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博愛主義!ヤンデレンジャー!!
石竹桃という少女(4)
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「・・・桃?」
先輩の声に振り返る。
「・・・」
「そ、それ・・・何をやっているんだ?」
先輩は桃の手元に視線を寄せた。
「何って、握りつぶしているんですよ?茜さんを」
ブチブチブチブチ、と糸がはち切れる音。
「茜さんって・・・フィランスレッドのぬいぐるみだよな、どうしたんだそれ」
目の前に本物の桃がいるのに、どうして先輩は人形なんかを見ているのか。
「なんでそんなこと聞くんですかね?」
頭と体を握り、思いっきり引っ張ったら今度は布が裂けた。
「それ、どこから持ってきたんだ」
桃の手の中には茜さんの残骸しかなかったので、そのまま手を開いたら風に乗ってそれはどこかに飛んで行ってしまった。
「さっき助けた男の子が、持っていたんです」
「なんでそれを!助けた子供がもっていたぬいぐるみを壊しているんだ」
「・・・?」
何故だろう、先輩は怒っている。
「どうしてフィランスレッドのぬいぐるみを壊してるんだ」
「だって、桃が助けたのにレッドが好きだっていうから」
「!?」
「おかしいじゃないですか。あの子は桃に惚れた筈なのに、確かに桃の可愛さを見た筈なのに・・・フィランスレッドのぬいぐるみを桃に渡してきたんです」
「何の話をしてるんだ?」
「さっき桃が助けた男の子・・・僕の宝物だからあげるって、よりによって茜さんのぬいぐるみを渡してきたんですよ!?おまけに『大事にしてね』だなんて、おかしくないですか?おかしいですよね、桃に助けられて、フィランスピンクを好きになったのならレッドのぬいぐるみなんてその場で滅茶苦茶にしてゴミにしてしまえばいいのに!どうして大好きな桃にそれを渡すんですか?おかしくないですか?宝物じゃないですよね?」
桃が助けたのだからその心は桃が一方的に独占していい筈なのに。
「ど、どうしたんだよ桃・・・その子は今はピンクが一番好きになったんだろ?いいじゃないか。だいたい子供なんだから深く考えずに助けてくれた桃に感謝の気持ちとして一番お気に入りのおもちゃをくれただけだよ・・・」
「良くないですよ!桃の事が一番好きなのにレッドのぬいぐるみが宝物だなんて!大事にしてほしいと思うなんて!あり得ない!それじゃあなんですか?わざわざ助けに来た桃と画面越しにしか見ていないレッドが同レベルっていうことですか?」
「どれくらい好きとか別にいいじゃないか、ヒーローってそういうものじゃないのか?というか、知らない人からの人気とか、どうでもいいだろ」
人気とかどうでもいい。どういう意味だろう。とんち、なぞなぞ、ひっかけクイズ?
「・・・」
考えても桃にはさっぱりわからない。どうでもいいわけないのに。
状況を整理する。少年は助けてくれた桃に大好きと言って宝物をあげるといった。その宝物というのはフィランスレッドのぬいぐるみだった。その子は桃が大好きなのにレッドのぬいぐるみが宝物だというのはおかしい。普通フィランスピンクである桃が好きになったのならレッドのぬいぐるみはゴミ同然になるのでその場で捨ててしまう。
つまりあの少年は桃の可愛さを見ておきながら改心していない?
「・・・やっぱりおかしい」
このことに怒るのは当たり前だと思う。それで先輩は人気とかどうでもいい、ヒーローはそういうものって言っていた。少年の行為を気にする必要はない、という意味?
「・・・!」
もしかして、嫉妬?
「・・・桃?」
空先輩こっちを見てる、なんだか不安そう。もう火事はひと段落ついたし不安になる要素なんてないはずなのに。あぁ、桃わかっちゃった。先輩、あの男の子に嫉妬してるんだ。桃があの男の子がフィランスレッドを好きなことに腹を立てているから、嫉妬してあんなこと言ったんだね。そっか、ヒーローはそういうものっていうのはヒーローと一般人にある大きな壁があるのは仕方がないからそんな奴らを見るなってこと。人気とかどうでもいいっていうのは、俺にとっての一番は桃だから他の有象無象からの人気なんて気にしないでっていうことだ!
だから不安そうなんだ、彼氏でもないのに嫉妬して、むしろただの少年に嫉妬するなんてもう告白しているようなものだから。桃の返事が怖いんだ!
「ふふっ、先輩ってば可愛いです」
「え?」
「先輩の言いたいこと、全部わかりましたよ」
そっか、先輩はもうとっくに桃のことが大好きだったんだ。仕方ないよね、桃は誰よりも可愛いんだから先輩が簡単にメロメロになっちゃうのも無理ないよ。ごめんね、茜さん。先輩の心はもう桃のものだし、桃は可愛さに油断なんてしないからこれからもっともっと先輩を愛してあげて、先輩の愛を独占するから。
「あの、お願いがあるんです」
「な、なに?」
「桃に会った時はたくさん、可愛いって言ってください」
あぁ、可哀そうな茜さん。こんなに簡単に先輩を手に入れてしまって。可愛いって、ずるいですね。
「そしたら、もうこんなことしません」
これからは先輩の恋人なんだから、あんまり嫉妬させないようにしないと。
「いいですか?空先輩」
先輩は喜んで頷いてくれた。
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