550 / 595
8.閑話
65.永那 中3 夏〜冬《如月梓編》
ホントにこの人、私と同い年?って何度も思う。
そもそも、放ってるオーラが違う感じがする。
大人っぽい魅力がありつつも、疲れてる大人みたいな雰囲気も感じ取れる。
どちらにしても同い年には見えない。
もしかしたら本当に、ドラキュラみたいな怪物なのかもしれない。…なんて。
夏休み最終日、永那と会う約束はしていなかった。
その日は塾がなかったから少し残念だった。
アイスが食べたくてコンビニに行くと、永那がいてビックリした。
声をかけようとしたけど、もう1人いることに気づいてやめた。
聞き慣れた声。
「永那先輩っ」
紬だった。
ああ…最悪…。
夏休み、ほとんど紬と会わなかった。
彼女は普段通りの塾、ピアノ、書道、部活の科学部にプラスして、サマースクールに行ったり、運動のためにプールに通ったりしていたから。
彼女の部屋の電気がつけば、“家に帰ってきたんだな”とわかるだけだった。
たまに塾ですれ違っても、会話は全くなかった。
紬のお兄ちゃんが、あの家に引きこもっているのだと知ってからは、複雑な感情が込み上げてきた。
向かいにある家を見る度に、“こんなに近くに住んでいても、わからないことばかりだな”と。
紬が忙しそうにしていればしている程、何もしてあげられないことを申し訳なく思った。
同時に勝手に比較して、自分を卑下した。
“まあ、私とは違うんだから、紬なら大丈夫だろう”とも思えた。
そんな私でも、紬よりも凄いと思えることが1つだけあった。
永那と一緒にいられたこと。
でも…もし…紬も夏休みに永那と会っていたとしたら…嫌だ。
私と同じように、会っていたとしたら…。
そんな最低なこと…してないよね?永那。
私は走ってコンビニを出て、家に帰った。
椅子に座って、ジッと紬の家を見ていた。
1時間経っても、紬と永那は来なかった。
部屋に入ってから、チラチラと紬の家を見ていたけど、やっぱり2人は帰ってこなかった。
ホッとした。
ただ、遊んでいただけだったんだと。
もちろん、そんなわけはなかった。
家には紬のお兄ちゃんがいるから、紬は永那を家に呼ばなかっただけだった。
夏休み明け、いつものように紬が私の腕に抱きついてきて、彼女が言った。
「永那先輩と仲良くなっちゃった」と。
ペロリと舌を出して、ニヤリと彼女が笑う。
「…あっそ」
「梓、どういう意味かわかってる?」
私は奥歯を強く噛んで、逃げるように紬の手を振り払った。
早歩きで学校に向かう間、1度も紬を見なかった。
永那からメッセージが来ても全部無視した。
1ヶ月無視し続けると、メッセージが来なくなった。
メッセージが来なくなると泣けてきて、一晩泣き明かして、結局返事をした。
「永那、紬と…ヤってるの?」
「…あぁ、紬から聞いた?」
ガリッと歯が擦れる。
「クズ!最低!」
フッと永那が笑う。
「そうだよ?梓は最初から、わかってたでしょ?」
視界がどんどんボヤけていって、瞬きをすると、涙が溢れた。
「私、家に帰りたくないんだよ」
なんの話かわからず、ただ涙をポタポタと流した。
「ハァ」と永那が深いため息をつく。
「去年は千陽とか先輩の家にいることが多かったんだけど、先輩は卒業しちゃって会えないし、千陽は忙しいって言うし…必要だったんだよ」
「必要…?なにが?」
「家にいない理由が」
「そ、それなら…毎日私の家に来れば良かったじゃん」
「そしたら、私のこと、本気で好きになっちゃうかもしれないでしょ?」
「クズ…。どんだけ自分に自信あんの…」
永那が笑う。
「じゃあ梓は、私のこと、本気で好きにならなかった?」
胸がギュゥギュゥに締め付けられて、チクチクと痛む。
涙が溢れて止まらない。
もう好きだよ…!もう、めちゃくちゃ好きだよ…!!
「ならなかった!クズって、知ってるもん…」
「…そっか。じゃあ、毎日行けば良かったかも」
「うぅぅっ、ぅぅっ」
しゃがみ込んで、必死に声を抑えようとするのに、涙が溢れて止まらない。
「千陽も毎日来ていいって言ってくれるんだけど…申し訳なくてさ、なんか。本当に毎日行っていいのか、わからないんだ。不安になる、いつも」
目だけ彼女に遣る。
彼女は、どこか遠くを見ていた。
「明確に“好き”って思えたら、そんな不安もなくなるのかな」
「知らないよ…」
「だよね。私もわかんない。だから、とりあえず色んな人と会ってる」
膝に顔をうずめて、深呼吸する。
「梓、もう会うの、やめとこうか。これで最後にしよう」
あぁ…この人は…何度もこういうことを繰り返してきたんだな。
「やめない…」
「え?」
「やめないってば。私達、セフレでしょ?」
「……うん!」
永那に抱きつかれて、床に押し倒された。
好きになった者負けだ。
私は定員割れしているような、名前を書くだけで合格するような高校に進学した。
紬は永那に本気で恋して、振られて、泣いていた。
それを私が慰めて、慰めた後に永那とヤる。
私も大概クズだ。
受験の時期に差し掛かると、自然と永那と会う頻度が減っていった。
メッセージを送っても返事が来なくなった。
『ごめん、もう会えない』
それが永那からの最後のメッセージ。
私達の関係なんてそんなもの。
あまりに虚しい。
泣いても泣いても、私には慰めてくれる相手なんていない。
自業自得だったし、慰めて欲しいとも思わなかった。
そもそも、放ってるオーラが違う感じがする。
大人っぽい魅力がありつつも、疲れてる大人みたいな雰囲気も感じ取れる。
どちらにしても同い年には見えない。
もしかしたら本当に、ドラキュラみたいな怪物なのかもしれない。…なんて。
夏休み最終日、永那と会う約束はしていなかった。
その日は塾がなかったから少し残念だった。
アイスが食べたくてコンビニに行くと、永那がいてビックリした。
声をかけようとしたけど、もう1人いることに気づいてやめた。
聞き慣れた声。
「永那先輩っ」
紬だった。
ああ…最悪…。
夏休み、ほとんど紬と会わなかった。
彼女は普段通りの塾、ピアノ、書道、部活の科学部にプラスして、サマースクールに行ったり、運動のためにプールに通ったりしていたから。
彼女の部屋の電気がつけば、“家に帰ってきたんだな”とわかるだけだった。
たまに塾ですれ違っても、会話は全くなかった。
紬のお兄ちゃんが、あの家に引きこもっているのだと知ってからは、複雑な感情が込み上げてきた。
向かいにある家を見る度に、“こんなに近くに住んでいても、わからないことばかりだな”と。
紬が忙しそうにしていればしている程、何もしてあげられないことを申し訳なく思った。
同時に勝手に比較して、自分を卑下した。
“まあ、私とは違うんだから、紬なら大丈夫だろう”とも思えた。
そんな私でも、紬よりも凄いと思えることが1つだけあった。
永那と一緒にいられたこと。
でも…もし…紬も夏休みに永那と会っていたとしたら…嫌だ。
私と同じように、会っていたとしたら…。
そんな最低なこと…してないよね?永那。
私は走ってコンビニを出て、家に帰った。
椅子に座って、ジッと紬の家を見ていた。
1時間経っても、紬と永那は来なかった。
部屋に入ってから、チラチラと紬の家を見ていたけど、やっぱり2人は帰ってこなかった。
ホッとした。
ただ、遊んでいただけだったんだと。
もちろん、そんなわけはなかった。
家には紬のお兄ちゃんがいるから、紬は永那を家に呼ばなかっただけだった。
夏休み明け、いつものように紬が私の腕に抱きついてきて、彼女が言った。
「永那先輩と仲良くなっちゃった」と。
ペロリと舌を出して、ニヤリと彼女が笑う。
「…あっそ」
「梓、どういう意味かわかってる?」
私は奥歯を強く噛んで、逃げるように紬の手を振り払った。
早歩きで学校に向かう間、1度も紬を見なかった。
永那からメッセージが来ても全部無視した。
1ヶ月無視し続けると、メッセージが来なくなった。
メッセージが来なくなると泣けてきて、一晩泣き明かして、結局返事をした。
「永那、紬と…ヤってるの?」
「…あぁ、紬から聞いた?」
ガリッと歯が擦れる。
「クズ!最低!」
フッと永那が笑う。
「そうだよ?梓は最初から、わかってたでしょ?」
視界がどんどんボヤけていって、瞬きをすると、涙が溢れた。
「私、家に帰りたくないんだよ」
なんの話かわからず、ただ涙をポタポタと流した。
「ハァ」と永那が深いため息をつく。
「去年は千陽とか先輩の家にいることが多かったんだけど、先輩は卒業しちゃって会えないし、千陽は忙しいって言うし…必要だったんだよ」
「必要…?なにが?」
「家にいない理由が」
「そ、それなら…毎日私の家に来れば良かったじゃん」
「そしたら、私のこと、本気で好きになっちゃうかもしれないでしょ?」
「クズ…。どんだけ自分に自信あんの…」
永那が笑う。
「じゃあ梓は、私のこと、本気で好きにならなかった?」
胸がギュゥギュゥに締め付けられて、チクチクと痛む。
涙が溢れて止まらない。
もう好きだよ…!もう、めちゃくちゃ好きだよ…!!
「ならなかった!クズって、知ってるもん…」
「…そっか。じゃあ、毎日行けば良かったかも」
「うぅぅっ、ぅぅっ」
しゃがみ込んで、必死に声を抑えようとするのに、涙が溢れて止まらない。
「千陽も毎日来ていいって言ってくれるんだけど…申し訳なくてさ、なんか。本当に毎日行っていいのか、わからないんだ。不安になる、いつも」
目だけ彼女に遣る。
彼女は、どこか遠くを見ていた。
「明確に“好き”って思えたら、そんな不安もなくなるのかな」
「知らないよ…」
「だよね。私もわかんない。だから、とりあえず色んな人と会ってる」
膝に顔をうずめて、深呼吸する。
「梓、もう会うの、やめとこうか。これで最後にしよう」
あぁ…この人は…何度もこういうことを繰り返してきたんだな。
「やめない…」
「え?」
「やめないってば。私達、セフレでしょ?」
「……うん!」
永那に抱きつかれて、床に押し倒された。
好きになった者負けだ。
私は定員割れしているような、名前を書くだけで合格するような高校に進学した。
紬は永那に本気で恋して、振られて、泣いていた。
それを私が慰めて、慰めた後に永那とヤる。
私も大概クズだ。
受験の時期に差し掛かると、自然と永那と会う頻度が減っていった。
メッセージを送っても返事が来なくなった。
『ごめん、もう会えない』
それが永那からの最後のメッセージ。
私達の関係なんてそんなもの。
あまりに虚しい。
泣いても泣いても、私には慰めてくれる相手なんていない。
自業自得だったし、慰めて欲しいとも思わなかった。
あなたにおすすめの小説
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。