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寿司

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悪役令嬢、盗聴する

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◇◇◇

「急に呼び出しといて何なのよ、疲れた……」

「まあそう怒るな。またとないチャンスかもしれんぞ」

 城下町に呼び出された私はロキと合流。お屋敷を抜けるのに凄い苦労したんだからね……。引き留めるメイドたちを何とか説得して出てきたんだから。

「チャンス? 」

「説明は後だ! 尾行するぞ」
  
「尾行!? 」

 そんな探偵みたいなことやったことないよ……。しかしロキはずんずんと人の波を掻い潜り、どこかへと向かって行く。

「待ってよ、あんまり目立つことするとバレちゃうよ」

「問題ない。俺の魔法で気配を消している」 
 
 なるほど……。魔法ってスッゴい便利なものなんだなぁ。

 そにしても流石クリスマスイブ。周りはカップルだらけだ。町中が電飾で彩られ、ツリーが立ち並ぶ。

「おい、はぐれるなよ」

 ロキに手を掴まれた私は思わず顔を赤らめた。
 だって仕方ないじゃないか、男性とクリスマスイブにデートしたことなんて人生一度もないのだから。

「ちょっと手! 」

「手が何だ? 」

 心底何でもない風にロキが言う。
 チャラ男は流石だ、手を繋ぐぐらいどうってことないらしい。
 変に感心してると不意にロキがいたぞ、と声をあげた。そこは町から少し外れた喫茶店。人通りも少なく、客もあまりいなそうだ。

 そしてぽつんと一人椅子に座っているのは間違いない、エミリアだ。

「あ……エミリ……」

「おい馬鹿」

 ロキに口を塞がれ、店の正面の路地裏に身を潜める私たち。

「声を出すな、尾行がバレるだろ」

「ごめん、つい……」

 運良くテラスの席にエミリアは座っていたため、外からでも様子がうかがえる。

「エミリア一人だけね、友達と会うって言ってたけどな」  

「ほんとに"友達"かねえ……」

 ニヤニヤと笑うロキ。
 すると、路地裏に隠れる私たちの前をフードで顔を覆った怪しい人物が横切った。

 まるで辺りを警戒しているようにキョロキョロと見回すと、逃げるようにして喫茶店に入る。
 すると当たり前のようにその人はエミリアの前に座る。

「誰か来たよ! でもあれは……」 
 
 誰だ? 背丈から男性っぽいけれど顔まで認識できない。何とか目を凝らすけれど私の視力では無理なようだ。

「そう急ぐな、フード脱ぐぞ」

 すると唐突にごうと強い風が吹いた。風はその人のフードをぱさりと脱がす。

「あ! 」

 私は思わず声をあげた。そのフードの人は良く見知った婚約者だったのだ。
 慌ててフードを深く被り直す"エドワード"だったが、私たちはばっちり顔を確認していた。

 しかし、どうしてこう都合良く風が吹いたんだろう……? さっきまでそよ風一つ吹いていなかったのに。
 
「風を吹かせるなんて俺にとっちゃ造作もないことだ。ほらそれよりお前に嘘ついて二人が会ってるぞ」

 私の怪訝そうな表情を察してかロキが言った。つまり彼の魔法というわけだ。うん、何とも心強い。 

「確かに怪しいわね。でもこれだけでは浮気の証拠には弱いのでは?」 

「まぁな。だが会話内容は重要かもしれん」

 会話か……確かに何を話してるのか気にはなるけれど。

「距離が遠くて声まではよく聞こえないわ……」 
 
 するとロキがぱちんと指を鳴らした。その音に反応して現れたのは2匹の小さな蝶。

「蝶? 」

「俺の使い魔だ。こいつを使って盗聴しよう」

 つ、使い魔。流石はファンタジーな世界。何でもありである。

 ロキの指示通り1匹を二人の元に飛ばすと、残った蝶からは二人の会話が聞こえてきた。

 この世界での盗聴器みたいなものか……。しかし私せっかくのクリスマスイブに一体何をしているのだろう。

『……で……どうす? 』 
 
 雑音が交じる。

「イビルドロップ、もうちょっと近付いてくれ」

 イビルドロップというのがこの使い魔の名前なのだろう。ロキの指示の後、鮮明に彼らの声が聞こえてきた。

『イリアを消すしかない』

 ……これはまた物騒な会話だ。

『でもどうやって? 』

『イリアから僕との婚約破棄を言うはずはない。それならば可哀想だが彼女には罪を被って貰おう』

 いや全然婚約破棄は受け入れますけど! 命さえ助けて貰えるなら!

『つまり私へのいじめを仕立てあげ、1/1の王位継承パーティで婚約破棄を言い渡すという訳ですね』 

『そうだ。婚約破棄を言い渡され、妹にその座を奪われ、プライドをズタズタにされるなんて目も当てられない。神の元へ還った方が彼女も幸せだろう』

『そうですね……。私でしたら死んでしまいたいと思います』

 えーっと……つまり、妹いじめの罪を背負い、婚約者も盗られて可哀想なイリアは死んだ方が彼女も幸せだよね☆ってこと?

 何というお花畑……。理解が出来なすぎて鳥肌が立つ。

『ああ、罪を犯す私たちをお救いください』

『二人で地獄に落ちよう、エミリア』

 ーーそこで通信は途絶えた。

 通信が切れてからも私たちは何も言えずただ呆然としていた。 
 
 先に口を開いたのはロキだった。

「とんでもねえ奴等だなお前の婚約者と妹」

「……言わないで。私が一番分かってるから」

 何だか無性に腹が立ってきた。
 どうして私がそんなことされなきゃいけないんだろう?

「あの幸せカップルを地獄に叩き落としたらどんな顔するんだろな? 俺ちょっとワクワクしてきた」

「性格歪んでるわねえ……いやでも私も同じ気持ちよ。こうなればこっちだって徹底的に戦ってやる! 目にもの見せてやるわ」

 するとロキが楽しそうな笑みを浮かべた。

「良いね、俺性格悪い女が大好きなんだ。イリアといれば当分退屈しなそうだ」

 性格悪い女上等、誰か殺されてやるもんか! 

「んでどうする? あいつらも動きがなさそうだし、せっかくだからケーキでも食いに行くか? 」

「え! 」

「顔に書いてあったぞ、クリスマスイブなのにどうしてこんなこと……ってね」

 ロキは何でもお見通しのようだ。

「……私、苺のケーキが良い」

「はいはい。じゃ、俺はチーズケーキで」

 こうして私たちは互いに顔を見合わせ、ふっと噴き出したのだった。

 今年のクリスマスイブは中々楽しいものになりそうだ。
 
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