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232.先輩
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「永那…私…私、頑張ってる永那が好き」
「お姉ちゃんが好きだったんでしょ?」
「瑠那先輩は、憧れだった。でも、永那は…私が呼んだらいつも来てくれて、そばにいてくれて…嬉しかった。エッチも、だんだん上手になって、私、それも嬉しくて…私がシてあげると、気持ちよさそうにする姿も…全部、好き」
「キモいよ」
彼女の目が大きく見開かれる。
ポタポタと涙が流れ落ちて、呼吸が荒くなる。
私はギリッと奥歯を噛みしめた。
「もう、金はいらない。…お前とも関わらない。もう、連絡してこないで」
そう言って、走って学校に戻った。
もういないかと思ったけど、千陽はまだ校舎裏にいた。
千陽に話すと、気が紛れた。
でも、肝心なことは何も、話せなかった。
それから、いろんな人に告白されるたび、ストレス発散のために相手に迫った。
いろんな人を傷つけながら、自分の汚さを消すように、どんどん汚れていった。
穂は、綺麗だった。
清廉潔白。
彼女に触れたくて、でも、汚したくなかった。
なのに、暴走して、初めてのキスが乱暴になってしまった。
後悔した。
今でも、後悔してる。
でも、彼女は“エッチなことも…こんなに良いものだなんて、一生知れなかったかも”なんて言って、私のことを、全部、受け止めてくれる。
先輩との過去も、他の人とヤりまくっていたことも、彼女は…。
だから、私も、彼女のことを受け止めたい。
先輩とのことが、お姉ちゃんにバレた。
お姉ちゃんは泣きながら「何やってるの」と頭を抱えた。
先輩は最初、お小遣いと貯金を私に渡してくれていたらしい。
でも、そのうち底を尽きて、親のお金を盗むようになった。
高校に入ってすぐだったこともあって、イジメられているのではないかと、親が高校に連絡したらしい。
お姉ちゃんが心配して先輩に声をかけたら、私とのことを打ち明けられたと、言っていた。
「心音には、私がお金返すから」
「なんで!?」
キッと睨まれて、何も言えなくなる。
「二度とこんなことしないで」
お母さんが死にかけたのは、その直後だった。
私のせいだったのか、関係ないのか、わからない。
とにかく、薬を大量に服用して、風呂場で手首を切った。
なかなかお風呂から出てこないから見に行ったら、血の海が広がっていた。
声が出なかった。
尻もちをついて、壁に頭をぶつけた。
お姉ちゃんがその音に気づいて、こっちに来た。
「な、なに…」
お姉ちゃんは私の足に躓きながら「お母さん!お母さん!」と叫んだ。
「なにやってるの!早く!救急車!」
そう言われて、四つん這いになりながら、なんとか走ってスマホを手に取った。
あれ…?何番だっけ?
手が震える。
「早く!」
「な、何番だっけ?」
「は!?119でしょ!」
その後救急車が来て、じいちゃんや、まだ施設に入る前の曾祖母が来た。
私はただお母さんのそばにいて、3人は医者や他の大人達といろいろ話していた。
お母さんが入院することになって、私達はじいちゃんの家に預けられることになったはずなんだけど…直前になってお姉ちゃんが拒否した。
「私達は、私達で生活できるので、お金の援助だけ…お願いします」
そう、頭を下げていた。
そのまま、お母さんが退院するまでの間、お姉ちゃんと2人の生活が3ヶ月近く続いた。
「私、高校卒業したら働くから。あんたもちゃんと高校行きなよ」
「わかった」
「…せっかく、成績良いんだから」
お姉ちゃんから褒められたのは、久々だった。
中2が終わって、中3になる前の春休み。
お姉ちゃんは高校を卒業して、宣言通り働き始めた。
まさか、家を出て行くとは思っていなかったけど。
お母さんが暴れるのは、慣れた。
母の日にお姉ちゃんがお母さんにプレゼントした服をビリビリに破って、お母さんは泣いた。
数日後に料理をしていたお母さんが、包丁を胸に突き刺そうとしているのを見て、慌てて止めた。
「殺してえ!殺してよー!」
お母さんの叫びが、胸をズキズキと刺す。
最初は病院に行っていたけど「先生、嫌い」と言って、行かなくなった。
無理に行かせようとすれば暴れてしまうから、私も何も言わなくなった。
刃物は全部棚に入れて、鍵をつけた。
鍵をつけられるところには、全部つけた。
私が調理実習で習ったカレーを作ってあげると、お母さんが喜んだ。
それから、私がご飯を作るようになった。
「永那~永那~」とお母さんが私に甘えるのが普通になった。
先輩のお金でプレゼントを買えていたときは、お母さんも落ち着いていたように思えたから、そうすればいいのだと思った。
お母さんの彼氏みたいに振る舞う。
「可愛いね」
そう言うと、お母さんは喜んだ。
お母さんの前でスマホを見ていると「彼氏?嫌だ」と言われる。
「ただニュース見てただけだよ」と言っても信じてもらえないから、お母さんの前ではスマホをさわらなくなった。
遊んで、少し帰りが遅くなると、お母さんは食器を割って、その破片で手首を切った。
帰ると、いつも泣きながら、玄関でしゃがみ込んでいた。
だから、食器は全部プラスチックにした。
「お姉ちゃんが好きだったんでしょ?」
「瑠那先輩は、憧れだった。でも、永那は…私が呼んだらいつも来てくれて、そばにいてくれて…嬉しかった。エッチも、だんだん上手になって、私、それも嬉しくて…私がシてあげると、気持ちよさそうにする姿も…全部、好き」
「キモいよ」
彼女の目が大きく見開かれる。
ポタポタと涙が流れ落ちて、呼吸が荒くなる。
私はギリッと奥歯を噛みしめた。
「もう、金はいらない。…お前とも関わらない。もう、連絡してこないで」
そう言って、走って学校に戻った。
もういないかと思ったけど、千陽はまだ校舎裏にいた。
千陽に話すと、気が紛れた。
でも、肝心なことは何も、話せなかった。
それから、いろんな人に告白されるたび、ストレス発散のために相手に迫った。
いろんな人を傷つけながら、自分の汚さを消すように、どんどん汚れていった。
穂は、綺麗だった。
清廉潔白。
彼女に触れたくて、でも、汚したくなかった。
なのに、暴走して、初めてのキスが乱暴になってしまった。
後悔した。
今でも、後悔してる。
でも、彼女は“エッチなことも…こんなに良いものだなんて、一生知れなかったかも”なんて言って、私のことを、全部、受け止めてくれる。
先輩との過去も、他の人とヤりまくっていたことも、彼女は…。
だから、私も、彼女のことを受け止めたい。
先輩とのことが、お姉ちゃんにバレた。
お姉ちゃんは泣きながら「何やってるの」と頭を抱えた。
先輩は最初、お小遣いと貯金を私に渡してくれていたらしい。
でも、そのうち底を尽きて、親のお金を盗むようになった。
高校に入ってすぐだったこともあって、イジメられているのではないかと、親が高校に連絡したらしい。
お姉ちゃんが心配して先輩に声をかけたら、私とのことを打ち明けられたと、言っていた。
「心音には、私がお金返すから」
「なんで!?」
キッと睨まれて、何も言えなくなる。
「二度とこんなことしないで」
お母さんが死にかけたのは、その直後だった。
私のせいだったのか、関係ないのか、わからない。
とにかく、薬を大量に服用して、風呂場で手首を切った。
なかなかお風呂から出てこないから見に行ったら、血の海が広がっていた。
声が出なかった。
尻もちをついて、壁に頭をぶつけた。
お姉ちゃんがその音に気づいて、こっちに来た。
「な、なに…」
お姉ちゃんは私の足に躓きながら「お母さん!お母さん!」と叫んだ。
「なにやってるの!早く!救急車!」
そう言われて、四つん這いになりながら、なんとか走ってスマホを手に取った。
あれ…?何番だっけ?
手が震える。
「早く!」
「な、何番だっけ?」
「は!?119でしょ!」
その後救急車が来て、じいちゃんや、まだ施設に入る前の曾祖母が来た。
私はただお母さんのそばにいて、3人は医者や他の大人達といろいろ話していた。
お母さんが入院することになって、私達はじいちゃんの家に預けられることになったはずなんだけど…直前になってお姉ちゃんが拒否した。
「私達は、私達で生活できるので、お金の援助だけ…お願いします」
そう、頭を下げていた。
そのまま、お母さんが退院するまでの間、お姉ちゃんと2人の生活が3ヶ月近く続いた。
「私、高校卒業したら働くから。あんたもちゃんと高校行きなよ」
「わかった」
「…せっかく、成績良いんだから」
お姉ちゃんから褒められたのは、久々だった。
中2が終わって、中3になる前の春休み。
お姉ちゃんは高校を卒業して、宣言通り働き始めた。
まさか、家を出て行くとは思っていなかったけど。
お母さんが暴れるのは、慣れた。
母の日にお姉ちゃんがお母さんにプレゼントした服をビリビリに破って、お母さんは泣いた。
数日後に料理をしていたお母さんが、包丁を胸に突き刺そうとしているのを見て、慌てて止めた。
「殺してえ!殺してよー!」
お母さんの叫びが、胸をズキズキと刺す。
最初は病院に行っていたけど「先生、嫌い」と言って、行かなくなった。
無理に行かせようとすれば暴れてしまうから、私も何も言わなくなった。
刃物は全部棚に入れて、鍵をつけた。
鍵をつけられるところには、全部つけた。
私が調理実習で習ったカレーを作ってあげると、お母さんが喜んだ。
それから、私がご飯を作るようになった。
「永那~永那~」とお母さんが私に甘えるのが普通になった。
先輩のお金でプレゼントを買えていたときは、お母さんも落ち着いていたように思えたから、そうすればいいのだと思った。
お母さんの彼氏みたいに振る舞う。
「可愛いね」
そう言うと、お母さんは喜んだ。
お母さんの前でスマホを見ていると「彼氏?嫌だ」と言われる。
「ただニュース見てただけだよ」と言っても信じてもらえないから、お母さんの前ではスマホをさわらなくなった。
遊んで、少し帰りが遅くなると、お母さんは食器を割って、その破片で手首を切った。
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だから、食器は全部プラスチックにした。
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