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本当のコンプレックス
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心とは裏腹に、既にはしたなく蜜を滴らせていた体の入り口に、夏目さんがぐちゅりと指を突き立てた。
「やあぁっ、だっ、ダメっ、あっ、や…っ」
「ダメじゃないだろ?ナカ…吸い付いて来てる。凛、ココ好きだもんな?」
く、と体内で指が曲がり、指の腹で浅いところの内壁を小刻みに擦られた。
「あっ、待っ、今そこダメ、あっ、あーーーっ!」
あっという間に達してしまった。
きっと、いつもは先に外で至らされるのに、今日は中途半端だったから。
自分でも驚くほど、夏目さんから与えられる快感に飼い慣らされている。
だけど─
「…凛がこんなに感度がいいのは、兄貴のせい?」
夏目さんは私のカラダから指を引き抜きながら表情のない顔で尋ねた。
「…違っ!」
「三年も付き合ってたんだろう?この部屋で何回兄貴とセックスした?忙しい人だから、週末だけ?それでも100回は軽く超えてるよな?」
力の抜けた下半身から、ズボンとショーツが下される、
夏目さんはベルトのバックルを外し、自身もボクサーパンツごとスラックスを下ろした。
何の隔たりもない状態の夏目さんが、私の体に侵入しようとした直前、夏目さんの動きが止まった。
その手は私のTシャツの裾を掴んでいた。
「なあ、兄貴には、全部見せた?」
「見せて、ない」
以前も同じやり取りをしたことがあるけれど、この言葉に嘘はない。
一哉は、私が嫌がることは絶対にしなかったから。
真っ直ぐに見据えて答えると、嫉妬と苛立ちに満ちていた夏目さんの瞳が、少し落ち着きを取り戻した。
だけど─
「…じゃあ、見せて」
夏目さんの大きな手に、みっともなく浮いた肋骨を撫でられ、体が強張った。
「俺に、俺だけに、凛の全部を愛させて欲しい」
私の反応を伺いながら、少しずつTシャツが捲られていく。
「凛の他には何も…誰も要らない。兄貴と縁を切ってもいい。夏目の名前だって捨てても構わない」
そんなの、絶対にダメ。
私のために、家族と縁を切るだなんて。
それに、今でこそ子会社の社長に収まっているけれど、近い将来、夏目さんは夏目グループにとって欠かせない存在になるはずだ。
「凛の全部を受け止める。だから俺を信じて」
どうせ叶わぬ恋なら、せめて、綺麗なままの私で夏目さんの人生の一ページに残っていたかった。
だけど、それすらも叶わないらしい。
私は、赤々と光る蛍光灯の下、夏目さんの願いを受け入れた。
上体を起こし、夏目さんと向かい合ったまま、少しずつTシャツを捲り上げていく。
頭から服を抜き終えても、夏目さんは黙ってその様子を見ているだけ。
震える手でブラジャーのホックを外し、床に落とすと、夏目さんの方が大きなため息を漏らした。
「想像通り…凛がコンプレックスに感じるところなんて、何一つない。綺麗だ」
遠慮がちに触れようとする夏目さんを、声を絞って止める。
「夏目さん、ごめんなさい」
「謝ることなんて何もない」
「そうじゃないんです。私、嘘吐いてました」
「嘘?」
「確かに胸も小さいんですけど…私の本当のコンプレックスは…」
ゆっくりと体を180度回転させる。
「こっちなんです」
夏目さんの顔は見えない。
だけど、はっきりと息を呑む音が聞こえた。
当然のリアクションだ。
これでいい。
向き直って手早くブラとTシャツを身につけ直す。
「…凛が、何で…」
余程ショッキングだったのだろう。
夏目さんは青ざめた表情で、すっかり動転してしまっている。
全部分かっていたとはいえ、目の当たりにすると、さすがに胸が痛い。
だけど、夏目さんの前で泣くわけにはいかない。
夏目さんは優しいから、同情されてしまう。
そんなのは、嫌。
「私のことは、忘れてください!」
上着を掴んで、部屋を飛び出した。
「やあぁっ、だっ、ダメっ、あっ、や…っ」
「ダメじゃないだろ?ナカ…吸い付いて来てる。凛、ココ好きだもんな?」
く、と体内で指が曲がり、指の腹で浅いところの内壁を小刻みに擦られた。
「あっ、待っ、今そこダメ、あっ、あーーーっ!」
あっという間に達してしまった。
きっと、いつもは先に外で至らされるのに、今日は中途半端だったから。
自分でも驚くほど、夏目さんから与えられる快感に飼い慣らされている。
だけど─
「…凛がこんなに感度がいいのは、兄貴のせい?」
夏目さんは私のカラダから指を引き抜きながら表情のない顔で尋ねた。
「…違っ!」
「三年も付き合ってたんだろう?この部屋で何回兄貴とセックスした?忙しい人だから、週末だけ?それでも100回は軽く超えてるよな?」
力の抜けた下半身から、ズボンとショーツが下される、
夏目さんはベルトのバックルを外し、自身もボクサーパンツごとスラックスを下ろした。
何の隔たりもない状態の夏目さんが、私の体に侵入しようとした直前、夏目さんの動きが止まった。
その手は私のTシャツの裾を掴んでいた。
「なあ、兄貴には、全部見せた?」
「見せて、ない」
以前も同じやり取りをしたことがあるけれど、この言葉に嘘はない。
一哉は、私が嫌がることは絶対にしなかったから。
真っ直ぐに見据えて答えると、嫉妬と苛立ちに満ちていた夏目さんの瞳が、少し落ち着きを取り戻した。
だけど─
「…じゃあ、見せて」
夏目さんの大きな手に、みっともなく浮いた肋骨を撫でられ、体が強張った。
「俺に、俺だけに、凛の全部を愛させて欲しい」
私の反応を伺いながら、少しずつTシャツが捲られていく。
「凛の他には何も…誰も要らない。兄貴と縁を切ってもいい。夏目の名前だって捨てても構わない」
そんなの、絶対にダメ。
私のために、家族と縁を切るだなんて。
それに、今でこそ子会社の社長に収まっているけれど、近い将来、夏目さんは夏目グループにとって欠かせない存在になるはずだ。
「凛の全部を受け止める。だから俺を信じて」
どうせ叶わぬ恋なら、せめて、綺麗なままの私で夏目さんの人生の一ページに残っていたかった。
だけど、それすらも叶わないらしい。
私は、赤々と光る蛍光灯の下、夏目さんの願いを受け入れた。
上体を起こし、夏目さんと向かい合ったまま、少しずつTシャツを捲り上げていく。
頭から服を抜き終えても、夏目さんは黙ってその様子を見ているだけ。
震える手でブラジャーのホックを外し、床に落とすと、夏目さんの方が大きなため息を漏らした。
「想像通り…凛がコンプレックスに感じるところなんて、何一つない。綺麗だ」
遠慮がちに触れようとする夏目さんを、声を絞って止める。
「夏目さん、ごめんなさい」
「謝ることなんて何もない」
「そうじゃないんです。私、嘘吐いてました」
「嘘?」
「確かに胸も小さいんですけど…私の本当のコンプレックスは…」
ゆっくりと体を180度回転させる。
「こっちなんです」
夏目さんの顔は見えない。
だけど、はっきりと息を呑む音が聞こえた。
当然のリアクションだ。
これでいい。
向き直って手早くブラとTシャツを身につけ直す。
「…凛が、何で…」
余程ショッキングだったのだろう。
夏目さんは青ざめた表情で、すっかり動転してしまっている。
全部分かっていたとはいえ、目の当たりにすると、さすがに胸が痛い。
だけど、夏目さんの前で泣くわけにはいかない。
夏目さんは優しいから、同情されてしまう。
そんなのは、嫌。
「私のことは、忘れてください!」
上着を掴んで、部屋を飛び出した。
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