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8.閑話
61.永那 中3 夏《如月梓編》
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「散っ々あたしに忠告するようなこと言って?なに?自分は!本当はあたしが毎日永那先輩と連絡取り合ってるのも嫌だったんでしょ?嫉妬してたんでしょ!?嫉妬してたんならそう言えばいいじゃん!卑怯だよ!!」
「は…っ、は~!?…ひ、卑怯ってなに!?私は、本当に、紬が傷つかないようにって」
「傷つく!?あたしは、モテてる永那先輩に魅力を感じてるの!あたしのこと、勝手に決めつけないでよ!!あたしが傷つかないように~とか言って、自分は傷つかないってこと!?昔っから梓はそう!!勝手に決めつけて、お姉さんぶっちゃってさ!たった1歳しか変わんないのに!!」
「お姉さんぶりたくなんかない!私だって、お姉さんぶりたくなんかないよ!!でも…でも、私のお気に入りのおもちゃ、よく泣き喚いて取ってたじゃん!!無理矢理“お姉さん”にさせられたの!そもそも、なんで毎日昼休みに私のクラスに来るの?そんなに私のこと嫌なら来なきゃいいじゃん!それとも何?私の友達も取りたいってこと!?」
紬の顔が真っ赤に染まっていく。
目元がより赤くなって、瞳が潤んできて、涙を流す。
「な、泣かないでよ…。そっちこそ、卑怯じゃん…」
紬はしゃがみ込んで、啜り泣き始めた。
「紬…」
泣かれたら、また私が悪者みたいじゃん。
「羨ましいの…」
消え入るような声で紬が言う。
「あたしが欲しがっても、お母さんはおもちゃ、買ってくれなかった」
「え…」
「友達だっていないの!毎日毎日習い事ばっか…。流行りなんかついてけない。いつもクラスの子が話してるの聞いて、知ったフリして、梓のクラス行ってた…」
彼女が声を出して泣く。
「梓は何にも知らないくせに!お兄ちゃんだって…お兄ちゃんだって…ずっと家に引きこもってる!大学受験なんかしてない!だからあたしが頑張んなきゃいけないの!あたしが…あたしが…」
「ご、ごめん…。全然、知らなかった…」
彼女のそばにしゃがんで、背中を擦る。
そしたらもっと大声で泣くから、どうすればいいのかわからない。
「永那先輩とも仲良くなっててさ…梓ばっかり、ずるい…。なんであたしは…こんな頑張ってるのに…なんで…」
永那が隣に座って、紬の頭を撫でた。
「大丈夫だよ、紬。大丈夫」
「なにが、ですか…?」
「梓、本当に紬を大事に思ってるんだよ?1人でも自分のこと大事に思ってくれる人がいるって、最強だと思うから」
「こんな喧嘩したのに…?」
「何言ってんの?たぶん姉妹って喧嘩するもんだし、自分の気持ち吐き出せる相手って、それこそ貴重な存在だよ。私はお姉ちゃんいるけど、全然話聞いてくんないよ?だから2人が羨ましい」
優しい笑みを浮かべた永那を、紬がジッと見つめる。
「好きです、先輩」
「え!?」
「ハハッ、ありがとう」
「あたしにもキスしてください」
「え~、どうしよう?」
永那が視線を私に遣る。
「だ、ダメだよ!」
「なんでよ!」
「わ、私が永那と仲良くなったんだから、紬は…ダメ…」
「出た!永那先輩、これが梓の本性ですよ?あたしのこと大事に思ってるなんて嘘です」
「そうかな~?…梓、どうする?」
どう答えればいいか全然わかんないよ…!
「永那先輩!」
「なに?」
「梓が永那先輩を本気で好きになっちゃったら、きっと大変ですよ?」
「そうなの?なんで?」
「ストーカーし始めたり、束縛したりすると思います」
ギクッと肩が上がる。
永那が楽しそうに笑った。
「あたしくらいがちょうどいいと思うんです。あたしは、モテてる永那先輩をかっこいいって思ってますから」
「なるほど~。それは魅力的だね」
「そうですよね!」
「だ、ダメ!!ダメ…」
「だから、ダメな理由を教えて?真っ当な理由!…ないでしょ?あるわけないんだよ。だってこの国は自由恋愛の国なんだから!あたしが永那先輩とどんな関係になろうが、梓には関係ない。結婚してて不倫するわけでもないんだから、あたし達は自由なの。わかる?」
うぅぅ…何も言い返せない…。
頭の良い紬に、私が言い返せるわけがないんだよ…。
「永那先輩に恋人がいるなら、あんまり世間的にはよくないのかもしれないけど、それすら、ただの浮気。恋人の乗り換え期間かもしれないし。婚姻してるとかじゃなければ、罪には問われないの。まして同性同士だし、あたし達まだ学生だし?色々経験することの何が悪いの?」
永那がまた軽快に笑った。
「紬、すごいね!才能だね!」
「ありがとうございます」
永那に頭を撫でられ、紬は満足そうだ。
「…わかったよ。もう、いいよ」
項垂れる。
「勝手にすればいいじゃん」
体育座りになって、膝を両手で抱えて、顔をうずめた。
「私、そろそろ帰んなきゃ」
永那が立ち上がる気配がする。
このまま、永那を紬に取られて終わり…。
私の初恋は呆気なく、虚しく散るの。
…いや、そもそももう散っていたんだった。
永那は恋人を作る気はないと言っていたし。
このまま関係が続いたって、所詮セフレだ。
セフレ…。
セフレでも…紬に取られるのだけは…嫌だったな。
「は…っ、は~!?…ひ、卑怯ってなに!?私は、本当に、紬が傷つかないようにって」
「傷つく!?あたしは、モテてる永那先輩に魅力を感じてるの!あたしのこと、勝手に決めつけないでよ!!あたしが傷つかないように~とか言って、自分は傷つかないってこと!?昔っから梓はそう!!勝手に決めつけて、お姉さんぶっちゃってさ!たった1歳しか変わんないのに!!」
「お姉さんぶりたくなんかない!私だって、お姉さんぶりたくなんかないよ!!でも…でも、私のお気に入りのおもちゃ、よく泣き喚いて取ってたじゃん!!無理矢理“お姉さん”にさせられたの!そもそも、なんで毎日昼休みに私のクラスに来るの?そんなに私のこと嫌なら来なきゃいいじゃん!それとも何?私の友達も取りたいってこと!?」
紬の顔が真っ赤に染まっていく。
目元がより赤くなって、瞳が潤んできて、涙を流す。
「な、泣かないでよ…。そっちこそ、卑怯じゃん…」
紬はしゃがみ込んで、啜り泣き始めた。
「紬…」
泣かれたら、また私が悪者みたいじゃん。
「羨ましいの…」
消え入るような声で紬が言う。
「あたしが欲しがっても、お母さんはおもちゃ、買ってくれなかった」
「え…」
「友達だっていないの!毎日毎日習い事ばっか…。流行りなんかついてけない。いつもクラスの子が話してるの聞いて、知ったフリして、梓のクラス行ってた…」
彼女が声を出して泣く。
「梓は何にも知らないくせに!お兄ちゃんだって…お兄ちゃんだって…ずっと家に引きこもってる!大学受験なんかしてない!だからあたしが頑張んなきゃいけないの!あたしが…あたしが…」
「ご、ごめん…。全然、知らなかった…」
彼女のそばにしゃがんで、背中を擦る。
そしたらもっと大声で泣くから、どうすればいいのかわからない。
「永那先輩とも仲良くなっててさ…梓ばっかり、ずるい…。なんであたしは…こんな頑張ってるのに…なんで…」
永那が隣に座って、紬の頭を撫でた。
「大丈夫だよ、紬。大丈夫」
「なにが、ですか…?」
「梓、本当に紬を大事に思ってるんだよ?1人でも自分のこと大事に思ってくれる人がいるって、最強だと思うから」
「こんな喧嘩したのに…?」
「何言ってんの?たぶん姉妹って喧嘩するもんだし、自分の気持ち吐き出せる相手って、それこそ貴重な存在だよ。私はお姉ちゃんいるけど、全然話聞いてくんないよ?だから2人が羨ましい」
優しい笑みを浮かべた永那を、紬がジッと見つめる。
「好きです、先輩」
「え!?」
「ハハッ、ありがとう」
「あたしにもキスしてください」
「え~、どうしよう?」
永那が視線を私に遣る。
「だ、ダメだよ!」
「なんでよ!」
「わ、私が永那と仲良くなったんだから、紬は…ダメ…」
「出た!永那先輩、これが梓の本性ですよ?あたしのこと大事に思ってるなんて嘘です」
「そうかな~?…梓、どうする?」
どう答えればいいか全然わかんないよ…!
「永那先輩!」
「なに?」
「梓が永那先輩を本気で好きになっちゃったら、きっと大変ですよ?」
「そうなの?なんで?」
「ストーカーし始めたり、束縛したりすると思います」
ギクッと肩が上がる。
永那が楽しそうに笑った。
「あたしくらいがちょうどいいと思うんです。あたしは、モテてる永那先輩をかっこいいって思ってますから」
「なるほど~。それは魅力的だね」
「そうですよね!」
「だ、ダメ!!ダメ…」
「だから、ダメな理由を教えて?真っ当な理由!…ないでしょ?あるわけないんだよ。だってこの国は自由恋愛の国なんだから!あたしが永那先輩とどんな関係になろうが、梓には関係ない。結婚してて不倫するわけでもないんだから、あたし達は自由なの。わかる?」
うぅぅ…何も言い返せない…。
頭の良い紬に、私が言い返せるわけがないんだよ…。
「永那先輩に恋人がいるなら、あんまり世間的にはよくないのかもしれないけど、それすら、ただの浮気。恋人の乗り換え期間かもしれないし。婚姻してるとかじゃなければ、罪には問われないの。まして同性同士だし、あたし達まだ学生だし?色々経験することの何が悪いの?」
永那がまた軽快に笑った。
「紬、すごいね!才能だね!」
「ありがとうございます」
永那に頭を撫でられ、紬は満足そうだ。
「…わかったよ。もう、いいよ」
項垂れる。
「勝手にすればいいじゃん」
体育座りになって、膝を両手で抱えて、顔をうずめた。
「私、そろそろ帰んなきゃ」
永那が立ち上がる気配がする。
このまま、永那を紬に取られて終わり…。
私の初恋は呆気なく、虚しく散るの。
…いや、そもそももう散っていたんだった。
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このまま関係が続いたって、所詮セフレだ。
セフレ…。
セフレでも…紬に取られるのだけは…嫌だったな。
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