。
キャミソールを着て、服を着る。
隠すように、他のビキニを衣装ケースにしまいこんだ。

2人でベッドに座る。
彼女に後ろから抱きしめられて、幸せな気持ちになる。
ローテーブルの棚に置いてあったリップを取って、彼女に塗ってあげる。
そのまま彼女の手が私の顎に伸びて添えられる。
口付けを交わして、彼女の唇のリップが、私にも塗られる。
「永那ちゃん、寝られなかったね…」
もう3時半で、みんなが帰ってくるまで30分程しかない。
「…いいよ。私、今日めっちゃ幸せだった」
「それなら…よかった。明日は寝てね?」
「えー…夏休み最終日だよ?始業式の後、帰って寝るからいいよ」
そう言われてしまうと、強く言えない。
本当に、彼女の睡眠不足が心配だ。

「そういえば、気になってたんだけど…」
「なに?」
「永那ちゃんってお姉さんいるんだよね?」
「うん」
「お姉さんは、どうしてるの?」
「働いてる。…一緒には住んでない」
「そっか」
「なんで?」
「…前に、永那ちゃんが熱出したとき、少し気になったの。永那ちゃんが…心配で。お母さん、永那ちゃんの看病できるのかな?とか…。ごめんね、余計なお世話だよね」
彼女がギュッと抱きしめてくれる。
首筋に顔をうずめて首を振るから、肌と肌が擦れる。
「心配してくれてありがとう。…でも、それは大丈夫だよ。お母さん、私がいないとパニック起こすことが多いけど、私がいる分には、ほとんど問題ないから」
「…そっか。なら、よかった」

4時過ぎに、誉、佐藤さん、優里ちゃんが遊び終えて家に来た。
私達は玄関まで行って、出迎えた。
「パンパカパーン!」
優里ちゃんが手をあげる。
「発表です!」
私と永那ちゃんが首を傾げる。
「今日、私達はお泊まりすることになりました!」
目を白黒させる。
「穂ちゃん、いいかな?…誉はいいって言ってくれたんだけど。あ、あと一応お母さんにも連絡してもらって、OKもらってます!」
優里ちゃんが上目遣いに言う。
「ほら、明日が夏休み最終日だし?…お祭りの日、千陽が泊まったんでしょ!?ずるいー!私もそういうことしたいー!」
永那ちゃんを見ると、目の下がピクピクと痙攣していた。
「もう家寄って、明日の部活道具とかも持ってきちゃったの」
“えへ”と舌を出す。
これは…“いいかな?”と聞いておきながら、どう見てももう断れない状況。
もう一度チラリと永那ちゃんを見るけど、眉間にシワを寄せていた。
佐藤さんは薄っすら笑っている。
…あぁ、なんでこうなるの。

「でも、どこで寝るの?…予備の布団なんてないよ?」
「姉ちゃんが俺と寝ればいいんじゃない?」
もう、予備の布団、買っておこう。
永那ちゃんは落ち込んで、蹲ってしまった。
「…まあ、それはいいけど」
私はしゃがんで、彼女の頭を撫でる。
「永那ちゃん」
また泣いちゃった…。
問題が山積みだ。
「永那、門限なんて破って泊まっちゃえばいいじゃん」
誉が言う。
…門限、か。
そんなもの、存在しない。
でも、みんなは知らない。
「そういうわけにもいかないでしょ。家それぞれに事情があるんだから」
私が言うと、誉は「ふーん」と首を傾げる。
「とりあえず私、永那ちゃんを駅まで送ってくるね」
なんとか永那ちゃんの腕を引っ張って立たせる。

「また永那、泣いてる」
誉が彼女の顔を覗き込む。
優里ちゃんは申し訳なさそうに笑って、佐藤さんは靴を脱いで当たり前のように家にあがった。

エレベーターで、彼女に口付けする。
「私、いつまで我慢しなきゃいけないんだろう…」
「お姉さんに頼れないの?」
「…無理だよ」
「連絡してみた?」
「前、無理だった」
「そっか」
繋いでいる手を強く握る。
「穂」
ポタポタと、静かに落ちる涙。
「千陽と、エッチしちゃだめだよ?…穂のこと、さわらせちゃ…ダメだよ?」
「うん」
彼女の涙を指で拭う。
「穂」
ギュッと抱きしめられる。

駅まで無言で歩いた。
彼女は帰りたくなさそうに、いつまでも手を離さなかった。
「家まで行こうか?」と聞いて、ようやく彼女はトボトボと帰って行った。
最後まで背中を見送ったけど、初めて彼女が一度も振り向かなかった。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...