妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

26.王都ファーネ

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 王都ファーネへ行く道中、一度だけ宿屋に泊まった。初めての宿屋にテンションが上がりっぱなしの僕は、いつの間にかハーヴェイさんと同室になっていた。まあ、ハーヴェイさんの甲冑に隠れているから当たり前だけど。ベッドは当然一つしかないので、僕は他の所で寝ようと思ったが、ハーヴェイさんが、僕は体が小さいから一緒に寝ても狭くないだろうと言ってくれたので、お言葉に甘えて、枕元に横になった。ロウソクのランプを消すと、柔らかな月明かりのみが部屋に入ってくる。誰かといっしょに寝るなんて、いつぶりだろう。少しドキドキしながら、いつの間にか、ふかふかな感触に眠りに落ちていた。
 翌日、何事もなく平和に道を進む。そういえば、馬車とかって走ってないのかな? それとも、騎士団は歩いて行き来するのが普通なのだろうか。なんだか大変そうだな。もし、僕が人間だったら、騎士団に入るのは無理そうだ。
 そんなことをつらつらと考えているうち、とうとう王都へ到着した。高い石壁が目の前にあり、かなり迫力満点だ。

「お疲れ様です!」

 ビシッと敬礼をした門番の前を通り、僕たちは王都へ足を踏み入れた。

 城壁の中に入った途端、ものすごく沢山の人々が目に入って来た。正面に真っ直ぐ通った大通りを埋め尽くすほどの活気で、大通りに沿うように連なる屋台やお店で、にこやかに買い物をしている。

「すごい⋯⋯! 都会だ⋯⋯!」

 前世の僕はあまり都会とは縁が無く、どちらかというと田舎の街で生きていたため、これだけの人が集まっているという景色に圧倒されていた。
 騎士団が大通りを進むと、その度歓声が上がっていた。やっぱり、騎士というのはかっこよくて憧れの存在なんだろう。ハーヴェイさんはあまり気にせず、無表情でスタスタと進んでいる。こういうのは興味ないのかな?
 僕は、今日はウルリックさんの甲冑の中にお邪魔させてもらった。なんでも、王都に入ると人目も多くなるし、騎士団長は目立つので、昨日のように隠れていても見つかる可能性が高くなるから、だそうだ。それに反対する理由も無いので、おとなしく従う。今日はあまり顔を出さないでほしい、と言われたけど、こんなに興味をそそられるものがあふれているのに、見ないでいられないでしょ! だから、昨日以上に気をつけながら、辺りをキョロキョロ見回した。
 あ、パン屋だ! あっちは魔導具屋? アクセサリーショップもある! お! おしゃれなスイーツカフェ!! 行きたいなー!
 そうして僕が目をキラキラさせてよそ見しているうちに、大きなお屋敷が集まっている区画に来ていた。警備のために巡回している騎士⋯⋯いや兵士かも? がさっきより多い。いわゆる貴族とかが住んでいる区画なのかな? その貴族区を真っ直ぐ突っ切り、正面の大きな大きなお城の前へ到着した。

 ハーヴェイさんが、門番に何やら話すと、二人のうち一人が、お城の中へ走っていった。しばらくして帰ってくると、騎士団はお城の中へと進んだ。連絡とかしてたのかな?
 お城の中は高級感漂う調度品ばかりで、金や宝石がキラキラとまぶしい。赤いカーペットが敷かれた床は、白い壁とよくマッチしている。その中をどんどん進み、やがて大きな扉が見えてきた。焦げ茶色の木でできた、大人の男性の倍はある扉。その前に立つ二人の兵士は、敬礼をすると、二人がかりで扉を開けた。

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