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第百十一話 狐はコンコン鳴かない
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赤い雲に覆われた空を見上げ、増援に来た兵士達はその禍々しさに驚愕し、すっかり静まり返ってしまっていた
しかし、降り出した血雨が、茫然と立ち尽くす兵士達の防具を打ち鳴らした金属音で静寂は破られる事となる
防具に弾かれ小さく飛散した血雨は、隙間を縫って入り込んで行き、皮膚へと達した後毛穴から人体に入り込み、やがて血管へと達した
すると兵士達が次々とうめき声を上げながらバタバタと倒れ、苦しみにのた打ち回る
血雨が降り切った頃には、増援に来た兵全てが苦しさに歪んだ顔でその生を終えていた
倒れた兵の側には、何かしていないと苦しみと直接向き合う事が出来なかったのか、力一杯地面を引っ掻いた跡があり、剥がれた爪が痛々しく残されている
爪が剥がれて敏感になった指先で地を掻けば激痛が走るはずだが、それでもやめられなかった事から察するに、いかに苦しかったのかが伺えた
エグイのです! こんなに大勢の人の苦しそうな呻き声なんか聞いちゃったら今夜夢にでそうなのですよ……
「イレスティさん、どういう事なのです? みんな死んじゃったのですか?」
「はい、私の鮮血魔術【葬送血雨】は形のない液体となって体内に入り込み、血管を流れる全ての血を固めてしまいます。 固まっていく速さには個人差があり、固まっていく際、激しい苦痛が伴うみたいですね。 強力な魔術ではありますが、集めた血液を大量に使う上に、固まった血液は回収できないのですし、血を凝個させるには私の血も必要となりますので、余り多用は出来ないのが欠点です 」
うぅ……絶対に苦しいのです…… だって顔の歪み様が凄いのですよ!! 指を使ってもそんな顔作れないと思うのです……
イレスティの説明が終わり束の間の休息を得た所で、またわらわらと兵が集まり出す
「……キリがない。」
「後どれくらいいるのでしょうか?」
「段々シャロも疲れてきたのですよ…… 早く帰ってぬくぬくしたいのです……」
再度囲まれ、三人が深い溜息を吐き出していると、兵を挟んで少し遠くの方から包丁やただの棒など、凡そ武器とは程遠い物を携えた街の住民達がこちらへとやってくるの視界に捉え、そこには先程助けた母娘もいた
「加勢しろ! 今こそ立ち上がれ! 決起の時は来たれり! 我々は誇り高きブイズ騎士の親類、散る時も華々しく散れーー!!」
そう勇ましく包丁を掲げ先頭で声を上げたのは、左肩から先のない隻腕の?髪を括った女性だった
戦闘に街の住人も加わり、先程よりも激しい大乱戦の中、三人はリーダーらしき人物との接触を図り、ルーメリアとリーダーらしき女性が背中合わせで言葉を交わす
「すまないね、来るのが遅れてしまって、この子達を助けてくれたんだって? 何処のバカかと思ったら全く知らないヤツらだとはね。 でもありがとう、あたしらはずっとこういう時を待ってた。 でも中々踏ん切りがつかなくてね、どうせ殺されるならひと暴れしてやろうって魂胆さ。 あたしは騎士団長の娘のジェシカだ、よろしく」
「……殺されたら困る、それじゃあシャロのブラ無駄になる。」
「何の話をしてるのです?! 真面目にやって下さいなのですよルーメリアさん!」
でもほんとなのですよ! 揺れる胸が邪魔でノーブラ戦うのは難しいのです。 もしクーパー靭帯が切れて垂れてしまったらこの街の人全員死んだとしても、もう一回殺すのですよ?!
「ブラ? 何の話だい? そんな事よりもあんた達相当強いだろ? ここはあたしらで何とか抑えておくから、あの一番大きな屋敷に控えてる奴らを倒して来てくれ! あたしじゃ勝てなかった、その代償がこれさ」
彼女は苦笑いを浮かべながら左肩を抑える
「反乱を起こそうとはずっとしてんだけど、そいつらがいるからこっちの方が人数が多くても、事を起こせずやりたい放題やるあいつらを見てるしかできなかったんだ。 入り口にある広場のあれは見たかい? あれをやったのがここの兵をまとめてるやつさ。 虫のいい話なのはわかってる、何もやれるものはないけど、もし生きてまた会えたらこの身に変えて何でもしよう!」
ん? 今何でもって言ったのです?
この街の住民を助けても、この場所に愛着があって離れたくないなんて言うかもしれないと心配していたけど、リーダーを味方につければ安心なのです
「……わかった、やってほしい事は後で伝える。 だから死なないで。 イレスティもここに残って一緒に戦って。」
「わかりました姫様、では御武運を!」
人数が多いと言っても女子供に老人、確かにイレスティさんを置いておけば安心なのですよ
「……シャロ、行こう。」
そう静かに言ったルーメリアさんの目には、自身の紅い瞳よりも更に紅く燃え滾る怒りの炎が宿っていたのです
◇ ◇ ◇ ◇
シャロとルーメリアさんは立ち塞がるゴミ……ではなく兵をバッタバッタ薙ぎ倒して、遂に一番大きな屋敷について中に入ると、綺麗に整えられた庭の芝生の上に立つ人影を視界に捉えたのです
「なんだぁ? どんな侵入者かと思ったら女とガキじゃねーか」
「しかも、ヴァンパイアと獣人ですよ、人間になりきれなかった低脳な人間もどきですね」
明らかにシャロ達を蔑む視線と言葉を投げ掛けて来たのは、槍と斧が一体化になったハルバードをもったゴリラみたいな脳筋男と、レイピアを持った細剣の男だった
メーラ帝国はヒト種を至上とした昔の名残が色濃く残ってるとは聞いた事がありましたけど、本当だったのですね
「ルーメリアさん先に行くのです、ここはシャロに任せるのですよ! 大丈夫、すぐに追いつくのです!」
耳をピクつかせ尻尾を振りながら余裕を見せると、優しくシャロを撫でてニコっと笑って言ったのです
「……フラグ乙。」
「なんて事言うのですか?!」
「……任せる。 じゃあまた後でね、シャロ」
「はい、早く帰ってショウさんに褒めて貰うですよ!」
目の前の2人を無視して屋敷の中に入ろうとするルーメリアさんの背中を見送っていると、耳障りな声が聞こえてきたのです
「おいおい、俺達を無視して行けると思ってんのか?」
「だとしたら不愉快ですね、ヴァンパイアの癖に!」
ハルバードと細剣が2人の間を抜けるルーメリアを同時に貫き鮮血が舞うが、シャロのパンと手を叩く音が2人の耳に届いた時、突き刺した筈のルーメリアは屋敷の中に入る所だった
「どうしたんですか2人とも、まるで狐につままれた様な顔をして、私の幻魔術じゃないですか。 こんな低脳が使う初歩的な術にかかるなんて、お二人は更に低脳みたいですね?」
そういって扇子で口元を隠して笑うシャロが、先程までとはまるで間違う事に2人は大いに戸惑う
「なんだお前、さっきとはまるで別人じゃねぇか」
「全くです、猫でも被ってたんですか? 下等な分際のくせに」
「猫? 冗談にしても下手ですね、私は狐ですよ? 化かすのが得意な狡猾で嘘吐きな生き物。 ルーメリアさん達にはこんな汚い私を見せたくないですが、あなた達程度なら何も気になりません」
きっとみんなならどんな私でも受け入れてくれるけど、そこに甘えてばかりじゃいけないと思う
脳筋ゴリラがいきなり切りかかり、ハルバードの斧の部分がシャロの身体を真っ二つにしたが、紙を切ったようにまるで手応えがなくすぐに偽物だと気付いた
「せっかちさんですね、こっちですよ」
脳筋ゴリラの後ろに現れたシャロが扇子を広げて切りかかるが、細剣の男が扇子を弾き素早く反撃してくるが、シャロも扇子で華麗に受け流す
攻撃に脳筋ゴリラも加わり敵の攻撃の手数は増えたが、掴みどころのないシャロの動きに翻弄され、2人の猛攻の合間を縫って反撃してくるシャロの攻撃を次第に受け始めた事に危機感を覚えた2人は距離を取った
「あらら、避けられちゃいましたか。 でも逃がしませんよ? 狐火演舞【火車】」
優美に振り払った二枚の扇子から炎の車輪が幾つか現れ、芝生を削りながら男達の下へと駆けていく。
男達は難なく避けるが、シャロも次から次へと炎の車輪を飛ばし反撃の隙を与えない
「ち、小賢しい! おらよ! お返しだ!【飛斬】」
脳筋ゴリラが【闘気】を纏わせたハルバードで【火車】を薙ぎ払い、勢いそのままに斬撃を飛ばすが、シャロも難なく避ける
「おい、この炎全く熱くないぞ! ほら見てみろ、幻魔術の類だ!」
先程炎の車輪を薙ぎ払った時に全く熱さを感じなかった事に違和感を感じ、試しに触れてみると全くダメージがなく、飛んでくる炎の車輪が幻だと見破り、相方に耳打ちした
「なるほど偽物の炎でしたか、ではそちら任せましたよ、私は直接叩きます」
シャロは【火車】を放ちながら飛んでくる斬撃を避けるが、着地の際に足を挫いてしまいバランスを崩した所を細剣の男は見逃さず、地面を強く蹴けって飛び出し、鋭い刺突をシャロに放つ
勝利を確信した2人はニヤリと笑ったが、バランスを崩して尻を地につけたシャロも同様、扇子で口元を隠して笑っていた
「狐火演舞【炎炎稲荷】」
狐を模った炎が勢いよく突っ込んで来る細剣の男に牙を突き立てると、全身激しい炎に包まれ
断末魔を残して灰へと変わる
「お前わざとバランスを崩して油断させたな?」
「忘れたんですか? 私は 化かすのが得意な狡猾で嘘吐きな 狐ですよ? 2人で固まっているとやりにくいですからね。それに【炎炎稲荷】は近くにいる相手にしか使えないから近づいて貰わないといけないんです。 馬鹿みたいに引っかかってくれちゃって笑いを堪え切れませんでしたよ」
にっこり笑って【火車】を飛ばすが、ハルバードを持つ男は身構えてすらいない
「それが幻の炎って事はさっき見破ったんだよ、だから俺には効かな…… ぐわぁ?!」
油断していた男を、高速で転がって来た炎の車輪とぶつかった衝突ダメージと炎の熱が襲う
「それ本物の中に偽物もいくつか混ざってるだけで全部が偽物って訳ではないですよ? ほら嘘を付く時って本当の事も混ぜると、より真実味が増すっていうじゃないですか? で、これはどれが偽物だと思います?」
シャロの扇子から放たれた車輪は10を超え、男の下へと転がっていく
男は何か偽物を見破るヒントはないかと考える、先程偽物だった物と本物との違い……
そして気付いた、偽物は所詮偽物なので芝を刈る事なくこちらへと転がって来た、ではこれは?? そして男は絶望する事となる
「あ、気付いたみたいですね、これ、全部本物です、残念でした」
片目をつぶり舌をちょこんと出した後、扇子で口元を隠して笑った
「てめぇみたいな嘘吐き誰も信用しねぇ、てめぇの人生は一人寂しく……」
全ての【火車】くらい、炎に焼かれながらそんな捨て台詞を吐く脳筋ゴリラの男にシャロは満面の笑みを浮かべて答る
「そんな事をわかってますよ、だから嘘をつき続けるんじゃないですか。 嘘も……嘘もつき続ければ本当になるのです。 シャロはシャロを本物にするのですよ! あ……もう死んじゃってたのです……」
死んだ相手に一人話していたのが少し恥ずかしくなり、シャロは急いでその場を後にした
「遅くなっちゃったけど、今行くのですよルーメリアさん!」
しかし、降り出した血雨が、茫然と立ち尽くす兵士達の防具を打ち鳴らした金属音で静寂は破られる事となる
防具に弾かれ小さく飛散した血雨は、隙間を縫って入り込んで行き、皮膚へと達した後毛穴から人体に入り込み、やがて血管へと達した
すると兵士達が次々とうめき声を上げながらバタバタと倒れ、苦しみにのた打ち回る
血雨が降り切った頃には、増援に来た兵全てが苦しさに歪んだ顔でその生を終えていた
倒れた兵の側には、何かしていないと苦しみと直接向き合う事が出来なかったのか、力一杯地面を引っ掻いた跡があり、剥がれた爪が痛々しく残されている
爪が剥がれて敏感になった指先で地を掻けば激痛が走るはずだが、それでもやめられなかった事から察するに、いかに苦しかったのかが伺えた
エグイのです! こんなに大勢の人の苦しそうな呻き声なんか聞いちゃったら今夜夢にでそうなのですよ……
「イレスティさん、どういう事なのです? みんな死んじゃったのですか?」
「はい、私の鮮血魔術【葬送血雨】は形のない液体となって体内に入り込み、血管を流れる全ての血を固めてしまいます。 固まっていく速さには個人差があり、固まっていく際、激しい苦痛が伴うみたいですね。 強力な魔術ではありますが、集めた血液を大量に使う上に、固まった血液は回収できないのですし、血を凝個させるには私の血も必要となりますので、余り多用は出来ないのが欠点です 」
うぅ……絶対に苦しいのです…… だって顔の歪み様が凄いのですよ!! 指を使ってもそんな顔作れないと思うのです……
イレスティの説明が終わり束の間の休息を得た所で、またわらわらと兵が集まり出す
「……キリがない。」
「後どれくらいいるのでしょうか?」
「段々シャロも疲れてきたのですよ…… 早く帰ってぬくぬくしたいのです……」
再度囲まれ、三人が深い溜息を吐き出していると、兵を挟んで少し遠くの方から包丁やただの棒など、凡そ武器とは程遠い物を携えた街の住民達がこちらへとやってくるの視界に捉え、そこには先程助けた母娘もいた
「加勢しろ! 今こそ立ち上がれ! 決起の時は来たれり! 我々は誇り高きブイズ騎士の親類、散る時も華々しく散れーー!!」
そう勇ましく包丁を掲げ先頭で声を上げたのは、左肩から先のない隻腕の?髪を括った女性だった
戦闘に街の住人も加わり、先程よりも激しい大乱戦の中、三人はリーダーらしき人物との接触を図り、ルーメリアとリーダーらしき女性が背中合わせで言葉を交わす
「すまないね、来るのが遅れてしまって、この子達を助けてくれたんだって? 何処のバカかと思ったら全く知らないヤツらだとはね。 でもありがとう、あたしらはずっとこういう時を待ってた。 でも中々踏ん切りがつかなくてね、どうせ殺されるならひと暴れしてやろうって魂胆さ。 あたしは騎士団長の娘のジェシカだ、よろしく」
「……殺されたら困る、それじゃあシャロのブラ無駄になる。」
「何の話をしてるのです?! 真面目にやって下さいなのですよルーメリアさん!」
でもほんとなのですよ! 揺れる胸が邪魔でノーブラ戦うのは難しいのです。 もしクーパー靭帯が切れて垂れてしまったらこの街の人全員死んだとしても、もう一回殺すのですよ?!
「ブラ? 何の話だい? そんな事よりもあんた達相当強いだろ? ここはあたしらで何とか抑えておくから、あの一番大きな屋敷に控えてる奴らを倒して来てくれ! あたしじゃ勝てなかった、その代償がこれさ」
彼女は苦笑いを浮かべながら左肩を抑える
「反乱を起こそうとはずっとしてんだけど、そいつらがいるからこっちの方が人数が多くても、事を起こせずやりたい放題やるあいつらを見てるしかできなかったんだ。 入り口にある広場のあれは見たかい? あれをやったのがここの兵をまとめてるやつさ。 虫のいい話なのはわかってる、何もやれるものはないけど、もし生きてまた会えたらこの身に変えて何でもしよう!」
ん? 今何でもって言ったのです?
この街の住民を助けても、この場所に愛着があって離れたくないなんて言うかもしれないと心配していたけど、リーダーを味方につければ安心なのです
「……わかった、やってほしい事は後で伝える。 だから死なないで。 イレスティもここに残って一緒に戦って。」
「わかりました姫様、では御武運を!」
人数が多いと言っても女子供に老人、確かにイレスティさんを置いておけば安心なのですよ
「……シャロ、行こう。」
そう静かに言ったルーメリアさんの目には、自身の紅い瞳よりも更に紅く燃え滾る怒りの炎が宿っていたのです
◇ ◇ ◇ ◇
シャロとルーメリアさんは立ち塞がるゴミ……ではなく兵をバッタバッタ薙ぎ倒して、遂に一番大きな屋敷について中に入ると、綺麗に整えられた庭の芝生の上に立つ人影を視界に捉えたのです
「なんだぁ? どんな侵入者かと思ったら女とガキじゃねーか」
「しかも、ヴァンパイアと獣人ですよ、人間になりきれなかった低脳な人間もどきですね」
明らかにシャロ達を蔑む視線と言葉を投げ掛けて来たのは、槍と斧が一体化になったハルバードをもったゴリラみたいな脳筋男と、レイピアを持った細剣の男だった
メーラ帝国はヒト種を至上とした昔の名残が色濃く残ってるとは聞いた事がありましたけど、本当だったのですね
「ルーメリアさん先に行くのです、ここはシャロに任せるのですよ! 大丈夫、すぐに追いつくのです!」
耳をピクつかせ尻尾を振りながら余裕を見せると、優しくシャロを撫でてニコっと笑って言ったのです
「……フラグ乙。」
「なんて事言うのですか?!」
「……任せる。 じゃあまた後でね、シャロ」
「はい、早く帰ってショウさんに褒めて貰うですよ!」
目の前の2人を無視して屋敷の中に入ろうとするルーメリアさんの背中を見送っていると、耳障りな声が聞こえてきたのです
「おいおい、俺達を無視して行けると思ってんのか?」
「だとしたら不愉快ですね、ヴァンパイアの癖に!」
ハルバードと細剣が2人の間を抜けるルーメリアを同時に貫き鮮血が舞うが、シャロのパンと手を叩く音が2人の耳に届いた時、突き刺した筈のルーメリアは屋敷の中に入る所だった
「どうしたんですか2人とも、まるで狐につままれた様な顔をして、私の幻魔術じゃないですか。 こんな低脳が使う初歩的な術にかかるなんて、お二人は更に低脳みたいですね?」
そういって扇子で口元を隠して笑うシャロが、先程までとはまるで間違う事に2人は大いに戸惑う
「なんだお前、さっきとはまるで別人じゃねぇか」
「全くです、猫でも被ってたんですか? 下等な分際のくせに」
「猫? 冗談にしても下手ですね、私は狐ですよ? 化かすのが得意な狡猾で嘘吐きな生き物。 ルーメリアさん達にはこんな汚い私を見せたくないですが、あなた達程度なら何も気になりません」
きっとみんなならどんな私でも受け入れてくれるけど、そこに甘えてばかりじゃいけないと思う
脳筋ゴリラがいきなり切りかかり、ハルバードの斧の部分がシャロの身体を真っ二つにしたが、紙を切ったようにまるで手応えがなくすぐに偽物だと気付いた
「せっかちさんですね、こっちですよ」
脳筋ゴリラの後ろに現れたシャロが扇子を広げて切りかかるが、細剣の男が扇子を弾き素早く反撃してくるが、シャロも扇子で華麗に受け流す
攻撃に脳筋ゴリラも加わり敵の攻撃の手数は増えたが、掴みどころのないシャロの動きに翻弄され、2人の猛攻の合間を縫って反撃してくるシャロの攻撃を次第に受け始めた事に危機感を覚えた2人は距離を取った
「あらら、避けられちゃいましたか。 でも逃がしませんよ? 狐火演舞【火車】」
優美に振り払った二枚の扇子から炎の車輪が幾つか現れ、芝生を削りながら男達の下へと駆けていく。
男達は難なく避けるが、シャロも次から次へと炎の車輪を飛ばし反撃の隙を与えない
「ち、小賢しい! おらよ! お返しだ!【飛斬】」
脳筋ゴリラが【闘気】を纏わせたハルバードで【火車】を薙ぎ払い、勢いそのままに斬撃を飛ばすが、シャロも難なく避ける
「おい、この炎全く熱くないぞ! ほら見てみろ、幻魔術の類だ!」
先程炎の車輪を薙ぎ払った時に全く熱さを感じなかった事に違和感を感じ、試しに触れてみると全くダメージがなく、飛んでくる炎の車輪が幻だと見破り、相方に耳打ちした
「なるほど偽物の炎でしたか、ではそちら任せましたよ、私は直接叩きます」
シャロは【火車】を放ちながら飛んでくる斬撃を避けるが、着地の際に足を挫いてしまいバランスを崩した所を細剣の男は見逃さず、地面を強く蹴けって飛び出し、鋭い刺突をシャロに放つ
勝利を確信した2人はニヤリと笑ったが、バランスを崩して尻を地につけたシャロも同様、扇子で口元を隠して笑っていた
「狐火演舞【炎炎稲荷】」
狐を模った炎が勢いよく突っ込んで来る細剣の男に牙を突き立てると、全身激しい炎に包まれ
断末魔を残して灰へと変わる
「お前わざとバランスを崩して油断させたな?」
「忘れたんですか? 私は 化かすのが得意な狡猾で嘘吐きな 狐ですよ? 2人で固まっているとやりにくいですからね。それに【炎炎稲荷】は近くにいる相手にしか使えないから近づいて貰わないといけないんです。 馬鹿みたいに引っかかってくれちゃって笑いを堪え切れませんでしたよ」
にっこり笑って【火車】を飛ばすが、ハルバードを持つ男は身構えてすらいない
「それが幻の炎って事はさっき見破ったんだよ、だから俺には効かな…… ぐわぁ?!」
油断していた男を、高速で転がって来た炎の車輪とぶつかった衝突ダメージと炎の熱が襲う
「それ本物の中に偽物もいくつか混ざってるだけで全部が偽物って訳ではないですよ? ほら嘘を付く時って本当の事も混ぜると、より真実味が増すっていうじゃないですか? で、これはどれが偽物だと思います?」
シャロの扇子から放たれた車輪は10を超え、男の下へと転がっていく
男は何か偽物を見破るヒントはないかと考える、先程偽物だった物と本物との違い……
そして気付いた、偽物は所詮偽物なので芝を刈る事なくこちらへと転がって来た、ではこれは?? そして男は絶望する事となる
「あ、気付いたみたいですね、これ、全部本物です、残念でした」
片目をつぶり舌をちょこんと出した後、扇子で口元を隠して笑った
「てめぇみたいな嘘吐き誰も信用しねぇ、てめぇの人生は一人寂しく……」
全ての【火車】くらい、炎に焼かれながらそんな捨て台詞を吐く脳筋ゴリラの男にシャロは満面の笑みを浮かべて答る
「そんな事をわかってますよ、だから嘘をつき続けるんじゃないですか。 嘘も……嘘もつき続ければ本当になるのです。 シャロはシャロを本物にするのですよ! あ……もう死んじゃってたのです……」
死んだ相手に一人話していたのが少し恥ずかしくなり、シャロは急いでその場を後にした
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本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
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