妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

17.ふたりに名付け

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 ルビネを食べ終わったキツネさんとタヌキさんが、あのウリボウはどうしたのか、と聞いてきたので、イノシシ家族に引き取ってもらえたよ、と伝えた。

『おお! よかったな』
『ほんとにね。安心だわ』

 ふたりとも、面倒見がいいのか、ウリボウが元気に育ってくれそうで安心したようだった。この一件で、ふたりともさらに仲良くなれたように感じた。

『改めて、今日は助けてくれてホントにありがとよ! 何かあったら、今度はオレが助けるぜ!』
『アタシからもありがと。さすがにあれはもうダメだと思っていたから、命の恩人よ。アタシも、何かあったら力になるわ』
「どういたしまして! ふたりが無事でよかった。⋯⋯あ、そうだ。仲良しの証に、僕のことは『ミント』って呼んでくれないかな?」
『おう、分かったぜミント様!』
『ミント様、良い名前ね!』
「⋯⋯いや、様は⋯⋯まあ、言っても直んないからいいや⋯⋯」

 妖精は動物たちにとって尊い存在であるからか、一定の尊敬はされているようで、必ず様付けで呼んでくる。僕としては無くしてほしいんだけど、まあ、ふたりがそれでいいならいいや⋯⋯て感じ。

「あと、ふたりに名前を付けてもいいかな⋯⋯?」
『名前? いいぜ! 名前がもらえるなんて嬉しいぞ!』
『いいわよ! というか、ミント様にもらえる名前、動物たちはみんな嬉しいと思うわよ』
「ほんとに? ありがとう! じゃあ、えーと⋯⋯」

 ダメもとで話してみたが、あっさり承諾されて拍子抜けしたが嬉しい。早速、どんな名前にしようか考える。⋯⋯まあ、こんな時のために、すでに考えてはいたから、今考える必要はなかったんだけど。

「キツネさんは『ルナール』、タヌキさんは『ラクン』、でどうかな?」
『おお⋯⋯「ルナール」、カッコいいじゃねえか!』
『「ラクン」、かわいいじゃない! アタシ、気に入った!』
「ほっ。よかったー」

 狐をフランス語で「ルナール」、狸を英語で「ラクーン・ドッグ」というのだけれど、そこから名付けてみた。⋯⋯安直だったかも、と不安になったが、ふたりが喜んでくれたから、ヨシ! だ。ふたりとの仲がさらに縮まったようで、僕はホクホク顔をしていた。よっしゃ! もふもふ友達ゲットだぜ!

「あのね、ルナールとラクンに頼みたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」
『なんだ?』
『聞くわよ?』
「じゃあ⋯⋯⋯⋯その毛、もふもふしていい?」

 ふたりが言葉を返す前に、僕はガバっと毛に突っ込んだ。だって! 最近もふもふが足りてなかったんだもん!! マロンももふもふだけど、ナッツの面倒をみなきゃいけないから目を離せないし、ナッツは子どもだから突っ込むのは憚られるし!! もう何日ももふもふしてなかったんだよ~。いいじゃん少しくらい!
 ⋯⋯と、心のなかで言い訳をしながら、僕は久し振りのもふもふにだらしない顔をして頬を擦り付けていた。

 帰り際、ちょっとふたりからの抗議の視線が痛かったが、またね、とにこやかに別れた。今日は実戦をしたからか、少し気だるく感じた。こんな時は、早く家に帰って寝てしまおう。家に帰ると、ほんとに疲れていたのか、すぐに深い眠りに落ちていった。

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