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8.閑話
31.永那 中2 春《相澤芽衣編》
なに、それ…。
「“またさわらせてほしい”って言われて…なんて答えればいいかわからなくて、“いいよ”って言っちゃった…」
「それは…たぶん、告白しても、また振られると思うよ。嫌なら、断ったほうがいいと思う」
「ど、どうして…?」
フゥッと息を吐く。
「私、今からめっちゃ嫌なこと言う」
風美は一瞬怯えたような顔になって、覚悟を決めたように頷いて真っ直ぐ私を見た。
「永那は、風美が好きだからキスしたり胸をさわったりしたんじゃない。なんとな~く、そういうことをする人なの」
「な、なんとなく…」
「そう。だから、きっと…このままズルズル永那の望むままに応えていたら、風美が傷つくと思う。はっきり断ったほうが、風美のため…だと、私は思う」
風美は小さくため息を溢して、俯いた。
「どうやって断ればいいの…?」
「え、それは」
「私、永那のこと、好きなんだよ?」
肩をギュッと掴まれる。
胸が、痛い。
私だって、好きだし…。
「永那、落ち込んでるみたいだったし…私に出来ることがあるなら…してあげたい、とも思う」
「私から、言ってみようか?そういうことしちゃダメって。“出来ること”って、キスさせたり、胸さわらせてあげることだけじゃないでしょ?」
風美は眉間にシワを寄せて、また俯く。
「…もう少し、考えてみる。相談乗ってくれて、ありがとう」
眉をハの字にして、彼女は笑った。
風美が離れて、即行スマホを出す。
『会いたい』
やばい…佐藤千陽を避けてたら他の女に取られる…。
悠長にしてる場合じゃなかった。
春休み毎日一緒にいたし、“恋愛は押しすぎてもダメ”ってよく聞くから、私と過ごさない期間があれば、少しは“寂しい”って思ってくれるかな?って、期待していた。
佐藤千陽を避けたいのも相まって、逃げた結果がこれ…。
もう…!
いつもはすぐに返事が来るのに、来ない。
何やってんの?
佐藤千陽と…セックス…とか…?
ああ…こういうことを考えたくなかったから、会いたくなかったんだよ…!
夜になっても返事が来なかったから『明日、多目的室で待ってる』と送った。
何度も何度もスマホを確認してしまう。
余裕のない自分が嫌…。
翌朝『行くね』と返ってきて、ホッとする。
エッチしよう。絶対しよう。
永那を、私に、引き留めさせないと…。
恋が叶わなくたって、1番でいたいと願うのは…滑稽かな?
でも、“ずっと1番であり続ければ、いつか…”なんて、まだ淡い夢を抱いている。
ガラガラと扉が開く。
永那は笑みを見せてくれたけど、その目の下にはクマができていた。
「芽衣、なんか、久しぶりだね」
「永那…」
ケースにギターを入れて、駆け寄る。
彼女の頬を両手で包んで、キスをした。
いつもなら、そのまま永那のほうからたくさんしてくれるのに、ぎこちなく笑うだけで、永那からはしてきてくれない。
…私、嫌われた?何か、した?
“何か”もなにも…私は、そもそも連絡すら取っていないんだった…。
「連絡しなくて、ごめんね…」
「大丈夫だよ。芽衣、勉強忙しくなるって言ってたし」
…受験勉強なんて…してるけど…永那に会えないほど忙しいわけじゃない。
「永那、何かあった?」
「…どうして?」
「目の下、クマできてる」
永那はそっと自分の目の下に触れた。
「そう?最近、鏡見てなかったからわからなかった」
へへへと永那が笑う。
「芽衣…芽衣の歌、聞きたい」
永那の苦しそうな笑顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。
「うん。何が良い?」
「んー…明るい歌」
永那の手を引いて、座る。
明るい歌、明るい歌…。
「夏の雲が 降らした雨は 君との時を ほんのちょっとだけのばす 君が笑う 雫が弾ける キラキラした世界の中 スカートが舞う」
…こんな曲じゃなくて、何か、もっと励ませるような歌、作っておけばよかった。
作っておけば…って…私、そんな柄じゃない。
永那が、また大袈裟に拍手する。
「私、この歌好き!」
「知ってる」
へにゃっと笑って、永那が私に近づく。
「私と芽衣の歌だもんね」
去年の夏休み、部活帰りに雨が降った。
たまたま2人きりになる機会があって、一緒に途中まで帰った。
ゲリラ豪雨で、傘も持っていなかったし、2人で慌ててバス停の屋根の下で雨宿りした。
横から雨が入ってくるから、身を寄せ合って笑った、いい思い出。
私がギターを置くと、入れ替わるように永那が膝に頭を乗せた。
彼女の髪を撫でる。
「永那…明日も私、来るよ」
「…うん。…でも、まだ千陽がクラスのみんなと馴染めてないんだ。1人にしておくのは、心配」
「なんで、千陽ちゃんがそんなに心配なの?放っておけばいいじゃん。千陽ちゃんだって、永那にばっかり頼るんじゃなくて、自分でクラスに馴染んでいかなきゃ」
「そうかもしれないけど…あいつ…男に言い寄られて、怖がってるみたいだから…。女子の笑い声とかも、千陽に対して笑ってなくても、怖いみたいで…」
どうしてそこまで人に優しくできるのか…。
スゥスゥと寝息が聞こえてくる。
私、また…自分のことばっか考えてた。
「“またさわらせてほしい”って言われて…なんて答えればいいかわからなくて、“いいよ”って言っちゃった…」
「それは…たぶん、告白しても、また振られると思うよ。嫌なら、断ったほうがいいと思う」
「ど、どうして…?」
フゥッと息を吐く。
「私、今からめっちゃ嫌なこと言う」
風美は一瞬怯えたような顔になって、覚悟を決めたように頷いて真っ直ぐ私を見た。
「永那は、風美が好きだからキスしたり胸をさわったりしたんじゃない。なんとな~く、そういうことをする人なの」
「な、なんとなく…」
「そう。だから、きっと…このままズルズル永那の望むままに応えていたら、風美が傷つくと思う。はっきり断ったほうが、風美のため…だと、私は思う」
風美は小さくため息を溢して、俯いた。
「どうやって断ればいいの…?」
「え、それは」
「私、永那のこと、好きなんだよ?」
肩をギュッと掴まれる。
胸が、痛い。
私だって、好きだし…。
「永那、落ち込んでるみたいだったし…私に出来ることがあるなら…してあげたい、とも思う」
「私から、言ってみようか?そういうことしちゃダメって。“出来ること”って、キスさせたり、胸さわらせてあげることだけじゃないでしょ?」
風美は眉間にシワを寄せて、また俯く。
「…もう少し、考えてみる。相談乗ってくれて、ありがとう」
眉をハの字にして、彼女は笑った。
風美が離れて、即行スマホを出す。
『会いたい』
やばい…佐藤千陽を避けてたら他の女に取られる…。
悠長にしてる場合じゃなかった。
春休み毎日一緒にいたし、“恋愛は押しすぎてもダメ”ってよく聞くから、私と過ごさない期間があれば、少しは“寂しい”って思ってくれるかな?って、期待していた。
佐藤千陽を避けたいのも相まって、逃げた結果がこれ…。
もう…!
いつもはすぐに返事が来るのに、来ない。
何やってんの?
佐藤千陽と…セックス…とか…?
ああ…こういうことを考えたくなかったから、会いたくなかったんだよ…!
夜になっても返事が来なかったから『明日、多目的室で待ってる』と送った。
何度も何度もスマホを確認してしまう。
余裕のない自分が嫌…。
翌朝『行くね』と返ってきて、ホッとする。
エッチしよう。絶対しよう。
永那を、私に、引き留めさせないと…。
恋が叶わなくたって、1番でいたいと願うのは…滑稽かな?
でも、“ずっと1番であり続ければ、いつか…”なんて、まだ淡い夢を抱いている。
ガラガラと扉が開く。
永那は笑みを見せてくれたけど、その目の下にはクマができていた。
「芽衣、なんか、久しぶりだね」
「永那…」
ケースにギターを入れて、駆け寄る。
彼女の頬を両手で包んで、キスをした。
いつもなら、そのまま永那のほうからたくさんしてくれるのに、ぎこちなく笑うだけで、永那からはしてきてくれない。
…私、嫌われた?何か、した?
“何か”もなにも…私は、そもそも連絡すら取っていないんだった…。
「連絡しなくて、ごめんね…」
「大丈夫だよ。芽衣、勉強忙しくなるって言ってたし」
…受験勉強なんて…してるけど…永那に会えないほど忙しいわけじゃない。
「永那、何かあった?」
「…どうして?」
「目の下、クマできてる」
永那はそっと自分の目の下に触れた。
「そう?最近、鏡見てなかったからわからなかった」
へへへと永那が笑う。
「芽衣…芽衣の歌、聞きたい」
永那の苦しそうな笑顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。
「うん。何が良い?」
「んー…明るい歌」
永那の手を引いて、座る。
明るい歌、明るい歌…。
「夏の雲が 降らした雨は 君との時を ほんのちょっとだけのばす 君が笑う 雫が弾ける キラキラした世界の中 スカートが舞う」
…こんな曲じゃなくて、何か、もっと励ませるような歌、作っておけばよかった。
作っておけば…って…私、そんな柄じゃない。
永那が、また大袈裟に拍手する。
「私、この歌好き!」
「知ってる」
へにゃっと笑って、永那が私に近づく。
「私と芽衣の歌だもんね」
去年の夏休み、部活帰りに雨が降った。
たまたま2人きりになる機会があって、一緒に途中まで帰った。
ゲリラ豪雨で、傘も持っていなかったし、2人で慌ててバス停の屋根の下で雨宿りした。
横から雨が入ってくるから、身を寄せ合って笑った、いい思い出。
私がギターを置くと、入れ替わるように永那が膝に頭を乗せた。
彼女の髪を撫でる。
「永那…明日も私、来るよ」
「…うん。…でも、まだ千陽がクラスのみんなと馴染めてないんだ。1人にしておくのは、心配」
「なんで、千陽ちゃんがそんなに心配なの?放っておけばいいじゃん。千陽ちゃんだって、永那にばっかり頼るんじゃなくて、自分でクラスに馴染んでいかなきゃ」
「そうかもしれないけど…あいつ…男に言い寄られて、怖がってるみたいだから…。女子の笑い声とかも、千陽に対して笑ってなくても、怖いみたいで…」
どうしてそこまで人に優しくできるのか…。
スゥスゥと寝息が聞こえてくる。
私、また…自分のことばっか考えてた。
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