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9.移ろい
528.大人
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「優里達と、穂とじゃ、全然違う。優里とキスしたいなんて思ったことないもん」
どれだけ話を聞いても理解ができない。
「私は、友達じゃないってこと?」
「少なくとも、優里達とは違う」
「永那ちゃんは、私達のこと、親友みたいって言ってた」
「親友、ね…」
「私、友達って呼べる友達がいなかったからわからないんだけど…千陽の言う、私と優里ちゃん達が違うっていうのは、そういうことなのかな?」
「知らない。あたしも友達なんてほとんどいなかったし。…でも、親友とキスしたいって思う?普通は思わないんじゃない?…だから、あたしはいつも、穂と永那の子供になれたらいいのにって思ってる」
友達でもなく、親友でもなく、子供…。
「子供とキスするのもおかしな話だとは思うけどな…?」
「まあね」
彼女が戯けるように笑う。
「セックスなんて以てのほか」
「考えたくないよ…!」
「穂、さっきから手が止まってる。このままじゃ一晩お風呂に居座ることになりそうだけど」
「あ!」
指摘され、慌てて動き始める。
つい、あたたかいから、のんびりしてしまう。
「好意の先で、ありのままの千陽を見てくれる人は、いないのかな?」
やっと全て洗い終え、一足先に湯船に浸かっていた千陽を見る。
彼女は私を見上げ、その視線に若干緊張しつつ、私も湯船に浸かった。
彼女と向き合うように座ると、なんだか恥ずかしい。
「例えば、久米さんが、永那ちゃんみたいに振る舞ってくれたら、千陽は久米さんを怖がらなかったのかもしれない」
「あたし、男は嫌」
「あ…あの…今は、性別を考えないで…。例えばの話!…あの、優里ちゃんの知り合いの方でもいいよ?」
千陽が近づいてくるので、少し身構える。
彼女は私の足の間に入り込み、回転する。
私に寄りかかるように座って、上目遣いに見られた。
私の手を取って、お臍の辺りに回される。
「永那みたいにって…それ、前提から違うんだし、無理じゃない?」
「前提?」
「永那はあたしに興味がない。困ってる人がいたら無意識にでも助けちゃうのが永那で、そこに相手の容姿は関係ないの。あたしがどれだけ永那に好きって言っても、永那はあたしに興味がないから響かない。…わかる?」
「言ってることはわかるけど、わからない」
彼女が首を傾げる。
「好意があっても、永那ちゃんみたいに千陽に親切にしてくれる人はいるんじゃない?むしろ、千陽のことが好きだからこそ、そう動ける人もいるんじゃないかな?って思うんだけど…」
「あたしのことが好きなら、そこには下心が生まれるでしょ?あたしは、その下心が嫌いなの」
「じゃあ、純粋に人に親切に出来る人が良いってことだよね?…そういう人も、いるんじゃない?千陽に好意を抱いていても、周りの人に親切に出来る人」
「穂は本当に馬鹿」
「え!?」
「下心なしに親切にしてくれる人なんて、そもそもあたしに興味を持つわけがないでしょ?」
「え…?」
「そういう人は、穂とか、優里とか、桜のことを好きになるの。あたしじゃないの。あたしみたいな面倒な人間は選ばれないの」
「そうかなあ?千陽は素敵な人だよ?絶対にいると思うんだけどな」
彼女は小さく息を吐いて、お湯に沈んでいく。
…何か、気に障るようなことを言ってしまっただろうか?
千陽が沈むので、彼女のお臍の辺りにあった私の手に、胸が触れる。
トクトクと心臓が音を鳴らし始める。
私は気を紛らわせるために天井を見た。
そのせいで、余計に手が上がって、彼女の胸に触れてしまう。
意識すればするほど“さわりたい”と、心の声が騒ぐ。
落ち着こうと深呼吸するけれど、全く落ち着く気配はない。
少しだけ…。
そう思って、彼女の房を指先で触れる。
「くすぐったい」
「ご、ごめん…!」
「さわるなら、ちゃんとさわって?」
「…ごめんなさい」
胸が早鐘を打つ。
唾を飲むと、ゴクリと音が鳴った。
それすら恥ずかしくて、さらに鼓動が速まる。
「穂、さわって?」
手を取られ、彼女の胸に置かれる。
指先を動かすと、「ん」と彼女が鳴くから、私は眉を寄せた。
「千陽…」
「ん?」
「これは、下心じゃないの…?」
「穂は特別」
「そうなんだ…」
結局、彼女の魅惑から逃れることはできず、堪能してしまう。
不甲斐なさに項垂れつつも、手を動かす。
このもちもちした肌と、ぷるぷるとしたゼリーみたいな触感がたまらなく気持ちいい。
自分の胸に触れてみても、こんなに柔らかくない。
お湯に浸かっているのがもったいないと思えてくる。
どうせさわるなら直に、お湯に浸かっていない状態で触れたい。
そんなことを思っている時点で、たしかに私も変態なのかもしれない…と自省する。
でも…!やっぱり永那ちゃんの変態さの方がおかしい…!
そこは譲れない。
「穂」
項垂れていた後頭部に彼女が手を伸ばす。
彼女の顔がグッと近づく。
ちょんと突き出した唇が、やけに強調される。
「ちゅー」
その可愛らしい要求に、私は応えずにはいられない。
唇が重なる。
暑いのは、湯船に浸かりすぎたせいだ。
どれだけ話を聞いても理解ができない。
「私は、友達じゃないってこと?」
「少なくとも、優里達とは違う」
「永那ちゃんは、私達のこと、親友みたいって言ってた」
「親友、ね…」
「私、友達って呼べる友達がいなかったからわからないんだけど…千陽の言う、私と優里ちゃん達が違うっていうのは、そういうことなのかな?」
「知らない。あたしも友達なんてほとんどいなかったし。…でも、親友とキスしたいって思う?普通は思わないんじゃない?…だから、あたしはいつも、穂と永那の子供になれたらいいのにって思ってる」
友達でもなく、親友でもなく、子供…。
「子供とキスするのもおかしな話だとは思うけどな…?」
「まあね」
彼女が戯けるように笑う。
「セックスなんて以てのほか」
「考えたくないよ…!」
「穂、さっきから手が止まってる。このままじゃ一晩お風呂に居座ることになりそうだけど」
「あ!」
指摘され、慌てて動き始める。
つい、あたたかいから、のんびりしてしまう。
「好意の先で、ありのままの千陽を見てくれる人は、いないのかな?」
やっと全て洗い終え、一足先に湯船に浸かっていた千陽を見る。
彼女は私を見上げ、その視線に若干緊張しつつ、私も湯船に浸かった。
彼女と向き合うように座ると、なんだか恥ずかしい。
「例えば、久米さんが、永那ちゃんみたいに振る舞ってくれたら、千陽は久米さんを怖がらなかったのかもしれない」
「あたし、男は嫌」
「あ…あの…今は、性別を考えないで…。例えばの話!…あの、優里ちゃんの知り合いの方でもいいよ?」
千陽が近づいてくるので、少し身構える。
彼女は私の足の間に入り込み、回転する。
私に寄りかかるように座って、上目遣いに見られた。
私の手を取って、お臍の辺りに回される。
「永那みたいにって…それ、前提から違うんだし、無理じゃない?」
「前提?」
「永那はあたしに興味がない。困ってる人がいたら無意識にでも助けちゃうのが永那で、そこに相手の容姿は関係ないの。あたしがどれだけ永那に好きって言っても、永那はあたしに興味がないから響かない。…わかる?」
「言ってることはわかるけど、わからない」
彼女が首を傾げる。
「好意があっても、永那ちゃんみたいに千陽に親切にしてくれる人はいるんじゃない?むしろ、千陽のことが好きだからこそ、そう動ける人もいるんじゃないかな?って思うんだけど…」
「あたしのことが好きなら、そこには下心が生まれるでしょ?あたしは、その下心が嫌いなの」
「じゃあ、純粋に人に親切に出来る人が良いってことだよね?…そういう人も、いるんじゃない?千陽に好意を抱いていても、周りの人に親切に出来る人」
「穂は本当に馬鹿」
「え!?」
「下心なしに親切にしてくれる人なんて、そもそもあたしに興味を持つわけがないでしょ?」
「え…?」
「そういう人は、穂とか、優里とか、桜のことを好きになるの。あたしじゃないの。あたしみたいな面倒な人間は選ばれないの」
「そうかなあ?千陽は素敵な人だよ?絶対にいると思うんだけどな」
彼女は小さく息を吐いて、お湯に沈んでいく。
…何か、気に障るようなことを言ってしまっただろうか?
千陽が沈むので、彼女のお臍の辺りにあった私の手に、胸が触れる。
トクトクと心臓が音を鳴らし始める。
私は気を紛らわせるために天井を見た。
そのせいで、余計に手が上がって、彼女の胸に触れてしまう。
意識すればするほど“さわりたい”と、心の声が騒ぐ。
落ち着こうと深呼吸するけれど、全く落ち着く気配はない。
少しだけ…。
そう思って、彼女の房を指先で触れる。
「くすぐったい」
「ご、ごめん…!」
「さわるなら、ちゃんとさわって?」
「…ごめんなさい」
胸が早鐘を打つ。
唾を飲むと、ゴクリと音が鳴った。
それすら恥ずかしくて、さらに鼓動が速まる。
「穂、さわって?」
手を取られ、彼女の胸に置かれる。
指先を動かすと、「ん」と彼女が鳴くから、私は眉を寄せた。
「千陽…」
「ん?」
「これは、下心じゃないの…?」
「穂は特別」
「そうなんだ…」
結局、彼女の魅惑から逃れることはできず、堪能してしまう。
不甲斐なさに項垂れつつも、手を動かす。
このもちもちした肌と、ぷるぷるとしたゼリーみたいな触感がたまらなく気持ちいい。
自分の胸に触れてみても、こんなに柔らかくない。
お湯に浸かっているのがもったいないと思えてくる。
どうせさわるなら直に、お湯に浸かっていない状態で触れたい。
そんなことを思っている時点で、たしかに私も変態なのかもしれない…と自省する。
でも…!やっぱり永那ちゃんの変態さの方がおかしい…!
そこは譲れない。
「穂」
項垂れていた後頭部に彼女が手を伸ばす。
彼女の顔がグッと近づく。
ちょんと突き出した唇が、やけに強調される。
「ちゅー」
その可愛らしい要求に、私は応えずにはいられない。
唇が重なる。
暑いのは、湯船に浸かりすぎたせいだ。
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みんなの感想(56件)
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まだまだ続きがあるので、楽しみに読んでいきます!
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長い間待たせてしまってすみません😅
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主人公二人は放っておいてください?(笑)
放っておくというのは、千陽ちゃん(佐藤)の話を別で設けてほしいということでしょうか…?
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おはようございます!!
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コメントめちゃくちゃ嬉しかったです!!ありがとうございます!!