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第十六話 噛ませわんこ達と腐敗の女王。
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澄んだ空気の森の中を走る物が一人と一匹がいた。
一人はショウ、五か月間、世紀末骸骨剣士の無茶苦茶な特訓でしごかれ、以前よりもさらに高速で移動できるようになっていた。
もう一匹は、噛まれたら一撃で腕などは食いちぎられそうな牙を持ち、鉄をも切り裂けるであろう鋭い爪をもった白い毛並みで所々から骨がむき出しになっている、大きな虎のような魔物だった。その上に上品にいつもの黒いゴシック調の黒いワンピースで横乗りしていた、紫髪の綺麗と可愛さを併せ持った顔立ちの麗しき女性、フラミレッラだった。
「それで東の森で何が?」
「今人間が30人、ヴァンパイアが40人ほど不可侵領域に入りかけてる居るわ。」
「それほっといても東の主が対処してくれるんじゃないですか?」
「まぁ対処はするわね、ただ問題はそれじゃないのよ。」
神妙な面持ちで虎のような魔物の上から続ける
「森の主同士、それにリールモルト王国とは不可侵条約を結んでいるのは知っているわよね?」
「はいなのでお互いに干渉しなければ問題ないと聞いてます」
「そうね、でももしその禁を破った場合どうなるかは知っているかしら?」
「いいえわかりません…最悪二者間で戦争ですか?」
「違うわ。もし破った場合その禁を犯した所を他と協力して潰すという事になっているの」
「…まずいですね」
「えぇまずいわ。国民全員殺すって事はないでしょうけど、王族は間違いなく全員殺されるでしょうね…」
「…じゃあルーも」
「あなたのお嬢ちゃんも間違いなくね。」
俺はまだ何も起こっていないのにルーがこの世から居なくなる事を考えてしまい一瞬頭が真っ白になりかけた。
「まだ間に合うわ、だから急ぎましょう。私にとってもお嬢ちゃんはもう他人という感じがしないわ」
この五カ月間、物理的に距離はある物の、二人は仲良くなっていた。ルーも魔力操作が上達したのもあって、ルーからならフラミレッラを触れるようになっていた。フラミレッラからルーに触れるのはまだかかりそうだが、ここまでくればそう時間はかからないだろう。
「全魔法ありの坊やでも、私以外の三体の主を相手に勝利するのはちょっと難しいわね」
師匠には剣術では子供のように扱われるが、全魔法ありなら実際師匠には勝てるだろう。
だが三体全員はどうやら無理らしい。
「坊や、もっと早く走れないの?遅いわ」
バカにしたように言う
「限界ですよ、っていうかもっと早く走れるなら俺担いで走って下さいよ!」
「いやよ、私は疲れる事はしたくないもの」
プイッとかわいらしく顔を背ける。何たるワガママ!何たる可愛さ!しかし彼女なら許される!俺が許す!
「じゃあせめて乗せてください!てかアンデッドなのに疲れるって」
「この子は一人用よ」
悪いな翔、この乗り物一人用なんだ!って土管が置いてある空き地で言われた気分だ。
「それと言わなかったかしら?私元人間だから感覚はあるのよ。寿命がなく、自動再生付きのただの人間といった所かしら?」
「全然ただの人間じゃないですよ、しっかり人間やめてますよ。てか元人間だったんですか?!全然聞いてませんよ!」
「そうだったかしら?」
人差し指を顎に当て首をかしげる。やべーキレ可愛い。
「まぁ面白い話でもないしね」
どこか遠くを見るような表情だった。言いたくないこともあるだろう。
「いつか話したくなったら話して下さい」
「…ええ」
それ以降会話は特になく、不可侵領域手前で鎧を着込んだ集団と出会う
「貴方達ここで何しているのかしら?そこより先は不可侵領域。踏み込めばどうなるかわからないわけじゃないわよね?」
フラミレッラが口火を切る
この場合俺の知ってるテンプレ展開なら、『おい、あそこに上玉がいるぞ!男は殺してあいつは奴隷にしちまおう!奴隷にする前に楽しませてもらうがな、がはははは』ってなり、華麗にやっつけてヒロインが惚れるってのが定番だけど…いや惚れて欲しい訳じゃないよ?そんなわけナイアルヨ。
「おいあの男、姫の騎士とかいうやつじゃないか? 騎士叙任式 の時にみたぞ」
「誰にせよ見られたからには生かしてはおけん、どちらも即殺すぞ!」
戦いになる流れは一緒だが入り方が違うー!不満ー!
フラミレッラ様と目を合わせ同時に二人逆方向に走る。戦力を二分化するためだ。
「修行の成果を見せる噛ませ犬役ご苦労様です、じゃあ始めますか!」
強敵に会う前に大体雑魚倒すよね…あ、強敵フラグ…
「この人数を相手に勝てるのか?弓兵構えろ!」
「お兄さん達わかってないですね、それって、俺この戦いが終わったら結婚すんだと同じくらい生存率低いんですよ?」
そういいながら刀を二本抜く。最近魔法使いやってねぇな…
こっちは30人位?向こうの方が多いな、俺も敵なら美人の方行くわ…まぁそっちの方が確実にヤバいやつだけどな!
「撃てぇい!」
上官らしき男がいうと一気に矢が飛んでくる。刺さったら大ダメージだな…
「【アースウォール】」土が盛り上がり硬貨し矢を落とす。
「そういえばあの騎士は魔術師と聞いた事がある、前にでるぞ!」
最近は魔法剣士っぽいですが…
反撃いきますよー結構距離があるが…バフはかけない。かけたら多分殺してしまう。
「風二刀嘯風弄月しょうふうろうげつ流…【梅風】」
嘯風弄月流言っちゃった!恥ずかしい、キャッ
二本の刀から優しく風が吹く。二本の刀を構え 右薙ぎ・左薙ぎ。広範囲に不可視の衝撃波を飛ばしバコーンという鎧がヘコむ衝撃音と共に20人程ぶっ飛ばし戦闘不能にさせる。
本来の【梅風】は風属性の【風刀】×2+ 雪月風花流 【飛花】という飛ぶ斬撃を合わせた複合技。鋭い風が乗った事で普通の【飛花】より速さ、鋭さ、範囲が広がっている、本来なら不可視の斬撃でスパーンと真っ二つだが今回は手加減バージョン。
「なんだその流派は!それに気をつけろただの飛斬じゃね!切れてねぇが威力が桁違いだ!」
解説乙!俺が開祖だからね!恥ずかしいからあんまり広めないで!
「氷二刀 嘯風弄月流 …【寒椿】」
刀に雪がぽつんと落ち、溶けると刀が冷気を帯びる。
戸惑う相手に向かって距離を詰め肩を突くと鎧ごと貫通して剣先から氷が延血が滴る氷の華が咲いていた。美しい…そんな囁きが敵の居る方から聞こえて来る
【氷刀】×2+【電光石火】+雪月風花流の突き技【桜花】の複合技で刺さった所に氷の華が咲き内部破壊する極悪技、避けられても、もう小太刀で対応するという二段構え、こちらは以前通り内部から凍らせる追加効果付き。
「なんてやつだ、一斉にかかれ!」
一気に男たちが鎧の擦れる金属音と共に切りかかって来た。出待ちファンか!
「磁二刀嘯風弄月流…【宵闇】」
刀身に特に変化はなく、小太刀で攻撃を受け流すと流された方向に異常によろけた所を長刀で切りつけると地面にどんとへばり付いた。
重力魔法で当てた対象の重量を短時間だが大きく変化させる効果をつけた【磁刀】×2+雪月風花流の受け流しカウンター技【水紋】の複合技。結構凶悪である。この技で何人か無効化する。
「撤退だ撤退!逃げるぞ!」
しかし周りは囲まれたの絶望を君たちに…
「雷二刀嘯風弄月流…【雷雲】」
刀だけではなく体までバリバリとスパークし、逃げ出そうとした残った敵を稲妻が通ったかのような閃光と共に神速の剣で切り伏せ。戦いが終わった
本来は【雷刀】×【電光石火】+自ら周りに放電し知覚範囲を広げる雷魔法【エレクトロ】+雪月風花流の知覚する範囲にいる者を神速の剣で切り裂く【霧雨】の複合技。要するに範囲にいる敵を物凄い速さで切る技だねうん。基本待ち技なのだが【エレクトロ】で近く範囲が広がっているので待たずに発動も可能。範囲を狭めれば狭める程剣の速さが増す。
がちがちの噛ませ犬イベント乙でした!
「しかし最近完全に魔法剣士化してるわー…魔法も手札増えたんだけど森じゃ使うとこないし…」
実際魔力を練る手間も省けて魔力も節約できる魔法剣士という戦い方は結構便利だったりする。
このまま主人公っぽくなれば主人公属性ついてラッキースケベとかできるぞぐふふ。
「フラミレッラ様も終わったかな?遊んでるのかな?」
【バインド】で倒れたやつらを縛りながらフラミレッラの向かった方を見る。
少しだけ時は戻る。フラミレッラが虎型の魔物をショウとは逆方向に走らせていた。
「どこまで逃げるんだいお嬢ちゃん?」
「逃げ切れるまでよ!」
必死な様子で言い放つ
「追いかけっこだな!美人との追いかけっとは洒落てるねぇ!」
ゲスっぽい声で40人ほどの男たちが追いかける。
するとショウとはだいぶ距離が離れたところで虎型の魔物が足を止めた。
「諦めたのかいお嬢ちゃん?」
フラミレッラが優美に魔物から飛び降り着地する。たったそれだけの動きだったのだが…追って来た男達は敵なのを忘れて見惚れてしまっていた
ゴクリ…生唾を飲み
「こいつを捕まえれば自由にできぞ!」
と男が他の男たちを鼓舞させる。男たちのボルテージは最高潮に達していた。
「あら?そんなに私が欲しいの?でも貴方達は三つ勘違いしているわ」
フラミレッラが静寂を破るように口を開く、さっきとは違い不敵な笑みを浮かべながら落ち着いた口調だった。
「三つだと?」
「まず、私はお嬢ちゃんじゃない、貴方達よりもはるかに長い時を生きているわ。」
「そんなわけ…お前もして北の?!いやだがそれなら、これだけ近くにいればそれだけで朽ち果てるはず…」
「そして二つ目、人数が多ければ私に勝てると思っている。」
「俺達だって訓練を積んだ戦士だ、これだけの人数に勝てると思っているのか?!」
「フラグ乙。であってたかしら?…三つ目…それは私を一人にしてしまった事よ、用意はいいかしら坊や達?」
刹那、立っているのも辛い程の重圧が兵士達を襲う、息をするのも辛い位の圧迫感。気をしっかり持たなければ今にも卒倒しそうだった。
「き、貴様何者だ!弓兵撃て!」
「答える義務はないわ。【スカルウォール】」
それは彼女が今まで命を奪ってきた様々な生物の頭蓋骨で出来た巨大な壁。不気味で禍々しい雰囲気を放ち、悲鳴のような物が木霊し、ただの頭蓋骨なのだがどこか凝視されている、そんな錯覚すら感じる恐ろしい壁に男達全員が恐怖状態になり身動きが取れなくなる。
「あら?逃げなくていいの?10秒待ってあげるわよ?」
男たちは動けなくなった体を何とか必死に動かし逃げる。引きずるような動きなのでそう遠くにはいけないだろう。
「3…2…1…0」
言い終わると腐敗の力がフラミレッラを中心に開放され、逃げ惑う男たちを次々に骸にしていった。
朽ち果てるのを感じながら男はこっちが外れだったのかと後悔した。
小国すら滅ぼせる力を持つ彼女から逃げることなど最初からできなかったのだ。
ショウから遠く離れたのは力を開放すればいくらショウといえども魔力を防御にいくらか回さないとダメージを与えてしまうからであった。
フラミレッラは、話しかけて来た男のなれの果てに近づき、頭蓋骨を優しく拾い上げて口角をあげる
「私が欲しかったんでしょ?これでまた会えるわよ、良かったわね坊や?うふふふふ」
男達だけではなく【腐敗】の力が広がった範囲のすべての生命がただの骸となり静かな森がより一層静かになっていた。
本来聞こえるはずもない声量の含み笑いが、誰も聞ける者がいない状況で、誰の耳にでも届くかの様に響いていた。
◇ ◇ ◇ ◇
ショウが拘束しおわり少し休んでいると暗闇からフラミレッラがゆっくりと歩いて来た。
「思ったよりかかりましたね」
「距離を取らないと坊やまで傷つけてしまうかもしれなかったからね。それよりそれどうするの?」
女性らしく肘を抱き、【バインドで】縛られた男達を見て言った
「リールモルトの兵士にでも頼もうかと…」
優美に歩き何人か重なって気絶している男の上に腰掛け足を組む
「クズでも座り心地は悪くないのね?」
鬼!あんた鬼だよ!
「坊や誰も殺さなかったの?それとも…殺せなかったの?」
俺の目を真っすぐ見据える。正解だ。俺は殺せなかった。
「殺せなかったです、今まで人を殺した事なんてなくて…」
「別に悪い事じゃないわ、少なくない数の人が人を殺す事なく人生を終えるんだから。寿命が短い人間に限ればね。」
彼女は当たり前の事様に言う。
「でもお嬢ちゃんを守る為であれば…躊躇せずにやりなさい。後悔しないようにね。」
「はい、そういう状況にならない事を願いますよ。」
「それとこいつらの持ってた簡易版のアイテムボックスに狼らしき死骸が入ってたんですが」
気絶している男の指輪型のアイテムボックスから狼の死骸を出す
「これは東の主の眷属ね。ここで焼いてもいいけど…どうせなら親の元の送ってあげた方がいいと思うわ。」
「じゃあこのまま東の主に会いに行くってことですか?」
「ええ、もう近いからね。行くわよこれ置いていくの?」
ゴミを見るような目で男達を見て指をさす
我々の業界ではご褒美です!
「魔法かけてるんで解ける人もいないだろうし、置いて行って大丈夫だと思います。」
「…そういえばさっき強敵フラグ立てちゃったんですよねぇ…」
「あーはいはいフラグ乙。これでいい?」
「いや無理に言う流れ作らなくいいです。」
ルーに聞いたんだろうなぁ…
そういって俺たちは更に東の方に進んで行った。
一人はショウ、五か月間、世紀末骸骨剣士の無茶苦茶な特訓でしごかれ、以前よりもさらに高速で移動できるようになっていた。
もう一匹は、噛まれたら一撃で腕などは食いちぎられそうな牙を持ち、鉄をも切り裂けるであろう鋭い爪をもった白い毛並みで所々から骨がむき出しになっている、大きな虎のような魔物だった。その上に上品にいつもの黒いゴシック調の黒いワンピースで横乗りしていた、紫髪の綺麗と可愛さを併せ持った顔立ちの麗しき女性、フラミレッラだった。
「それで東の森で何が?」
「今人間が30人、ヴァンパイアが40人ほど不可侵領域に入りかけてる居るわ。」
「それほっといても東の主が対処してくれるんじゃないですか?」
「まぁ対処はするわね、ただ問題はそれじゃないのよ。」
神妙な面持ちで虎のような魔物の上から続ける
「森の主同士、それにリールモルト王国とは不可侵条約を結んでいるのは知っているわよね?」
「はいなのでお互いに干渉しなければ問題ないと聞いてます」
「そうね、でももしその禁を破った場合どうなるかは知っているかしら?」
「いいえわかりません…最悪二者間で戦争ですか?」
「違うわ。もし破った場合その禁を犯した所を他と協力して潰すという事になっているの」
「…まずいですね」
「えぇまずいわ。国民全員殺すって事はないでしょうけど、王族は間違いなく全員殺されるでしょうね…」
「…じゃあルーも」
「あなたのお嬢ちゃんも間違いなくね。」
俺はまだ何も起こっていないのにルーがこの世から居なくなる事を考えてしまい一瞬頭が真っ白になりかけた。
「まだ間に合うわ、だから急ぎましょう。私にとってもお嬢ちゃんはもう他人という感じがしないわ」
この五カ月間、物理的に距離はある物の、二人は仲良くなっていた。ルーも魔力操作が上達したのもあって、ルーからならフラミレッラを触れるようになっていた。フラミレッラからルーに触れるのはまだかかりそうだが、ここまでくればそう時間はかからないだろう。
「全魔法ありの坊やでも、私以外の三体の主を相手に勝利するのはちょっと難しいわね」
師匠には剣術では子供のように扱われるが、全魔法ありなら実際師匠には勝てるだろう。
だが三体全員はどうやら無理らしい。
「坊や、もっと早く走れないの?遅いわ」
バカにしたように言う
「限界ですよ、っていうかもっと早く走れるなら俺担いで走って下さいよ!」
「いやよ、私は疲れる事はしたくないもの」
プイッとかわいらしく顔を背ける。何たるワガママ!何たる可愛さ!しかし彼女なら許される!俺が許す!
「じゃあせめて乗せてください!てかアンデッドなのに疲れるって」
「この子は一人用よ」
悪いな翔、この乗り物一人用なんだ!って土管が置いてある空き地で言われた気分だ。
「それと言わなかったかしら?私元人間だから感覚はあるのよ。寿命がなく、自動再生付きのただの人間といった所かしら?」
「全然ただの人間じゃないですよ、しっかり人間やめてますよ。てか元人間だったんですか?!全然聞いてませんよ!」
「そうだったかしら?」
人差し指を顎に当て首をかしげる。やべーキレ可愛い。
「まぁ面白い話でもないしね」
どこか遠くを見るような表情だった。言いたくないこともあるだろう。
「いつか話したくなったら話して下さい」
「…ええ」
それ以降会話は特になく、不可侵領域手前で鎧を着込んだ集団と出会う
「貴方達ここで何しているのかしら?そこより先は不可侵領域。踏み込めばどうなるかわからないわけじゃないわよね?」
フラミレッラが口火を切る
この場合俺の知ってるテンプレ展開なら、『おい、あそこに上玉がいるぞ!男は殺してあいつは奴隷にしちまおう!奴隷にする前に楽しませてもらうがな、がはははは』ってなり、華麗にやっつけてヒロインが惚れるってのが定番だけど…いや惚れて欲しい訳じゃないよ?そんなわけナイアルヨ。
「おいあの男、姫の騎士とかいうやつじゃないか? 騎士叙任式 の時にみたぞ」
「誰にせよ見られたからには生かしてはおけん、どちらも即殺すぞ!」
戦いになる流れは一緒だが入り方が違うー!不満ー!
フラミレッラ様と目を合わせ同時に二人逆方向に走る。戦力を二分化するためだ。
「修行の成果を見せる噛ませ犬役ご苦労様です、じゃあ始めますか!」
強敵に会う前に大体雑魚倒すよね…あ、強敵フラグ…
「この人数を相手に勝てるのか?弓兵構えろ!」
「お兄さん達わかってないですね、それって、俺この戦いが終わったら結婚すんだと同じくらい生存率低いんですよ?」
そういいながら刀を二本抜く。最近魔法使いやってねぇな…
こっちは30人位?向こうの方が多いな、俺も敵なら美人の方行くわ…まぁそっちの方が確実にヤバいやつだけどな!
「撃てぇい!」
上官らしき男がいうと一気に矢が飛んでくる。刺さったら大ダメージだな…
「【アースウォール】」土が盛り上がり硬貨し矢を落とす。
「そういえばあの騎士は魔術師と聞いた事がある、前にでるぞ!」
最近は魔法剣士っぽいですが…
反撃いきますよー結構距離があるが…バフはかけない。かけたら多分殺してしまう。
「風二刀嘯風弄月しょうふうろうげつ流…【梅風】」
嘯風弄月流言っちゃった!恥ずかしい、キャッ
二本の刀から優しく風が吹く。二本の刀を構え 右薙ぎ・左薙ぎ。広範囲に不可視の衝撃波を飛ばしバコーンという鎧がヘコむ衝撃音と共に20人程ぶっ飛ばし戦闘不能にさせる。
本来の【梅風】は風属性の【風刀】×2+ 雪月風花流 【飛花】という飛ぶ斬撃を合わせた複合技。鋭い風が乗った事で普通の【飛花】より速さ、鋭さ、範囲が広がっている、本来なら不可視の斬撃でスパーンと真っ二つだが今回は手加減バージョン。
「なんだその流派は!それに気をつけろただの飛斬じゃね!切れてねぇが威力が桁違いだ!」
解説乙!俺が開祖だからね!恥ずかしいからあんまり広めないで!
「氷二刀 嘯風弄月流 …【寒椿】」
刀に雪がぽつんと落ち、溶けると刀が冷気を帯びる。
戸惑う相手に向かって距離を詰め肩を突くと鎧ごと貫通して剣先から氷が延血が滴る氷の華が咲いていた。美しい…そんな囁きが敵の居る方から聞こえて来る
【氷刀】×2+【電光石火】+雪月風花流の突き技【桜花】の複合技で刺さった所に氷の華が咲き内部破壊する極悪技、避けられても、もう小太刀で対応するという二段構え、こちらは以前通り内部から凍らせる追加効果付き。
「なんてやつだ、一斉にかかれ!」
一気に男たちが鎧の擦れる金属音と共に切りかかって来た。出待ちファンか!
「磁二刀嘯風弄月流…【宵闇】」
刀身に特に変化はなく、小太刀で攻撃を受け流すと流された方向に異常によろけた所を長刀で切りつけると地面にどんとへばり付いた。
重力魔法で当てた対象の重量を短時間だが大きく変化させる効果をつけた【磁刀】×2+雪月風花流の受け流しカウンター技【水紋】の複合技。結構凶悪である。この技で何人か無効化する。
「撤退だ撤退!逃げるぞ!」
しかし周りは囲まれたの絶望を君たちに…
「雷二刀嘯風弄月流…【雷雲】」
刀だけではなく体までバリバリとスパークし、逃げ出そうとした残った敵を稲妻が通ったかのような閃光と共に神速の剣で切り伏せ。戦いが終わった
本来は【雷刀】×【電光石火】+自ら周りに放電し知覚範囲を広げる雷魔法【エレクトロ】+雪月風花流の知覚する範囲にいる者を神速の剣で切り裂く【霧雨】の複合技。要するに範囲にいる敵を物凄い速さで切る技だねうん。基本待ち技なのだが【エレクトロ】で近く範囲が広がっているので待たずに発動も可能。範囲を狭めれば狭める程剣の速さが増す。
がちがちの噛ませ犬イベント乙でした!
「しかし最近完全に魔法剣士化してるわー…魔法も手札増えたんだけど森じゃ使うとこないし…」
実際魔力を練る手間も省けて魔力も節約できる魔法剣士という戦い方は結構便利だったりする。
このまま主人公っぽくなれば主人公属性ついてラッキースケベとかできるぞぐふふ。
「フラミレッラ様も終わったかな?遊んでるのかな?」
【バインド】で倒れたやつらを縛りながらフラミレッラの向かった方を見る。
少しだけ時は戻る。フラミレッラが虎型の魔物をショウとは逆方向に走らせていた。
「どこまで逃げるんだいお嬢ちゃん?」
「逃げ切れるまでよ!」
必死な様子で言い放つ
「追いかけっこだな!美人との追いかけっとは洒落てるねぇ!」
ゲスっぽい声で40人ほどの男たちが追いかける。
するとショウとはだいぶ距離が離れたところで虎型の魔物が足を止めた。
「諦めたのかいお嬢ちゃん?」
フラミレッラが優美に魔物から飛び降り着地する。たったそれだけの動きだったのだが…追って来た男達は敵なのを忘れて見惚れてしまっていた
ゴクリ…生唾を飲み
「こいつを捕まえれば自由にできぞ!」
と男が他の男たちを鼓舞させる。男たちのボルテージは最高潮に達していた。
「あら?そんなに私が欲しいの?でも貴方達は三つ勘違いしているわ」
フラミレッラが静寂を破るように口を開く、さっきとは違い不敵な笑みを浮かべながら落ち着いた口調だった。
「三つだと?」
「まず、私はお嬢ちゃんじゃない、貴方達よりもはるかに長い時を生きているわ。」
「そんなわけ…お前もして北の?!いやだがそれなら、これだけ近くにいればそれだけで朽ち果てるはず…」
「そして二つ目、人数が多ければ私に勝てると思っている。」
「俺達だって訓練を積んだ戦士だ、これだけの人数に勝てると思っているのか?!」
「フラグ乙。であってたかしら?…三つ目…それは私を一人にしてしまった事よ、用意はいいかしら坊や達?」
刹那、立っているのも辛い程の重圧が兵士達を襲う、息をするのも辛い位の圧迫感。気をしっかり持たなければ今にも卒倒しそうだった。
「き、貴様何者だ!弓兵撃て!」
「答える義務はないわ。【スカルウォール】」
それは彼女が今まで命を奪ってきた様々な生物の頭蓋骨で出来た巨大な壁。不気味で禍々しい雰囲気を放ち、悲鳴のような物が木霊し、ただの頭蓋骨なのだがどこか凝視されている、そんな錯覚すら感じる恐ろしい壁に男達全員が恐怖状態になり身動きが取れなくなる。
「あら?逃げなくていいの?10秒待ってあげるわよ?」
男たちは動けなくなった体を何とか必死に動かし逃げる。引きずるような動きなのでそう遠くにはいけないだろう。
「3…2…1…0」
言い終わると腐敗の力がフラミレッラを中心に開放され、逃げ惑う男たちを次々に骸にしていった。
朽ち果てるのを感じながら男はこっちが外れだったのかと後悔した。
小国すら滅ぼせる力を持つ彼女から逃げることなど最初からできなかったのだ。
ショウから遠く離れたのは力を開放すればいくらショウといえども魔力を防御にいくらか回さないとダメージを与えてしまうからであった。
フラミレッラは、話しかけて来た男のなれの果てに近づき、頭蓋骨を優しく拾い上げて口角をあげる
「私が欲しかったんでしょ?これでまた会えるわよ、良かったわね坊や?うふふふふ」
男達だけではなく【腐敗】の力が広がった範囲のすべての生命がただの骸となり静かな森がより一層静かになっていた。
本来聞こえるはずもない声量の含み笑いが、誰も聞ける者がいない状況で、誰の耳にでも届くかの様に響いていた。
◇ ◇ ◇ ◇
ショウが拘束しおわり少し休んでいると暗闇からフラミレッラがゆっくりと歩いて来た。
「思ったよりかかりましたね」
「距離を取らないと坊やまで傷つけてしまうかもしれなかったからね。それよりそれどうするの?」
女性らしく肘を抱き、【バインドで】縛られた男達を見て言った
「リールモルトの兵士にでも頼もうかと…」
優美に歩き何人か重なって気絶している男の上に腰掛け足を組む
「クズでも座り心地は悪くないのね?」
鬼!あんた鬼だよ!
「坊や誰も殺さなかったの?それとも…殺せなかったの?」
俺の目を真っすぐ見据える。正解だ。俺は殺せなかった。
「殺せなかったです、今まで人を殺した事なんてなくて…」
「別に悪い事じゃないわ、少なくない数の人が人を殺す事なく人生を終えるんだから。寿命が短い人間に限ればね。」
彼女は当たり前の事様に言う。
「でもお嬢ちゃんを守る為であれば…躊躇せずにやりなさい。後悔しないようにね。」
「はい、そういう状況にならない事を願いますよ。」
「それとこいつらの持ってた簡易版のアイテムボックスに狼らしき死骸が入ってたんですが」
気絶している男の指輪型のアイテムボックスから狼の死骸を出す
「これは東の主の眷属ね。ここで焼いてもいいけど…どうせなら親の元の送ってあげた方がいいと思うわ。」
「じゃあこのまま東の主に会いに行くってことですか?」
「ええ、もう近いからね。行くわよこれ置いていくの?」
ゴミを見るような目で男達を見て指をさす
我々の業界ではご褒美です!
「魔法かけてるんで解ける人もいないだろうし、置いて行って大丈夫だと思います。」
「…そういえばさっき強敵フラグ立てちゃったんですよねぇ…」
「あーはいはいフラグ乙。これでいい?」
「いや無理に言う流れ作らなくいいです。」
ルーに聞いたんだろうなぁ…
そういって俺たちは更に東の方に進んで行った。
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事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
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自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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