蒼炎の魔法使い

山野

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第九十話 職業体験

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私ルーメリアはリールモルト王国の王女。 そして現在はエクランの領主の婚約者。

エクランでやる事と言えば………実は何もなくて、毎日フララお姉様とダラダラお話ししながら過ごしている。 しいて言うのならティーカップの上げ下げが私の仕事。

ショウが言うには私の様な職業はニートというらしい。どういう意味か良くわかないけどニートになって親の財産を食いつぶすのが俺の夢なんだって言ってたからいい職業ではないのはなんとなくわかる。

今日も私は仕事をする為に席に着く。 席に着くとすかさずイレスティが私のお気に入りの紅茶をティーカップに注いで提供してくれた。 イレスティはポンコツな所も多いけど基本的にはとても優秀で私達にはなくてはならない存在。

執務室に居る今日のメンバーはショウとレスティだけ。 イレスティーは給仕を終えるとショウ側へと戻った。 その姿は誰が見ても完全にショウの秘書って感じなのだけど…イレスティって私の専属侍女だよね?

エメとルチルは新しく出来た畑の視察、レデリは最近新薬開発の為に調合室に籠りっきり、ストリンデはいつもの様にエクランで慈善活動、シャロとフララお姉様は冒険者活動。 このエクランで何もしてないのは私だけ… 

「…ねぇショウ。」
私は書類が山積みになっている作業机で書類にペンを走らせている彼に声をかけた

「どうしたの? いつもに増して無気力なルーさん」
私ってそんなに無気力に見える? ショウは私の事省エネヴァンパイアなんて言うけど褒めてるのかな?

「…無気力な訳じゃない。 何事にも全力で取り組まないだけ。」

「それはそれでどうなの?! それよりも何か悩み?」

「…いつもはお姉様が居るから気にならなかった。 でも今日は一人。 私だけ何もしてない。」
私は紅茶を口に含んだ。 リールモルト産の茶葉特有の豊潤な香りが鼻を抜け、一口の幸せを味合わせてくれた。 心が安らいだ事により口から息が漏れる

「自分だけ取り残された様な気になってるって事かな? それで少し沈んでるの?」
漏れた息を溜息だと勘違いしちゃったみたい

「…沈んでない。 何もしないでダラダラ過ごすのは最高。」

「良くこんなに沢山仕事を抱えてる俺を目の前にしてそんな事言えるよね」

「…そんなショウを見ながらダラダラするのが本当に幸せ。 例えゴミと呼ばれようとも私は堕落の限りを尽くし怠惰な生活を貪る。」
ショウの顔をしっかり見つめてそう熱意を込めて言うと、彼の顔は少し引きつった」

「物凄い熱意で言う事じゃないないよねそれ… 思わず顔が引きつるわ」

「 10人中12人冴えない顔と評価するショウの顔は、私からすれば結構可愛い。 」

「10人中12人って2人どっから沸いて出て来た?!」

「よく見たら意外と… いややっぱり冴えない顔だった。 と再評価された結果。」

「これは実際に行った調査の結果です、真摯に受け止めて下さいませご主人様」

「何で俺のハートをブレイクさせるような調査を密かに行ってんだよ… 話が脇にそれたけど結局何?」

「…一応形だけでも何かした方がいいかどうか聞く方がいいのかどうか考えるた方がいいのかどうか聞こうかどうかを聞こうとしただけ。」

「結局何を知りたいのか全然わからんのだが?! 聞かどうかを聞くって何?! 一回挟む必要あるのそれ?!」

「何かこういうのも久しぶりですね」
私とショウのやり取りを微笑ましい物を見る様に生暖かい目で見ていたイレスティーが、頬に手を当て嬉しそうに弾んだ声でそう言った

最近はシャロも来たし更に人が増えたし、こうやって三人だけで居るのって出会った時位だったかな? なんだか凄く前の事の様に思う。

「…いつの間にか私よりもイレスティの方がショウにべったり。」

「ち、違います! わ、私は仕事なので…」
耳迄赤くして否定するあたり全く隠せてないよイレスティ。 そういう可愛らしい所がお姉様も私もとても好き。

「…公私混同。」

「うっ… ご主人様ー」
目を潤ませ助けを求める様にショウへと視線を送ると彼が小さくため息をついた

「実際イレスティが居ないとかなり困るからな、そう言ってやるなよ。 妬いてるの?」

「…妬いてる。 イレスティは元々私の専属侍女だったのに。」

「イレスティを取られた事に妬いてるのね… でも頻繁にイレスティがルーに抱き着いてフガフガしてるじゃないか」
週に三回は私に抱き着いて来るイレスティ。 なんていうかもうずっと続いてる習慣だから特に気にすることもなかったけど、よくよく考えると少しおかしい気がする。

「…別にあれを欲してる訳じゃない。」

「姫様! あれをしないと私のルーメリニュウムが足りなくなって禁断症状が出るのです!」

「禁断症状って大げさな… どんな症状が出るの?」

「そうですね… ルーメリニュウムが尽きて一日が経つとまず落ち着きがなくなりルーメリア様を無意識に目で探してしまいます。 二日目からは手が震えだし、三日目を過ぎれば目が血走り残り香を頼りに探し回り… 一週間も経てば発狂しながら…」

「どんだけ中毒性強いんだよ! ルーってそんな危ない薬みたいな存在だっけ?」

「でもご主人様が一番の中毒者だと思いますが…」

「まぁ否定は出来ないね」
イレスティはともかくショウにそう言ってもらうのはちょっと嬉しかったりする。

「…私も、仕事何か手伝う?」

「何処か具合でも悪いの?」

「…どうして私が手伝うと具合が悪い事になるの?」

「そんな事してくれた事ないじゃん… ってあれか、今日はフララもいないから寂しいのか」

「…そんな事ない。」

「少しむくれてる辺り図星だな」
そう言って彼に笑われた。 ちょっと悔しい。

「じゃあこっち来て手伝って、イレスティはルーのサポート頼む」

「承知しました。」

そして私は初めてショウの仕事の手伝いをする事にしたのだけど、よくわからないのばかり。私の仕事は許可のスタンプを押すだけの簡単なお仕事。 ショウの元居た世界では刺身にタンポポを乗せる仕事に近いらしい。 どんな仕事か想像つかないけどショウの世界に行ったらやってみたいな。

「それでルーメリア姫?」

「…どうしたの騎士様?」
姫を守るはずの騎士だけど、彼は私を刀で貫いたりする不良騎士。 

「何で俺の膝の上でやる必要があるの?」
お姫様抱っこの様な姿勢で、座っている彼に身を任せながら手伝う私の何処に疑問を持ったんだろう?

「…椅子がないから。 嫌?」
椅子がなければ膝の上に座ればいいじゃない。 昔の有名人がそんな事言ってた気がする。

「…嬉しい…かな…」
彼の照れてる時にする頬を掻くいつもの癖

「…そう。」
いつもの様に髪を撫でてそう顔を赤くする彼が可愛らしい。 ショウが好きって言ってくれるから毎日ブラッシングは欠かさず指通りにはいつも気を付けてる。 私も彼に触って貰えるのが嬉しいから。

「ルーメリア様は昔から甘えるのが余り得意ではありませんからね。 それよりも…甘えた姫様が可愛くて倒れそうでございます…」
はぁはぁと息を吐き目を血走らせるイレスティが少し怖い…

「そう言えばご主人様、ヴァルゼンの女王から手紙が届いてますよ」

「うげ… 読んで…」
ショウはあからさまに嫌な顔をしていた。 それもそのはずでシャロを連れてくる時に思いっきり顔を殴ったらしいからだ。 私の婚約者には騎士道なんて物はないのかな… それはもう壁にクレーターが出来る位の力で吹き飛ばしたらしい

「何々…先日は大変失礼しました。 私もどうかしていました。 あの時の事は私は全く気にしておりません。 それにあの時の激しい一撃に私目覚めてしまったのです… 貴方様から伝わった情熱を思い出すだけで私の胸は高鳴ります。 もっと… もっと貴方の激しいのを…」

「ちょ、ちょっと待ってなんだそれ?!」

「ご主人様… 察するにご主人様の一撃に快楽を覚えてしまったようですね… とんだ変態女王です。 おや封筒の中に花びらが… この花の花言葉は確か… 貴方を愛してる…」
これで気兼ねなくヴァルゼンに行けるんだけど…

「ひぃ! ルーメリアさん?! 喉元に冷たい感触が!」
今回の勘違いは違う方向に働いてしまったみたい。 私の婚約者にも困ったものだ。 どうしてこんなに冴えない人なのに人を惹きつけてしまうのか… いつか本当に殺しちゃうかも?

「…殺されない様に気を付けて。」

「はい。」
ちょっとショウが嬉しそう

「愛の深さはわかるのですが、二人共少しズレていると思います…」
イレスティは今日も面白い事言うな本当に
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