悲劇の清純ヒロインやめて神様のしもべになりました。

寿司

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第12話 あたしのファーストキスが…!

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「うっうっ……これからどうすんのよ」 

「何を泣く必要がある? むしろチャンスではないか」

 牢獄に閉じ込められたあたしたち。二人でやっとなぐらいの檻なので少し狭い。おまけにカビ臭いしじめじめするしもう最悪!!!

「何がチャンスよ……」

「城に潜入出来たのだぞ? 向こうは我らが捕まっていると思ったままだし、好き勝手出来るではないか」

「はぁ……ポジティブね」  

 あたしはそっと自分の太ももを見る。そこにはシルシと呼ばれるマークは跡形もなくなっていた。
 やっぱりあたしは聖女ではなくなったらしい。いやそれはどうでもいいんだけど、魔法で荒稼ぎが出来なくなるのかと思うとちょっと寂しい。

 そのとき、おい!! と檻の中から声がした。
 そちらの方に向くと、そこには見たことのある顔があった。

「えーっと、エルメちゃん!? 」

 何とそこにはあのツインテ美少女が腰に手を当てて立っていた。でも確かに彼女はギルと冒険に出掛けたはず。そんな彼女がなぜここに?

 そんなあたしの顔を見てか、エルメはふんと鼻を鳴らした。

「もうこの街にはいないとでも思ったか? 勇者をやめた訳じゃない。ただ偽物を捕らえに来ただけだ」

「偽物……?! 」

「そうだ。本物の聖女はお前みたいな下品な女じゃない。それを確かめに来ただけさ」

「そんなこと言われてもな……」

 というか前会ったときより口調が男っぽいような? こっちが素の性格なのだろうか?
 するとエルメはちらりとあたしの横に視線を移し、ルティのことを見る。

「……誰だ、その男は? 」

 ぎくり。まずいな。
 エルメにだけはあたしが禁忌を破り、ルティリオを復活させてしまったことは内緒にしたい。

「あーあー……この人は………そうそう、あたしの彼氏! 」

 するとエルメは数度「か」という単語を繰り返すと、「彼氏!? 」ととびきり大きな声で叫んだ。

「そーだけど? 」

「嘘だ……有り得ない。そもそもそんな男見たことない……」

 エルメは一人で何やらぶつぶつと呟き始めた。何だか様子がおかしいので、あたしは思わず首を捻る。

「どーしたんだろうね? 」

 あたしはルティに尋ねると、彼は心底どうでもよさそうにくわぁと欠伸を一つ。

「さぁな。でもこの娘がそう言うならお望み通りにしてやろう」

「は、それってどういう……っん」

 無理やり体を引き寄せられたかと思うと、唇に柔らかいものが触れた。ルティにキスされたのだと気が付くまでに時間がかかる。

「なななななななな??!??!?! 」

 それを見たエルメはなぜだか一人慌てふためいている。

 唇を寄せていたのはほんの数秒ではあるが、あたしにはずっと長く感じられた。

「こういうことだ。小娘、去るが良い」

 ルティはにやりと笑みを浮かべると、なぜだか誇らしげだ。

「……僕は認めない!! 」

 エルメはそう言い残すと、勢い良く地上へと続く階段を駆け上り、去っていってしまった。

「行ったか……まあうるさい奴がいなくなって好都合よ」

 ルティはほうと溜め息をつく。
 しかしあたしは彼にキスされたという事実に今しばらくぼーぜんとしていた。 
 そんなあたしに気が付いたのか、ルティがこちらに目を向ける。

「どうした? こいびと、というのはこういうことをするんじゃないのか? 」

「……………馬鹿!!! 」

 あたしはぱちんとルティに一発ビンタをする。
 ルティは避けることもなく、その攻撃を受けるが、特に効いてはいなそうだ。

「……ふむ、これは怒りの感情か。なぜ怒る? 」

「こういうことは本当の恋人同士じゃないとしちゃ駄目だって!!! 」

 前世ではキスなんて珍しいことでもなかったのに……。やばい、久しぶりすぎて心臓がバクバクする。

「そうなのか? なぜ? 」

 ルティは本気で分からないと言ったように顎に手を当てた。忘れてた……こいつ、見た目は人間っぽいけど本当は神様なんだよね。

「なぜって……んーー、人間社会のルールみたいなものよ。告白して、恋人になってからそういうスキンシップはするの! 」

「告白? 」

「『あなたのことが好きです、恋人になってください』って言うことよ」

「ふむ、人間は非生産的だな。そこらの虫や動物はそんなことをせずに契りを交わしているではないか」

「そうかもしれないけどさ……そういうものなの」

 なるほど……とルティは頷いた。
 よく分からないが彼なりに納得してくれだようだ。

「って、そんなことは置いといて、あたしのシルシってやつ消えちゃったんだけど! どーすんの? これじゃああたし聖女ではなくなっちゃうよ」

 するとルティはにやりと笑みを浮かべる。

「たしかに聖女ではないな、だが貴様は新たな存在に生まれ変わったはずだ」

「へ? 」

 状況が飲み込めないあたしとは逆に、ルティは何か思い付いたようである。

 

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