いたずらはため息と共に

常森 楽

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3.成長

176.まだまだ終わらなかった夏

私は諦めて、彼女の指示でサスペンダータイプのものを身に着けた。
永那ちゃんに見つめられながら…。
着終えると、永那ちゃんに抱きしめられた。
「エロ…可愛い」
お尻を撫でられて、鳥肌が立つ。
「ねえ、永那ちゃん?」
「なに?」
「これ…少ししゃがんだら紐が浮いて、見えちゃうんだけど…」
永那ちゃんが離れる。
「やってみて?」
そう言われて火照る体を、知らないフリする。
私は前かがみになったり、しゃがんだり、いろんな姿勢をしてみる。
やっぱり胸の部分が浮いてしまって、すぐに布(紐?)が乳首から外れてしまう。
…こんなの普段使いするような物じゃないよ。
「ハァ…エロい…」
眉頭に力がこもる。
「そうじゃなくて…!やっぱりこれは使えないよ…。家でも無理」

永那ちゃんからのブーイングを浴びながら、ストラップレスブラをつける。
…うん、やっぱりこれが一番マシ。
それでもパッドが入っていない、ただの布に変わりなくて、心許ない。
キャミソールを着て、服を着る。
隠すように、他のビキニを衣装ケースにしまいこんだ。

2人でベッドに座る。
彼女に後ろから抱きしめられて、幸せな気持ちになる。
ローテーブルの棚に置いてあったリップを取って、彼女に塗ってあげる。
そのまま彼女の手が私の顎に伸びて添えられる。
口付けを交わして、彼女の唇のリップが、私にも塗られる。
「永那ちゃん、寝られなかったね…」
もう3時半で、みんなが帰ってくるまで30分程しかない。
「…いいよ。私、今日めっちゃ幸せだった」
「それなら…よかった。明日は寝てね?」
「えー…夏休み最終日だよ?始業式の後、帰って寝るからいいよ」
そう言われてしまうと、強く言えない。
本当に、彼女の睡眠不足が心配だ。

「そういえば、気になってたんだけど…」
「なに?」
「永那ちゃんってお姉さんいるんだよね?」
「うん」
「お姉さんは、どうしてるの?」
「働いてる。…一緒には住んでない」
「そっか」
「なんで?」
「…前に、永那ちゃんが熱出したとき、少し気になったの。永那ちゃんが…心配で。お母さん、永那ちゃんの看病できるのかな?とか…。ごめんね、余計なお世話だよね」
彼女がギュッと抱きしめてくれる。
首筋に顔をうずめて首を振るから、肌と肌が擦れる。
「心配してくれてありがとう。…でも、それは大丈夫だよ。お母さん、私がいないとパニック起こすことが多いけど、私がいる分には、ほとんど問題ないから」
「…そっか。なら、よかった」

4時過ぎに、誉、佐藤さん、優里ちゃんが遊び終えて家に来た。
私達は玄関まで行って、出迎えた。
「パンパカパーン!」
優里ちゃんが手をあげる。
「発表です!」
私と永那ちゃんが首を傾げる。
「今日、私達はお泊まりすることになりました!」
目を白黒させる。
「穂ちゃん、いいかな?…誉はいいって言ってくれたんだけど。あ、あと一応お母さんにも連絡してもらって、OKもらってます!」
優里ちゃんが上目遣いに言う。
「ほら、明日が夏休み最終日だし?…お祭りの日、千陽が泊まったんでしょ!?ずるいー!私もそういうことしたいー!」
永那ちゃんを見ると、目の下がピクピクと痙攣していた。
「もう家寄って、明日の部活道具とかも持ってきちゃったの」
“えへ”と舌を出す。
これは…“いいかな?”と聞いておきながら、どう見てももう断れない状況。
もう一度チラリと永那ちゃんを見るけど、眉間にシワを寄せていた。
佐藤さんは薄っすら笑っている。
…あぁ、なんでこうなるの。

「でも、どこで寝るの?…予備の布団なんてないよ?」
「姉ちゃんが俺と寝ればいいんじゃない?」
もう、予備の布団、買っておこう。
永那ちゃんは落ち込んで、蹲ってしまった。
「…まあ、それはいいけど」
私はしゃがんで、彼女の頭を撫でる。
「永那ちゃん」
また泣いちゃった…。
問題が山積みだ。
「永那、門限なんて破って泊まっちゃえばいいじゃん」
誉が言う。
…門限、か。
そんなもの、存在しない。
でも、みんなは知らない。
「そういうわけにもいかないでしょ。家それぞれに事情があるんだから」
私が言うと、誉は「ふーん」と首を傾げる。
「とりあえず私、永那ちゃんを駅まで送ってくるね」
なんとか永那ちゃんの腕を引っ張って立たせる。

「また永那、泣いてる」
誉が彼女の顔を覗き込む。
優里ちゃんは申し訳なさそうに笑って、佐藤さんは靴を脱いで当たり前のように家にあがった。

エレベーターで、彼女に口付けする。
「私、いつまで我慢しなきゃいけないんだろう…」
「お姉さんに頼れないの?」
「…無理だよ」
「連絡してみた?」
「前、無理だった」
「そっか」
繋いでいる手を強く握る。
「穂」
ポタポタと、静かに落ちる涙。
「千陽と、エッチしちゃだめだよ?…穂のこと、さわらせちゃ…ダメだよ?」
「うん」
彼女の涙を指で拭う。
「穂」
ギュッと抱きしめられる。

駅まで無言で歩いた。
彼女は帰りたくなさそうに、いつまでも手を離さなかった。
「家まで行こうか?」と聞いて、ようやく彼女はトボトボと帰って行った。
最後まで背中を見送ったけど、初めて彼女が一度も振り向かなかった。
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