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3.成長
178.まだまだ終わらなかった夏
「まあ…他にもいろいろあったんだけど、そのとき、永那が助けてくれたの。それから、イジメがなくなった。奇跡だと思った。永那が、王子様に見えた」
“あいつは…ひとりぼっちだから。みんなから顔でしか見てもらえなくて…親からも、顔でしか見られなくて、道具みたいに扱われて…。心を許せる人が、いないんだよ”
永那ちゃんの言っていた意味が、ようやくわかる。
もちろん、全部を理解できたわけではないけれど。
フゥーッと息を吐く。
「…でも永那は、あたしに、大事なことは、何も教えてくれない。永那は、あたしにとっては王子様だけど、永那にとってあたしは、ただの友達。ちょっとめんどくさい、友達」
胸が、締め付けられるほどに痛い。
「穂とのことも、教えてくれなかった」
繋ぐ手が、ギュッと強くなる。
「あたし…迷惑だよね」
悲しげな瞳を向けられる。
「わかってる。2人にとって、邪魔な存在だって」
迷惑だと思っていても、私達から離れられない彼女の苦しみを想像する。
居場所が他にどこにもない、彼女の苦しみを。
「…そんなことない。私も、永那ちゃんも、千陽が大事だよ。優里ちゃんだって、誉だって、千陽が好きだよ?」
彼女は少し目を見開いて、すぐに俯く。
「ありがと。…あたし、穂があたしのことを好きって思ってくれてるって知って、嬉しかった」
彼女が歩き出すから、私もつられて歩き出す。
「きっと、嫌な気持ちに、たくさんさせたはずなのに…」
佐藤さん…千陽は、本当に、すごく、優しい子なのだと、わかる。
それを、永那ちゃん以外、誰も気づいてあげていない。
寂しいに決まってる。
そんなの…寂しいに決まってる。
優里ちゃんは、気づいているのかいないのか、わからないけれど。
レジに行って、お会計をする。
千陽が財布を出して、カードで払う。
…カード!?
「ち、千陽…カード持ってるの?」
「うん、パパがくれた」
「へえ…」
私が荷物を持って、スーパーを出る。
「千陽」
彼女が私を見る。
「千陽が寂しいって思わなくなるまで、私は、離れないからね」
彼女のただでさえ大きな瞳が、さらに大きくなる。
「寂しいって思わなくなっても、友達でいるつもりだけど…」
「なんだ、告白されたのかと思った」
ぷいとそっぽを向く。
だから、彼女の顎をこちらに向ける。
唇を重ねる。
「いいよ、しばらくは…告白と思ってくれても」
彼女は頬をピンク色に染めて、俯く。
「…永那が、怒るよ?」
「大丈夫。私は永那ちゃんのだから」
「どういう意味?」
彼女が眉間にシワを寄せる。
「私は永那ちゃんの。千陽は私の。結果的に、私も千陽も、永那ちゃんの」
「意味わかんない」
「私も」
私が笑うと、千陽も笑う。
家に帰って、唐揚げを作る。
千陽が珍しく横に立って、私が料理するのを眺めていた。
「千陽、味噌溶いて?」
千陽が眉間にシワを寄せる。
「“佐藤さん”でしょ…」
小声で言われる。
…それ、まだ続けるんだ。
私は苦笑する。
「じゃあ佐藤さん、味噌を溶いてください」
「どうすれば、いいの?」
「スプーンに味噌を取って、おたまの中で溶くの」
千陽が恐る恐るやってる姿が可愛くて、笑ってしまう。
彼女は拗ねていたけど、どことなく、嬉しそうでもあった。
ご飯を食べ終えて、千陽、優里ちゃん、誉、私の順でお風呂に入った。
誉がお風呂に入っている間にお母さんが帰ってきて、なぜか楽しそうにしていた。
ビールを飲んで、唐揚げをつまみにする。
お母さんの絡みが始まったから、私達は私の部屋に避難した。
優里ちゃんが私のベッドに寝転んで、千陽が座った。
私もベッドに座って、誉は床に座った。
優里ちゃんが、お菓子パーティをしつつ、もう一回人生ゲームをしたいと言うから、お菓子を食べながら人生ゲームをする。
「そういえば優里ちゃん、告白された件はどうなったの?」
「あー、断った!…私と一緒にいて、居心地が良かったんだって。楽というか」
「そうなんだ」
「私は…もうちょっとロマンチックな理由が良かったな~。穂ちゃんが前に、私と一緒にいて居心地がいいって言ってくれたじゃん?そう思う人はきっと他にもいて、いつか告白されるかもって。…穂ちゃんの予想通りだったんだけど、やっぱり私は好きとは思えなくて」
「優里ちゃんがどう思うかが一番大事なんだし、好きじゃないと思ったなら、良いと思うよ」
「ハァ…やっぱり穂ちゃんがいてくれて良かったよ…。千陽も誉も“ふーん”で終わりだったからね!?」
想像できて、苦笑する。
「関係も、悪くならなかった」
へへへと嬉しそうに笑う優里ちゃん。
「よかったね」
11時過ぎに誉が船を漕ぎ始めたから、私達は寝ることにした。
誉と寝るのなんて久しぶりで、2人で並んで寝転ぶと、けっこう狭く感じた。
誉はすぐに寝息を立て始めて、寝相の悪さを発揮する。
頬を肘でグリグリされて、私は誉のベッドで寝ることを諦める。
リビングに出て、デスクライトをつけた。
お茶をコップに注いで、椅子に座る。
机に顔を突っ伏して、夏休みを振り返る。
人生で一番充実した夏休みだった。
心も体もジェットコースターのように忙しくて(ジェットコースターには乗ったことがないけど)、本当に酔いそうだった。
…そういえば、1ヶ月記念日にはプレゼントを贈りあったけど、2ヶ月記念日は何もなくてよかったのかな?
なんて、いまさらなことを考える。
まあ、永那ちゃんが熱出したり、喧嘩もしたり、千陽のこともあったりで、全然それどころじゃなかったというのが正直なところだ。
永那ちゃんも、あの公園のとき以来何も言わないから、同じ気持ちなのかもしれない。
…でも、念のため、今度ちゃんと聞いとこう。
“あいつは…ひとりぼっちだから。みんなから顔でしか見てもらえなくて…親からも、顔でしか見られなくて、道具みたいに扱われて…。心を許せる人が、いないんだよ”
永那ちゃんの言っていた意味が、ようやくわかる。
もちろん、全部を理解できたわけではないけれど。
フゥーッと息を吐く。
「…でも永那は、あたしに、大事なことは、何も教えてくれない。永那は、あたしにとっては王子様だけど、永那にとってあたしは、ただの友達。ちょっとめんどくさい、友達」
胸が、締め付けられるほどに痛い。
「穂とのことも、教えてくれなかった」
繋ぐ手が、ギュッと強くなる。
「あたし…迷惑だよね」
悲しげな瞳を向けられる。
「わかってる。2人にとって、邪魔な存在だって」
迷惑だと思っていても、私達から離れられない彼女の苦しみを想像する。
居場所が他にどこにもない、彼女の苦しみを。
「…そんなことない。私も、永那ちゃんも、千陽が大事だよ。優里ちゃんだって、誉だって、千陽が好きだよ?」
彼女は少し目を見開いて、すぐに俯く。
「ありがと。…あたし、穂があたしのことを好きって思ってくれてるって知って、嬉しかった」
彼女が歩き出すから、私もつられて歩き出す。
「きっと、嫌な気持ちに、たくさんさせたはずなのに…」
佐藤さん…千陽は、本当に、すごく、優しい子なのだと、わかる。
それを、永那ちゃん以外、誰も気づいてあげていない。
寂しいに決まってる。
そんなの…寂しいに決まってる。
優里ちゃんは、気づいているのかいないのか、わからないけれど。
レジに行って、お会計をする。
千陽が財布を出して、カードで払う。
…カード!?
「ち、千陽…カード持ってるの?」
「うん、パパがくれた」
「へえ…」
私が荷物を持って、スーパーを出る。
「千陽」
彼女が私を見る。
「千陽が寂しいって思わなくなるまで、私は、離れないからね」
彼女のただでさえ大きな瞳が、さらに大きくなる。
「寂しいって思わなくなっても、友達でいるつもりだけど…」
「なんだ、告白されたのかと思った」
ぷいとそっぽを向く。
だから、彼女の顎をこちらに向ける。
唇を重ねる。
「いいよ、しばらくは…告白と思ってくれても」
彼女は頬をピンク色に染めて、俯く。
「…永那が、怒るよ?」
「大丈夫。私は永那ちゃんのだから」
「どういう意味?」
彼女が眉間にシワを寄せる。
「私は永那ちゃんの。千陽は私の。結果的に、私も千陽も、永那ちゃんの」
「意味わかんない」
「私も」
私が笑うと、千陽も笑う。
家に帰って、唐揚げを作る。
千陽が珍しく横に立って、私が料理するのを眺めていた。
「千陽、味噌溶いて?」
千陽が眉間にシワを寄せる。
「“佐藤さん”でしょ…」
小声で言われる。
…それ、まだ続けるんだ。
私は苦笑する。
「じゃあ佐藤さん、味噌を溶いてください」
「どうすれば、いいの?」
「スプーンに味噌を取って、おたまの中で溶くの」
千陽が恐る恐るやってる姿が可愛くて、笑ってしまう。
彼女は拗ねていたけど、どことなく、嬉しそうでもあった。
ご飯を食べ終えて、千陽、優里ちゃん、誉、私の順でお風呂に入った。
誉がお風呂に入っている間にお母さんが帰ってきて、なぜか楽しそうにしていた。
ビールを飲んで、唐揚げをつまみにする。
お母さんの絡みが始まったから、私達は私の部屋に避難した。
優里ちゃんが私のベッドに寝転んで、千陽が座った。
私もベッドに座って、誉は床に座った。
優里ちゃんが、お菓子パーティをしつつ、もう一回人生ゲームをしたいと言うから、お菓子を食べながら人生ゲームをする。
「そういえば優里ちゃん、告白された件はどうなったの?」
「あー、断った!…私と一緒にいて、居心地が良かったんだって。楽というか」
「そうなんだ」
「私は…もうちょっとロマンチックな理由が良かったな~。穂ちゃんが前に、私と一緒にいて居心地がいいって言ってくれたじゃん?そう思う人はきっと他にもいて、いつか告白されるかもって。…穂ちゃんの予想通りだったんだけど、やっぱり私は好きとは思えなくて」
「優里ちゃんがどう思うかが一番大事なんだし、好きじゃないと思ったなら、良いと思うよ」
「ハァ…やっぱり穂ちゃんがいてくれて良かったよ…。千陽も誉も“ふーん”で終わりだったからね!?」
想像できて、苦笑する。
「関係も、悪くならなかった」
へへへと嬉しそうに笑う優里ちゃん。
「よかったね」
11時過ぎに誉が船を漕ぎ始めたから、私達は寝ることにした。
誉と寝るのなんて久しぶりで、2人で並んで寝転ぶと、けっこう狭く感じた。
誉はすぐに寝息を立て始めて、寝相の悪さを発揮する。
頬を肘でグリグリされて、私は誉のベッドで寝ることを諦める。
リビングに出て、デスクライトをつけた。
お茶をコップに注いで、椅子に座る。
机に顔を突っ伏して、夏休みを振り返る。
人生で一番充実した夏休みだった。
心も体もジェットコースターのように忙しくて(ジェットコースターには乗ったことがないけど)、本当に酔いそうだった。
…そういえば、1ヶ月記念日にはプレゼントを贈りあったけど、2ヶ月記念日は何もなくてよかったのかな?
なんて、いまさらなことを考える。
まあ、永那ちゃんが熱出したり、喧嘩もしたり、千陽のこともあったりで、全然それどころじゃなかったというのが正直なところだ。
永那ちゃんも、あの公園のとき以来何も言わないから、同じ気持ちなのかもしれない。
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