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聖女の地位と元婚約者の王子を奪った女は、聖女を名乗ってましたが怪我で動けなくなったそうです。
しおりを挟む私はカーネーション・フオンタン。この国の聖女でした。たった今まで。
「 お前は無能なくせにカミーユの聖女の力を自分のものにしていた。その罪は重いぞ。この国を出て行け。もちろん婚約は破棄させてもらうからな。」
自分勝手な話だ。
私を公衆の面前で罵倒しているのはリーガル殿下。私の婚約者だ。
かぐわしい花の香りが風にそよぐ美しい春の日に私は、婚約者から婚約破棄を宣言された。
しかも学院のパーティの席で、大勢の人たちの前でだ。
こうなる事はわかってた。
植物の精霊達が私に教えてくれていたから。
聖女になった日から王子の婚約者となった。昔からのこの国のしきたりだから、不思議にも思わなかった。
私は毎日、聖女の仕事が忙しい。
国の端から端まで防御の結界を張り巡らし、よどみや悪い気を払う。
もの凄いエネルギーを使うし、他の人には出来ない事だ。
私が仕事が忙しいのをいい事に、婚約者のリーガル殿下はカミーユとねんごろになった。カミーユは私の聖女の力に嫉妬していた。
それは彼女の発する気や、まとう空気や目つきでわかった。
カミーユは自分こそが聖女である、と王子に嘘をついた。嘘をついたという感覚もなかったかもしれない。なぜならカミーユは息を吐くように嘘をついたから。
いつもの事だ。
なぜか、ありえない嘘を信じて、私を嘘つき呼ばわりする。
私は何かを言う事も、諦めた。
どうせ全てを失うの。
いつもの事だから。
何を言っても信じてくれない。
「 わかりました。出て行きます。」
「 ほーら、ごらんなさい。何も言わずに出て行くわ。恥ずかしくないのかしら。」
カミーユは大きな声で私に聞こえるように言った。
私は城を出て、歩き出す。
精霊に頼んでおいたから、国民の皆さんも私の後に続いた。
私が城を出てすぐにリーガル殿下とカミーユはシャンパンで乾杯して、どんちゃん騒ぎをした。そして部屋に戻る途中に2人とも階段を転げ落ちたという。
聖女なら回復魔法ですぐに治せるけど、もちろんカミーユには出来なかった。
だって聖女じゃないから。魔法も、ろくに使えないし。
やっぱりこれって天罰ですか?
神さまに聞くのはやめておきます。
だって神さまはお忙しいでしょうから。
私は後ろにいる国民達を結界で守り、それぞれが行きたいところまで送り届けた。
祖国には魔獣が侵入し、山は燃え、水はニガヨモギの味になり、空気はよどんだ。
祖国が悲惨な状況になってリーガル殿下はカミーユが聖女ではなく、ただの嘘つきで自分は騙されたのだと気がついたかもしれない。
だけど全ては遅い。遅すぎる。
もう私が祖国に戻る事は無いから。
残念ですが私は新しい場所で幸せになります。
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