妖精の森の、日常のおはなし。

華衣

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本編

44.言葉

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 そもそもの話として、僕が話している言葉は、僕には日本語として聞こえているんだけど、他の人にはベルの音に聞こえている。日本語=ベルの音となるなら、僕が人族の言葉を話せば伝わるのでは?
 と、考えたけど、人族の言葉が不思議パワーにより日本語に聞こえてしまうので、文字は習得できても喋る音が分からないからできない。だからこそ、翻訳魔法を使えば日本語を人族の言語に変換して話せるのでは、と思った。まあ、このことに気づいたのはガストーネさんに指摘されたからなんだけど。

 さて、そんな僕は今、必死に紙に単語を書き連ねている。紙の左半分にこの国の言葉が単語として並んでいて、右半分に僕が対応する日本語を書いている。左半分の単語は、ガストーネさんが辞書の片っ端から書いている。あっちも大変そうだけど、僕の方がもっと大変。何しろ、日本語は世界でも一番と言っても過言じゃ無いほど複雑な言語だったからね。


 ▷◇◁


 ふぅ~⋯⋯⋯⋯。だいぶ進んだかな? 始めてから何日経ったか分かんないけど、側に積み上がってる紙束は減ってきたな。ガストーネさんは早々に辞書の単語を全て書き終えて、翻訳魔法の改善の研究をしに隣の研究室へ行っていた。僕の分が書き終わらないと翻訳魔法が完成しないから、待っているのもあるけど。
 ふぅ~⋯⋯。ちょっと休んだら再開するか。よーし、後ちょっと頑張るぞー!



 それから3日程経ち。ようやく単語を書き終えたから、ガストーネさんを呼びに隣へ向かう。ドアを開けると、いつも通り散らかった部屋と、いつも以上にボサボサな黒髪が見える。この3日間ほとんど寝てないみたい。僕は一応寝なくても大丈夫だけど、ガストーネさんは人間だからそろそろ休むように言った方がいいかな?

「おーい?」
「⋯⋯⋯⋯」
「おーい!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「ガストーネさーん!!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯んぉ?」

 あーやっと気づいてくれた。

「おお~、終わったのか? こっちもちょうど改良できた所だったからな。じゃ、早速魔法を使ってみるか」

 そう言うと、何やら魔法陣が描かれた大きめの紙を持って、隣のさっきまで僕がいた研究室へ向かった。
 広め場所で床に魔法陣を置いて、その上に僕たちで頑張って書き上げた単語集の紙束を積み上げる。

「よし。それじゃ妖精様は、この石に霊力を込めてくれ。俺じゃ込められないからな」

 ガストーネさんな、着ていた白衣のポッケから手のひら大(人間基準)の透明な石を出し、僕へ差し出した。なるほど、これはよくある「魔石」みたいなものかな? その透明な石に手で触れて、霊力を流すようイメージする。どんどん吸われている感覚がする。少しすると、ピタリと流れが止まった。これで満タンかな?

「もういいぞ~。これを、ここに置いて、と⋯⋯よし。妖精様、ちょっと離れててくれ」

 ガストーネさんの言う通りに少し離れて見守る。石を紙束の上に乗せ、両手をかざして何やら詠唱が始まった。すると、魔法陣が輝き出し、紙束と石が飲み込まれて、跡形もなく消えた。

「おし、成功だ! これで霊力版の翻訳魔法が完成したぞ。早速かけるから、この魔法陣の上に乗ってくれ」

 ようし! ようやく皆と話せる! シュタッと魔法陣の上へ降りると、またガストーネさんがさっきとは違う詠唱を始める。魔法陣が輝くと、その光が僕の喉の辺りへ吸い込まれていき、やがて消えた。

「ふ~~。疲れた~。気分はどうだ?」
「⋯⋯あーあー、うー」
「お! ちゃんと聞き取れるぞ」
「ほんと? わーい! やった! やっと皆と話せる! ガストーネさん、ありがと!!」
「よしよし。この俺にできないことなんか無いからな!」

 僕の感覚としては、何かが変わったような気はしないけど、きちんと言葉が伝わるのは本当に嬉しい! 本当にガストーネさんには感謝だ。これで、皆ともっともっと仲良くなれるかな? 皆と話すのが楽しみだ!

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