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6.さんにん
363.まだ?
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「はい、お年玉」
お母さんがわたしてくれる。
「…そ、そんな…悪いですよ。ただでさえお世話になってるのに」
なんとなく、敬語になってしまう。
「いいから!私は、永那ちゃんはもう、家族だと思ってるよ」
真っ直ぐ見つめられる。
穂が大人になったら、こんなふうになるのかな?なんて、一瞬思った。
「受け取って?」
何故か牛丼の写真がでかでかとプリントされているポチ袋だった。
ありがたく、貰う。
「ありがとうございます」
頭を撫でられて、奥歯を強く噛んで、泣きそうになるのを堪える。
私には服のレパートリーがないから、クリスマスにお母さんからプレゼントされた服を着る。
誉と目的地は一緒だから、必然的に3人で出かけているみたいになった。
道中、ポチ袋の中身を見た。
…3万円!?
ドクドクと鼓動が速くなる。
「す、穂…」
「ん?」
「これ…なんか、申し訳ない」
穂が私の袋の中を見て、フフッと笑う。
「お母さん、渡したかったんだよ。受け取ってあげて?」
生活費も払うと言ったのに、受け取ってもらえなかった。
私は…何も返せていない。
「大掃除、手伝ってくれたし」
穂の瞳に、私が映る。
「お花の水やりもしてくれる。誉と遊んでくれるし、ご飯も一緒に作ってくれる。お風呂掃除だって、お皿洗いだって、毎日してくれる。トイレ掃除も、週に1回、してくれる。ベッドのシーツ交換だって手伝ってくれる」
「俺、永那がくれた秘密のクリスマスプレゼント、めっちゃ嬉しかったよ」
…めっちゃ嬉しかったんだ。
2人目の彼女が出来たとか言うから、コンドームをプレゼントしといた。
ちゃんと説明も添えて。
“小学生はまだ早すぎる!ヤるのは中学生になってから!”と。
穂に言ったら絶対引かれるから、2人だけの秘密ってことにしておいた。
自分用にも欲しかったけど、隠す場所がないから買うのは諦めた。
「秘密のクリスマスプレゼント?」
穂が首を傾げる。
「俺と永那だけの秘密」
誉が笑う。
穂には睨まれる。
「ハァ」と穂がため息をついて、困ったように笑う。
「お母さん、永那ちゃんから貰った化粧水と乳液、すごく喜んでたよ?いつも薬局で安いやつ買ってるから、“こんなに良いものを”って。…だから、“申し訳ない”なんて、思わないで」
…そんなの、大したことじゃない。
生活費のほうが高いに決まってる。
「永那ちゃん」
見つめられて、私は、ただ頷く。
受け取ることもまた、大事なことだ。
相手が“渡したい”と思ってくれているなら、喜んで受け取ったほうがいい。
“申し訳ない”と思って受け取るよりも、喜んで受け取ったほうが、相手も喜んでくれる。
頭ではわかってる。
フゥッと息を吐く。
「わかった」
そう言うと、いつもの穂の笑顔を見せてくれた。
神社の随分手前から、既に大行列。
「うわー、ヤバイね」
「誉、友達に会えそう?」
穂が心配そうに言う。
「連絡してみる」
はぐれないように穂と手を繋ぐ。
私もスマホを出して、グループメッセージに『ついた。行列ヤバイね』と送っておいた。
『もうすぐつく』
すぐに千陽から返事がきた。
『私も!』
優里から返事がくると同時に「おーい!」と後ろから声が聞こえた。
振り向くと、優里。
それなら返事しなくても良かったんじゃない?
「優里ちゃん。あけましておめでとうございます」
「おめでとー!…あ、誉も!あけましておめでとう!」
「おめでとう!」
穂の丁寧さは、やっぱり素敵だな。
「千陽、すぐにつくみたいだし、もう並んどこっか!」
優里が言って、私達は列に並ぶ。
誉は友達と連絡が取れたらしいけど、千陽を待ってから行くみたいだった。
…友達もいるんだろうけど、彼女もいるんだろうな。
『先に並んでるよ!』
優里がメッセージを送って『了解』と返事がくる。
少しして、千陽が何も言わずに合流した。
“気づいたらそこにいた”みたいな感じで、本気でびっくりするからやめてほしい。
誉が千陽に挨拶して、走って去っていく。
「永那…服、似合ってる」
…なんか、素直な千陽だ。
新年だから?
「サンキュ」
千陽は優里の隣に並んで、私達の前に立つ。
優里は午後に親戚の家を回るらしい。
「お年玉祭りじゃー!」とバカみたいなことを言っている。
千陽は、明日、父方の祖父母に会いに行くと言っていた。
「めんどくさい…」と心底面倒そうに言う。
前に千陽のお年玉の総額を聞いたら10万を超えていて引いたな。
…私は、中学生のときにお姉ちゃんから貰った5千円が最高額だった。
図らずも、一気に更新してしまった。
…3万円。
1日でこんな大金を貰えるなんて、信じられない。
頭がおかしくなりそうだ。
神社の敷地内に入ると、屋台がたくさん並んでいた。
行列に列びながら、みんなで“あれが食べたい”とか“これが食べたい”とか話す。
(私の)お母さんが人混みがダメだから、1月1日に神社に来たことなんてなかった。
去年までは、3日の夜に2人で、近所の小さな神社に行った。
おせちなんて食べなくて、せいぜいお餅を食べるくらいだった。
当然神社に屋台もなくて、こんなに賑わっているのを見ると、ちょっとワクワクする。
お母さんがわたしてくれる。
「…そ、そんな…悪いですよ。ただでさえお世話になってるのに」
なんとなく、敬語になってしまう。
「いいから!私は、永那ちゃんはもう、家族だと思ってるよ」
真っ直ぐ見つめられる。
穂が大人になったら、こんなふうになるのかな?なんて、一瞬思った。
「受け取って?」
何故か牛丼の写真がでかでかとプリントされているポチ袋だった。
ありがたく、貰う。
「ありがとうございます」
頭を撫でられて、奥歯を強く噛んで、泣きそうになるのを堪える。
私には服のレパートリーがないから、クリスマスにお母さんからプレゼントされた服を着る。
誉と目的地は一緒だから、必然的に3人で出かけているみたいになった。
道中、ポチ袋の中身を見た。
…3万円!?
ドクドクと鼓動が速くなる。
「す、穂…」
「ん?」
「これ…なんか、申し訳ない」
穂が私の袋の中を見て、フフッと笑う。
「お母さん、渡したかったんだよ。受け取ってあげて?」
生活費も払うと言ったのに、受け取ってもらえなかった。
私は…何も返せていない。
「大掃除、手伝ってくれたし」
穂の瞳に、私が映る。
「お花の水やりもしてくれる。誉と遊んでくれるし、ご飯も一緒に作ってくれる。お風呂掃除だって、お皿洗いだって、毎日してくれる。トイレ掃除も、週に1回、してくれる。ベッドのシーツ交換だって手伝ってくれる」
「俺、永那がくれた秘密のクリスマスプレゼント、めっちゃ嬉しかったよ」
…めっちゃ嬉しかったんだ。
2人目の彼女が出来たとか言うから、コンドームをプレゼントしといた。
ちゃんと説明も添えて。
“小学生はまだ早すぎる!ヤるのは中学生になってから!”と。
穂に言ったら絶対引かれるから、2人だけの秘密ってことにしておいた。
自分用にも欲しかったけど、隠す場所がないから買うのは諦めた。
「秘密のクリスマスプレゼント?」
穂が首を傾げる。
「俺と永那だけの秘密」
誉が笑う。
穂には睨まれる。
「ハァ」と穂がため息をついて、困ったように笑う。
「お母さん、永那ちゃんから貰った化粧水と乳液、すごく喜んでたよ?いつも薬局で安いやつ買ってるから、“こんなに良いものを”って。…だから、“申し訳ない”なんて、思わないで」
…そんなの、大したことじゃない。
生活費のほうが高いに決まってる。
「永那ちゃん」
見つめられて、私は、ただ頷く。
受け取ることもまた、大事なことだ。
相手が“渡したい”と思ってくれているなら、喜んで受け取ったほうがいい。
“申し訳ない”と思って受け取るよりも、喜んで受け取ったほうが、相手も喜んでくれる。
頭ではわかってる。
フゥッと息を吐く。
「わかった」
そう言うと、いつもの穂の笑顔を見せてくれた。
神社の随分手前から、既に大行列。
「うわー、ヤバイね」
「誉、友達に会えそう?」
穂が心配そうに言う。
「連絡してみる」
はぐれないように穂と手を繋ぐ。
私もスマホを出して、グループメッセージに『ついた。行列ヤバイね』と送っておいた。
『もうすぐつく』
すぐに千陽から返事がきた。
『私も!』
優里から返事がくると同時に「おーい!」と後ろから声が聞こえた。
振り向くと、優里。
それなら返事しなくても良かったんじゃない?
「優里ちゃん。あけましておめでとうございます」
「おめでとー!…あ、誉も!あけましておめでとう!」
「おめでとう!」
穂の丁寧さは、やっぱり素敵だな。
「千陽、すぐにつくみたいだし、もう並んどこっか!」
優里が言って、私達は列に並ぶ。
誉は友達と連絡が取れたらしいけど、千陽を待ってから行くみたいだった。
…友達もいるんだろうけど、彼女もいるんだろうな。
『先に並んでるよ!』
優里がメッセージを送って『了解』と返事がくる。
少しして、千陽が何も言わずに合流した。
“気づいたらそこにいた”みたいな感じで、本気でびっくりするからやめてほしい。
誉が千陽に挨拶して、走って去っていく。
「永那…服、似合ってる」
…なんか、素直な千陽だ。
新年だから?
「サンキュ」
千陽は優里の隣に並んで、私達の前に立つ。
優里は午後に親戚の家を回るらしい。
「お年玉祭りじゃー!」とバカみたいなことを言っている。
千陽は、明日、父方の祖父母に会いに行くと言っていた。
「めんどくさい…」と心底面倒そうに言う。
前に千陽のお年玉の総額を聞いたら10万を超えていて引いたな。
…私は、中学生のときにお姉ちゃんから貰った5千円が最高額だった。
図らずも、一気に更新してしまった。
…3万円。
1日でこんな大金を貰えるなんて、信じられない。
頭がおかしくなりそうだ。
神社の敷地内に入ると、屋台がたくさん並んでいた。
行列に列びながら、みんなで“あれが食べたい”とか“これが食べたい”とか話す。
(私の)お母さんが人混みがダメだから、1月1日に神社に来たことなんてなかった。
去年までは、3日の夜に2人で、近所の小さな神社に行った。
おせちなんて食べなくて、せいぜいお餅を食べるくらいだった。
当然神社に屋台もなくて、こんなに賑わっているのを見ると、ちょっとワクワクする。
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