8 / 56
12/24
悪役令嬢、盗聴する
しおりを挟む
◇◇◇
「急に呼び出しといて何なのよ、疲れた……」
「まあそう怒るな。またとないチャンスかもしれんぞ」
城下町に呼び出された私はロキと合流。お屋敷を抜けるのに凄い苦労したんだからね……。引き留めるメイドたちを何とか説得して出てきたんだから。
「チャンス? 」
「説明は後だ! 尾行するぞ」
「尾行!? 」
そんな探偵みたいなことやったことないよ……。しかしロキはずんずんと人の波を掻い潜り、どこかへと向かって行く。
「待ってよ、あんまり目立つことするとバレちゃうよ」
「問題ない。俺の魔法で気配を消している」
なるほど……。魔法ってスッゴい便利なものなんだなぁ。
そにしても流石クリスマスイブ。周りはカップルだらけだ。町中が電飾で彩られ、ツリーが立ち並ぶ。
「おい、はぐれるなよ」
ロキに手を掴まれた私は思わず顔を赤らめた。
だって仕方ないじゃないか、男性とクリスマスイブにデートしたことなんて人生一度もないのだから。
「ちょっと手! 」
「手が何だ? 」
心底何でもない風にロキが言う。
チャラ男は流石だ、手を繋ぐぐらいどうってことないらしい。
変に感心してると不意にロキがいたぞ、と声をあげた。そこは町から少し外れた喫茶店。人通りも少なく、客もあまりいなそうだ。
そしてぽつんと一人椅子に座っているのは間違いない、エミリアだ。
「あ……エミリ……」
「おい馬鹿」
ロキに口を塞がれ、店の正面の路地裏に身を潜める私たち。
「声を出すな、尾行がバレるだろ」
「ごめん、つい……」
運良くテラスの席にエミリアは座っていたため、外からでも様子がうかがえる。
「エミリア一人だけね、友達と会うって言ってたけどな」
「ほんとに"友達"かねえ……」
ニヤニヤと笑うロキ。
すると、路地裏に隠れる私たちの前をフードで顔を覆った怪しい人物が横切った。
まるで辺りを警戒しているようにキョロキョロと見回すと、逃げるようにして喫茶店に入る。
すると当たり前のようにその人はエミリアの前に座る。
「誰か来たよ! でもあれは……」
誰だ? 背丈から男性っぽいけれど顔まで認識できない。何とか目を凝らすけれど私の視力では無理なようだ。
「そう急ぐな、フード脱ぐぞ」
すると唐突にごうと強い風が吹いた。風はその人のフードをぱさりと脱がす。
「あ! 」
私は思わず声をあげた。そのフードの人は良く見知った婚約者だったのだ。
慌ててフードを深く被り直す"エドワード"だったが、私たちはばっちり顔を確認していた。
しかし、どうしてこう都合良く風が吹いたんだろう……? さっきまでそよ風一つ吹いていなかったのに。
「風を吹かせるなんて俺にとっちゃ造作もないことだ。ほらそれよりお前に嘘ついて二人が会ってるぞ」
私の怪訝そうな表情を察してかロキが言った。つまり彼の魔法というわけだ。うん、何とも心強い。
「確かに怪しいわね。でもこれだけでは浮気の証拠には弱いのでは?」
「まぁな。だが会話内容は重要かもしれん」
会話か……確かに何を話してるのか気にはなるけれど。
「距離が遠くて声まではよく聞こえないわ……」
するとロキがぱちんと指を鳴らした。その音に反応して現れたのは2匹の小さな蝶。
「蝶? 」
「俺の使い魔だ。こいつを使って盗聴しよう」
つ、使い魔。流石はファンタジーな世界。何でもありである。
ロキの指示通り1匹を二人の元に飛ばすと、残った蝶からは二人の会話が聞こえてきた。
この世界での盗聴器みたいなものか……。しかし私せっかくのクリスマスイブに一体何をしているのだろう。
『……で……どうす? 』
雑音が交じる。
「イビルドロップ、もうちょっと近付いてくれ」
イビルドロップというのがこの使い魔の名前なのだろう。ロキの指示の後、鮮明に彼らの声が聞こえてきた。
『イリアを消すしかない』
……これはまた物騒な会話だ。
『でもどうやって? 』
『イリアから僕との婚約破棄を言うはずはない。それならば可哀想だが彼女には罪を被って貰おう』
いや全然婚約破棄は受け入れますけど! 命さえ助けて貰えるなら!
『つまり私へのいじめを仕立てあげ、1/1の王位継承パーティで婚約破棄を言い渡すという訳ですね』
『そうだ。婚約破棄を言い渡され、妹にその座を奪われ、プライドをズタズタにされるなんて目も当てられない。神の元へ還った方が彼女も幸せだろう』
『そうですね……。私でしたら死んでしまいたいと思います』
えーっと……つまり、妹いじめの罪を背負い、婚約者も盗られて可哀想なイリアは死んだ方が彼女も幸せだよね☆ってこと?
何というお花畑……。理解が出来なすぎて鳥肌が立つ。
『ああ、罪を犯す私たちをお救いください』
『二人で地獄に落ちよう、エミリア』
ーーそこで通信は途絶えた。
通信が切れてからも私たちは何も言えずただ呆然としていた。
先に口を開いたのはロキだった。
「とんでもねえ奴等だなお前の婚約者と妹」
「……言わないで。私が一番分かってるから」
何だか無性に腹が立ってきた。
どうして私がそんなことされなきゃいけないんだろう?
「あの幸せカップルを地獄に叩き落としたらどんな顔するんだろな? 俺ちょっとワクワクしてきた」
「性格歪んでるわねえ……いやでも私も同じ気持ちよ。こうなればこっちだって徹底的に戦ってやる! 目にもの見せてやるわ」
するとロキが楽しそうな笑みを浮かべた。
「良いね、俺性格悪い女が大好きなんだ。イリアといれば当分退屈しなそうだ」
性格悪い女上等、誰か殺されてやるもんか!
「んでどうする? あいつらも動きがなさそうだし、せっかくだからケーキでも食いに行くか? 」
「え! 」
「顔に書いてあったぞ、クリスマスイブなのにどうしてこんなこと……ってね」
ロキは何でもお見通しのようだ。
「……私、苺のケーキが良い」
「はいはい。じゃ、俺はチーズケーキで」
こうして私たちは互いに顔を見合わせ、ふっと噴き出したのだった。
今年のクリスマスイブは中々楽しいものになりそうだ。
「急に呼び出しといて何なのよ、疲れた……」
「まあそう怒るな。またとないチャンスかもしれんぞ」
城下町に呼び出された私はロキと合流。お屋敷を抜けるのに凄い苦労したんだからね……。引き留めるメイドたちを何とか説得して出てきたんだから。
「チャンス? 」
「説明は後だ! 尾行するぞ」
「尾行!? 」
そんな探偵みたいなことやったことないよ……。しかしロキはずんずんと人の波を掻い潜り、どこかへと向かって行く。
「待ってよ、あんまり目立つことするとバレちゃうよ」
「問題ない。俺の魔法で気配を消している」
なるほど……。魔法ってスッゴい便利なものなんだなぁ。
そにしても流石クリスマスイブ。周りはカップルだらけだ。町中が電飾で彩られ、ツリーが立ち並ぶ。
「おい、はぐれるなよ」
ロキに手を掴まれた私は思わず顔を赤らめた。
だって仕方ないじゃないか、男性とクリスマスイブにデートしたことなんて人生一度もないのだから。
「ちょっと手! 」
「手が何だ? 」
心底何でもない風にロキが言う。
チャラ男は流石だ、手を繋ぐぐらいどうってことないらしい。
変に感心してると不意にロキがいたぞ、と声をあげた。そこは町から少し外れた喫茶店。人通りも少なく、客もあまりいなそうだ。
そしてぽつんと一人椅子に座っているのは間違いない、エミリアだ。
「あ……エミリ……」
「おい馬鹿」
ロキに口を塞がれ、店の正面の路地裏に身を潜める私たち。
「声を出すな、尾行がバレるだろ」
「ごめん、つい……」
運良くテラスの席にエミリアは座っていたため、外からでも様子がうかがえる。
「エミリア一人だけね、友達と会うって言ってたけどな」
「ほんとに"友達"かねえ……」
ニヤニヤと笑うロキ。
すると、路地裏に隠れる私たちの前をフードで顔を覆った怪しい人物が横切った。
まるで辺りを警戒しているようにキョロキョロと見回すと、逃げるようにして喫茶店に入る。
すると当たり前のようにその人はエミリアの前に座る。
「誰か来たよ! でもあれは……」
誰だ? 背丈から男性っぽいけれど顔まで認識できない。何とか目を凝らすけれど私の視力では無理なようだ。
「そう急ぐな、フード脱ぐぞ」
すると唐突にごうと強い風が吹いた。風はその人のフードをぱさりと脱がす。
「あ! 」
私は思わず声をあげた。そのフードの人は良く見知った婚約者だったのだ。
慌ててフードを深く被り直す"エドワード"だったが、私たちはばっちり顔を確認していた。
しかし、どうしてこう都合良く風が吹いたんだろう……? さっきまでそよ風一つ吹いていなかったのに。
「風を吹かせるなんて俺にとっちゃ造作もないことだ。ほらそれよりお前に嘘ついて二人が会ってるぞ」
私の怪訝そうな表情を察してかロキが言った。つまり彼の魔法というわけだ。うん、何とも心強い。
「確かに怪しいわね。でもこれだけでは浮気の証拠には弱いのでは?」
「まぁな。だが会話内容は重要かもしれん」
会話か……確かに何を話してるのか気にはなるけれど。
「距離が遠くて声まではよく聞こえないわ……」
するとロキがぱちんと指を鳴らした。その音に反応して現れたのは2匹の小さな蝶。
「蝶? 」
「俺の使い魔だ。こいつを使って盗聴しよう」
つ、使い魔。流石はファンタジーな世界。何でもありである。
ロキの指示通り1匹を二人の元に飛ばすと、残った蝶からは二人の会話が聞こえてきた。
この世界での盗聴器みたいなものか……。しかし私せっかくのクリスマスイブに一体何をしているのだろう。
『……で……どうす? 』
雑音が交じる。
「イビルドロップ、もうちょっと近付いてくれ」
イビルドロップというのがこの使い魔の名前なのだろう。ロキの指示の後、鮮明に彼らの声が聞こえてきた。
『イリアを消すしかない』
……これはまた物騒な会話だ。
『でもどうやって? 』
『イリアから僕との婚約破棄を言うはずはない。それならば可哀想だが彼女には罪を被って貰おう』
いや全然婚約破棄は受け入れますけど! 命さえ助けて貰えるなら!
『つまり私へのいじめを仕立てあげ、1/1の王位継承パーティで婚約破棄を言い渡すという訳ですね』
『そうだ。婚約破棄を言い渡され、妹にその座を奪われ、プライドをズタズタにされるなんて目も当てられない。神の元へ還った方が彼女も幸せだろう』
『そうですね……。私でしたら死んでしまいたいと思います』
えーっと……つまり、妹いじめの罪を背負い、婚約者も盗られて可哀想なイリアは死んだ方が彼女も幸せだよね☆ってこと?
何というお花畑……。理解が出来なすぎて鳥肌が立つ。
『ああ、罪を犯す私たちをお救いください』
『二人で地獄に落ちよう、エミリア』
ーーそこで通信は途絶えた。
通信が切れてからも私たちは何も言えずただ呆然としていた。
先に口を開いたのはロキだった。
「とんでもねえ奴等だなお前の婚約者と妹」
「……言わないで。私が一番分かってるから」
何だか無性に腹が立ってきた。
どうして私がそんなことされなきゃいけないんだろう?
「あの幸せカップルを地獄に叩き落としたらどんな顔するんだろな? 俺ちょっとワクワクしてきた」
「性格歪んでるわねえ……いやでも私も同じ気持ちよ。こうなればこっちだって徹底的に戦ってやる! 目にもの見せてやるわ」
するとロキが楽しそうな笑みを浮かべた。
「良いね、俺性格悪い女が大好きなんだ。イリアといれば当分退屈しなそうだ」
性格悪い女上等、誰か殺されてやるもんか!
「んでどうする? あいつらも動きがなさそうだし、せっかくだからケーキでも食いに行くか? 」
「え! 」
「顔に書いてあったぞ、クリスマスイブなのにどうしてこんなこと……ってね」
ロキは何でもお見通しのようだ。
「……私、苺のケーキが良い」
「はいはい。じゃ、俺はチーズケーキで」
こうして私たちは互いに顔を見合わせ、ふっと噴き出したのだった。
今年のクリスマスイブは中々楽しいものになりそうだ。
7
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。
『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』
『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』
公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。
もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。
屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは……
*表紙絵自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる