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番外編 イレスティとデート
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「なぁ、休みで、デートなのにイレスティはメイド服なの?」
「メイドですから。」
イレスティがすまし顔で答える
「それそういう使い方じゃないから… でもその髪飾り良く似合ってるよ」
⦅フララがこの前イレスティに買ったやつだな⦆
「あ、ありがとうございます!」
ドクン
(なんだか顔が熱くなってしまいますね、ショウ様には時々調子を狂わされます。 動悸もしますけど吸血衝動でしょうか?)
イレスティは普段通り邪魔にならないようにタイトに髪を纏め、ショウが考案したメイド服という出で立ちでデートに繰り出した。
「ほんと何でずっとメイド服なの?」
「ショウ様の教えを忠実に守った結果こうなりました」
⦅俺のせいだったー! 異世界の常識を無理やり押し付けた結果がイレスティだ! なんかごめん⦆
「そ、それでイレスティは何かしたい事あるの?」
「私は… 冒険者活動がしたいと考えております」
⦅え?!デートだよね?!⦆
(ショウ様は冒険者に憧れていたので、きっと冒険者活動をしたいはず)
「俺は別に良いし、むしろ楽しみではあるけど… それでいいの?」
「はい、私も訓練になりますし。 皆様の足手まといにならない為にも是非お願いします」
⦅イレスティは戦闘要員じゃないんだけどなぁ… まぁ本人がやりたいならいいか⦆
「わかったよ、じゃあギルドに行こう!」
「はい!」
イレスティは手を繋ぐ事もなくスカートの前で手を組み、ショウよりも三歩程後ろを下がり付いて行く。
⦅こういう控えめな所もやっぱりタイプなんだよなぁ⦆
◇ ◇ ◇ ◇
汗くさい匂いが充満したギルドに着くと中は混雑していた。
「凄い人だね」
「はい、この時間なのにこんなにいるとは驚きですね」
「イレスティ、あの中を割っていくよ」
ショウはイレスティの手を掴むと、依頼書が張り出してある所に出来た人だかりの中を割って入っていく
(シ、ショウ様私の手を… 水仕事で少し荒れているので、不快に感じてはいないでしょうか?)
⦅最近少し寒くなって乾燥してるし、ちょっと手荒れちゃってるけど、こういう手好きだなぁ。⦆
「簡単なやつをいくつかやろうか」
「そうですね、このゴブリン討伐と薬草採取なんていいのではないですか?」
⦅異世界に来て最初にやる二大依頼だな、だが…⦆
「本当にいいのかイレスティ? その依頼は簡単そうに見えるが実はトラップだぞ?」
「どういう事でしょうか?」
イレスティが柔らかそうな唇に人差し指を当て首を傾げる
「大体ゴブリン倒したり薬草取っていると、この辺じゃあまり出ない強い魔物が出てきて苦戦するっていうのが初仕事のテンプレなんだよ! その魔物を、顔を引きつらせた受付のお姉さんに見せ付け、俺tueeeeeeeeした後はランクが一気に上がって幸先のいい冒険者生活が始まるの!」
…
…
…
…なんて事はなく、特に問題もなく、薬草とゴブリンを討伐して街に戻る所だった
「ショウ様何をそんなに落ち込んでいるのですか?」
「だってさ、おかしいじゃん… 俺の冒険者ライフはここからだ! って意気込んだのにふつーに終わろうとしてるんだよ?」
「ちょっと何を考えているのかは理解できませんが、何事もなくてよかったのではないですか?」
「まぁ… そうなんだけどさ…」
ショウはがっくりと肩を落とした
「そういばイレスティも魔力の扱い少しだけど慣れて来たみたいだね」
「ええ、私も扱えるようになれば、身体強化して今よりはまともに戦えるようになると思います」
「別にイレスティは戦わなくてもいいってば! でも投擲も上達してるし、短刀術鋭くなってるね。」
「ショウ様が稽古つけてくれてますので少しずつですが。」
「まぁでもイレスティは俺達の大事なメイドさんだから、ほんと大丈夫だからね?」
「…はい」
どこか寂しげにも思える表情であった
依頼を終え、談笑しているうちに街が見えて来る
「少し買い物をしてから宿に戻るようにしてもいいでしょうか?」
「折角の休みなのに… でも、大丈夫だよ!」
◇ ◇ ◇ ◇
「凄い量だね、いつも一人で持たせてごめんね」
ショウは沢山の食材やら生活必需品を亜空間にしまった
「私の仕事ですので。 今日は手伝ってもらってありがとうございます」
侍女として完璧な所作で頭を下げた。
⦅今日は手伝える事は手伝おう⦆
その後宿に戻り料理の手伝いをしたり、洗い物の手伝いをしたりして眠りについたのだがエメの寝相の悪さで起こされてしまう。
「どんな寝方したらそんな事になるんだよ…」
ショウは、はだけている服を直しシーツをかけ直した
⦅あれ? イレスティがいないな?⦆
ショウが歩いて行くと明かりが漏れている部屋があった
「眠れないの?」
「あ、ショウ様」
椅子に座っていたイレスティがショウに気付き振り返ると、降ろした金髪がふわっと舞って、いい香りがショウの鼻にまで届いた。
いつものキリっとしたタイトなアップではなく、少しウェーブがかった柔らかそうな金髪が降ろされていた。
⦅髪の毛降ろすといつもの少しきつめの印象が和らぐんだよなぁ… アップの時は28歳ぐらいに見えるけど、今は20代前半にみえる。⦆
「どうされたのですか?」
「ちょっと起きてイレスティがいなかったからさ。 あっ! イレスティちょっと待ってて」
そういうとショウは部屋を出て行き何かを持って戻って来た
「手出して」
「手ですか?」
イレスティはそっと水仕事で荒れた手を出した
「いつもみんなの為にありがとうね」
ショウは両手で包み込むように、ハンドクリームをイレスティの荒れたしまっているが小さく柔らかい手に塗ってあげる
「メイドですから…」
(今日手を握られた時に荒れた手だったので、不快に感じさせてしまったんですね…)
「…綺麗な手でなくて申し訳ありません。」
イレスティが申し訳なさそうに頭を下げる
「何言ってるの? 凄く綺麗だよ、俺はイレスティの手好きだよ、小さくて柔らかくて、みんなの為に荒れちゃってるけど、どこか安心させてくれる手だよ」
(この人は心から言ってくれいるんでしょうね。 とても嬉しいです)
「なぁ、イレスティ。 今日一日どうだった?」
「とても楽しかったですよ」
「じゃあ何でずっと寂しそうな顔してたの?」
ハンドクリームを塗られている手に少し力が入った
(ショウ様は気付いていたんですね… メイド失格です…)
「よかったら話してくれない?」
(とても優しい顔…)
「…私は役に立てない事が怖いのです…」
(甘えてしまっていいのでしょうか?)
「うん。 聞くから話して」
⦅イレスティの事をもっと知りたい。⦆
「私はリールモルト王国の隅にある小さい村の貧しい家庭に生まれ、三人兄弟の末っ子でした。 兄と姉がいたのですが二人とも要領がよく、小さい頃から家の商売の手伝いをして家計を支えていました。 私はというと、特に何の取り得もなく家事がそれなりに出来るだけで、私は役立たずと家族から呼ばれていたのです。」
ショウがイレスティの手を優しく握る。
「私が10歳の時に父が新しい商売に手を出し失敗。 家は借金まみれでした。 ただ食べるだけでお金を生み出す能力のない私は森に追いやられ、捨てられる事になります。 私は死を覚悟していました。 私は役立たず、生きている価値などないと。 でも私は魔物を目の前にして… 逃げたのです。 死ぬ勇気すら持てませんでした。 その後街へ行き色々な所に頭を下げて雇ってもらいましたが…」
「続かなかった?」
イレスティが頷く
「私は出来ることが何もありませんでしたから、少し雇ってすぐに解雇されてしまったのです。 そうやって転々としながらどうにか食いつないでいると、とある貴族の目に留まりその方の屋敷で雇ってもらう事になるのですが… なんといいますか、そういう目的だったようで…」
イレスティは目を伏せる
「あ、でも体を許したわけではありませんよ? 無理やり裸にされたのですが急所に一撃入れて逃げ出しましたから。」
⦅まぁそれはそいつが悪いな、ざまぁ⦆
「その報告を聞いた宰相閣下が、貴族の股間を蹴る侍女とは面白そうだと言って城で働くことになりました。」
⦅宰相さん長いひげを撫でながら言ってそうだな⦆
「その後侍女として努力して、少しずつ認めて貰い、ルーメリア様の専属侍女となって今に至ります。 城で働いているのを知って両親から手紙が来たんですが… 現金な物ですよね…」
イレスティが話終わり一息つき、再度口を開く
「私は自分の居場所を失うのが怖いんです。 また必要とされなくなったら… 私は皆様みたいに特別じゃない… 戦う力もなく、特別な美貌や、特別な存在でもない… だから…」
イレスティは無意識に涙を流していた
「ショウ様達といつまで一緒に居られるかと考えたら… 少し寂しくなってしまいました…」
イレスティが悲しく微笑んだ。
⦅俺… イレスティの事好きなんだ… いなくなる想像したらすごく胸が痛い。⦆
ショウは立ち上がり後ろからイレスティを抱きしめる
「イレスティ… 俺も全然特別じゃない。 そりゃ魔法って力は使えるけど後は普通以下だし。 元の世界の俺の生活を見せてあげたいよ。」
イレスティを抱きしめる腕に力が入る
「本来俺にはルーやフララ、エメみたいな特別な存在とは縁がない。 イレスティは俺の事特別って思ってるかもしれないど、俺達一緒だよ。」
「そうでしょうか…」
「イレスティと居ると心地よくて落ち着いて、かっこつけない自然体のままでいれるんだ。 そんな安らげるイレスティがいる場所は、俺の大事な場所でもあるんだよ。」
イレスティの胸に熱い何かが込み上げてくる。
「…なぁイレスティ」
ドクン! イレスティの胸が高鳴った
(これは以前にも感じた…)
「はい」
「好きだよ」
更に大きく脈打ち、イレスティは自分の気持ちを確信する。
「わ、私は… 他の男性に裸を見られた汚れた女です…」
「関係ない」
「私は… 戦う力がありません…」
「関係ない」
「私は… 私は…」
イレスティの感情が高ぶる。
「俺にはイレスティが必要だよ。 ずっと側にいて欲しい。」
「………はい。 ………私はあなたのメイドですから…」
イレスティの涙で少し濡れてしまった彼の腕に、そっと手を乗せ震える声でそう告げた。
少しの間余韻に浸り、ショウが後ろから前に移動し、イレスティに優しく口づけする。
イレスティのファーストキスの味は、自分の涙が口に入り少ししょっぱかった。
(恋は突然始まる。 誰かがそう言ってた。 でも私のは、もうとっくに始まってたんだね。 …スキだよ。)
「メイドですから。」
イレスティがすまし顔で答える
「それそういう使い方じゃないから… でもその髪飾り良く似合ってるよ」
⦅フララがこの前イレスティに買ったやつだな⦆
「あ、ありがとうございます!」
ドクン
(なんだか顔が熱くなってしまいますね、ショウ様には時々調子を狂わされます。 動悸もしますけど吸血衝動でしょうか?)
イレスティは普段通り邪魔にならないようにタイトに髪を纏め、ショウが考案したメイド服という出で立ちでデートに繰り出した。
「ほんと何でずっとメイド服なの?」
「ショウ様の教えを忠実に守った結果こうなりました」
⦅俺のせいだったー! 異世界の常識を無理やり押し付けた結果がイレスティだ! なんかごめん⦆
「そ、それでイレスティは何かしたい事あるの?」
「私は… 冒険者活動がしたいと考えております」
⦅え?!デートだよね?!⦆
(ショウ様は冒険者に憧れていたので、きっと冒険者活動をしたいはず)
「俺は別に良いし、むしろ楽しみではあるけど… それでいいの?」
「はい、私も訓練になりますし。 皆様の足手まといにならない為にも是非お願いします」
⦅イレスティは戦闘要員じゃないんだけどなぁ… まぁ本人がやりたいならいいか⦆
「わかったよ、じゃあギルドに行こう!」
「はい!」
イレスティは手を繋ぐ事もなくスカートの前で手を組み、ショウよりも三歩程後ろを下がり付いて行く。
⦅こういう控えめな所もやっぱりタイプなんだよなぁ⦆
◇ ◇ ◇ ◇
汗くさい匂いが充満したギルドに着くと中は混雑していた。
「凄い人だね」
「はい、この時間なのにこんなにいるとは驚きですね」
「イレスティ、あの中を割っていくよ」
ショウはイレスティの手を掴むと、依頼書が張り出してある所に出来た人だかりの中を割って入っていく
(シ、ショウ様私の手を… 水仕事で少し荒れているので、不快に感じてはいないでしょうか?)
⦅最近少し寒くなって乾燥してるし、ちょっと手荒れちゃってるけど、こういう手好きだなぁ。⦆
「簡単なやつをいくつかやろうか」
「そうですね、このゴブリン討伐と薬草採取なんていいのではないですか?」
⦅異世界に来て最初にやる二大依頼だな、だが…⦆
「本当にいいのかイレスティ? その依頼は簡単そうに見えるが実はトラップだぞ?」
「どういう事でしょうか?」
イレスティが柔らかそうな唇に人差し指を当て首を傾げる
「大体ゴブリン倒したり薬草取っていると、この辺じゃあまり出ない強い魔物が出てきて苦戦するっていうのが初仕事のテンプレなんだよ! その魔物を、顔を引きつらせた受付のお姉さんに見せ付け、俺tueeeeeeeeした後はランクが一気に上がって幸先のいい冒険者生活が始まるの!」
…
…
…
…なんて事はなく、特に問題もなく、薬草とゴブリンを討伐して街に戻る所だった
「ショウ様何をそんなに落ち込んでいるのですか?」
「だってさ、おかしいじゃん… 俺の冒険者ライフはここからだ! って意気込んだのにふつーに終わろうとしてるんだよ?」
「ちょっと何を考えているのかは理解できませんが、何事もなくてよかったのではないですか?」
「まぁ… そうなんだけどさ…」
ショウはがっくりと肩を落とした
「そういばイレスティも魔力の扱い少しだけど慣れて来たみたいだね」
「ええ、私も扱えるようになれば、身体強化して今よりはまともに戦えるようになると思います」
「別にイレスティは戦わなくてもいいってば! でも投擲も上達してるし、短刀術鋭くなってるね。」
「ショウ様が稽古つけてくれてますので少しずつですが。」
「まぁでもイレスティは俺達の大事なメイドさんだから、ほんと大丈夫だからね?」
「…はい」
どこか寂しげにも思える表情であった
依頼を終え、談笑しているうちに街が見えて来る
「少し買い物をしてから宿に戻るようにしてもいいでしょうか?」
「折角の休みなのに… でも、大丈夫だよ!」
◇ ◇ ◇ ◇
「凄い量だね、いつも一人で持たせてごめんね」
ショウは沢山の食材やら生活必需品を亜空間にしまった
「私の仕事ですので。 今日は手伝ってもらってありがとうございます」
侍女として完璧な所作で頭を下げた。
⦅今日は手伝える事は手伝おう⦆
その後宿に戻り料理の手伝いをしたり、洗い物の手伝いをしたりして眠りについたのだがエメの寝相の悪さで起こされてしまう。
「どんな寝方したらそんな事になるんだよ…」
ショウは、はだけている服を直しシーツをかけ直した
⦅あれ? イレスティがいないな?⦆
ショウが歩いて行くと明かりが漏れている部屋があった
「眠れないの?」
「あ、ショウ様」
椅子に座っていたイレスティがショウに気付き振り返ると、降ろした金髪がふわっと舞って、いい香りがショウの鼻にまで届いた。
いつものキリっとしたタイトなアップではなく、少しウェーブがかった柔らかそうな金髪が降ろされていた。
⦅髪の毛降ろすといつもの少しきつめの印象が和らぐんだよなぁ… アップの時は28歳ぐらいに見えるけど、今は20代前半にみえる。⦆
「どうされたのですか?」
「ちょっと起きてイレスティがいなかったからさ。 あっ! イレスティちょっと待ってて」
そういうとショウは部屋を出て行き何かを持って戻って来た
「手出して」
「手ですか?」
イレスティはそっと水仕事で荒れた手を出した
「いつもみんなの為にありがとうね」
ショウは両手で包み込むように、ハンドクリームをイレスティの荒れたしまっているが小さく柔らかい手に塗ってあげる
「メイドですから…」
(今日手を握られた時に荒れた手だったので、不快に感じさせてしまったんですね…)
「…綺麗な手でなくて申し訳ありません。」
イレスティが申し訳なさそうに頭を下げる
「何言ってるの? 凄く綺麗だよ、俺はイレスティの手好きだよ、小さくて柔らかくて、みんなの為に荒れちゃってるけど、どこか安心させてくれる手だよ」
(この人は心から言ってくれいるんでしょうね。 とても嬉しいです)
「なぁ、イレスティ。 今日一日どうだった?」
「とても楽しかったですよ」
「じゃあ何でずっと寂しそうな顔してたの?」
ハンドクリームを塗られている手に少し力が入った
(ショウ様は気付いていたんですね… メイド失格です…)
「よかったら話してくれない?」
(とても優しい顔…)
「…私は役に立てない事が怖いのです…」
(甘えてしまっていいのでしょうか?)
「うん。 聞くから話して」
⦅イレスティの事をもっと知りたい。⦆
「私はリールモルト王国の隅にある小さい村の貧しい家庭に生まれ、三人兄弟の末っ子でした。 兄と姉がいたのですが二人とも要領がよく、小さい頃から家の商売の手伝いをして家計を支えていました。 私はというと、特に何の取り得もなく家事がそれなりに出来るだけで、私は役立たずと家族から呼ばれていたのです。」
ショウがイレスティの手を優しく握る。
「私が10歳の時に父が新しい商売に手を出し失敗。 家は借金まみれでした。 ただ食べるだけでお金を生み出す能力のない私は森に追いやられ、捨てられる事になります。 私は死を覚悟していました。 私は役立たず、生きている価値などないと。 でも私は魔物を目の前にして… 逃げたのです。 死ぬ勇気すら持てませんでした。 その後街へ行き色々な所に頭を下げて雇ってもらいましたが…」
「続かなかった?」
イレスティが頷く
「私は出来ることが何もありませんでしたから、少し雇ってすぐに解雇されてしまったのです。 そうやって転々としながらどうにか食いつないでいると、とある貴族の目に留まりその方の屋敷で雇ってもらう事になるのですが… なんといいますか、そういう目的だったようで…」
イレスティは目を伏せる
「あ、でも体を許したわけではありませんよ? 無理やり裸にされたのですが急所に一撃入れて逃げ出しましたから。」
⦅まぁそれはそいつが悪いな、ざまぁ⦆
「その報告を聞いた宰相閣下が、貴族の股間を蹴る侍女とは面白そうだと言って城で働くことになりました。」
⦅宰相さん長いひげを撫でながら言ってそうだな⦆
「その後侍女として努力して、少しずつ認めて貰い、ルーメリア様の専属侍女となって今に至ります。 城で働いているのを知って両親から手紙が来たんですが… 現金な物ですよね…」
イレスティが話終わり一息つき、再度口を開く
「私は自分の居場所を失うのが怖いんです。 また必要とされなくなったら… 私は皆様みたいに特別じゃない… 戦う力もなく、特別な美貌や、特別な存在でもない… だから…」
イレスティは無意識に涙を流していた
「ショウ様達といつまで一緒に居られるかと考えたら… 少し寂しくなってしまいました…」
イレスティが悲しく微笑んだ。
⦅俺… イレスティの事好きなんだ… いなくなる想像したらすごく胸が痛い。⦆
ショウは立ち上がり後ろからイレスティを抱きしめる
「イレスティ… 俺も全然特別じゃない。 そりゃ魔法って力は使えるけど後は普通以下だし。 元の世界の俺の生活を見せてあげたいよ。」
イレスティを抱きしめる腕に力が入る
「本来俺にはルーやフララ、エメみたいな特別な存在とは縁がない。 イレスティは俺の事特別って思ってるかもしれないど、俺達一緒だよ。」
「そうでしょうか…」
「イレスティと居ると心地よくて落ち着いて、かっこつけない自然体のままでいれるんだ。 そんな安らげるイレスティがいる場所は、俺の大事な場所でもあるんだよ。」
イレスティの胸に熱い何かが込み上げてくる。
「…なぁイレスティ」
ドクン! イレスティの胸が高鳴った
(これは以前にも感じた…)
「はい」
「好きだよ」
更に大きく脈打ち、イレスティは自分の気持ちを確信する。
「わ、私は… 他の男性に裸を見られた汚れた女です…」
「関係ない」
「私は… 戦う力がありません…」
「関係ない」
「私は… 私は…」
イレスティの感情が高ぶる。
「俺にはイレスティが必要だよ。 ずっと側にいて欲しい。」
「………はい。 ………私はあなたのメイドですから…」
イレスティの涙で少し濡れてしまった彼の腕に、そっと手を乗せ震える声でそう告げた。
少しの間余韻に浸り、ショウが後ろから前に移動し、イレスティに優しく口づけする。
イレスティのファーストキスの味は、自分の涙が口に入り少ししょっぱかった。
(恋は突然始まる。 誰かがそう言ってた。 でも私のは、もうとっくに始まってたんだね。 …スキだよ。)
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