150 / 173
19-1
しおりを挟む
翌朝。
三年ぶりに晴臣の腕の中で目を覚ました。
以前よりも温かく感じるのは、直接素肌が触れ合っているからだろうか。
それとも、心も体も結ばれたという心理的なものからだろうか。
どちらにせよ、今ここに晴臣がいる。
そのことが、ただただ嬉しい。
いつまでもこうしていたい。
そんな願いは、晴臣のスマホが震え、一瞬で砕け散った。
「晴臣!スマホ鳴ってる。光城さんからだよ」
「んー…」
相変わらず寝起き悪いんだから。
心の中で笑っていると、晴臣の手が伸びてきて、私の胸を弄り出した。
「ぁっ、ちょ…やっ」
「柔らか…夢じゃない」
布団に潜り込んで、体に吸い付こうとする晴臣の頭を必死で押し返す。
「夢なわけないでしょ!昨夜散々…!」
「散々、何?」
意地悪な笑みを浮かべて見上げる晴臣に、言葉を失う。
「もう!そういうのいいから!!電話に出なさいよ!!」
スマホを押し付けると、晴臣は渋々通話ボタンをタップした。
「こんな朝っぱらから何の用だよ、宗一郎?…すっごい邪魔なんだけど」
「…ってことは、お前、千歳ちゃんと上手くいったんだな?」
「いったいった。そういうわけだから、本当邪魔。もう切るぞ」
スマホを耳から離し、そそくさと終了ボタンを押そうとする晴臣の手を、スピーカーから漏れ出た光城の言葉が止めた。
「じゃ、僕、お前に光越の社長の座、譲るから」
顔を見合わせてから、
「「えーーーーっ!?」」
と、見事に私と晴臣の声がシンクロした。
慌てて晴臣がスピーカーボタンを押す。
「千歳ちゃんもそこに居るんだよね?久しぶり。君が待っていることを長らく晴臣に伝えてなくて悪かったね」
「い、いえ…そんなことより」
『そんなこと…?』と言いたげに目を剥く晴臣を、敢えて無視して質問を続ける。
「晴臣に社長の座を譲るって…!?」
「実はずっと前から決めてたんだ。晴臣が君と上手く行ったら、全部捨てて志織を迎えに行こうって」
「そんな勝手な!!」
吐き捨てる晴臣の声に対して、いつもは晴臣以上にひねくれている光城の口調は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。
「最初は願掛けみたいなものだったんだけどね。畑は違えど蓮見社長に鍛え上げられた晴臣の経営者としてのセンスと、晴臣を健気に待ち続ける千歳ちゃん見てたら、いつの間にか気持ち固まっちゃってさ。でも、その前に、周りを納得させるために、晴臣にどうしても実績を作ってもらう必要があったから。そして、晴臣、お前は見事に僕の期待に答えてくれたというわけだ」
「知るか!人を人生ゲームのコマみたいに扱いやがって!!」
「晴臣…さっきから口が過ぎるな。僕、今はまだ社長だよ?いいの??折角昨日付けでシンガポール出向終わりにしてあげようと思ったのに。それとも、次はもっと遠いヨーロッパにでも行く?」
晴臣が、グッと悔しそうに下唇を噛んだ。
「……すんませんでした」
三年ぶりに晴臣の腕の中で目を覚ました。
以前よりも温かく感じるのは、直接素肌が触れ合っているからだろうか。
それとも、心も体も結ばれたという心理的なものからだろうか。
どちらにせよ、今ここに晴臣がいる。
そのことが、ただただ嬉しい。
いつまでもこうしていたい。
そんな願いは、晴臣のスマホが震え、一瞬で砕け散った。
「晴臣!スマホ鳴ってる。光城さんからだよ」
「んー…」
相変わらず寝起き悪いんだから。
心の中で笑っていると、晴臣の手が伸びてきて、私の胸を弄り出した。
「ぁっ、ちょ…やっ」
「柔らか…夢じゃない」
布団に潜り込んで、体に吸い付こうとする晴臣の頭を必死で押し返す。
「夢なわけないでしょ!昨夜散々…!」
「散々、何?」
意地悪な笑みを浮かべて見上げる晴臣に、言葉を失う。
「もう!そういうのいいから!!電話に出なさいよ!!」
スマホを押し付けると、晴臣は渋々通話ボタンをタップした。
「こんな朝っぱらから何の用だよ、宗一郎?…すっごい邪魔なんだけど」
「…ってことは、お前、千歳ちゃんと上手くいったんだな?」
「いったいった。そういうわけだから、本当邪魔。もう切るぞ」
スマホを耳から離し、そそくさと終了ボタンを押そうとする晴臣の手を、スピーカーから漏れ出た光城の言葉が止めた。
「じゃ、僕、お前に光越の社長の座、譲るから」
顔を見合わせてから、
「「えーーーーっ!?」」
と、見事に私と晴臣の声がシンクロした。
慌てて晴臣がスピーカーボタンを押す。
「千歳ちゃんもそこに居るんだよね?久しぶり。君が待っていることを長らく晴臣に伝えてなくて悪かったね」
「い、いえ…そんなことより」
『そんなこと…?』と言いたげに目を剥く晴臣を、敢えて無視して質問を続ける。
「晴臣に社長の座を譲るって…!?」
「実はずっと前から決めてたんだ。晴臣が君と上手く行ったら、全部捨てて志織を迎えに行こうって」
「そんな勝手な!!」
吐き捨てる晴臣の声に対して、いつもは晴臣以上にひねくれている光城の口調は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。
「最初は願掛けみたいなものだったんだけどね。畑は違えど蓮見社長に鍛え上げられた晴臣の経営者としてのセンスと、晴臣を健気に待ち続ける千歳ちゃん見てたら、いつの間にか気持ち固まっちゃってさ。でも、その前に、周りを納得させるために、晴臣にどうしても実績を作ってもらう必要があったから。そして、晴臣、お前は見事に僕の期待に答えてくれたというわけだ」
「知るか!人を人生ゲームのコマみたいに扱いやがって!!」
「晴臣…さっきから口が過ぎるな。僕、今はまだ社長だよ?いいの??折角昨日付けでシンガポール出向終わりにしてあげようと思ったのに。それとも、次はもっと遠いヨーロッパにでも行く?」
晴臣が、グッと悔しそうに下唇を噛んだ。
「……すんませんでした」
1
あなたにおすすめの小説
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
龍の腕に咲く華
沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。
そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。
彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。
恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。
支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。
一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。
偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。
俺と結婚、しよ?」
兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。
昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。
それから猪狩の猛追撃が!?
相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。
でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。
そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。
愛川雛乃 あいかわひなの 26
ごく普通の地方銀行員
某着せ替え人形のような見た目で可愛い
おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み
真面目で努力家なのに、
なぜかよくない噂を立てられる苦労人
×
岡藤猪狩 おかふじいかり 36
警察官でSIT所属のエリート
泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長
でも、雛乃には……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる