蒼炎の魔法使い

山野

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第八十九話 聖女散歩

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私は席を立ち、執務室の机に書類を沢山乗せ頭を抱えながら仕事をするあいつを見て邪魔しない様にそっと扉の方へと向う

ダルシエルの聖女として現在はダルシエルを離れ、冴えない顔のショウ伯爵の納めるエクランで修行に励んでいる。

そんな私の毎日の日課は散歩だ。 目的は主に布教活動と人助け。
と言っても神が居ないという事を知ってしまった私は余り布教活動と言う物に力を入れる事は以前よりもなくなったしまったのだが… 神が居なくても教義自体は今でも正しいと思っているので聖女は続けている。

最初にここに来た時は人々の殆どが衰弱しており病気が蔓延していて、人が行き交う道端でただ死を待つように転がっている者が多くとても国として機能していなかった。 

それでも今は私の神聖魔術とレデリの薬のおかげでみな健康状態に問題を抱えるている物はほぼいないと言ってもいい。

あいつが前にここを納めていた人にやった事は人として正しいとは言えないかもしれないけど、それによって救われる人が沢山いるのも事実。 レデリの薬の材料費も彼の私財を投入して作られている。 私の神聖魔術では治せない重い病を患っている病人もあいつのお陰で沢山救えた。

あいつはただ自分の罪滅ぼしの為に人々を免罪符にしたいだけなんて事言ってたけど、それでも十分に立派だと私は思う。 あいつの私財を投入しなければ死んでいた人が実際に沢山いるのだから。

そんな事を思いながらあいつが仕事をしているのを確認して日課の散歩に出ようと扉に手を掛けると、あいつの声が背中越しに聞こえた
「リンデ!」

「何?」

「気を付けてね」
そう言っていつもの様に冴えない顔で微笑みかけてくる事に苦笑いが浮かんだ。 他の面々も行ってらっしゃいと手を振っている。
いつも出掛ける時はどんなに忙しくても手を止めて声をかけてくるんだけど、そんな事が嬉しかったりもする。

「はいはーい」
最初は何であんな奴の所で学ばないといけないのかと思ってたけど、今は少しだけ父が何故あいつに腕輪を渡したのかわかった気がする。

「で、いつデートしてくれるの?」
やっぱりわかった気がしただけで違ったみたいだ。 ただの女誑し
私は特に返事をするでもなくそのまま外へと出た。 でも以前の私なら即断ってたんだけど、何故かずるずると返事を引き延ばしてる。 んーまぁでもいいか!

「お散歩♪ お散歩♪」
この街はとても綺麗だ、レデリと同族の方々が建てた建造物はシャープなのに洗練されていているんだけど、宝石の様な石やステンドグラスが使われていて寂しさを感じさせないし、樹の大精霊様のエメの力で文字通り街に華を添え、色鮮やかな花々の醸し出す香りはとても心を落ち着かせてくれるこの街は歩いていてとても楽しい。

春には桜っていう異世界の花がこの街の中心から四方に伸びる大きな道の両脇を埋め尽くす様に咲き乱れるらしいから楽しみ、しだれ桜? 確かそれがあいつのお気に入りだったかな?
出会いと別れの多い季節に咲く花と聞いてるけど、何か新しい出会いでもあるかな?

「ストリンデ様こんにちは!」「今日もストリンデ様は綺麗でいらっしゃいますね」「ストリンデ様先日この子が産まれたのです、是非無事に育つことを祈ってくれませんか?」「最近ちょっと調子が悪くてのぉ、聖女様少し見てはくれせんか?」

最近は少し街を歩けば誰かしらが声をかけてくれる。 私の聖女としての活動が広まってるのかな? これ見たらあいつだって私の事ゴリラなんて言わなくなるかな? みんな綺麗って言ってくれるのに何であいつはゴリラなんていうのかな? って何であんな奴の事考えてんのよ。

「はいはいみんな一人ずつちゃんと話聞くからちょっと待ってね」
ここの領民は希望に溢れている。 大精霊様に頼らず自立する事が当面の目標の様だが、きっとそう遠くないだろう。
食糧が領主の伴侶の樹の大精霊様のお陰で何とかなっているのは周知の事実なので悔しいがこの街では精霊信仰がやはり強い。

そしてここエクランはダルシエルや他の国とは違い、国が定めた宗教などはなく、何を信仰するのも自由という珍しい形態をとっている。 

その為この国には今三つの勢力があって、一つは大精霊を神とする精霊教、もう一つは実態がよく掴めていないメイド神なる物を神と崇める謎の集団、それに最後は…

「ストリンデしゃま、ストリンデしゃまは聖女様なの?」
小さくてとても可愛い子が私の服を引っ張りながらそう聞いて来たので笑顔で、そうだよと答えると、彼女は少し不思議そうな顔をした

「でも大人の人はストリンデしゃまは女神だって言ってる人もいたよ? ゴリラからクラスチェンジして女神になったんだって聞いた。」

「誰に?」
心当たりはある。

「領主様」
ピキ 笑顔が引きつる

「他には何か言ってた?」

「えっとねー、ストリンデは女神だ、彼女は本当に素晴らしい。 俺はどんな神よりも彼女を信じるねって言ってたよ」
ピキピキ

「へ、へぇ… 他には?」

「周りのおじさん達がね、流石は領主様、貴方こそストリンデ様を女神とし崇め、優しくされてブヒブヒする事や、冷たい目で見られる事に興奮する聖女教のトップにふさわしい!とか言ってお互いに泣きながら握手してた」
ピキピキピキ!!! 髪が逆立つのを感じる、あいつ… 適当な事ばっかり言って! 許さん!
そして何故かメイド服を着た数人の女性達が驚きの余り荷物を落として口をパクパクとさせていた

私は聖女…私は聖女… 落ち着け私 そんなに驚く位怒ってるのが伝わったのかな?

最後の勢力は私を女神と崇め優しくすれば喜んで、冷たい眼差しを送ればはぁはぁしだす変態集団… 何であんたがその変態集団の代表なのよ! あのダメ領主! 領主だから余計に拗れるじゃない!

「でもストリンデしゃまはあのお城に領主様と住んでるんでしょ? 領主様と結婚するの?」
その時近くにいたメイド服を来た数人の女性や、ストリンデを遠くから見ていた男達の動きが一斉に止まった

え?! 何なのこの空気?! 私の言動に注目が集まっている?! 背中に刺さる複数の鋭い視線は何なの?!

メイド達からしたらショウはメイド神という神、その神が聖女教のトップという先程知った事実に次いでこれである、ただ事ではない。

また聖女教信者からしたら女神に伴侶が出来るなど自殺物の出来事で、水面下で争っている二大派閥だが彼女の言動には双方とも注目せざるを得なかった。

「な、何言ってるのかなー? する訳ないじゃない」

「領主様嫌いなの?」

「嫌いじゃないよ」

「じゃあ好き?」

「………どっちかって言うと…」
やだ嘘! 何でちょっと顔赤くなってんの私。 人としてよ、人として好きってだけ!

「もーはっきりしないなー。 男ってすぐに気が変わっちゃうんだからね? いつまでも好きでいてくれるっていうのは幻想なんだよ?」
うっ、この子小さいのに何でこんなに達観してるの…

「人として好きってだけ…だから…別に私は…」

「男と女に友情はないよ? 人として好きっていうのは、もう好きなんじゃないのストリンデしゃま」

「あなた一体何歳なの?!」

「5歳」
最近の5歳怖い… 

「と、とにかくそんなつもりないから! 私もう行くね!」
私は背中に突き刺さる視線が先程よりも強くなったような気がしたのを胸に仕舞いつつ駆け出した。

◇  ◇  ◇  ◇

「はぁもうすっかり暗くなっちゃった…」
何動揺してんのよ私、ちょっと風に当たってから帰ろ… ってここ何処?!
適当に走ったので良くわからない所に出てしまったけど、見覚えの有る木があったので以前来たことがある場所だと思い至る。

あ、ここってあいつが教えてくれた場所だっけなー、一本だけあるこの木はあいつがエメに頼んで植えたしだれ桜だっけ。 悩んでる時や一人になりたい時に来るんだって連れてこられたっけ。 見晴らしも良いしいい場所だよね。 って何でまたあいつが出てくんのよ! 絶対さっきあの子に変な事言われたからだ…

あれ? こんな時間に少年?
芝生に寝転がって空を見つけたので何かあったのかと声をかけてみる事にした

「おーい、こんな時間に何してんの?」

「………」
その子は一度こちらを向いたけど無視してまた夜空を見た
うっ、なんて生意気な!

「何してんのって聞いてるのに。 まぁいいや、ここ気持ちいいよね」
寝転がってる少年にあやかって私も隣に寝転がって夜空を見上げた

「ねぇ、あの星迄どれぐらいの距離があるのかな? こんなに沢山あって綺麗で手を伸ばせば届きそうだよねぇー うぅー ってやっぱり無理かははは、手が届かなくても手を伸ばしたくなるよね、じゃないと届かない事もわからないし。」

「…お姉ちゃんうるさい」
少年はぶっきらぼうに私にそう言ったけど、やっと答えてくれて少し嬉しくなった

「お、やっと喋ってくれたか、一歩前進だね!」

「知らない人とは喋るなって言われてる」

「じゃあ私はストリンデ! はいこれで私達知り合いだね」

「お姉ちゃんそれ誘拐犯がやる手法だよ。 まぁいいや僕はロメオ」

「ロメオはお姉さんに誘拐されたいの? お姉さんは優しくて美人だからねぇ、誘拐されたくなっても仕方ないか」

「自分でいうのそれ? ガサツでゴリラみたいの間違いでしょ?」
何か今あいつの事が頭によぎってちょっとイラッとした。

「そんなんじゃ、どっかのバカみたいに冴えない顔になるわよ? で、何してたの?」

「…流れ星数えてた」

「へぇ今幾つ?」

「6、日が変わるまでに100流れたら願い事が叶うんだって」

「絶望的ね… 日が変わるまでって後何時間あると思ってるの? それまで一人で帰らないつもり?」

「うん、やらなきゃいけないから。」
ロメオの顔は真剣だった、この街は治安は良いけど一人にしておくのちょっと心配かな。

「仕方ないわね、じゃあお姉さんが付き合ってあげる。 お姉さんは優しいからね!」

「はぁ? 相当暇だね、お姉さん仕事とかしてないの? 大人としてどうかと思うよ?」

「ちゃんとしてますー、じゃあなんか楽しい話しよ! はいどうぞ!」

「そう言う話の振り方は優しいとは言えないと思うよ」

「男を見せるチャンスだよ!」

「強引な人だなストリンデさんは」

それがロメオと私の出会いだった。 そして私は次の日もあの場所へと行った

「あーやっぱり居た」

「ストリンデさんこんばんは」
昨日何時間も沢山話したからか最初あった時とは違って表情も柔らかくて年相応って感じ13歳位かな?

「ストリンデさんって聖女様だったんだね、みんな知ってたよ」

「そうだよー凄いでしょ?」
寝転がってるロメオの隣に私も一緒に寝転がる

「聖女様ってもっと品があって、お淑やかな物だと思ってたよ」

「それ前にも言われた事ある、そんなに私ダメかな? これでも割と頑張ってるつもりなんだけどなー」

「…そんな事ないよ… ストリンデさんは… そのままでいいんじゃないかな… 優しくて、綺麗だよ。」
ん? 熱でもあるのかな?

「どうしたの? 顔赤いけど熱でもあるの?」
ロメオの額に手を置いて測ってみるが少し熱い

「やっぱりちょっと熱い」

「違うよ、ちょっと今日暑くて」
今冬だけど?

「にしてもロメオはやっぱりわかってるねー、優しくて、綺麗なんて嬉しいなー。 なでなで」

「ちょっとやめてよ子供じゃないんだから!!」
撫でている手を振り払われたけどめげずに撫でる

「えーもうちょっとー、お姉ちゃん力を見せつけたいー」

「ほんと変わった聖女様だね、ストリンデさんは」

「一点ものだよ? あ、今流れた!」
呆れた様に笑ったロメオの顔は今までに見た事ない物だ、心開いてくれたかな?

次の日は雨だった。 曇って星なんて見えないのにロメオは居た

「流石に今日は見えないね」

「今日も来てくれたんだ」
あんな時間に一人にしてはおけないからね

「あれれーお姉さんが来たのがそんなに嬉しいの?」

「ま、まぁ嬉しいです…」
顔を真っ赤にして俯いているのを見るて沸き起こった感情は、シャロやルチルから感じるのと同じ種類の可愛さだ

「可愛いなぁロメオは、よしよし。 ロメオみたいにあいつも可愛げがあればなー」

「あいつっていうのは、僕と同じ様に聖女っぽくなっていった人?」

「そう、あいつも私の事ゴリラって言うんだよね。 失礼しちゃうわ全く」

「ぼ、僕は… ゴリラみたいって言った事謝りたいです。 ストリンデさんは…その…とても美人です…」

「ふふーん、知ってる! でも今の、ちょっと嬉しいかも」
そう言って笑いかけるとロメオはまた俯いた

「ストリンデさんはどうして星を数えてどんなお願いをしたいか聞かないんだね」

「言いたくない事かもしれないしね、こんな日にまでここに来るぐらいだから大事な事なんでしょ?」

「うん、今はそれだけじゃないんだけどね。」

「お願い叶えたい以外に何かあるの?」

「き、気にしないで!」
ロメオは顔を赤くしながら慌てて手を振りながら続ける

「僕がここに毎日居るのは、父さんが帰って来るようにお願いしたいからなんだ。  冒険者にもお願いしたんだけどお金なんてないから大して払えないしスファンの谷は広大で危険すぎて誰も行ってくれないんだ。 それで母さんから100個流れれば願いが叶うって聞いたから毎日見てたんだよ。」 
明るかったロメオの表情が一変暗い物へと変わる

「でも本当は知ってるんだ… そんなの無理だって事。 家に戻るとね、母さんの目は真っ赤で腫れてるんだ。 泣いてる姿見せたくないから、そんなあるはずもない事言って、僕に嘘ついたって事本当は知ってるんだ。 もう本当はね… とっくに諦めちゃってるんだよ…」
ロメオは拳をギュッと握り必死に涙をこらえていた。

「知ってる? 聖女の祈りって結構力あったりするのよ? それにあいつならきっと…」

「あいつってこの前言ってた人?」

「そう、普段は全然役に立たないんだけど、いざって時は結構頼りになる所あるのよ」

「………」
その後ロメオは何も話さなず、少し早め家路に着いた。 そして私は皆がシャロをからかって遊ぶ中あいつの前迄来て言った。

「ねぇちょっと話があるんだけどいい?」

◇  ◇  ◇  ◇

「今日は晴れて良かったね、良く星が見える」

「もういいよストリンデさん、今ではそんなのただの口実だし… 僕は…その…」

「私は諦めてないよ。 今日もお祈りしてきたし、それにあいつにも頼んだし…」
神はいないけどお祈りって意味あるのかな?

「またあいつって…」

「あーあいつって言うのはね、この前も話した…」

「もう何度も聞きましたよ!」
ロメオ機嫌悪いのかな? なんかイライラしてる? お父さん見つからないし当たり前だよね…

「ごめんね、辛い時に… じゃあもっと楽しい話しよう! この前ねあいつがおかしくてね…」

「もう止めてください! あいつあいつって、あいつって誰ですか?! あいつってストリンデさんに取ってどんな人なんですか?! いつもいつもその人の話ばっかり!」
自分では気付かなかった。 私あいつの事ばかり話してた。 

「家で明るく振舞う母さんを見るのが辛くてここにきてストリンデさんと話すのだけが楽しみだったのに… どうしてストリンデんさんはその人の話をする時が一番楽しそうに、嬉しそうな顔するんですか?!」
私そんな顔… してた… 自覚はあった

「もういいです! サヨナラ!」

「待って!」
私は手を伸ばしたけど、彼を追いかける事は出来なかった。 それは彼を余計に傷つける気がしたから。

次の日その場所に彼はいなかった。 だから私は一人空を見上げて祈ったのだ、彼の父が帰って来るようにと。

次の日も来なかった、私は一人祈り続ける。 

次の日も祈った。 その次の日は雨の中、その次の日は雪の中、そのまた次の日も祈る。 いない神にではなく、ちゃんと届くところへと

そして今日も…
今日はいい天気、空も良く見えるし祈り甲斐があるかな

「どうして…」
振り返るとロメオが居た

「何が?」

「何がって… 僕が居ない時も一人でずっとここで… 雨に打たれても雪が積もっても… どうして…」

「見てたの? えっちだなーロメオは! 私聖女だもん。 できる事をしてるだけ。」

「だからって毎日毎日僕の為に…」

「そういう生き方しかできないから… この前はごめんね、無神経だったね」

「違うんです… 僕が… 子供で… ごめんなさい…」
ロメオはその場で泣き出してしまったので優しく頭を撫でる

「いいんだよ、お姉さんは聖女だから心は広いんだよ? だからね、ロメオも我慢しないで泣いて良いんだよ?」
そう言うとロメオはこくりと頷いてわんわん泣き出した。 ロメオも我慢してたんだね、泣いたらお母さんに心配かかるから。 強いなー君は、よしよし。

そうして暫くするとロメオは泣き止んだ、それと同時に空に異変が起こる
「ストリンデさんあれ!!」

「うん! 凄い数!」
二人の視線の先では大量の流れ星が降り注いでおり、その数は凄まじく数えられるだけでもう90個を超えていた

「97.98.99.100! ストリンデさん100行ったよ!」

「早くお願いして!」

「お父さんが無事に戻ってきますように!!」
彼が夜空に放った大きな声が宙を漂いそして静寂に飲まれていった

「やっぱり… 100個流れればなんてただの嘘じゃないか…」
ロメオはその場にへたり込み頭を抱え込んでしまうが、彼は聞き覚えのある声に顔を上げる

「ロメオ… 心配かけた… やっと帰ってこれたよ…」

「父さん? 本当に父さんなの?!」

「本当だ、戻ってこれたんだ! すまなかった!」
ロメオの父は彼に抱き着き、彼も父の体温が本物であると確認すると込み上げて来た感情のままに泣き出した

「ふぅ、なんとか見つかったよ」
抱き合う二人を見ていたストリンデの後ろからショウが声をかける

「あんたならやってくれると思ってた、無茶なお願い聞いてくれてありがとうね」

「かなり大変だったよ、でも大丈夫! 貴重なデート一回の約束を取り付けられたし十分にお釣りがくる」

「うっ… まぁ仕方ないか… あの星もあんたがやったの?」

「んな訳ないだろ、そんなに万能じゃないんだよ俺の魔法は。 リンデの祈りが届いたんじゃないの?」
私の祈りってあんたに祈ってたんだけどね、まぁ届いたって事かな? それに… 嘘が下手ね、あんたが頬を掻く時は何かを誤魔化す時。 器用に生きれない男ね全く。

「何笑ってんだよ」

「別にー、バカだなーって思って。 素直に言えばデートもう一回追加出来たのに」

「え?! マジ?! 実はあれは俺の光魔法と…」

「もうタイムオーバーでーす! それに水を差しちゃ悪いわ、行こう!」
私は彼の腕を取り背を向けその場を後にしようとするとロメオの呼ぶ声が耳に届く

「ストリンデさん! ありがとうございます! 僕… 貴女に会えて本当に… 本当に嬉しくて… 毎日貴女に会えるのが楽しみで… だから… その… 僕はストリンデさんが好きです! 大好きです! 絶対に幸せにします! だから僕と結婚してください!!!!」
ロメオは凄くいい子、でも好きって言うのとはちょっと違う。 きっとこの子は私が居なくても大丈夫。 それに私は…

「ロメオありがとう! 凄く嬉しい! でもごめんね… 君とは一緒に居てあげられない。 だって私はあいつが好きだから!!」

「知ってました! でも手が届かなくても手を伸ばしたくなる、じゃないと届かない事もわからないからって ストリンデんさんが教えてくれたから! それに諦めない事も!」
そう言ってロメオは今まで見た中で一番素敵な笑顔を渡しに送ってくれた。

「うん、よく頑張った! 偉いよ! じゃあまたねロメオ!」

「はい! また!」
再び彼らに背を向け歩き出すと不安そうにあいつが私に話しかけて来る

「あいつって誰だよ?! まさかリンデ好きな人居るの?! お父さんはショウさん以外許しませんよ?!」

「いつあんたが私のお父さんになったのよ、それにあんたしか許さないとかどんだけあんたに有利な父親なの! 馬鹿な事言ってないで早く帰ろ!」
帰りは少し腕を組んでみる事にした、凄く恥ずかしかったけど、これは流れ星のお礼。 別に言わないけど。

「フラれたなロメオ」

「いいよ父さん、僕は誰かを好きなあの人が好きだったんだから。 それに僕と居る時には見る事は出来なかったあんな素敵な表情見せられたら… それより早く帰ろう、母さんも喜ぶよ!」

この日を境にエクランでは日が変わるまでに流れ星を100個数えることが出来れば願い事が叶うという話が広まったとか広まっていないとか。
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