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その後の二人
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*タイトルどおり、その後のお話です。
作者初の三人称語りになっていますが、脳内で情熱●陸のナレーション風に変換して読んでください(^人^)*
夏目仁希、二十八歳。
大手ゼネコン夏目建設の御曹司。
某有名私立大学を卒業後、五年間夏目セキュリティの代表として経験を積んだ後、夏目建設の専務取締役に就任したという華麗な経歴の持ち主だ。
ただし、華麗なのは経歴だけではない。
その容姿は、美しい筋肉を纏った180センチを超える体躯と、彫りの深い整った顔から「ギリシャ彫刻に似ている」と評されるほどだ。
ちなみに、一部の近しい人物らの話によると、幼い頃は小太りだったようだが、今その面影は、微塵もない。
高校に入る頃には、仁希に言い寄ってくる女性は後を絶たず、仁希の方も派手に遊んでいた。
しかし、長年探していたという初恋の女性と再会、結婚してからというもの、仁希の浮名はぴったりと鳴りを顰めている。
そんな仁希の朝は早い。
五時にセットしたスマートフォンのアラームが鳴るよりも先に目を覚ます。
それほど新しく与えられたポジションに責任を感じている。
─というわけではない。
仁希はとあるミッションを遂行するために、夜明けと共に目を覚ましたのだ。
このミッションの発端は、遡ること結婚式を終え、以前から仁希が住んでいたマンションに、妻の凛が引っ越して来た直後のこと。
結婚式と専務就任の時期が重なり、仁希は多忙を極めていた。
このタイミングで仁希を専務に就任させることを提案したのは、兄の壱哉だったことは、仁希の知るところではない。
壱哉なりの凛への罪滅ぼしというのが建前だ。
本音では、『忙し過ぎてケンカでもしたらいいのに』と思っていたが、凛と会うまで恋はもちろん失恋の経験もなかった壱哉は、自分がそんな感情を抱いていることにさえ気づいていなかった。
ただただ、仁希を立派な夏目建設の取締役にするためという大義名分の下、鬼のように仕事を振った。
その結果、ケンカにこそならなかったものの、仁希の書斎は式直後に凛が入居した時点で荒れに荒れていた。
寝室は当然同じだったが、軽くリフォームをして各自の部屋も作っていた為、仁希が油断していたところに、見かねた凛が掃除をしようと立ち入ったのだ。
漏れなく散らかっていたウォークインクローゼットの中で、チェストは明らかに不自然で、凛の目を引いてしまった。
そして、凛は、引き出しにしまってあった、あるものを発見してしまった。
そう。
それは、仁希の、凛の使用済み下着コレクションだったのだ。
一つ一つが丁寧に真空保存されている袋が、整然と並んでいるのを発見した時の、凛の激しい動揺とそれに勝る湧き上がる羞恥と言ったら─。
仁希が帰るのを待たず、絶対にそれと分からないように梱包し、自ら焼却場に持ち込んで処分してしまった。
ここ数ヶ月の間、単に忙しかっただけではなく、式の準備や役員就任に加え、凛の父の妨害もあり、仁希は完全に凛が不足していた。
やっとの思いで凛を取り戻したのも束の間。
引き換えに大切なコレクションを失う憂き目に遭ってしまったというわけだ。
無論、凛が越してきてから、多忙で会えなかった時間だけでなく、再会するまでの時間まで取り返さんばかりに、仁希は夜毎凛を抱いている。
コレクションが見つかった日も謝り倒して抱かせてもらった。
だが、凛との愛の記録と言っても過言でないコレクションの喪失は、仁希にとって、計り知れないものがあった。
作者初の三人称語りになっていますが、脳内で情熱●陸のナレーション風に変換して読んでください(^人^)*
夏目仁希、二十八歳。
大手ゼネコン夏目建設の御曹司。
某有名私立大学を卒業後、五年間夏目セキュリティの代表として経験を積んだ後、夏目建設の専務取締役に就任したという華麗な経歴の持ち主だ。
ただし、華麗なのは経歴だけではない。
その容姿は、美しい筋肉を纏った180センチを超える体躯と、彫りの深い整った顔から「ギリシャ彫刻に似ている」と評されるほどだ。
ちなみに、一部の近しい人物らの話によると、幼い頃は小太りだったようだが、今その面影は、微塵もない。
高校に入る頃には、仁希に言い寄ってくる女性は後を絶たず、仁希の方も派手に遊んでいた。
しかし、長年探していたという初恋の女性と再会、結婚してからというもの、仁希の浮名はぴったりと鳴りを顰めている。
そんな仁希の朝は早い。
五時にセットしたスマートフォンのアラームが鳴るよりも先に目を覚ます。
それほど新しく与えられたポジションに責任を感じている。
─というわけではない。
仁希はとあるミッションを遂行するために、夜明けと共に目を覚ましたのだ。
このミッションの発端は、遡ること結婚式を終え、以前から仁希が住んでいたマンションに、妻の凛が引っ越して来た直後のこと。
結婚式と専務就任の時期が重なり、仁希は多忙を極めていた。
このタイミングで仁希を専務に就任させることを提案したのは、兄の壱哉だったことは、仁希の知るところではない。
壱哉なりの凛への罪滅ぼしというのが建前だ。
本音では、『忙し過ぎてケンカでもしたらいいのに』と思っていたが、凛と会うまで恋はもちろん失恋の経験もなかった壱哉は、自分がそんな感情を抱いていることにさえ気づいていなかった。
ただただ、仁希を立派な夏目建設の取締役にするためという大義名分の下、鬼のように仕事を振った。
その結果、ケンカにこそならなかったものの、仁希の書斎は式直後に凛が入居した時点で荒れに荒れていた。
寝室は当然同じだったが、軽くリフォームをして各自の部屋も作っていた為、仁希が油断していたところに、見かねた凛が掃除をしようと立ち入ったのだ。
漏れなく散らかっていたウォークインクローゼットの中で、チェストは明らかに不自然で、凛の目を引いてしまった。
そして、凛は、引き出しにしまってあった、あるものを発見してしまった。
そう。
それは、仁希の、凛の使用済み下着コレクションだったのだ。
一つ一つが丁寧に真空保存されている袋が、整然と並んでいるのを発見した時の、凛の激しい動揺とそれに勝る湧き上がる羞恥と言ったら─。
仁希が帰るのを待たず、絶対にそれと分からないように梱包し、自ら焼却場に持ち込んで処分してしまった。
ここ数ヶ月の間、単に忙しかっただけではなく、式の準備や役員就任に加え、凛の父の妨害もあり、仁希は完全に凛が不足していた。
やっとの思いで凛を取り戻したのも束の間。
引き換えに大切なコレクションを失う憂き目に遭ってしまったというわけだ。
無論、凛が越してきてから、多忙で会えなかった時間だけでなく、再会するまでの時間まで取り返さんばかりに、仁希は夜毎凛を抱いている。
コレクションが見つかった日も謝り倒して抱かせてもらった。
だが、凛との愛の記録と言っても過言でないコレクションの喪失は、仁希にとって、計り知れないものがあった。
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