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第三十七話 暇を持て余した神々の遊び
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「な、なんだこれ…」
「お兄ちゃん!」
「エメは大丈夫なのか?」
「うん、多分大丈夫!」
その光景は余りに異常だった。 風で舞った砂ぼこりや、木から離れ宙を漂っている葉がそのまま空中に浮いたまま停止していた
ルー、フララ、レデリは俺の声が聞こえ反応しようとした所で停止していた。
この状態知ってるぞ… 世間では九割は嘘と言われる時間停止だ。
「エメこれはやばいぞ。」
汗が頬をスーッと流れ落ちた
「うん、そうだね。 外にいても多分あまり役に立たないから、中からサポートするね!」
「頼む!」
そういうとエメは俺の中に入っていった
『多分これは時魔法だ、こっちだと魔術になるのか? でもなぜこんなに長時間…』
『わからないけどもうくるよ!』
とにかくもうすぐここに来る奴は本気でやばい。【身体強化】【思考加速】【反応強化】【オーラ】【エレクトロ】【リジェネーション】【魔法障壁・アレキサンドライト】【晶刀・紅玉・蒼玉】【蒼炎二刀】
最初から全力で行かないと瞬殺されかねない。 どうにかみんなを…
そう考えていると猛スピードながら大した力を使っていないであろう余裕の表情でこちらへ向かってくる者。
「麒麟…」
『お兄ちゃんの記憶のビール会社のとはちょっと違うけど似てるね。 おそらく時間を止めてるのはこいつだよ!』
目の前に現れたのは高さ十メートル程で体は黒く馬のようで顔は龍、前足や後ろ足は蒼炎を纏っており走ると揺らめいて綺麗であった。
背中から尻尾にかけても蒼い炎が出ており神々しさすら感じさせる。
そんな麒麟が鼻息を荒げ、前足で地面を掻きながら目が合うだけですくみ上ってしまいそうな位鋭い目で俺を見下ろしていた。
「お前、魔力が扱えるな?」
麒麟が話しかけてくる、知能は高い様だ
「それに時間を止めているのに動けるとは。 そうか大精霊の伴侶だからか」
鑑定持ち! 普通鑑定って転移した主人公が持つもんだろうがよ! 卑怯だぞ!
「そうです、樹の大精霊は僕の妻です」
完全に逃げ腰だが何とか声を絞り出す。
「ほう、その割には力不足にも感じるが?」
麒麟が興味なさげに告げる。
「まだ修業中なもんでして」
封印魔法【シーリングボックス】結晶魔法【輝結界】土魔法【アースドーム】樹魔法【ウッドガード】水魔法【アイスプリズン】
ルーやフララ、レデリを守る為に何重にも魔法の壁を作る
「…戦う気か?」
麒麟が楽しそうににやりと笑った気がした
「それに一人で勝つ気か?」
ブルゥゥ 鼻を荒く鳴らした、前足もさっきより力強く地面を掻いている
まぁ眷属召喚はバレてるわな… じゃあ素直呼ばせてもらおう。 一人じゃ絶対無理だ
「それじゃあ、ありがたく【眷属召喚】」
いつものエフェクトで三体が現れ、最後に骨で出来た立派な両開きの扉が開きフララが現れる
麒麟を見たとたん全員が一瞬固まった。
「…主様。 これはまずい。逃げる方がいいと思うがのぉ?」
「主よ… 全員でやって勝てるかどうかだぞ。」
「主殿。 厳しい戦いになります」
「なりますよ」
「なりますね」
三匹のペット達が目の前の麒麟の異常性に気付き逃げを勧める
「なぁ逃がしてくれると思うか?」
「無理ね、背中をやられて死ぬわね」
「お前達、無理だったら戻っていいから少しだけ手伝ってくれ」
俺は別にみんなに死んでほしいなんて思ってない。
「わらわの命はとうに主様に捧げておる。 最後まで付き合わせてもらえんかえ?」
「我の背を預けるは命を託したに同じ。 最後まで主の翼となろう」
「わしは助けられた身。 この命、主殿の為に散らすなら本望です」
「本望だよ」
「本望だね」
「お前ら…」
ペット達の心意気に泣きそうになった。
「女だけじゃなくて魔物迄誑かすようになったの?」
フララ…
「…悪いなフララ。」
「ええ全くだわ、あの蒼い炎。 おそらく神聖属性の炎ね。 焼かれたらいくら私でも消滅するわ。」
「そうか。」
少し目を伏せてしまう。」
「貴方は優しい人よ、そして残酷な人ね」
フララが品よく笑う
「貴方が自分より先にいなくなるのは、死ぬより辛い事よ。 私も共に死なせてくれる貴方は優しい。」
フララが俺に軽く抱き着く
「でも残されるルーメリアは地獄ね。 イレスティやレデリも辛いでしょう。」
「彼女達なら大丈夫だよ… ルーも立ち直れると思う。 もし俺が死にそうになったら短距離ならマナの力で転移させれると思うから、彼女達だけでも脱出させる。」
「貴方が彼女達を生かすんですもの、ルーメリアにとってはそれは自分で死ねない呪いみたいなものね。 一生貴方のはめた枷で苦しむ事になるわ」
「…それでもルーには生きて欲しいよ。」
「私は殺す癖に?」
皮肉っぽく笑い、俺の頬を撫でる。
「フララは… 立ち直れないじゃないか」
「うふふふ、その通りね。 良くわかってる。 多分自暴自棄になって、人でも何でもそこら中骨だらけにしてから死ぬわ。」
「やっぱり一緒に死ぬべきだな」
「ええそうね、貴方に約束したいい事をしてあげられなかったのが、ちょっと心残りね。」
「じゃあ無事に戻れたらすぐにでも。」
「楽しみにしてるわ。」
フララと軽くキスをして向き直る。
全く本当にいい女過ぎるよお前は…
麒麟は退屈そうにただ様子を伺っているだけだった。
念話でみんなに声をかけた。
『疑似的な常闇の森を作るからそこでやるよ!』
皆森の住人だ、おそらくそれが一番力を発揮できる
『『『承知!』』』『わかったわ。』
『じゃあエメ行くよ!』
『了解お兄ちゃん!』
『『【フィールド展開・常闇の森】』』
辺り一面に常闇の森の様な大きな樹々が生えていき、漂う空気まで常闇の森の様なフィールドになった。
「ほう、見事だな」
麒麟が関心してる
そのスキにエメが四方から力を奪う樹の枝が延びて行き、麒麟の四肢を拘束した
『イオ! あいつに結界頼む!』
【結蛇・奪】
麒麟を中心に大きな結界が展開される、今回は俺達のパワーダウン効果はないようだ
『みんなとりあえず全力遠距離攻撃で行くよ! 合わせて!』
「蒼炎魔法【炎帝】」
ピンポン玉程度の蒼い丸い球が麒麟の方に飛んでいき、着弾!
ドガーーーーン! 周りの樹々をなぎ倒してしまう程の爆風と爆音辺りに木霊した。
着弾すると同時に麒麟を巻き込んだ大爆発が起こり、天にも届きそうな蒼い火柱が麒麟を燃いていた
俺が使える最大火力の単体魔法だ、練りに練った魔力を更に圧縮して着弾と同時に爆発させ、蒼い炎で塵も残さず燃やし尽くす。
はずだが多分無理だ、まだ魔力反応がある。
「【ポイズンニードル】【雷狼斬爪】【フレイムウインドウ】 【土蛇・貫】【結蛇・刺】 【腐敗の愛撫】】
少し食らうだけで致命傷を貰いそうな毒を塗りたくった鋭利な樹の針に貫かれ、雷を伴いながら飛んでいく斬撃で体は切られる、炎の竜巻でさらなる火傷を負い、岩と結界の矢の弾幕が体の至るところに食い込む、全力で解放した【腐敗】の力が半透明な女性を形どり触れる部分の肉を朽ち果てさせていった。
いける!
『俺が近づいて封印魔法をかけるから直接叩くぞ!』
『『『『『了解!』』』』』
未だ特に身動きがない麒麟に近づく
近いと威圧感が半端じゃない!
「封印魔法【四神の杭】」
麒麟を中心に巨大な杭が四方に現れ、最後に中心の本体に刺さり魔力の鎖で繋がると地面にめり込んで行き、麒麟を這いつくばらせた。
後を追ってきた仲間達もここが好機と攻撃にうつる
ルチルが太い牙で前足を噛み砕き、体を炎にしたベリルが鋭利な前足の爪で大きな背中の肉を引きちぎる、イオも二体は毒牙で噛み付いて、もう一体はウォーターカッターのようなもので体を切り裂いき、フララの魔術で大量に鮮血が舞散った。
「蒼炎晶二刀嘯風弄月流…【月夜見】」
俺が最後にマナを練り合わせて出した蒼炎を纏った晶刀で音もなく切り、後ろ足二本が鮮血と共に体から離れた。
怒涛の猛攻撃で麒麟もボロボロだ。
このまま押し切れる!
そう思っていた…
「ふん、中々いい連携に攻撃力だ。」
「な?!」
声が聞こえる方を見ると封印術が解け、切断された後ろ足も、深く傷ついた体の傷も全て元通りになっていた。
「嘘だろ…」
思わず刀を落としてしまいそうになるが、なんとか堪えた
「蒼炎魔法【炎帝】」
再度圧縮された蒼炎が麒麟の方に向かっていく
「それは結構効くから食らいたくないな」
そういうと着弾する前に黒い何かに吸い込まれて消えてしまった。
「そ、そんな…」
俺は絶望していた… ここで死ぬのか?
もっとみんなと居たいのに… ただ楽しく暮らしたいだけなのに… こんな所で…
俺は物語の主人公の様に突然覚醒したりしない…
どうやってもここを切り抜けられない。
それがわかってしまう位の中途半端な実力はある。
戦いの中絶望を感じていると、ルチルの声が耳に届いた。
「主様よ、わらわが時間を稼ぐ、ベリルに乗って逃げてたも!」
「それがいい主殿。 わしも加勢すれは少しは稼げる。」
「稼げるよ」
「稼げるだろう」
「しょう。 私の妹達をよろしくね。 ルーメリアにはやっぱり貴方が必要だから。 私は十分幸せだったわ。」
俺の前に出て後ろも振り返らずに三者三様に言葉を告げた
「ちょっと待てよ! そんなの嫌だ! 俺も残る!」
『お兄ちゃんごめん!』
「エメお前! 力が… 抜ける…」
エメがショウの体から力を奪っていた。 エメの作った無数の樹がショウの張った魔法を何とか突破し、時が止まって動かない三人の体を掴んだ。
「主よ、すまん!」
ベリルが俺を前足で掴み今にも飛び立とうと翼をはためかせたその時だった!
「…盛り上がってる所悪いけど、戦う気ないぞ?」
・
・
・
・
・
・
「「「「「え?!」」」」」
「勝手にそっちが仕掛けて来ただけだろうに」
麒麟は何言ってるんだという感じで呆れながら鼻を鳴らした。
思い出してみると… 確かにそうだ… 勝手に戦う物だと思って対話をしなかった
【リカバリー】で元の体の状態に戻す
「じゃ、じゃあこのまま何処かへ行ってくれるんですか?」
「こんなに攻撃されたのにか?」
「…すみませんでした。」
「まぁいい。 時間を巻き戻して体も元通りだしな。」
ラスボス級の相手じゃねぇか! どうやって倒すんだよこいつ!
「魔力を扱えるやつがいるのを見つけたから来ただけだ。 それに… お前が特異点か」
「特異点?」
「ああ、まぁ気にするな。 ただの趣味だ。」
麒麟は鼻息をフンと出す
「あなたの使っていたのは魔法ですか?」
「魔法だ。 もうこっちの世界ではなくなってしまったがな」
「こっちの世界?」
「お前もこっちの世界の人間じゃないだろう。 何を驚く?」
「もしかして… 世界を渡ったりできるんですか?」
「条件はあるがな。 時と空間を操るのは得意だからな」
麒麟が自慢げに語る。
「そうなんですか、僕なんてほんの少し時間を止めたり、全力出して少し転移できる位ですよ」
「そうか? しっかりと概念を理解できていないのではないか? どれ…」
頭に大量の情報が流れて来た
「うわぁぁあああ!!!」
頭が割れる様に痛くなり、痛みのあまり声を漏らしてしまう
「しょう!」
フララが慌てて駆け寄ってくるのを手で制した
「も、もう大丈夫…」
「人間の頭だとそれぐらいが限界だな。 自由自在とはいかないだろうが、少しは時間と空間魔法を扱えるようになるだろう。 後は自分で昇華させろ。」
「どうしてこんなことを?」
「趣味だ。」
完全に暇を持て余してやがる。
「次に会う時は敵かもしれないし、味方かもしれない。 今回の様に対話だけかもしれない。 お前との未来は不確定なのでな」
「未来が見えるんですか?」
「さぁどうだろうな」
はぐらかしやがって
「貴方は神とかそういった類のものですか?」
「自分の事は、自分が一番よくわからんもんさ」
哲学?! なんだよその自分探しの一人旅とか言って、自分を見つめなおす旅行の最中なのに、写真をSNSにバンバン上げる女子みたいな発言! お前ら写真撮るのに必死ですでに自分を見失ってるからな! ちなみに俺のフォロワーはおかんと企業アカだけです…
「は、はぁ… 貴方のような存在は他にもいるのでしょうか?」
「こっちには現在、空を漂う黄金の龍、海を漂う蛇、全身宝石の亀がおるな」
「こっちって事は僕の世界にも?」
「さてな」
あえて情報を与えといて教えてくれない感が腹立つな
「好戦的なのもおるから気を付けるといい。 お前なら出会うかもしれんからな」
フラグ立てんな、会ったらお前のせいだかんな!
「それと雷狼の娘よこっちに来い」
ルチルの方を向いて呼びかけた
「な、なんじゃ! わ、わらわに惚れたか?! わらわには主様がおるのでな、諦めてたも!」
うん、絶対違うと思うんだよそれ…
「何を言っているんだ? まぁいい。 お前そろそろ進化しそうだぞ。」
「何? ほんとかの?!」
ルチルが嬉しそうだ、尻尾がぶんぶんと揺れている
「それで、雷狼の娘よ進化したいか?」
麒麟の目がより一層鋭くなりルチルを射る様に見ていた。
「お兄ちゃん!」
「エメは大丈夫なのか?」
「うん、多分大丈夫!」
その光景は余りに異常だった。 風で舞った砂ぼこりや、木から離れ宙を漂っている葉がそのまま空中に浮いたまま停止していた
ルー、フララ、レデリは俺の声が聞こえ反応しようとした所で停止していた。
この状態知ってるぞ… 世間では九割は嘘と言われる時間停止だ。
「エメこれはやばいぞ。」
汗が頬をスーッと流れ落ちた
「うん、そうだね。 外にいても多分あまり役に立たないから、中からサポートするね!」
「頼む!」
そういうとエメは俺の中に入っていった
『多分これは時魔法だ、こっちだと魔術になるのか? でもなぜこんなに長時間…』
『わからないけどもうくるよ!』
とにかくもうすぐここに来る奴は本気でやばい。【身体強化】【思考加速】【反応強化】【オーラ】【エレクトロ】【リジェネーション】【魔法障壁・アレキサンドライト】【晶刀・紅玉・蒼玉】【蒼炎二刀】
最初から全力で行かないと瞬殺されかねない。 どうにかみんなを…
そう考えていると猛スピードながら大した力を使っていないであろう余裕の表情でこちらへ向かってくる者。
「麒麟…」
『お兄ちゃんの記憶のビール会社のとはちょっと違うけど似てるね。 おそらく時間を止めてるのはこいつだよ!』
目の前に現れたのは高さ十メートル程で体は黒く馬のようで顔は龍、前足や後ろ足は蒼炎を纏っており走ると揺らめいて綺麗であった。
背中から尻尾にかけても蒼い炎が出ており神々しさすら感じさせる。
そんな麒麟が鼻息を荒げ、前足で地面を掻きながら目が合うだけですくみ上ってしまいそうな位鋭い目で俺を見下ろしていた。
「お前、魔力が扱えるな?」
麒麟が話しかけてくる、知能は高い様だ
「それに時間を止めているのに動けるとは。 そうか大精霊の伴侶だからか」
鑑定持ち! 普通鑑定って転移した主人公が持つもんだろうがよ! 卑怯だぞ!
「そうです、樹の大精霊は僕の妻です」
完全に逃げ腰だが何とか声を絞り出す。
「ほう、その割には力不足にも感じるが?」
麒麟が興味なさげに告げる。
「まだ修業中なもんでして」
封印魔法【シーリングボックス】結晶魔法【輝結界】土魔法【アースドーム】樹魔法【ウッドガード】水魔法【アイスプリズン】
ルーやフララ、レデリを守る為に何重にも魔法の壁を作る
「…戦う気か?」
麒麟が楽しそうににやりと笑った気がした
「それに一人で勝つ気か?」
ブルゥゥ 鼻を荒く鳴らした、前足もさっきより力強く地面を掻いている
まぁ眷属召喚はバレてるわな… じゃあ素直呼ばせてもらおう。 一人じゃ絶対無理だ
「それじゃあ、ありがたく【眷属召喚】」
いつものエフェクトで三体が現れ、最後に骨で出来た立派な両開きの扉が開きフララが現れる
麒麟を見たとたん全員が一瞬固まった。
「…主様。 これはまずい。逃げる方がいいと思うがのぉ?」
「主よ… 全員でやって勝てるかどうかだぞ。」
「主殿。 厳しい戦いになります」
「なりますよ」
「なりますね」
三匹のペット達が目の前の麒麟の異常性に気付き逃げを勧める
「なぁ逃がしてくれると思うか?」
「無理ね、背中をやられて死ぬわね」
「お前達、無理だったら戻っていいから少しだけ手伝ってくれ」
俺は別にみんなに死んでほしいなんて思ってない。
「わらわの命はとうに主様に捧げておる。 最後まで付き合わせてもらえんかえ?」
「我の背を預けるは命を託したに同じ。 最後まで主の翼となろう」
「わしは助けられた身。 この命、主殿の為に散らすなら本望です」
「本望だよ」
「本望だね」
「お前ら…」
ペット達の心意気に泣きそうになった。
「女だけじゃなくて魔物迄誑かすようになったの?」
フララ…
「…悪いなフララ。」
「ええ全くだわ、あの蒼い炎。 おそらく神聖属性の炎ね。 焼かれたらいくら私でも消滅するわ。」
「そうか。」
少し目を伏せてしまう。」
「貴方は優しい人よ、そして残酷な人ね」
フララが品よく笑う
「貴方が自分より先にいなくなるのは、死ぬより辛い事よ。 私も共に死なせてくれる貴方は優しい。」
フララが俺に軽く抱き着く
「でも残されるルーメリアは地獄ね。 イレスティやレデリも辛いでしょう。」
「彼女達なら大丈夫だよ… ルーも立ち直れると思う。 もし俺が死にそうになったら短距離ならマナの力で転移させれると思うから、彼女達だけでも脱出させる。」
「貴方が彼女達を生かすんですもの、ルーメリアにとってはそれは自分で死ねない呪いみたいなものね。 一生貴方のはめた枷で苦しむ事になるわ」
「…それでもルーには生きて欲しいよ。」
「私は殺す癖に?」
皮肉っぽく笑い、俺の頬を撫でる。
「フララは… 立ち直れないじゃないか」
「うふふふ、その通りね。 良くわかってる。 多分自暴自棄になって、人でも何でもそこら中骨だらけにしてから死ぬわ。」
「やっぱり一緒に死ぬべきだな」
「ええそうね、貴方に約束したいい事をしてあげられなかったのが、ちょっと心残りね。」
「じゃあ無事に戻れたらすぐにでも。」
「楽しみにしてるわ。」
フララと軽くキスをして向き直る。
全く本当にいい女過ぎるよお前は…
麒麟は退屈そうにただ様子を伺っているだけだった。
念話でみんなに声をかけた。
『疑似的な常闇の森を作るからそこでやるよ!』
皆森の住人だ、おそらくそれが一番力を発揮できる
『『『承知!』』』『わかったわ。』
『じゃあエメ行くよ!』
『了解お兄ちゃん!』
『『【フィールド展開・常闇の森】』』
辺り一面に常闇の森の様な大きな樹々が生えていき、漂う空気まで常闇の森の様なフィールドになった。
「ほう、見事だな」
麒麟が関心してる
そのスキにエメが四方から力を奪う樹の枝が延びて行き、麒麟の四肢を拘束した
『イオ! あいつに結界頼む!』
【結蛇・奪】
麒麟を中心に大きな結界が展開される、今回は俺達のパワーダウン効果はないようだ
『みんなとりあえず全力遠距離攻撃で行くよ! 合わせて!』
「蒼炎魔法【炎帝】」
ピンポン玉程度の蒼い丸い球が麒麟の方に飛んでいき、着弾!
ドガーーーーン! 周りの樹々をなぎ倒してしまう程の爆風と爆音辺りに木霊した。
着弾すると同時に麒麟を巻き込んだ大爆発が起こり、天にも届きそうな蒼い火柱が麒麟を燃いていた
俺が使える最大火力の単体魔法だ、練りに練った魔力を更に圧縮して着弾と同時に爆発させ、蒼い炎で塵も残さず燃やし尽くす。
はずだが多分無理だ、まだ魔力反応がある。
「【ポイズンニードル】【雷狼斬爪】【フレイムウインドウ】 【土蛇・貫】【結蛇・刺】 【腐敗の愛撫】】
少し食らうだけで致命傷を貰いそうな毒を塗りたくった鋭利な樹の針に貫かれ、雷を伴いながら飛んでいく斬撃で体は切られる、炎の竜巻でさらなる火傷を負い、岩と結界の矢の弾幕が体の至るところに食い込む、全力で解放した【腐敗】の力が半透明な女性を形どり触れる部分の肉を朽ち果てさせていった。
いける!
『俺が近づいて封印魔法をかけるから直接叩くぞ!』
『『『『『了解!』』』』』
未だ特に身動きがない麒麟に近づく
近いと威圧感が半端じゃない!
「封印魔法【四神の杭】」
麒麟を中心に巨大な杭が四方に現れ、最後に中心の本体に刺さり魔力の鎖で繋がると地面にめり込んで行き、麒麟を這いつくばらせた。
後を追ってきた仲間達もここが好機と攻撃にうつる
ルチルが太い牙で前足を噛み砕き、体を炎にしたベリルが鋭利な前足の爪で大きな背中の肉を引きちぎる、イオも二体は毒牙で噛み付いて、もう一体はウォーターカッターのようなもので体を切り裂いき、フララの魔術で大量に鮮血が舞散った。
「蒼炎晶二刀嘯風弄月流…【月夜見】」
俺が最後にマナを練り合わせて出した蒼炎を纏った晶刀で音もなく切り、後ろ足二本が鮮血と共に体から離れた。
怒涛の猛攻撃で麒麟もボロボロだ。
このまま押し切れる!
そう思っていた…
「ふん、中々いい連携に攻撃力だ。」
「な?!」
声が聞こえる方を見ると封印術が解け、切断された後ろ足も、深く傷ついた体の傷も全て元通りになっていた。
「嘘だろ…」
思わず刀を落としてしまいそうになるが、なんとか堪えた
「蒼炎魔法【炎帝】」
再度圧縮された蒼炎が麒麟の方に向かっていく
「それは結構効くから食らいたくないな」
そういうと着弾する前に黒い何かに吸い込まれて消えてしまった。
「そ、そんな…」
俺は絶望していた… ここで死ぬのか?
もっとみんなと居たいのに… ただ楽しく暮らしたいだけなのに… こんな所で…
俺は物語の主人公の様に突然覚醒したりしない…
どうやってもここを切り抜けられない。
それがわかってしまう位の中途半端な実力はある。
戦いの中絶望を感じていると、ルチルの声が耳に届いた。
「主様よ、わらわが時間を稼ぐ、ベリルに乗って逃げてたも!」
「それがいい主殿。 わしも加勢すれは少しは稼げる。」
「稼げるよ」
「稼げるだろう」
「しょう。 私の妹達をよろしくね。 ルーメリアにはやっぱり貴方が必要だから。 私は十分幸せだったわ。」
俺の前に出て後ろも振り返らずに三者三様に言葉を告げた
「ちょっと待てよ! そんなの嫌だ! 俺も残る!」
『お兄ちゃんごめん!』
「エメお前! 力が… 抜ける…」
エメがショウの体から力を奪っていた。 エメの作った無数の樹がショウの張った魔法を何とか突破し、時が止まって動かない三人の体を掴んだ。
「主よ、すまん!」
ベリルが俺を前足で掴み今にも飛び立とうと翼をはためかせたその時だった!
「…盛り上がってる所悪いけど、戦う気ないぞ?」
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「「「「「え?!」」」」」
「勝手にそっちが仕掛けて来ただけだろうに」
麒麟は何言ってるんだという感じで呆れながら鼻を鳴らした。
思い出してみると… 確かにそうだ… 勝手に戦う物だと思って対話をしなかった
【リカバリー】で元の体の状態に戻す
「じゃ、じゃあこのまま何処かへ行ってくれるんですか?」
「こんなに攻撃されたのにか?」
「…すみませんでした。」
「まぁいい。 時間を巻き戻して体も元通りだしな。」
ラスボス級の相手じゃねぇか! どうやって倒すんだよこいつ!
「魔力を扱えるやつがいるのを見つけたから来ただけだ。 それに… お前が特異点か」
「特異点?」
「ああ、まぁ気にするな。 ただの趣味だ。」
麒麟は鼻息をフンと出す
「あなたの使っていたのは魔法ですか?」
「魔法だ。 もうこっちの世界ではなくなってしまったがな」
「こっちの世界?」
「お前もこっちの世界の人間じゃないだろう。 何を驚く?」
「もしかして… 世界を渡ったりできるんですか?」
「条件はあるがな。 時と空間を操るのは得意だからな」
麒麟が自慢げに語る。
「そうなんですか、僕なんてほんの少し時間を止めたり、全力出して少し転移できる位ですよ」
「そうか? しっかりと概念を理解できていないのではないか? どれ…」
頭に大量の情報が流れて来た
「うわぁぁあああ!!!」
頭が割れる様に痛くなり、痛みのあまり声を漏らしてしまう
「しょう!」
フララが慌てて駆け寄ってくるのを手で制した
「も、もう大丈夫…」
「人間の頭だとそれぐらいが限界だな。 自由自在とはいかないだろうが、少しは時間と空間魔法を扱えるようになるだろう。 後は自分で昇華させろ。」
「どうしてこんなことを?」
「趣味だ。」
完全に暇を持て余してやがる。
「次に会う時は敵かもしれないし、味方かもしれない。 今回の様に対話だけかもしれない。 お前との未来は不確定なのでな」
「未来が見えるんですか?」
「さぁどうだろうな」
はぐらかしやがって
「貴方は神とかそういった類のものですか?」
「自分の事は、自分が一番よくわからんもんさ」
哲学?! なんだよその自分探しの一人旅とか言って、自分を見つめなおす旅行の最中なのに、写真をSNSにバンバン上げる女子みたいな発言! お前ら写真撮るのに必死ですでに自分を見失ってるからな! ちなみに俺のフォロワーはおかんと企業アカだけです…
「は、はぁ… 貴方のような存在は他にもいるのでしょうか?」
「こっちには現在、空を漂う黄金の龍、海を漂う蛇、全身宝石の亀がおるな」
「こっちって事は僕の世界にも?」
「さてな」
あえて情報を与えといて教えてくれない感が腹立つな
「好戦的なのもおるから気を付けるといい。 お前なら出会うかもしれんからな」
フラグ立てんな、会ったらお前のせいだかんな!
「それと雷狼の娘よこっちに来い」
ルチルの方を向いて呼びかけた
「な、なんじゃ! わ、わらわに惚れたか?! わらわには主様がおるのでな、諦めてたも!」
うん、絶対違うと思うんだよそれ…
「何を言っているんだ? まぁいい。 お前そろそろ進化しそうだぞ。」
「何? ほんとかの?!」
ルチルが嬉しそうだ、尻尾がぶんぶんと揺れている
「それで、雷狼の娘よ進化したいか?」
麒麟の目がより一層鋭くなりルチルを射る様に見ていた。
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【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
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カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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