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9.移ろい
490.新学年
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千陽も桜も燈夏も何も話さなくて、気まずい。
私が誘ったんだけど…千陽と燈夏ってもっと話してたよね!?
どうしてこうなった?
「あー…千陽と桜は、いつも家で何してんの?メイク?」
「漫画読んでるだけ」
「漫画読み終わったら?」
「帰る」
「お前…桜の家は無料の漫喫じゃないんだから…」
「だって桜の家にしかない物があるんだもん」
「え、そうなの?」
「同人誌ってやつ」
「さ、佐藤さん…!それは!!」
「秘密ね、秘密」
千陽の相手をするのは、さぞ大変だろう。
「でも、たぶん永那も好きだよ?」
「ダメ、です…!もう!!」
桜、前よりちょっと千陽と打ち解けてる感じがする。
千陽が桜をからかって楽しそうに笑ってる。
「私も好きなら、今度見してもらおうかな」
「え!?あ!?え!?」
桜があたふたし始めて、もっと可笑しそうに千陽が笑った。
千陽の笑顔を見るのは好きだ。
普段の仏頂面よりずっと良い。
「最近、千陽、趣味変じゃない?」
燈夏が言う。
「べつに、変じゃないけど」
「そお?ゲームとか漫画とか…前はメイクとか動画の話してたじゃん」
「メイクもしてるし、動画も見てる。ゲームと漫画が増えただけだけど?」
「私ついてけな~い。つまんない。…もっと恋愛の話とか聞かせてよっ。あの…千陽の恋人?聞いても全然教えてくんないから寂しいっ」
「言っても、誰か知らないでしょ?」
「でも~、どんなデートしたとか、初めてのチューはどこでしたとか~、そういうのは話せるじゃん?」
「この前、一緒に買い物はした。初めてのキスは相手の家」
「え~!!やばっ!やっぱかっこいい?永那みたいな感じ?」
「ハァ」と千陽が息を吐く。
「写真見せてよ~」
「そうなるから教えたくないの。写真は見せない」
「ケチっ。全校生徒が気になってるんだよ?千陽の相手。私にくらい教えてくれてもいいじゃんっ」
“私にくらい”って…。
燈夏に話したら、それこそ全校生徒にバラされそうだ。
「誰にも教えないし」
「え~、じゃあ、1番キュンってした瞬間はっ?」
千陽は、ふぅっと少し考える。
「“ずっと一緒にいる”って言ってくれた時」
「キャ~!やば~!!ね?やばくない?」
燈夏が私の腕をぐいぐい引っ張る。
「うん、そだね」
「あ…。もしかして永那は、相手、知ってる感じ?」
スーッと燈夏の目が細くなる。
作っていた笑みも消えて、不機嫌な雰囲気がバシバシ伝わってくる。
「さあ?詳しくは知らないよ」
「そう、なんだ…」
ちょっとだけ雰囲気が柔らかくなる。
…こういうとこは、単純だな。
“買い物した”、“初めてのキスは相手の家”ってことは、設定上、千陽の中で相手は穂なんだろうけど、それを千陽から直接教わったわけじゃない。
だから私は詳しくは知らない。
穂のことは誰よりも知っていると思っているけど、千陽の相手のことは知らない。
それか、もしかしたら本当に穂以外にいるのかもしれない。
なんだっけ…?レズビアンのオフ会に参加したこともあるとか言ってたし。
まあ、だとするなら、私にくらい教えてくれてもいいのにね。
「じゃあ~、1番良かったデートは?」
「…そんなに、デートしてないから、特にない」
「え~!?付き合ってるのに!?」
「付き合っててもお互い暇じゃないんだし、そんなしないでしょ」
「クール過ぎない?私だったら毎日…最低でも週3でデートしたいけどっ」
「永那と穂だって、全然デートしてなさそうだけど?」
千陽、自分に話を振られ続けるのが面倒になったな。
私と穂の話題に変えようとしているのが丸わかりだ。
「私達はこの前、水族館に行ってきたよ。めーっちゃ楽しかった。ジェットコースターがあったんだけど、穂が乗るの嫌がってさ~、可愛かったな~」
千陽の眉間にシワが寄る。
せっかく話に乗ってあげたのに、なぜそうなる…?
やっぱり相手は穂を想定しているんだろうな。
「空井さんって、たしか、夏休みのプールでもウォータースライダー嫌がってたよね?」
「よく覚えてるね」
「覚えてるよ~、千陽も優里もノリ悪かったし~」
まるで穂が悪いみたいな言い方に、イラッとする。
「そういえば、春休み、ホテルに泊まったかな」
千陽が澄まし顔で、わざとらしく顎に人差し指を当てる。
「え!?ホテル!?」
「そ。ご飯食べて、夜景見て…楽しかった」
意味ありげな表情を浮かべ、口角を上げる。
…そこには私もいたんですけど。
「あんまり夜更かしするタイプじゃないし、ピュアだから、すごく夜景喜んでくれて」
「え…?千陽が連れてったの?」
「うん。…ダメ?あたしが、連れて行きたかったの」
「さ、さすが千陽…」
燈夏が憧れの眼差しで千陽を見る。
そうなんだよなあ…。こういうとこなんだよ、燈夏のよくわからないところ。
千陽に憧れてるんだろうけど…千陽のすること全てに肯定的なわけでもない。
千陽に対する、勝手なイメージとか理想が強すぎるんだろうか?
私が誘ったんだけど…千陽と燈夏ってもっと話してたよね!?
どうしてこうなった?
「あー…千陽と桜は、いつも家で何してんの?メイク?」
「漫画読んでるだけ」
「漫画読み終わったら?」
「帰る」
「お前…桜の家は無料の漫喫じゃないんだから…」
「だって桜の家にしかない物があるんだもん」
「え、そうなの?」
「同人誌ってやつ」
「さ、佐藤さん…!それは!!」
「秘密ね、秘密」
千陽の相手をするのは、さぞ大変だろう。
「でも、たぶん永那も好きだよ?」
「ダメ、です…!もう!!」
桜、前よりちょっと千陽と打ち解けてる感じがする。
千陽が桜をからかって楽しそうに笑ってる。
「私も好きなら、今度見してもらおうかな」
「え!?あ!?え!?」
桜があたふたし始めて、もっと可笑しそうに千陽が笑った。
千陽の笑顔を見るのは好きだ。
普段の仏頂面よりずっと良い。
「最近、千陽、趣味変じゃない?」
燈夏が言う。
「べつに、変じゃないけど」
「そお?ゲームとか漫画とか…前はメイクとか動画の話してたじゃん」
「メイクもしてるし、動画も見てる。ゲームと漫画が増えただけだけど?」
「私ついてけな~い。つまんない。…もっと恋愛の話とか聞かせてよっ。あの…千陽の恋人?聞いても全然教えてくんないから寂しいっ」
「言っても、誰か知らないでしょ?」
「でも~、どんなデートしたとか、初めてのチューはどこでしたとか~、そういうのは話せるじゃん?」
「この前、一緒に買い物はした。初めてのキスは相手の家」
「え~!!やばっ!やっぱかっこいい?永那みたいな感じ?」
「ハァ」と千陽が息を吐く。
「写真見せてよ~」
「そうなるから教えたくないの。写真は見せない」
「ケチっ。全校生徒が気になってるんだよ?千陽の相手。私にくらい教えてくれてもいいじゃんっ」
“私にくらい”って…。
燈夏に話したら、それこそ全校生徒にバラされそうだ。
「誰にも教えないし」
「え~、じゃあ、1番キュンってした瞬間はっ?」
千陽は、ふぅっと少し考える。
「“ずっと一緒にいる”って言ってくれた時」
「キャ~!やば~!!ね?やばくない?」
燈夏が私の腕をぐいぐい引っ張る。
「うん、そだね」
「あ…。もしかして永那は、相手、知ってる感じ?」
スーッと燈夏の目が細くなる。
作っていた笑みも消えて、不機嫌な雰囲気がバシバシ伝わってくる。
「さあ?詳しくは知らないよ」
「そう、なんだ…」
ちょっとだけ雰囲気が柔らかくなる。
…こういうとこは、単純だな。
“買い物した”、“初めてのキスは相手の家”ってことは、設定上、千陽の中で相手は穂なんだろうけど、それを千陽から直接教わったわけじゃない。
だから私は詳しくは知らない。
穂のことは誰よりも知っていると思っているけど、千陽の相手のことは知らない。
それか、もしかしたら本当に穂以外にいるのかもしれない。
なんだっけ…?レズビアンのオフ会に参加したこともあるとか言ってたし。
まあ、だとするなら、私にくらい教えてくれてもいいのにね。
「じゃあ~、1番良かったデートは?」
「…そんなに、デートしてないから、特にない」
「え~!?付き合ってるのに!?」
「付き合っててもお互い暇じゃないんだし、そんなしないでしょ」
「クール過ぎない?私だったら毎日…最低でも週3でデートしたいけどっ」
「永那と穂だって、全然デートしてなさそうだけど?」
千陽、自分に話を振られ続けるのが面倒になったな。
私と穂の話題に変えようとしているのが丸わかりだ。
「私達はこの前、水族館に行ってきたよ。めーっちゃ楽しかった。ジェットコースターがあったんだけど、穂が乗るの嫌がってさ~、可愛かったな~」
千陽の眉間にシワが寄る。
せっかく話に乗ってあげたのに、なぜそうなる…?
やっぱり相手は穂を想定しているんだろうな。
「空井さんって、たしか、夏休みのプールでもウォータースライダー嫌がってたよね?」
「よく覚えてるね」
「覚えてるよ~、千陽も優里もノリ悪かったし~」
まるで穂が悪いみたいな言い方に、イラッとする。
「そういえば、春休み、ホテルに泊まったかな」
千陽が澄まし顔で、わざとらしく顎に人差し指を当てる。
「え!?ホテル!?」
「そ。ご飯食べて、夜景見て…楽しかった」
意味ありげな表情を浮かべ、口角を上げる。
…そこには私もいたんですけど。
「あんまり夜更かしするタイプじゃないし、ピュアだから、すごく夜景喜んでくれて」
「え…?千陽が連れてったの?」
「うん。…ダメ?あたしが、連れて行きたかったの」
「さ、さすが千陽…」
燈夏が憧れの眼差しで千陽を見る。
そうなんだよなあ…。こういうとこなんだよ、燈夏のよくわからないところ。
千陽に憧れてるんだろうけど…千陽のすること全てに肯定的なわけでもない。
千陽に対する、勝手なイメージとか理想が強すぎるんだろうか?
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