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てぃーぶれーく
034-すごいよサツキちゃん!
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――少しだけ時は遡り……
【聖王歴128年 緑の月 5日 同日昼頃】
あたしはユピテルと一緒に、メイドさん (名前を思い出せない)に連れられて城の中を歩いていた。
今頃、おにーちゃんやエレナさんは二人きりで怪盗ルフィンとやらを捕らえるべく準備をしている頃であろう。
「ふっふっふ、脱出成功! 話から察するに、あんな何も無い場所で夜まで待ちぼうけなんて、あたし的には耐えられないからねっ」
『まあ、カナタにーちゃん達もオイラ達がいない方が、万一の時も安心ってのはあるだろうけどね』
確かにユピテルの言う事も一理ある。
もしも怪盗と戦闘になってしまうと、どう考えてもあたしやユピテルの出る幕はないし、人質にでもされようものなら目も当てられない。
「でも、お城の見学が終わった後はどうする? 宿まで戻るのも面倒だよねぇ」
あたしがぶうたれつつぼやくと、メイドさん (やっぱり思い出せない)がおかしそうに笑った。
「城内には客室や休憩室もありますので、その辺は心配しなくても大丈夫ですよ。今回の騒ぎもあって、本日はお泊まりになるお客様もおりませんので」
「おお、すばらしーっ!」
前にエルフ村の暗殺者に命を狙われた時に一度泊まったので、どんな部屋なのかは知っているのだけど、それはもうビックリするほど豪華な部屋だった。
まるでお姫様になったような気分を堪能できたし、またその部屋に泊めさせてもらえるなんて、嬉しいことこの上ない。
メイドさん (そろそろ諦めていいかな)のおかげで宿の心配も無くなった事だし、これで安心して城内探検ができる!
……と、そんな事を考えながら歩いていたあたし達の前に知り合いの子が現れた。
「あっ、ピートだ。やっほー!」
『君は確かカナタの妹、サツキだね。こんにちは~』
コドモドラゴン……もとい、聖竜のピートがパタパタと飛びながらこちらに近づいてきた。
「あれ? そういえば、今日は姫様は一緒じゃないの?」
『さすがに護衛だと言っても四六時中ずっと一緒ってわけじゃないからね。プリシアだって一人になりたい時くらいあるさ』
「それもそっか」
ピートは近くの森に暮らしている聖竜だ。
ひょんな事からプリシア姫誘拐事件に巻き込まれてしまったところを、おにーちゃんが解決したのがキッカケで、姫様のお守り役になったという経緯があったりする。
『それにしても君が城に来るなんて珍しいね。何の用事だい?』
「えーっと、おにーちゃんが怪盗ルフィンって奴を捕まえるためにお城に呼ばれてね。あたしとユピテルは特にやる事ないから抜けてきた」
『オイラはサツキに巻き込まれただけなんだけどね……』
ぐったりと脱力した様子でぼやくユピテルを見て、ピートは一瞬驚いた顔をしながらも、メイドさん (ナイスさんだったかも)の方をチラリと見て口を開いた。
『アナイスさん、ここからはボクが二人を案内するから、仕事に戻ってていいよ』
「あっ、はい。ありがとうございます、聖竜様」
アナイスさん (っていうらしい!)はペコリと頭を下げると、小走りで廊下を戻っていった。
それからピートは周りをキョロキョロ見回して、誰も居ない事を確認してからユピテルの顔の前にフワフワと飛んできた。
『……思いっきり頭を隠してるって事は、エルフだとは公言してないんだよね?』
『うん、気遣ってくれてありがとう』
エレナさんが白いフードをかぶっているのと同様に、ユピテルも外に出る時は大きなバンダナをゆったりと巻いて長い耳を隠している。
おにーちゃん曰く、この国では「人間とそれ以外」が区別されているのが理由らしいけど……。
「エレナさんもフードで顔を隠してるし、なんで精霊とかエルフってだけでコソコソしないといけないんだろ? 別になんにも悪い事してないし、こうやって会話も出来るのに、意味わかんないよね~」
『私も同感ですわ』
「!」
突然話しかけられて慌てて後ろを振り返ると、そこには煌びやかなドレスに身を包んだ、綺麗な女の子が居た。
言わずと知れた、この国のお姫様プリンセス・プリシア様だ!
『ちょうど良かった。この子達が城を見学したいらしいんだけど、プリシアも一緒に行くかい?』
「ええ。ちょうど一段落ついたところでしたし、気分転換も兼ねて御一緒しましょうか」
「えっ! ホントいいの!? わーい、やった~♪」
まさかのお姫様によるエスコートきたー!
あたしが両手を広げて喜ぶと、姫様はおかしそうに笑った。
「どしたの?」
「ふふふ、気にしないでくださいな」
「???」
◇◇
城内を一通り見学し終わったあたし達は、休憩がてら中庭へとやってきた。
「なるほど、ユピテルさんは南の森奥地のエルフ村出身なのですね」
『はい。理由あって村にはもう戻れませんが……』
「本当はそのような訳ありの方であっても、気兼ねなく頼れる国であるべきなのですけどね」
確かに、さっき「なんで精霊とかエルフってだけで、コソコソしないといけないんだろ?」と言った時も姫様は同感だと言っていたし、姫様も皆が仲良くすべきだと考えているらしい。
「私とピートがお友達になれたのですから、エルフの方々とだって仲良くできると思うのです。……子供じみた理想論だとは分かってはいますけどね」
「そんなことないよっ!」
「!?」
「だって、あたしが旅をしている目的は、おにーちゃんとエレナさんをくっつけるためだからねっ! 人間と他の種族が仲良しじゃないと困るもんっ!」
あたしの宣言を聞いて、姫様は目が点になってしまった。
何故かピートが困惑した様子でオロオロしている理由は分からないけども。
『サツキちゃんったら、またそんな事言って……。まあ、オイラ個人としてもあの二人はさっさとくっついちまえって思ってるけどさ』
「かく言うこのユピテル氏も、あたしを射止めるのが旅の目的でござるよ~?」
「そうなのですかっ!?」
『ち、違うよっ、違うからねっ!!』
顔を真っ赤にしながら首をブンブンと横に振りおって、ういやつめ♪
そして、あたしが照れているユピテルを後ろから羽交い締めにしている姿を見て、姫様がとても嬉しそうに笑った。
『何だか楽しそうだね、プリシア』
「だって、この二人みたいな関係こそが私の目指す世界だもの! 国民の誰もが人種や生まれを気にする事なく平等に幸せになれる国を……!」
『でもこのままじゃカナタが……ホントに大丈夫?』
「うぐぐ……これはこれ! それはそれだからっ!!」
姫様とピートが不思議な会話をしていたかと思いきや、プリシア姫がいきなり私の前にピョンと飛んできて両手をひしっと握りしめた。
「あなたの事、サツキ様って呼ばせてもらっても良いかしら?」
「えー、やだー」
あたしが即答すると何故か皆の表情が凍り付いた。
「ど、どうしてっ……!?」
姫様は困惑しながら問いかけてくるけども、さすがに一国のお姫様から様付けで呼ばれるのは、何だか息苦しい感じがして嫌だ。
「だって、あたしに様付けとか堅苦しすぎない? 確かに姫様の方が年下だけど、もう少し柔らかい言い方の方が良いんじゃないかなー」
「え、えーーっと……サツキさん?」
「それもちょっと違う気がする」
「えっ、えっ、う、うーーん……さ、サツキ……ちゃん?」
「おっ、そんくらいがちょうど良いね! それじゃ~あたしは、姫様を何て呼ぼうかなぁ……プリシア様とかどう?」
「どうしてそうなるんですっ!? そこはプリシア"ちゃん"、でしょうがっ!!」
プンプンと怒り顔の姫様……いや、プリシアちゃんの小さな頭を撫でつつ、あたしは笑いながら言った。
「今後とも末永くよろしく、プリシアちゃんっ」
~~
「ってな事があったよ」
「……いやお前、スゴすぎて意味わかんねーわ」
サツキのムチャクチャ過ぎる武勇伝を聞いた俺は、呆れ顔のままユピテルに目を向けると……窓辺に肘をかけながら虚ろな目で遠い空を眺めていた。
『オイラ、生きた心地がしなかったナー……』
「いや、ホント、うちの妹がゴメンな……」
かくして、俺の「サツキに王室マナーを叩き込もう計画」は、始まる前から暗礁に乗り上げてしまったのであった。
【聖王歴128年 緑の月 5日 同日昼頃】
あたしはユピテルと一緒に、メイドさん (名前を思い出せない)に連れられて城の中を歩いていた。
今頃、おにーちゃんやエレナさんは二人きりで怪盗ルフィンとやらを捕らえるべく準備をしている頃であろう。
「ふっふっふ、脱出成功! 話から察するに、あんな何も無い場所で夜まで待ちぼうけなんて、あたし的には耐えられないからねっ」
『まあ、カナタにーちゃん達もオイラ達がいない方が、万一の時も安心ってのはあるだろうけどね』
確かにユピテルの言う事も一理ある。
もしも怪盗と戦闘になってしまうと、どう考えてもあたしやユピテルの出る幕はないし、人質にでもされようものなら目も当てられない。
「でも、お城の見学が終わった後はどうする? 宿まで戻るのも面倒だよねぇ」
あたしがぶうたれつつぼやくと、メイドさん (やっぱり思い出せない)がおかしそうに笑った。
「城内には客室や休憩室もありますので、その辺は心配しなくても大丈夫ですよ。今回の騒ぎもあって、本日はお泊まりになるお客様もおりませんので」
「おお、すばらしーっ!」
前にエルフ村の暗殺者に命を狙われた時に一度泊まったので、どんな部屋なのかは知っているのだけど、それはもうビックリするほど豪華な部屋だった。
まるでお姫様になったような気分を堪能できたし、またその部屋に泊めさせてもらえるなんて、嬉しいことこの上ない。
メイドさん (そろそろ諦めていいかな)のおかげで宿の心配も無くなった事だし、これで安心して城内探検ができる!
……と、そんな事を考えながら歩いていたあたし達の前に知り合いの子が現れた。
「あっ、ピートだ。やっほー!」
『君は確かカナタの妹、サツキだね。こんにちは~』
コドモドラゴン……もとい、聖竜のピートがパタパタと飛びながらこちらに近づいてきた。
「あれ? そういえば、今日は姫様は一緒じゃないの?」
『さすがに護衛だと言っても四六時中ずっと一緒ってわけじゃないからね。プリシアだって一人になりたい時くらいあるさ』
「それもそっか」
ピートは近くの森に暮らしている聖竜だ。
ひょんな事からプリシア姫誘拐事件に巻き込まれてしまったところを、おにーちゃんが解決したのがキッカケで、姫様のお守り役になったという経緯があったりする。
『それにしても君が城に来るなんて珍しいね。何の用事だい?』
「えーっと、おにーちゃんが怪盗ルフィンって奴を捕まえるためにお城に呼ばれてね。あたしとユピテルは特にやる事ないから抜けてきた」
『オイラはサツキに巻き込まれただけなんだけどね……』
ぐったりと脱力した様子でぼやくユピテルを見て、ピートは一瞬驚いた顔をしながらも、メイドさん (ナイスさんだったかも)の方をチラリと見て口を開いた。
『アナイスさん、ここからはボクが二人を案内するから、仕事に戻ってていいよ』
「あっ、はい。ありがとうございます、聖竜様」
アナイスさん (っていうらしい!)はペコリと頭を下げると、小走りで廊下を戻っていった。
それからピートは周りをキョロキョロ見回して、誰も居ない事を確認してからユピテルの顔の前にフワフワと飛んできた。
『……思いっきり頭を隠してるって事は、エルフだとは公言してないんだよね?』
『うん、気遣ってくれてありがとう』
エレナさんが白いフードをかぶっているのと同様に、ユピテルも外に出る時は大きなバンダナをゆったりと巻いて長い耳を隠している。
おにーちゃん曰く、この国では「人間とそれ以外」が区別されているのが理由らしいけど……。
「エレナさんもフードで顔を隠してるし、なんで精霊とかエルフってだけでコソコソしないといけないんだろ? 別になんにも悪い事してないし、こうやって会話も出来るのに、意味わかんないよね~」
『私も同感ですわ』
「!」
突然話しかけられて慌てて後ろを振り返ると、そこには煌びやかなドレスに身を包んだ、綺麗な女の子が居た。
言わずと知れた、この国のお姫様プリンセス・プリシア様だ!
『ちょうど良かった。この子達が城を見学したいらしいんだけど、プリシアも一緒に行くかい?』
「ええ。ちょうど一段落ついたところでしたし、気分転換も兼ねて御一緒しましょうか」
「えっ! ホントいいの!? わーい、やった~♪」
まさかのお姫様によるエスコートきたー!
あたしが両手を広げて喜ぶと、姫様はおかしそうに笑った。
「どしたの?」
「ふふふ、気にしないでくださいな」
「???」
◇◇
城内を一通り見学し終わったあたし達は、休憩がてら中庭へとやってきた。
「なるほど、ユピテルさんは南の森奥地のエルフ村出身なのですね」
『はい。理由あって村にはもう戻れませんが……』
「本当はそのような訳ありの方であっても、気兼ねなく頼れる国であるべきなのですけどね」
確かに、さっき「なんで精霊とかエルフってだけで、コソコソしないといけないんだろ?」と言った時も姫様は同感だと言っていたし、姫様も皆が仲良くすべきだと考えているらしい。
「私とピートがお友達になれたのですから、エルフの方々とだって仲良くできると思うのです。……子供じみた理想論だとは分かってはいますけどね」
「そんなことないよっ!」
「!?」
「だって、あたしが旅をしている目的は、おにーちゃんとエレナさんをくっつけるためだからねっ! 人間と他の種族が仲良しじゃないと困るもんっ!」
あたしの宣言を聞いて、姫様は目が点になってしまった。
何故かピートが困惑した様子でオロオロしている理由は分からないけども。
『サツキちゃんったら、またそんな事言って……。まあ、オイラ個人としてもあの二人はさっさとくっついちまえって思ってるけどさ』
「かく言うこのユピテル氏も、あたしを射止めるのが旅の目的でござるよ~?」
「そうなのですかっ!?」
『ち、違うよっ、違うからねっ!!』
顔を真っ赤にしながら首をブンブンと横に振りおって、ういやつめ♪
そして、あたしが照れているユピテルを後ろから羽交い締めにしている姿を見て、姫様がとても嬉しそうに笑った。
『何だか楽しそうだね、プリシア』
「だって、この二人みたいな関係こそが私の目指す世界だもの! 国民の誰もが人種や生まれを気にする事なく平等に幸せになれる国を……!」
『でもこのままじゃカナタが……ホントに大丈夫?』
「うぐぐ……これはこれ! それはそれだからっ!!」
姫様とピートが不思議な会話をしていたかと思いきや、プリシア姫がいきなり私の前にピョンと飛んできて両手をひしっと握りしめた。
「あなたの事、サツキ様って呼ばせてもらっても良いかしら?」
「えー、やだー」
あたしが即答すると何故か皆の表情が凍り付いた。
「ど、どうしてっ……!?」
姫様は困惑しながら問いかけてくるけども、さすがに一国のお姫様から様付けで呼ばれるのは、何だか息苦しい感じがして嫌だ。
「だって、あたしに様付けとか堅苦しすぎない? 確かに姫様の方が年下だけど、もう少し柔らかい言い方の方が良いんじゃないかなー」
「え、えーーっと……サツキさん?」
「それもちょっと違う気がする」
「えっ、えっ、う、うーーん……さ、サツキ……ちゃん?」
「おっ、そんくらいがちょうど良いね! それじゃ~あたしは、姫様を何て呼ぼうかなぁ……プリシア様とかどう?」
「どうしてそうなるんですっ!? そこはプリシア"ちゃん"、でしょうがっ!!」
プンプンと怒り顔の姫様……いや、プリシアちゃんの小さな頭を撫でつつ、あたしは笑いながら言った。
「今後とも末永くよろしく、プリシアちゃんっ」
~~
「ってな事があったよ」
「……いやお前、スゴすぎて意味わかんねーわ」
サツキのムチャクチャ過ぎる武勇伝を聞いた俺は、呆れ顔のままユピテルに目を向けると……窓辺に肘をかけながら虚ろな目で遠い空を眺めていた。
『オイラ、生きた心地がしなかったナー……』
「いや、ホント、うちの妹がゴメンな……」
かくして、俺の「サツキに王室マナーを叩き込もう計画」は、始まる前から暗礁に乗り上げてしまったのであった。
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