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第六章・次期皇太子はドS!? 4

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お前が婚約破棄をされる前に我が邸宅に来て事情と謝罪をしに」
「まあ、レイヴァン様が我が家に!? しかも謝罪だなんて」
 高貴な身分である皇族が頭を下げるなんて考えもしない事だった。
 私が驚いているとクリスは、クスッと笑う。
『当然だろう。君主であるクロノス様の加護を受けたサファード一族の娘に冤罪をかけたのだからな。本来なら抗議するどころか、一切サファード一族は皇族から手を引きたいところだ』
「もちろんです。あの謝罪がなく、娘に危害をくわえるようなら我々は、名誉にかけて全力で阻止するつもりでした。私も妻もエルザがそんな事をするなんて思ってもいません」
 お父様は、はっきりと私が無実だと断言してくれた。その言葉を聞いて私は心の底から嬉しいと思った。信じてくれている。
「お父様……」
「エルザ。そもそも、そんな男だったら私は最初から婚約なんてさせなかった。サファード一族に唯一生まれた真の後継者。そして私達の可愛い娘なのに」
 さらに強い口調で言うお父様に驚かされるが涙が溢れてきた。
 両親のあたたかさに改めて実感する。
「しかし殿下はおっしゃった。『エルザを守りたいから手を貸してほしい』と。その後にクリス様が現れたが、その時の殿下が必死に頼む心の内を聞いたから協力する気になったんだ。私も妻も……」
「ええ……その通りですわ。そうじゃないと誰が可愛い娘を危険な目に遭わせますか」
 お父様……お母様まで。
「ありがとうございます……」
「しかし、その聖女様にも困ったものだわ。どうにか出来ないのでしょうか? このままだと娘が可哀想過ぎます」
『その心配は必要ない。すでに手は打ってある。それに、敵にする相手を間違えた。我が君主はこの件に関してお怒りだ。今回の権限は私に一任されている。そのためにも今は父上に勝手な事をしないように、機嫌を取って見張っておけと言ってある。父上は不満そうだったが、母上を婚約破棄した代償はきっちり払ってもらうつもりだ』
「……なるほど。それはもちろんですとも」
 お母様の心配とは逆に我が息子とお父様は楽しそうに笑っていた。
 何を企んでいるのかしら?
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