妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

25.外の世界へ

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 文字の勉強を始めて分かったことは、こちらの世界の共通語の文字が、日本語の五十音とそっくりだってことだ。音の数と文字の数が同じなのは、元日本人にとっちゃとってもありがたいことだ。僕は英語はそんなに得意でも無く、かといって全く分からないってほどでもなかった、ってくらいだからね。


 帰還を始めて6日目の朝。そういえば、こんなに長い期間の食糧をどうしているのかハーヴェイさんに聞いてみたところ、持ってきたのは塩漬けされた肉と、少量の野菜のみで、あとは現地調達しているそうだ。もしも食べられるものがそこになかったらどうするのか、と聞いたら、ある程度事前に分かっているから、準備段階で調節しているそうだ。

「しおづけにくとスープだけであきないの?」

 と地面に文字を書いて伝えてみた。するとハーヴェイさんが答えてくれた。

「これが普通だからな。慣れもあるが、この食事に耐えられるように訓練もしているからな」
「へぇ~!」

 やっぱり、食べ物の保存技術はそんなに発展していないようで、生物なまものはすぐに食べなきゃ腐ってしまう。魔法、らしきものがあるから、異世界の定番のマジックバッグがあると思ったんだけどな~。
 そんなこんなで朝の準備を終え、森を歩き出した。騎士団が約1週間ほどで僕のところまでやって来たらしく、そろそろ森を抜けるかもしれないとのこと。さてさて、森の外にはどんな景色が広がっているのか⋯⋯! 淀みなく進む騎士団と共に飛んで、ついに、ついに森を抜けた!!
 森の外には、広い平原が広がっており、民家や畑が沢山見える。吹き抜ける風が力強く、僕の髪がさわさわと揺れる。

「わあ⋯⋯! すごいっ! ひろーい!」

 僕が興奮しているのが伝わるのか、皆から微笑ましく見守られていた。

「あの遠くに見える城と城壁のある街が、私たちの目的地、ガルディアン王国の王都、ファーネだ」

 ハーヴェイさんが指さした先には、いかにもお城という感じの建物と、それを囲む石壁が、白くかすれて見えた。あそこに、これから向かって行くのだ。まさに王道って感じのデザインのお城は、僕のワクワクを掻き立てるのには十分だった。王都に着いたら何しようかな、と考え込みながらフラフラと飛んでいたら、前を歩くウルリックさんの肩にゴツンとおでこをぶつけてしまい、気をつけてと注意されてしまった。


 森を抜けるとどこへ行っても人目があるからと、僕はハーヴェイさんの甲冑の隙間に隠れることになった。「汗臭いかもしれないが」と言っていたけど、大丈夫、臭くないよ! と胸元から顔を出してジェスチャーした。
 そういえば、道中に広がっている一面の畑で育てられている作物は、今いる王国、ガルディアン王国の食糧を全て支えているんだそう。僕のいた森は、大気中の霊力が他より濃くて、植物の生育がとても良い。そのため、側にあるガルディアン王国は緑豊かな国になっているのだとか。

「王都に着いたら、美味しいもんが食べられるんっすよねー!」
「そうなの?(こてんっ)」
「新鮮な野菜や果物が沢山あるんっすよ! ずっと塩漬け肉ばっか食べてると、野菜が恋しくなるっす~」

 騎士のひとりが言った言葉に、僕の心はさらにおどる。なんせ、野菜も果物も大好きだからだ! ちょうど、野菜を育てている畑が脇に見える。ぱっと見は僕の知っている野菜にそっくりだが、よく目を凝らすと、びみょーに実が細長かったり、株がわさわさ動いていたりする。そこは、やっぱり異世界なんだなーと納得した。


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24話を修正しました。
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