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番外編・皇太子の憂鬱(レイヴァン視点)22

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 なので、とりあえず捕まえ身を隠させた。そして罪を認めたら離れて暮らす家族の面倒は見ると伝えてある。
 それにクリスが監視しているのだ、裏切れはすぐに分かる。クリスもハンナにかけられていた『魅了』を解いていた。
 そしてもう一つの問題が。エルザはクリスをお腹の中に身ごもった。これに関しては大変喜ばし事なのだが。私はクリスの指示に従い、パーティーのパートナーの相手をレイナを誘った。婚約破棄にするきっかけにするために。
 しかしレイナは他のとりまきの令嬢を使い、その事を自慢げにエルザに教えてしまった。そのショックで彼女が倒れてしまったと聞いた時は心臓が止まるかと思った。
 本当は抱き締めたい気持ちを抑えて冷たく突き放さないといけない時は、隠れて落ち込む。自分はこんなにも弱い人間だとは思わなかった。
 そして、運命の婚約破棄の日。私は心を殺してエルザに婚約破棄を告げた。
 多くの貴族が見ている前で。普通に考えてもありえない光景だろう。一国の皇太子が大勢の前で自分が浮気をしていると宣言しているようなものだ。正気の沙汰ではない。
 しかも、していない罪を着せられ、国外追放。途中でレイナが自分の好感度のために国内で幽閉したらどうだと言い放ったが、それは想定内。国外追放では見つけて始末出来ないと聖皇が拒むだろうと言ったいたクリスの読みは当たった。
 全ては計画の内だった。だが、婚約破棄をした時のエルザの表情。連れ去られる時の彼女の悲痛な叫びは頭から離れなかった。あれが……私が望んだ光景か?
 違う。こんな事は許されるはずがない。頭がおかしくなりそうだった。
 気分が悪くなったと噓をつき早々とパーティーを切り上げて寝室に戻る。いそいで戻ったので息がはぁはぁと切らしていた。そこで、たまたま目に付いた等身大の鏡。そこに映った自分は酷く顔色が悪く真っ青だった。これが……私か?
 帝国一の美男子と言われてはいたが、どう見てもおぞましい顔に見えて仕方がなかった。何よりも自分自身を殴り殺したいほど腹が立ってくる。思わず素手で鏡を割ってしまった。ボタボタと右手から大量の血が垂れてくる。
 痛い……でも心がもっと痛い。どうしようもなく心が砕けそうで涙溢れて、呼吸するのもままならず蹲る。身体はガタガタと震えあがっている。
 ひゅーひゅーと呼吸が乱れていると、クリスの声が聞こえてきた。
『馬鹿め。自分で知っておきながら、過呼吸になるとは。本当に死にたいのか?』
 すると呼吸が楽になる。どうやらクリスが治してくれたようだ。
 ゼーゼーと荒い呼吸を整えながら私は声を必死に出す。
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