蒼炎の魔法使い

山野

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第十三話 森の中のビーチフラッグ。俺この戦いが終わったら結婚するんだTAKE2

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常闇の森の北。そこで二人の男女がミノタウロスの残骸を片付けていた。

「よく見ると結構グロイなぁ…」
辺り一帯血だらけ、臓物も飛び出しており、血が固まり変色した肉塊がそこら中に転がっていた。
興味本位で肉の解体場の動画を見たことあるけどあれよりキツイわ…

「このまま放置してると、他の魔物がよってくる。焼かないとダメ。」
ルーがそう言いながら火魔術で燃やしていく

「わかってるけど、うっ…しばらくミノタウロスは見たくないな…」
吐き気を覚えながらショウも蒼炎で片づけていく

「こんなに倒したから。流石にもう現れないと思う」
…おいやめろ…絶対出るだろ!

二人の気配感知にもかからず何者かが背後から現れる

「ほらルーがいうから出てきたじゃん!」
フラグ立てて即回収とかどんなだよ!フラグ回収の速さ争う競技じゃねぇぞ!

「あれはグレートミノタウロス…」
振り返ると先程倒した牛の化け物をよりも一回り大きく、片手斧ではなく大きな両手斧を装備していた

「二人で戦えば一体なら問題ない…だけど…グレードミノタウロスは番と行動を共にする。」

「マジ?!」
その言葉に絶望しかけていると後ろからもう一体現れ挟まれる形となる

「クソっ全く気付かなかった!あいつら気配遮断のレベルが高い!」
背中合わせになり悪態つく、あ、こういうのバトル漫画っぽい!

「お互いに一体ずつ…私は時間かかるかもしれないけど一人でも大丈夫…ショウ出来るだけ耐えて。早めに倒して加勢する。」

「空飛んで逃げるのは?」

「…飛べるの?でもダメ。問答無用で南の空の主の眷属に食い殺される。」

「…俺この戦いが終わったら国に帰って結婚するんだ…」

「…こういう時は…フラグ乙!でいいんだっけ?」

「ばっちり…はぁ…やっぱりここでやるしかないか…」
ため息交じりに口から不満が漏れる

「じゃあルーまた後でね」

「うん、戻ったら沢山話したい事ある」

「フラグ乙!」
そう言い終わると、背中に仄かに感じる彼女のぬくもりを残し、お互い正面のグレートミノタウロスの方に駆けていく
走りながら基本バフ4種をかけ刀を抜き【雷刀】【氷刀】で準備完了。

「先手必勝!」
ジャンプして長刀で敵の頭を狙うがガードされる、がこれは狙い通り。刀がバチバチとスパークし敵の体に流れスタンする…
はずだったのだがそのまま押し返されて、後ろに倒れこんでしまう。

そこにバトルバトルアスクが振り下ろされるが横に転がり危機を脱した。
地面に小さいながらも陥没していた。

威力が尋常じゃねぇ!一撃でも食らったら即死!

「洒落にならんわ!」
思わず叫んだ!

体制を立て直し加速した思考の中で考える。なんでスタンしないんだ?確実に刀からバトルアクスを伝って電撃を食らったはず。電気に耐性がある?この世界に雷魔術は存在しなかったはず。一体何が…は!もしかして!

目に魔力を集中させ敵の魔力の流れを見てみると…やっぱりか、あいつ知ってか知らずか魔力を運用してやがる!俺程じゃないが体に膜張ってその上にオーラまで纏っている。身体強化も少しかかってるし、ただの魔物じゃねぇ!

汗がスーッと頬を伝う…これはガチでやばいかもな、この世界に来て初めて魔力を扱うやつに出会った。向こうの世界では戦いなんてなかったから魔力を扱う相手の対処法なんて考えた事もなかったし…

【雷刀】がダメなら【氷刀】もダメだろう、魔力を大量に込めればどちらも効果あるかもしれないが…効果と魔力の割が合わない。

巨体に似合わない速さに驚いていると目の前に斧が迫っていた。

鋭い金属の衝突音と共に、刀で受け流すが構えを取れていないので水明流の技は使えない。
何度もぶつかる金属同士の音、物凄い猛攻で防戦一方となり、敵の力が強く押され気味で魔力を練りこみ魔法を発動する一片の隙もない。

地面のくぼみに足を取られバランスを崩してしまう。勝利を確信したのか敵が少し大振りになった。

行ける!「【電光石火】」短い時間俊敏性を爆発的にあげる雷魔法だ。
高速移動で危機を脱し、攻撃に転じる。大振りの攻撃をミスした今が好機!
これを逃せばおそらくチャンスもない。威力の高い魔法も残量的に無理となればアレしかないか…

【蒼炎刀】二本の刀からとんでもない熱量の蒼炎吹き荒れる。ただただ一撃の威力だけを追求した。俺の切り札の一つ!

「蒼炎二刀疾風流…【鬼火】」
瞬間ミノタウロスの前から消え真っ二つに切り裂かれ体を蒼炎が包み一瞬で燃やし尽くした。

「はぁ…はぁ…何とか勝てた…」
勝てると思って余裕こいて大振りした挙句に負けるってどんな気持ち?ねぇねぇ今どんな気持ち?

【鬼火】は【蒼炎刀】×2+【電光石火】+疾風流の居合技【 暁風 】を二刀流用にアレンジしたオリジナルの混合技だ。
強力な技なのだが…

「兵士長…すみません…せっかくもらった刀ダメにしちゃったなぁ」
威力を追求しすぎるあまり魔力制御が難しく刀をダメにすることがある。

ルーの方を見ると炎を纏った大鎌で丁度首を切り落としていた所だった。
よかったぁ…ドスンッ!後ろに大の字に倒れこんだ。

「ショウ!」
ルーが急いでこちらに駆け寄って顔を覗き込む

「大丈夫?これ飲んで!」
アイテムボックスからポーションの瓶を開け体を起こし飲ませてくれる。
アメリアさんの谷間に挟んだポーションを思い出したのは内緒だ。

「…気づいてるよ?」
な、なんだと?

「ゴクゴク…あ、ありがとう、もう魔素も魔力もすっからかんで再生魔法も使えいから助かったよ」
動揺をなんとか誤魔化す。

「まさか倒しちゃうとは思わなかった。」

「兵士長から卒業祝いにもらった刀がただの灰になったけどね」

「ちょっと見たけど、凄かった。かっこ良かった。」

「惚れた?」
キメ顔<他人から見ると変顔である>で聞いてみる。

「…ショウの方が私よりよっぽど魅了の力、強いよ。」
俺の髪を優しく撫でながら、パッと花が咲くような笑顔で臆面もなく伝える。
ストレートを打ったのに見事なクロスカウンター!
最近喋り方が柔らかくなってる。感情が表に出やすくなった副産物だろう。なんせ可愛い!

「連戦はきつかったね…疲れたわ…」

「よしよし、よくできました」
頭をナデナデ…はぁ幸せ。ずっと撫でててくださいルーメリア先生!

「凄い動きだったけど一ヵ月でステータスも上昇したの?」

「上がったよ、見る?」

「…うん。ショウはエッチだね…」
初心な子がエッチな物をみた後のような顔になる

だからなんでそんな卑猥な物を見るような感じなんだよ、この世界のステータスってどういう認識なの?!

【名前】ササヤマショウ
【種族】人間
【年齢】18
【生命力】1200
【魔素量】3800
【魔力量】10000
【筋力】 260
【速さ】 190
【知力】 1700
【体力】 270
【適正魔術】【火・水・風・土・白・召喚】
【スキル】【剣術Lv4】【短刀術Lv4】【二刀流Lv3】【体術Lv3】【魔法剣Lv3】【魔法拳Lv2】【気配感知Lv3】【気配遮断Lv2】【魔素操作】【魔素⇔魔力変換】【魔力操作】【魔法創造】【魔力回復大】
【称号】【異世界人】【王女の騎士】【王女の血袋】

「凄く成長したね、知力や魔素量、魔力量はやっぱりずば抜けてる。他も前は石ぶつけただけで倒せそうだったのに今は一般兵ぐらいになってる」

「そんなに雑魚でした?!今は体を魔法で誤魔化して騙し騙しやってるよ」

「スキルもショウしか出来ないものあるね」

「魔力ってのが異質だからね、ルーも魔力操作が表示されたんでしょ?」

「されたけど私のにはLv1ってついてた」
成長しきるとLV表示消えるのかな?

「まぁなんせ今はちょっと休みたいよ…」

「うん。親玉らしいグレートミノタウロスも倒したし、流石にもう出な…」

「ダメ!」
言わせねぇよ?!それ以上はもうやめて!思わずルーの口を手で塞ぐ。
それ言うと居るか知らんけどキングミノタウロスとかいうのが出来そう…

何とかフラグ建築される前にへし折って満足していたのだが辺りの空気が一気に重くなり、遠くから感じる圧倒的な存在感に、恐怖でガタガタと体が自然と震えてしまう。魔力、魔素を使いすぎ膜も張れずほぼ生身状態なのだ。

「…まだ距離があるの凄い重圧…流石にこのクラスを相手に消耗した体じゃ…無理…ショウ…覚悟した方がいいかも…」

「…そっか…俺の人生短かったなぁ…まぁこんな美女と逝けるなら幸せってもんか…」

「…ごめん私の騎士になったから…」
申し訳なさそうに起こした俺の体をギュッと抱きしめる。

「いいさ、どっちにしてもルーに助けられた命だし。」
本当に不思議と後悔はなく自然と笑顔で話せる

「…ねぇ…最後にお願い聞いてくれる?」

「何?」

「…キス…してほしい…」
耳まで真っ赤にして俺の目を真っすぐ見つめながらモジモジ恥ずかしそうに言う。はぁマジでこんな子とファーストキス出来て死ねるならもう思い残す事ねぇわ!

「喜んで」
二人の顔が近づき唇が触れそうになる…刹那!

「あれ?おれっち邪魔しちゃった感じですか?!」
そこにはとんでもないプレッシャーを放ち刀を腰に差した骸骨が甲高い声でこちらに話しかけていた…どう発声してんねん!

「おれっちはフラミレッラお嬢の側近ジョレーナ!遠くからドンパチやってるの見えちゃって急いで来てみたら骨を溶かすようなアマアマモードになってるじゃないですか?!まんま骨の俺にはダメージ大きいですよ!死角になってていい所だったの見えなかったんですよ、ほんとさーせん!」
よくわからないテンションの骸骨が早口でまくし立てる、敵では…なさそう?

「…フラミレッラお嬢って?」

「おれっち達の北の森の女王様ですよ!そちらにおりますのはリールモルト王国の第一王女ルーメリア・レネ・リールモルト様でお間違いないですか?」

「はい、今日はリールモルトの使者としてそちらに向かっていたのですが、途中ミノタウロス28体、グレートミノタウロス2体と遭遇してしまい遅れてしまっています、申し訳ありません」

「いやーそれは災難でしたねー、最近森が騒がしいから仕方ないですよ!それと全然気にしないですよー!おれっち達の集落はみんなアンデッド、時間の流れなんてよくわからないっすから!」
そういって笑いながら骨だけの人差し指で頭蓋骨をポリポリ掻く。痒みとか感じるのだろう?

「てかお兄さん!さっきの技すごかったですね!蒼い炎のやつ!ごぉーーーーって!あれ疾風流居合の 【 暁風 】 ですよね?しかも刀!しかも二刀流!いやー刀ってこんなに優れてるのに何でこんなに優遇されてないんでしょうね?どの流派も刀をないがしろにしすぎですよね?!お兄さん疾風流を使うんですか?!」
物凄い早口で詰め寄るように俺に聞いてくる、なんか怖い。骸骨なのになんかニコニコしてる…ように感じる…

「え…あ、はい。疾風流をメインに水明流も使います。」

「うぉーーーーーーーーーまじっすか?!おれっちの基礎と一緒じゃないっすか?!一緒に修業しましょう!おれっちの弟子になるっす!いやこれはもう強制っすから!絶対におれっちの物にしてやるから!」
いやいやなんか最後の方意味変わっちゃってない?!貞操の危機を感じるんだけど?!骨だけど出来るの?!

「…ショウ…これは凄い事。」

「骨に貞操を捧げる事が?」

「何ですか?骨だけのスリムな体にしか興奮しない特殊性癖の方ですか?無理ですごめんなさい旦那いるんで!」
旦那いるの?!
ドン引きしたような表情で<骨なので何となくそう感じるだけだが>早口で断る。

告ってもないのにフラれた…暗黒学生時代、ポニテにした萌えキャラグッツを暫く眺めて、隣の席のポニテにした子と目が合うやいなや、慌てて頭を下げられ、ごめんなさいと何故か謝られたあの時のような敗北感…

「…ショウの性癖が特殊過ぎる件…」
最近俺に似てきた。もっと染めてやるぜ!

「三大流派を基礎として無数にある流派の中で、ショウと同じ剣を使って疾風流と水明流を極め、その特殊な剣を使ったオリジナル流派、雪月風花流という、伝説の流派の開祖として今なお有名な方。その剣は美しく優美でしなやかでいながら、全てが一撃必殺。瞬きしたら首が飛ぶなんて言われてる。弟子は一人もいない」
めっちゃ中二心くすぐられるやつじゃん!

「あー生前なんかそんな事言われてた事もあったようなきがしますねー…単純に刀を使う人がいなかったのと炎火流使う人ばっかりでしたからねー、それにむっさい男ばっかりで全然教える気がしなかったっていうか…ってそんなんはいいんですよ!おれっちの初の弟子って事でいいですよね?いいんですよね?それじゃあよろしくです!」
そういって骨だけの手で握手を求めた
え?生前って死後アンデット化してけど生きてた時の記憶を持ってるって事?!

「は、はぁ…よろしくお願いします。」
と握手に応じる。

「やったー初弟子ゲットです!お嬢に自慢できますよこれは!あ、じゃあ行きましょう!動けそうですか?」

魔力も少し回復してきていたので再生魔法で回復する

「なんとか動けそうです、遅くなる前にいきましょう!」

「じゃあ敵は蹴散らしていくんでそそくさ行きましょう!おー!」
なんなんだこのテンション…物凄い人ってのはわかるんだが…いまいち締まらないなぁ…

そうして少しすると木造の何処か懐かしさを覚えるような建物がずらーっと見えて来た。

「ささ、お嬢の所いきましょう!あそこの城にいるんで!」
指をさされた方をみると、そこには禍々しい雰囲気を放つ生者のなれの果てで出来た大きな骨の城があった…
絶対人の骨も入ってるよなぁ…

「ここがアンデッドの集落…」

「そうここが俺っちたちの集落カルターノです!」
それは集落というより小国だった。禍々しいアンデットらしい城を中心として四方に家々が立ち並び、スケルトンやグール、多様なアンデットが共存する異様な場所だった。
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