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9.移ろい
506.パーティ
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■■■
永那ちゃんの誕生日のことは、随分前から考えていた。
最初は普通にデートをしようと思ったけど、お母さんの心の状態が思っていたよりも日によってまちまちで、永那ちゃんの帰りが遅くなるのは候補から除外した。
永那ちゃんが喜ぶことと言えば…エッチなことだから…ネットカフェに行く案も考えたけど、それも結局、永那ちゃんが怪獣になっちゃったら歯止めが効かなくなりそうで、やめた。
誕生日当日は平日だから、それがネックなような、ありがたいような…複雑な気持ちになる。
土日だったら、きっとお母さんと3人になって、2人の時間が作れない。
お母さんと一緒に過ごすのは良いのだけれど、少しは2人の時間も欲しかった。
ひとりでは良い案が思い浮かばなくて、千陽に相談した。
ほとんど毎日通話をしているから、相談はしやすかった。
そうしたら、「多少居残るくらいなら出来るだろうから、学校で2人きりの時間を作ったら?」と提案してくれた。
人気の少ない場所を探せば、キスくらいは出来るだろう…と。
人気の少ない場所と聞いて、パッと思い浮かんだのは、なぜか、体育館前の渡り廊下にある自動販売機だった。
まだ1年経っていないけれど、私が永那ちゃんに告白した、思い出の場所。
…でも、あそこは人通りがそれなりにあった。
通りがかる生徒が私達をチラチラ見て、恥ずかしかったのを覚えている。
生徒会室なら、誕生日の日に活動がないから空いている。
生徒会長の私なら、鍵も、すぐに借りられる。
そんな使い方はしたくないけれど。
「千陽、2人きりになっちゃうとさ?…その、永那ちゃん、暴走しちゃわないかな?」
文化祭を思い出す。
私が断ると、悲しそうな、傷ついた顔をする。
そんな顔は見たくない。
あの時は、振替休日があったから次の約束が出来たけど、今回は約束出来る保証がない。
…でも、学校でするのは、絶対に嫌。
キスくらいなら、いいけど。
キスですら、抵抗がないと言えば嘘になる。
「あたしがそばにいても、永那の暴走は止まんないだろうし…」
それならいっそ、優里ちゃんと森山さんにも協力してもらおう、ということになった。
優里ちゃんと森山さんがいれば、いくら永那ちゃんでも、キスより先はしないはず。
ついでにみんなで祝えて、一石二鳥。
ということで、永那ちゃんの誕生日パーティサプライズ計画をするために、始業式の後の部活動紹介後、みんなで計画を練ることにした。
千陽を待たせちゃったけれど、「動画見てたし、平気」と微笑まれた。
「穂ちゃんって、永那の家にお泊まりしちゃダメなの?」
優里ちゃんが開口一番に言った。
「え…?」
考えたこともなかった。
「永那のお母さんとも仲良いんだよね?春休みも3人で遊んだって言ってたし」
「き、聞いてみる…!ありがとう!優里ちゃん!」
永那ちゃんのお母さんとは、連絡先を交換していた。
SNSもフォローしあっている。
「じゃあ、みんなで永那ん家行くっ?」
優里ちゃんが楽しそうに言った。
みんなで永那ちゃんの家に行って、お祝いして、私だけが残ってお泊まり…。
それだけでも十分だと思うけど…でも…何か…何か、物足りないような、違うような気がした。
「食べ物はみんなで持ち寄ったり、スーパーで買って帰ったりすればいいけど…みんなで家に行って、永那ちゃんのお母さん、大丈夫かな?」
「穂が心配なら、やめよ」
千陽がすぐに却下して、驚く。
目が合って、彼女が優しく笑う。
「穂が心配するってことは、良くないってことだと思うから」
私の気持ちを汲んでくれる優しさに、嬉しくなる。
「それに穂、サプライズにしたいって言ってた。永那の家に行くなら、サプライズにならないんじゃない?…事前にお母さんに穂が泊まることを言っておくってなったら、永那に隠し通すのは難しいかもしれないし」
「そっか~」
「いくつか…用意しておいた方がいいかも…」
「いくつか?」
「永那、すぐ勘づくし、いくつかサプライズを用意しておいて、どれかがバレても大丈夫なようにする…とか…」
「楽しそう!じゃあ、まずは学校でサプライズだね!」
優里ちゃんが机に体を乗り出して、紙とペンを広げた。
そんな話を大声で教室でしてしまったものだから、クラスメイトが次から次へと興味を持ち始め、なんだか壮大な誕生日パーティになったのでした…。
みんなが色んな提案をしてくれて、最終的に永那ちゃんにいたずらをするような形になってしまったけれど…千陽の予想は的確で、たくさんの罠?を仕掛けたことで、どれも永那ちゃんに気取られることなく、成功した。
私が永那ちゃんの家に行くことが1番に知られてしまうのではないかとヒヤヒヤしたけれど、お母さんが上手くやってくれたみたい。
上手くやってくれたのか…自然とそうなったのかは定かではないけれど、終わりよければ全て良し。
永那ちゃんの誕生日のことは、随分前から考えていた。
最初は普通にデートをしようと思ったけど、お母さんの心の状態が思っていたよりも日によってまちまちで、永那ちゃんの帰りが遅くなるのは候補から除外した。
永那ちゃんが喜ぶことと言えば…エッチなことだから…ネットカフェに行く案も考えたけど、それも結局、永那ちゃんが怪獣になっちゃったら歯止めが効かなくなりそうで、やめた。
誕生日当日は平日だから、それがネックなような、ありがたいような…複雑な気持ちになる。
土日だったら、きっとお母さんと3人になって、2人の時間が作れない。
お母さんと一緒に過ごすのは良いのだけれど、少しは2人の時間も欲しかった。
ひとりでは良い案が思い浮かばなくて、千陽に相談した。
ほとんど毎日通話をしているから、相談はしやすかった。
そうしたら、「多少居残るくらいなら出来るだろうから、学校で2人きりの時間を作ったら?」と提案してくれた。
人気の少ない場所を探せば、キスくらいは出来るだろう…と。
人気の少ない場所と聞いて、パッと思い浮かんだのは、なぜか、体育館前の渡り廊下にある自動販売機だった。
まだ1年経っていないけれど、私が永那ちゃんに告白した、思い出の場所。
…でも、あそこは人通りがそれなりにあった。
通りがかる生徒が私達をチラチラ見て、恥ずかしかったのを覚えている。
生徒会室なら、誕生日の日に活動がないから空いている。
生徒会長の私なら、鍵も、すぐに借りられる。
そんな使い方はしたくないけれど。
「千陽、2人きりになっちゃうとさ?…その、永那ちゃん、暴走しちゃわないかな?」
文化祭を思い出す。
私が断ると、悲しそうな、傷ついた顔をする。
そんな顔は見たくない。
あの時は、振替休日があったから次の約束が出来たけど、今回は約束出来る保証がない。
…でも、学校でするのは、絶対に嫌。
キスくらいなら、いいけど。
キスですら、抵抗がないと言えば嘘になる。
「あたしがそばにいても、永那の暴走は止まんないだろうし…」
それならいっそ、優里ちゃんと森山さんにも協力してもらおう、ということになった。
優里ちゃんと森山さんがいれば、いくら永那ちゃんでも、キスより先はしないはず。
ついでにみんなで祝えて、一石二鳥。
ということで、永那ちゃんの誕生日パーティサプライズ計画をするために、始業式の後の部活動紹介後、みんなで計画を練ることにした。
千陽を待たせちゃったけれど、「動画見てたし、平気」と微笑まれた。
「穂ちゃんって、永那の家にお泊まりしちゃダメなの?」
優里ちゃんが開口一番に言った。
「え…?」
考えたこともなかった。
「永那のお母さんとも仲良いんだよね?春休みも3人で遊んだって言ってたし」
「き、聞いてみる…!ありがとう!優里ちゃん!」
永那ちゃんのお母さんとは、連絡先を交換していた。
SNSもフォローしあっている。
「じゃあ、みんなで永那ん家行くっ?」
優里ちゃんが楽しそうに言った。
みんなで永那ちゃんの家に行って、お祝いして、私だけが残ってお泊まり…。
それだけでも十分だと思うけど…でも…何か…何か、物足りないような、違うような気がした。
「食べ物はみんなで持ち寄ったり、スーパーで買って帰ったりすればいいけど…みんなで家に行って、永那ちゃんのお母さん、大丈夫かな?」
「穂が心配なら、やめよ」
千陽がすぐに却下して、驚く。
目が合って、彼女が優しく笑う。
「穂が心配するってことは、良くないってことだと思うから」
私の気持ちを汲んでくれる優しさに、嬉しくなる。
「それに穂、サプライズにしたいって言ってた。永那の家に行くなら、サプライズにならないんじゃない?…事前にお母さんに穂が泊まることを言っておくってなったら、永那に隠し通すのは難しいかもしれないし」
「そっか~」
「いくつか…用意しておいた方がいいかも…」
「いくつか?」
「永那、すぐ勘づくし、いくつかサプライズを用意しておいて、どれかがバレても大丈夫なようにする…とか…」
「楽しそう!じゃあ、まずは学校でサプライズだね!」
優里ちゃんが机に体を乗り出して、紙とペンを広げた。
そんな話を大声で教室でしてしまったものだから、クラスメイトが次から次へと興味を持ち始め、なんだか壮大な誕生日パーティになったのでした…。
みんなが色んな提案をしてくれて、最終的に永那ちゃんにいたずらをするような形になってしまったけれど…千陽の予想は的確で、たくさんの罠?を仕掛けたことで、どれも永那ちゃんに気取られることなく、成功した。
私が永那ちゃんの家に行くことが1番に知られてしまうのではないかとヒヤヒヤしたけれど、お母さんが上手くやってくれたみたい。
上手くやってくれたのか…自然とそうなったのかは定かではないけれど、終わりよければ全て良し。
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