47 / 138
第四十三話 すれ違いコント
しおりを挟む
「だ、誰か!」 「明かりを早く!」 「危ないから動くな!」
光が届かず暗闇に染まったホールに貴族達の動揺した声が響ていた。
国王が前に出て喋り出し、少しすると突如会場全体が暗闇に包まれたのだ。
突如光が奪われた事で皆目が慣れず、何も見えない状態の様だった
レデリ以外の俺達一行は常に夜の常闇に森に居たことにより、暗闇に慣れているので状況がはっきりと理解出来た
暗闇の中でうごめく影がいくつかある。 宰相、それに幾人かの貴族が刃物を取り出し今にも殺そうとしている所だった
【バインド】刃物を持った宰相達を瞬く間に全員拘束し一件落着! と思ったのだが、何処から沸いたのか黒装束で仮面をつけた四人組が暗闇に紛れて音もなく兵士の間をすり抜け、今にも王の首を取らんとしていた。
【結晶魔法・輝結界】
「な、何事だ?!」
激しい金属が弾かれる音に王はへたり込んでしまう。 輝く結界が迫りくる四人の攻撃を金属の弾かれる音と共に防いだのだ。
黒装束の男達は暗殺を即座に諦めこちらに気付き、バラバラに分かれて退却した。
俺はその中の一人が耳に四つのピアスをつけているのを発見する
「みんな追うよ! エメは俺の中に! イレスティとレデリは王様達を守って!」
「「「「「「了解!」」」」」」
俺達は四方の窓から飛び出した者達を追った。
「【ライトニング】」
俺は魔法を放ちながら男との距離を徐々に詰めていく、敵は初めて見たであろう雷魔法に驚きながらも難なく躱していった
「取った!」
俺は敵の後ろから長刀月華で切りかかる。
キン! がしかし男が体をひねり固いロッドで防がれてしまった
一定の距離を保ち向かい合う
『エメ行くよ』
『うん!』
「二刀嘯風弄月流…【楓】」
突然秋の満月に映える色鮮やかな楓が風に乗って現れ敵の周りを舞う。 舞っている楓が敵の視界を奪い視界が戻った時にショウはもうそこにいない。
「どこだ?!」
敵がそう言い終わると同時に背中から真っ二つになった
「手ごたえが…ない?」
切った黒装束の男はさらさらと土になってしまったのだ
「色鮮やかな楓によって視界を防ぎ一瞬で移動して真っ二つ、まともに食らえば切られた事にも気づかないでしょう。 恐ろしい速さの剣技ですね。」
少し離れた場所から仮面をかぶった敵がこもった男の声で話ながら何度か頷いていた。
中々の実力者に違いない、一瞬で俺の樹魔法との複合技を理解したようだ。
「ずいぶんと余裕だな、さっきのは分身か何か?」
俺は刀を構えながら話しかけた。
「ええ土魔術の【砂人形】ですよ、中級魔術で有名ですね。」
知ってて当然だろうみたいに言うけど、魔術の勉強をしてないからどんな魔術があるか殆どしらん…
「貴方は特殊な魔術と剣技を合わせた戦い方と言ったところでしょうか? 剣技は疾風流を基礎とした速さや技術がメインで、それを独自に昇華させた物… リールモルトでの蒼い炎の魔術もありますし… となれば一定の距離を保ちつつ…」
男が顎に手を当てて頷きながらブツブツと呟いている。 リールモルトの戦いの事を知ってるのか、分析して対処してくるタイプは厄介だな…
「おっとこれは失礼しました、今回は時間がありませんので今回は引かせていただきますよ。 次回はしっかりと殺し合いましょう! それでは!」
「待て!」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 【アースロック】」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 【ダスト】」
二重に詠唱で同時発動?! どうやってるんだよそれ!
「クソ外れない!」
足元から土が盛り上がり俺の脚がしっかりとロックされていた。 土煙で視界を奪われ、土煙が晴れた時には男の姿は消えていた。
「逃げられたか…」
俺は手を伸ばせば届きそうな満月を見上げながら誰もいない空に思わず呟いていた。
とりあえず連絡だな。
『フララ捕まえれたか?』
『逃がしたわ』
『ルチル、そっちはどうだ?』
『主様すまぬ、だめだったのじゃ』
『こっちも逃げられた。 会場で合流しよう』
他のみんなとも念話で話せるようにするべきだな。 何か魔法を考えよう。
しかしこうなるとルーの方もおそらく逃げられてるだろうな、一発でも当ててればルーの鎌で追跡可能だが…
中々の実力者揃いだな。 並大抵では全員が彼女達から逃げるなどは不可能だ。
そうして俺は会場へと向かった。
会場へ着くと先程光を取り戻したようでさっきのように動揺している者も少ない。
【バインド】で捕まえた宰相や貴族達は連行されたらしい。
すると浮かない顔のルーが現れる
「ショウごめん逃げられた」
ルーが申し訳なさそうに頭を下げた
「大丈夫だよ、俺もだし」
ルーの頭を優しく撫でる
「多分向こうも相当な使い手ね、私達から逃げるのだって簡単な事じゃないわ」
「わらわが元の姿に戻って追いかける前に魔術で撒かれたのじゃ」
フララとルチルも会場に戻って来た
「いいよ、みんなが無事なのが一番なんだから。 危険だと判断したらすぐに引き返してね、俺は誰かを失ってまであいつらを潰そうとは思わないから。」
三人が神妙に頷く
「私の眷属で空からある程度は追跡できたけど、スラム街の方へ消えて行ったわ」
スラムか… この国の闇だな。 一度行ってみる必要がありそうだ。
「イレスティ、レデリ、こっちは大丈夫だった?」
人込みをかき分けて二人がやって来た
「ええ特には何も問題はありませんでした」
「ずっと警戒してたけど、怪しそうな人もいなかったよ」
二人も無事でよかった。
「ショウ様ですね? 国王陛下がお話があるそうなので来ていただけますか?」
兵士が俺を見つけて血相を変えて呼びに来た
「わかりました」
そうして兵士は俺達を王達が居る部屋へと通した。
そこには国王と王妃と思われる女性3名に、王女と思われる女性2人と、王子だろう3人他、ローブの魔術師と剣を持った屈強な男の2人だ
「今回の働き見事であった!」
国王が部屋に入るならいきなり抱き着いてきた。 加齢臭も少しするし正直かなりきつい。 やめろ! 耳の裏までしっかり洗え!
「は、はぁ… 僕は出来る事をしただけですよ」
「何を言っておるのだ、全部お前の計画通りなのだろう?」
え? ナニヲイッテルノ?
「まさか裏切り者まで炙り出して解決してしまうとは驚きましたぞ!」
「お前只者じゃねぇーな! どうだ? リールモルからこっちに来て、俺達とこの国で働かないか?」
宮廷魔導士っぽい人と剣を持った強そうな人がほめてくれるが何が何だかさっぱりなんだ…
「お前は私との謁見の際、私がお前を伯爵だと気付いている事を敏感に感じ取り…」
俺の事気付いてたの?! こっちは全く気付いてませんが?! 今知りましたよそれ!
「それにああいった場に王妃や王女が居ない事を不審に思い何かあるのかと闇に私に尋ねたではないか!」
『王妃様だけでなく、王女様方までも忙しいですか… それもあって国王陛下も少しお疲れの様ですね?』
違うの! 王妃達とその娘達の仲が悪くそれに気を使って疲れてると思って聞いたんだよそれは!
「そして私もリールモルトのように協力して欲しいという真意を隠した言葉を快諾し」
どれの事だよ?!いつした?! そんな覚えねぇよ! いや待てよ…
『何かとやる事が多くてな、私も手伝って欲しい位だ。』
………わかるかよ! 田舎で歩いて芸能人見つける位難しいわ!
「踊るという言葉を比喩に解決してくると約束し、本当に解決してしまうとはな! 全くあっぱれだよ」
本当にあっぱれだよ! 俺が考えたシナリオならな!
ルーやフララがクスクスと笑っている。 お前ら知ってたな?!
「本当に助かりました。 国王並びにわたくしども王族一同、貴方の働きに大変感謝しています」
第一夫人なのであろう人が国王以外を代表して頭を下げた
「いいえ… 偶然ですので気にしないで下さい…」
「なんて謙虚な方なんでしょう…」
「ドラゴンを倒す武勇に優れた頭脳… 素敵ですわ…」
王女らしい綺麗な二人が頬を赤く染めていた。 フラグ、フラグが立った!
ルビーとサファイアのような固い肘で脇腹を小突かれたが気のせいだろう。
「ははは、屋敷だけではなく娘達までもらっていく気かお前は!」
国王が豪快に笑っていた。 両隣からの素人目にわからない速さの肘鉄が脇腹に飛んでくる! 不可視の完全犯罪!
「いやーでも逃げられましたし…」
「お前の事だ大方検討はついているんだろ?」
全くついてねぇよ! 期待しすぎだろ!
「まさか… 買いかぶりですよ」
「そうかな? まぁ約束通り屋敷をお前に提供しよう。 希望はあるか?」
「ここです」
フララの持っていた資料を渡す
「ほうここか。 わかったそれでは手配しておこう、今日は城で休んでくれ」
「ありがとうございます」
「それと明日は何処へ行くのだ?」
「真っ先に冒険者ギルドですね」
国王が目を閉じて何かを考えているようだ
「なるどそうだったのか… やはりお前は只者ではないな。 」
納得してないで何が何だか教えてくれ!
「本当にリールモルトの伯爵でなければ、我が国に欲しい位だよ」
「あ、ありがとうございます…」
俺はよくわからない展開だがとりあえずお礼をいった
「…ショウは私の婚約者。 譲れない。 それとフレデレク、大きくなった。」
ルーが一歩前に出ると懐かしむ目をして国王に話しかけた。
「覚えていてくれたのですか?」
国王は目を見開き心底嬉しそうな声をあげた
「覚えてる。 昔たまに遊んだ」
「あの当時ルーメリア様は私と目を合わせないようにしていらっしゃいましたね」
「うん。 無差別に【魅了】してしまうから。」
「私はとっくに魅了されてまいしたよ。 今でもまだ解けてないようですな」
覚えていてもらったのがよっぽど嬉しいのか饒舌だ、人の嫁口説いてんじゃねぇーぞ
「…結婚の話、断ってごめん。」
「とても残念でしたが、今のルーメリア様の素晴らしい表情を見れたのです。 存外断られるのも悪くないですね」
国王は優しい笑みで俺の方をみた
「ルーメリア様を大事にしてくれ」
「勿論です」
俺と国王が目と目何かを語っていると、王妃達が国王の肩に手を乗せた
「「「お話があります」」」
魔素とも魔力ともマナとも違う何かわからない恐ろしい力を感じる。 これは俺がルーとフララにエメを初めて会わせた時に感じた力の波動と同じ!
王妃達の無言の圧力と理解不能な力により国王は強制的に退場させられた。
「それではショウ様、また… お会い出来ますよね?」
「ショウ様… 今度お茶でもいたしましょう。 絶対ですわよ?」
二人の王女も爆弾を投下しながら去って行く
王子達と宮廷魔術師、剣聖はやれやれと言った感じで軽く頭を下げて出て行った。
「…ショウはお姫様が好きなの?」
「俺が好きなお姫様はルーだけだよ」
「うふふふ仲がよろしい事で。 ちょっと妬いちゃうわ」
「俺が好きな女王様もフララだけだよ」
「あら口がうまくなったのね?」
「エメは?!エメは?!」
「大好きだぞー」
「そうじゃない! そうじゃないよお兄ちゃん!」
エメが突然プンスカしだした
「…ショウ、それはダメ」
「私の教えは役に立ってないのかしら?」
「ご主人様それは良くありません」
「兄さん流石にあんまりじゃない?」
「主様… それはひどいのじゃ」
みんなからのブーイングである。
わかってるよ恥ずかしいだけじゃん…
「なぁみんな、今日部屋別々でいいか?」
みんなの方に向かって問いかけると笑顔で頷いてくれた
「それと…エメは一緒に寝てくれる?」
「うん! お兄ちゃんと一緒に寝る!」
◇ ◇ ◇ ◇
部屋の灯りが二つの重なる影を作っていた。
「旦那様… 旦那体温、匂い、全てが愛しいしいです…」
密着する事でふんわり鼻腔を刺激するエメの香りは、エキゾチックな甘さの中にビターオレンジを混ぜたような大人の香りだ。
「エメ…」
エメは今大人の25歳位の妖艶な女性へと姿を戻している、流石にロリロリ状態でするのは…ね?
「子供の姿で迫っても軽くあしらわれるだけでエメはとても寂しくしておりました…」
「この姿で迫られたら流石に我慢出来ないからね」
今も柔らかく弾力のある胸が俺に押し当てられ欲望の防波堤が決壊するのも時間の問題だろう
「今日はもう我慢しなくてもいいですよ… 旦那様をもっと感じさせて下さい」
エメが俺の唇に柔らかく癖になりそうな感触の唇を重ねた
お互いの舌がねっとりと絡み合い暫く堪能すると唇を離しエメが耳元に唇を寄せ吐息交じりの甘い声で囁く。
「………いいですよ…」
俺の理性の防波堤は完全に決壊した。
「旦那様… 来て…」
恍惚とした表情で伝える彼女に、俺は我慢できず胸を鷲掴みにしながらベットに押し倒す。
ベットに綺麗なエメラルドグリーンの髪がばさりと広がり部屋の明かりを消した。
「愛しています、旦那様…」
俺に覆い被さられ背中に爪を立てながら蕩けるような声で囁いた。
満月が作り出した二つの影は何度も重なり合い、この日2人が名実共に夫婦となる事ができた。
光が届かず暗闇に染まったホールに貴族達の動揺した声が響ていた。
国王が前に出て喋り出し、少しすると突如会場全体が暗闇に包まれたのだ。
突如光が奪われた事で皆目が慣れず、何も見えない状態の様だった
レデリ以外の俺達一行は常に夜の常闇に森に居たことにより、暗闇に慣れているので状況がはっきりと理解出来た
暗闇の中でうごめく影がいくつかある。 宰相、それに幾人かの貴族が刃物を取り出し今にも殺そうとしている所だった
【バインド】刃物を持った宰相達を瞬く間に全員拘束し一件落着! と思ったのだが、何処から沸いたのか黒装束で仮面をつけた四人組が暗闇に紛れて音もなく兵士の間をすり抜け、今にも王の首を取らんとしていた。
【結晶魔法・輝結界】
「な、何事だ?!」
激しい金属が弾かれる音に王はへたり込んでしまう。 輝く結界が迫りくる四人の攻撃を金属の弾かれる音と共に防いだのだ。
黒装束の男達は暗殺を即座に諦めこちらに気付き、バラバラに分かれて退却した。
俺はその中の一人が耳に四つのピアスをつけているのを発見する
「みんな追うよ! エメは俺の中に! イレスティとレデリは王様達を守って!」
「「「「「「了解!」」」」」」
俺達は四方の窓から飛び出した者達を追った。
「【ライトニング】」
俺は魔法を放ちながら男との距離を徐々に詰めていく、敵は初めて見たであろう雷魔法に驚きながらも難なく躱していった
「取った!」
俺は敵の後ろから長刀月華で切りかかる。
キン! がしかし男が体をひねり固いロッドで防がれてしまった
一定の距離を保ち向かい合う
『エメ行くよ』
『うん!』
「二刀嘯風弄月流…【楓】」
突然秋の満月に映える色鮮やかな楓が風に乗って現れ敵の周りを舞う。 舞っている楓が敵の視界を奪い視界が戻った時にショウはもうそこにいない。
「どこだ?!」
敵がそう言い終わると同時に背中から真っ二つになった
「手ごたえが…ない?」
切った黒装束の男はさらさらと土になってしまったのだ
「色鮮やかな楓によって視界を防ぎ一瞬で移動して真っ二つ、まともに食らえば切られた事にも気づかないでしょう。 恐ろしい速さの剣技ですね。」
少し離れた場所から仮面をかぶった敵がこもった男の声で話ながら何度か頷いていた。
中々の実力者に違いない、一瞬で俺の樹魔法との複合技を理解したようだ。
「ずいぶんと余裕だな、さっきのは分身か何か?」
俺は刀を構えながら話しかけた。
「ええ土魔術の【砂人形】ですよ、中級魔術で有名ですね。」
知ってて当然だろうみたいに言うけど、魔術の勉強をしてないからどんな魔術があるか殆どしらん…
「貴方は特殊な魔術と剣技を合わせた戦い方と言ったところでしょうか? 剣技は疾風流を基礎とした速さや技術がメインで、それを独自に昇華させた物… リールモルトでの蒼い炎の魔術もありますし… となれば一定の距離を保ちつつ…」
男が顎に手を当てて頷きながらブツブツと呟いている。 リールモルトの戦いの事を知ってるのか、分析して対処してくるタイプは厄介だな…
「おっとこれは失礼しました、今回は時間がありませんので今回は引かせていただきますよ。 次回はしっかりと殺し合いましょう! それでは!」
「待て!」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 【アースロック】」
「 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 【ダスト】」
二重に詠唱で同時発動?! どうやってるんだよそれ!
「クソ外れない!」
足元から土が盛り上がり俺の脚がしっかりとロックされていた。 土煙で視界を奪われ、土煙が晴れた時には男の姿は消えていた。
「逃げられたか…」
俺は手を伸ばせば届きそうな満月を見上げながら誰もいない空に思わず呟いていた。
とりあえず連絡だな。
『フララ捕まえれたか?』
『逃がしたわ』
『ルチル、そっちはどうだ?』
『主様すまぬ、だめだったのじゃ』
『こっちも逃げられた。 会場で合流しよう』
他のみんなとも念話で話せるようにするべきだな。 何か魔法を考えよう。
しかしこうなるとルーの方もおそらく逃げられてるだろうな、一発でも当ててればルーの鎌で追跡可能だが…
中々の実力者揃いだな。 並大抵では全員が彼女達から逃げるなどは不可能だ。
そうして俺は会場へと向かった。
会場へ着くと先程光を取り戻したようでさっきのように動揺している者も少ない。
【バインド】で捕まえた宰相や貴族達は連行されたらしい。
すると浮かない顔のルーが現れる
「ショウごめん逃げられた」
ルーが申し訳なさそうに頭を下げた
「大丈夫だよ、俺もだし」
ルーの頭を優しく撫でる
「多分向こうも相当な使い手ね、私達から逃げるのだって簡単な事じゃないわ」
「わらわが元の姿に戻って追いかける前に魔術で撒かれたのじゃ」
フララとルチルも会場に戻って来た
「いいよ、みんなが無事なのが一番なんだから。 危険だと判断したらすぐに引き返してね、俺は誰かを失ってまであいつらを潰そうとは思わないから。」
三人が神妙に頷く
「私の眷属で空からある程度は追跡できたけど、スラム街の方へ消えて行ったわ」
スラムか… この国の闇だな。 一度行ってみる必要がありそうだ。
「イレスティ、レデリ、こっちは大丈夫だった?」
人込みをかき分けて二人がやって来た
「ええ特には何も問題はありませんでした」
「ずっと警戒してたけど、怪しそうな人もいなかったよ」
二人も無事でよかった。
「ショウ様ですね? 国王陛下がお話があるそうなので来ていただけますか?」
兵士が俺を見つけて血相を変えて呼びに来た
「わかりました」
そうして兵士は俺達を王達が居る部屋へと通した。
そこには国王と王妃と思われる女性3名に、王女と思われる女性2人と、王子だろう3人他、ローブの魔術師と剣を持った屈強な男の2人だ
「今回の働き見事であった!」
国王が部屋に入るならいきなり抱き着いてきた。 加齢臭も少しするし正直かなりきつい。 やめろ! 耳の裏までしっかり洗え!
「は、はぁ… 僕は出来る事をしただけですよ」
「何を言っておるのだ、全部お前の計画通りなのだろう?」
え? ナニヲイッテルノ?
「まさか裏切り者まで炙り出して解決してしまうとは驚きましたぞ!」
「お前只者じゃねぇーな! どうだ? リールモルからこっちに来て、俺達とこの国で働かないか?」
宮廷魔導士っぽい人と剣を持った強そうな人がほめてくれるが何が何だかさっぱりなんだ…
「お前は私との謁見の際、私がお前を伯爵だと気付いている事を敏感に感じ取り…」
俺の事気付いてたの?! こっちは全く気付いてませんが?! 今知りましたよそれ!
「それにああいった場に王妃や王女が居ない事を不審に思い何かあるのかと闇に私に尋ねたではないか!」
『王妃様だけでなく、王女様方までも忙しいですか… それもあって国王陛下も少しお疲れの様ですね?』
違うの! 王妃達とその娘達の仲が悪くそれに気を使って疲れてると思って聞いたんだよそれは!
「そして私もリールモルトのように協力して欲しいという真意を隠した言葉を快諾し」
どれの事だよ?!いつした?! そんな覚えねぇよ! いや待てよ…
『何かとやる事が多くてな、私も手伝って欲しい位だ。』
………わかるかよ! 田舎で歩いて芸能人見つける位難しいわ!
「踊るという言葉を比喩に解決してくると約束し、本当に解決してしまうとはな! 全くあっぱれだよ」
本当にあっぱれだよ! 俺が考えたシナリオならな!
ルーやフララがクスクスと笑っている。 お前ら知ってたな?!
「本当に助かりました。 国王並びにわたくしども王族一同、貴方の働きに大変感謝しています」
第一夫人なのであろう人が国王以外を代表して頭を下げた
「いいえ… 偶然ですので気にしないで下さい…」
「なんて謙虚な方なんでしょう…」
「ドラゴンを倒す武勇に優れた頭脳… 素敵ですわ…」
王女らしい綺麗な二人が頬を赤く染めていた。 フラグ、フラグが立った!
ルビーとサファイアのような固い肘で脇腹を小突かれたが気のせいだろう。
「ははは、屋敷だけではなく娘達までもらっていく気かお前は!」
国王が豪快に笑っていた。 両隣からの素人目にわからない速さの肘鉄が脇腹に飛んでくる! 不可視の完全犯罪!
「いやーでも逃げられましたし…」
「お前の事だ大方検討はついているんだろ?」
全くついてねぇよ! 期待しすぎだろ!
「まさか… 買いかぶりですよ」
「そうかな? まぁ約束通り屋敷をお前に提供しよう。 希望はあるか?」
「ここです」
フララの持っていた資料を渡す
「ほうここか。 わかったそれでは手配しておこう、今日は城で休んでくれ」
「ありがとうございます」
「それと明日は何処へ行くのだ?」
「真っ先に冒険者ギルドですね」
国王が目を閉じて何かを考えているようだ
「なるどそうだったのか… やはりお前は只者ではないな。 」
納得してないで何が何だか教えてくれ!
「本当にリールモルトの伯爵でなければ、我が国に欲しい位だよ」
「あ、ありがとうございます…」
俺はよくわからない展開だがとりあえずお礼をいった
「…ショウは私の婚約者。 譲れない。 それとフレデレク、大きくなった。」
ルーが一歩前に出ると懐かしむ目をして国王に話しかけた。
「覚えていてくれたのですか?」
国王は目を見開き心底嬉しそうな声をあげた
「覚えてる。 昔たまに遊んだ」
「あの当時ルーメリア様は私と目を合わせないようにしていらっしゃいましたね」
「うん。 無差別に【魅了】してしまうから。」
「私はとっくに魅了されてまいしたよ。 今でもまだ解けてないようですな」
覚えていてもらったのがよっぽど嬉しいのか饒舌だ、人の嫁口説いてんじゃねぇーぞ
「…結婚の話、断ってごめん。」
「とても残念でしたが、今のルーメリア様の素晴らしい表情を見れたのです。 存外断られるのも悪くないですね」
国王は優しい笑みで俺の方をみた
「ルーメリア様を大事にしてくれ」
「勿論です」
俺と国王が目と目何かを語っていると、王妃達が国王の肩に手を乗せた
「「「お話があります」」」
魔素とも魔力ともマナとも違う何かわからない恐ろしい力を感じる。 これは俺がルーとフララにエメを初めて会わせた時に感じた力の波動と同じ!
王妃達の無言の圧力と理解不能な力により国王は強制的に退場させられた。
「それではショウ様、また… お会い出来ますよね?」
「ショウ様… 今度お茶でもいたしましょう。 絶対ですわよ?」
二人の王女も爆弾を投下しながら去って行く
王子達と宮廷魔術師、剣聖はやれやれと言った感じで軽く頭を下げて出て行った。
「…ショウはお姫様が好きなの?」
「俺が好きなお姫様はルーだけだよ」
「うふふふ仲がよろしい事で。 ちょっと妬いちゃうわ」
「俺が好きな女王様もフララだけだよ」
「あら口がうまくなったのね?」
「エメは?!エメは?!」
「大好きだぞー」
「そうじゃない! そうじゃないよお兄ちゃん!」
エメが突然プンスカしだした
「…ショウ、それはダメ」
「私の教えは役に立ってないのかしら?」
「ご主人様それは良くありません」
「兄さん流石にあんまりじゃない?」
「主様… それはひどいのじゃ」
みんなからのブーイングである。
わかってるよ恥ずかしいだけじゃん…
「なぁみんな、今日部屋別々でいいか?」
みんなの方に向かって問いかけると笑顔で頷いてくれた
「それと…エメは一緒に寝てくれる?」
「うん! お兄ちゃんと一緒に寝る!」
◇ ◇ ◇ ◇
部屋の灯りが二つの重なる影を作っていた。
「旦那様… 旦那体温、匂い、全てが愛しいしいです…」
密着する事でふんわり鼻腔を刺激するエメの香りは、エキゾチックな甘さの中にビターオレンジを混ぜたような大人の香りだ。
「エメ…」
エメは今大人の25歳位の妖艶な女性へと姿を戻している、流石にロリロリ状態でするのは…ね?
「子供の姿で迫っても軽くあしらわれるだけでエメはとても寂しくしておりました…」
「この姿で迫られたら流石に我慢出来ないからね」
今も柔らかく弾力のある胸が俺に押し当てられ欲望の防波堤が決壊するのも時間の問題だろう
「今日はもう我慢しなくてもいいですよ… 旦那様をもっと感じさせて下さい」
エメが俺の唇に柔らかく癖になりそうな感触の唇を重ねた
お互いの舌がねっとりと絡み合い暫く堪能すると唇を離しエメが耳元に唇を寄せ吐息交じりの甘い声で囁く。
「………いいですよ…」
俺の理性の防波堤は完全に決壊した。
「旦那様… 来て…」
恍惚とした表情で伝える彼女に、俺は我慢できず胸を鷲掴みにしながらベットに押し倒す。
ベットに綺麗なエメラルドグリーンの髪がばさりと広がり部屋の明かりを消した。
「愛しています、旦那様…」
俺に覆い被さられ背中に爪を立てながら蕩けるような声で囁いた。
満月が作り出した二つの影は何度も重なり合い、この日2人が名実共に夫婦となる事ができた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる