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9.移ろい
492.新学年
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私は、穂と付き合ってから、千陽のことも切ろうとした。
そんな私が、その他大勢を重視しているはずがなかった。
私は私が思っていたよりも冷たい人間だったんだな。
やっぱ、優しくなんかないじゃん。
「ってかさ~、千陽の惚気話、ヤバかったね~」
「だね」
「千陽の好みって、かっこいい感じかと思いきや、可愛い系?ピュアとか言ってたし」
「んー、たしかに。優里と桜のこと気に入ってるのも千陽だしね」
燈夏が寂しそうに頷く。
「千陽って完全に、相手、女じゃないと無理なんだよね?」
「たぶんね。…前、男とくっつけようとしたのバレて、ハッキリ無理って言われたし」
「え!?そんなことしようとしてたの!?」
「そー。穂と付き合いたての頃、私の代わりを見つけたいなーって思って」
「永那の代わり?」
「千陽のお守り役」
「お守りって!」
ペシッと肩を叩かれる。
「あいつには必要なんだよ、お守りが。優里じゃアホ過ぎて務まんないし」
「まあ、たしかに、優里はアホだね」
「バド部、忙しそうだしね」
「だねー。優里、すごい頑張ってるよね。前、千陽と一緒に試合見に行ったことあるけど、バドミントンやってる時の優里は、なんか、めっちゃかっこいいなって思った」
「ステージマジックってやつ?」
「なにそれ?」
「普段は全然かっこよくないのに、ステージに立つと何故かかっこよく見える現象のこと…だった気がする」
「へえ…。じゃあ、それだっ」
「優里に失礼」
プッと燈夏が笑う。
「永那が言ったんじゃんっ」
「まあね」
笑い合う。
「お守り役、見つかって良かったね」
「…どうかな」
「えっ、もしかして、見つかったら見つかったで寂しい感じ?永那でもそんなこと思うんだ!」
「“永那でも”ってなんだよ。…ってか違うし。そもそもお守り役は、四六時中あいつのそばにいれなきゃダメなんだよ」
「あ、そっか!学校が違うんじゃ、無理だもんね」
…相手が穂なのだとしたら(さっきの惚気話で完全に穂だと特定できたけど)、学校は同じだ。
でも!穂は私の恋人なんです!!
同じ学校じゃなくてもいいけど、せめて一緒に遊ぶ時のお守りは欲しい。
誉が適任だと思ったけど、千陽、嫌がるしなー。
「ま、そゆこと。結局、学校とか、みんなで遊ぶ時とか、私が変わらずお守りをしなきゃいけないってこと。私は穂とイチャイチャしたいのに」
「十分してるって」
「もっとしたい」
「空井さん、大変そう…」
「みんなそれ言うな!?なんで!?好き同士だったらイチャイチャするもんなんじゃないの!?」
「いや、だから十分過ぎるくらいイチャイチャしてるって」
「え~…燈夏は、好きな人にこんなにイチャイチャされたら嫌?」
「学校では…嫌かも…」
「マジで!?」
割と本気でショックを受けた…。
ショックを受けたところで、ちょうど図書館についたので、お喋りをやめて、席を探す。
学校終わりだからか、自習スペースはかなり学生がいた。
なんとか2席空いているのを見つけて、座る。
それから5時半近くまで、ほとんど喋ることはなかった。
たまに燈夏はスマホを弄っていたけど、図書館の人に注意されるほどではなかった。
「ん~!疲れた~!!」
外に出ると、燈夏が伸びをする。
「おつかれ」
「おっつ~」
「駅まで送ったほうがいい?」
「送ってくれるの?」
燈夏がちょんと唇を突き出し、あひる唇を作る。
「…まあ、マップ見ればひとりで帰れるか」
「え!?永那から言ってきたくせに~っ」
「一応、ね?」
「後から断るくらいなら最初から言うなしっ」
「ごめんごめん」
「べつにいいけどさっ」
本当に大丈夫そうな反応。
「永那と…久々にちゃんと話せて楽しかった」
「私も、楽しかったよ」
「本当…?」
「うん。…もっと学校でも構ってあげなきゃなって反省しました」
ニヤリと口角を上げると「は~!?超上から目線なんですけど~っ」と彼女が笑う。
「初カノが出来て、浮かれすぎてたかな」
「ホントそれ」
「でも穂が可愛すぎるんだよな~、それが悪い!」
「空井さんの可愛さは、私にはわかんないわ。キツいイメージしかないし」
「はっ、燈夏はまだまだだな」
「なにが?」
「あの真面目さと!2人きりになった時に甘えられた時のギャップが!とてつもない破壊力を持ってるんじゃん!」
「空井さん…甘えるんだ?」
燈夏は目を細めて、聞いちゃいけないことを聞いたみたいに、恥ずかしげに、緩む口元をモゴモゴと動かした。
「甘えてくれる。マジで最高、可愛いの頂点」
「今度、また聞かせてよ。そういう話」
「うん。…穂が嫌がるだろうから、詳しくは言えないけどね」
「あ~、嫌がりそ~。永那、怒られるんじゃない?」
「だから詳しくは言わないって」
「とか言って、調子乗ってペラペラ喋ってそうなのがウケる」
「うわー、自分でも想像できたわ」
「気をつけなよ~?」
「燈夏も、気をつけて帰ってよ」
彼女がフフッと笑う。
長い髪が春の風に靡く。
「また明日ね」
「また明日」
そんな私が、その他大勢を重視しているはずがなかった。
私は私が思っていたよりも冷たい人間だったんだな。
やっぱ、優しくなんかないじゃん。
「ってかさ~、千陽の惚気話、ヤバかったね~」
「だね」
「千陽の好みって、かっこいい感じかと思いきや、可愛い系?ピュアとか言ってたし」
「んー、たしかに。優里と桜のこと気に入ってるのも千陽だしね」
燈夏が寂しそうに頷く。
「千陽って完全に、相手、女じゃないと無理なんだよね?」
「たぶんね。…前、男とくっつけようとしたのバレて、ハッキリ無理って言われたし」
「え!?そんなことしようとしてたの!?」
「そー。穂と付き合いたての頃、私の代わりを見つけたいなーって思って」
「永那の代わり?」
「千陽のお守り役」
「お守りって!」
ペシッと肩を叩かれる。
「あいつには必要なんだよ、お守りが。優里じゃアホ過ぎて務まんないし」
「まあ、たしかに、優里はアホだね」
「バド部、忙しそうだしね」
「だねー。優里、すごい頑張ってるよね。前、千陽と一緒に試合見に行ったことあるけど、バドミントンやってる時の優里は、なんか、めっちゃかっこいいなって思った」
「ステージマジックってやつ?」
「なにそれ?」
「普段は全然かっこよくないのに、ステージに立つと何故かかっこよく見える現象のこと…だった気がする」
「へえ…。じゃあ、それだっ」
「優里に失礼」
プッと燈夏が笑う。
「永那が言ったんじゃんっ」
「まあね」
笑い合う。
「お守り役、見つかって良かったね」
「…どうかな」
「えっ、もしかして、見つかったら見つかったで寂しい感じ?永那でもそんなこと思うんだ!」
「“永那でも”ってなんだよ。…ってか違うし。そもそもお守り役は、四六時中あいつのそばにいれなきゃダメなんだよ」
「あ、そっか!学校が違うんじゃ、無理だもんね」
…相手が穂なのだとしたら(さっきの惚気話で完全に穂だと特定できたけど)、学校は同じだ。
でも!穂は私の恋人なんです!!
同じ学校じゃなくてもいいけど、せめて一緒に遊ぶ時のお守りは欲しい。
誉が適任だと思ったけど、千陽、嫌がるしなー。
「ま、そゆこと。結局、学校とか、みんなで遊ぶ時とか、私が変わらずお守りをしなきゃいけないってこと。私は穂とイチャイチャしたいのに」
「十分してるって」
「もっとしたい」
「空井さん、大変そう…」
「みんなそれ言うな!?なんで!?好き同士だったらイチャイチャするもんなんじゃないの!?」
「いや、だから十分過ぎるくらいイチャイチャしてるって」
「え~…燈夏は、好きな人にこんなにイチャイチャされたら嫌?」
「学校では…嫌かも…」
「マジで!?」
割と本気でショックを受けた…。
ショックを受けたところで、ちょうど図書館についたので、お喋りをやめて、席を探す。
学校終わりだからか、自習スペースはかなり学生がいた。
なんとか2席空いているのを見つけて、座る。
それから5時半近くまで、ほとんど喋ることはなかった。
たまに燈夏はスマホを弄っていたけど、図書館の人に注意されるほどではなかった。
「ん~!疲れた~!!」
外に出ると、燈夏が伸びをする。
「おつかれ」
「おっつ~」
「駅まで送ったほうがいい?」
「送ってくれるの?」
燈夏がちょんと唇を突き出し、あひる唇を作る。
「…まあ、マップ見ればひとりで帰れるか」
「え!?永那から言ってきたくせに~っ」
「一応、ね?」
「後から断るくらいなら最初から言うなしっ」
「ごめんごめん」
「べつにいいけどさっ」
本当に大丈夫そうな反応。
「永那と…久々にちゃんと話せて楽しかった」
「私も、楽しかったよ」
「本当…?」
「うん。…もっと学校でも構ってあげなきゃなって反省しました」
ニヤリと口角を上げると「は~!?超上から目線なんですけど~っ」と彼女が笑う。
「初カノが出来て、浮かれすぎてたかな」
「ホントそれ」
「でも穂が可愛すぎるんだよな~、それが悪い!」
「空井さんの可愛さは、私にはわかんないわ。キツいイメージしかないし」
「はっ、燈夏はまだまだだな」
「なにが?」
「あの真面目さと!2人きりになった時に甘えられた時のギャップが!とてつもない破壊力を持ってるんじゃん!」
「空井さん…甘えるんだ?」
燈夏は目を細めて、聞いちゃいけないことを聞いたみたいに、恥ずかしげに、緩む口元をモゴモゴと動かした。
「甘えてくれる。マジで最高、可愛いの頂点」
「今度、また聞かせてよ。そういう話」
「うん。…穂が嫌がるだろうから、詳しくは言えないけどね」
「あ~、嫌がりそ~。永那、怒られるんじゃない?」
「だから詳しくは言わないって」
「とか言って、調子乗ってペラペラ喋ってそうなのがウケる」
「うわー、自分でも想像できたわ」
「気をつけなよ~?」
「燈夏も、気をつけて帰ってよ」
彼女がフフッと笑う。
長い髪が春の風に靡く。
「また明日ね」
「また明日」
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