惑星だった僕が異世界転生して人として生きるときに語ること

来麦さよのすけ

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第19話 魔法

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 すると僕らのそばに残っていた女の子たちの一人が教えてくれた。

「ダンジョンっていうのはねー。じゃなくて、あっちのちょっと高いところのちょっとしたほら穴? みたいなところだよ。男の子たちのたまり場? っぽいとこ。非常食もあるらしいよ!」

「そうか……。ということはモンスターは?」
 とリーシアさんが問うと、

「ないない。ぜんぜんそういうのじゃなくて、ただの穴。ちょっと奥に行ったらすぐ行き止まり」
「なら大丈夫ですわね」
 エミーさんもホッとした表情になった。

 なるほど。「普通のダンジョン」と言っているので、この世界にはモンスターが出現するダンジョンが普通にあるらしい。会話の端々からもいろんな情報を得られるものだ。
 そして男の子の一人が、ある女の子に声をかけていた。

「なー、アシュリンも行こうぜっ」
「えー、別にいいよ……」

 アシュリンと呼ばれた女の子はあまり乗り気でない様子。しかし少年は引き下がらない。

「いやさ、一緒に行くとさ、きっと絶対楽しいぜ? な? な? 一緒に行こうぜ!」
 するとその様子を見ていた他の子たちが、

「おっ。お熱いねー」
「スヴァンはいつもアシュ子ばっか見てるからなー」
「ひゅーひゅー」
 と、はやしはじめた。

 なるほどそういうことかぁ。僕らはほっこり。そしてにんまり。

「ばッ!? ちげえよ! そんなんじゃないし!」
 全力で否定するスヴァン少年の耳が真っ赤だ。がんばれ少年! 
 けれどアシュリンちゃんは、

「あー……。今はほんとにそんな気分じゃないかな。ごめんね」
 やっぱりダンジョンに行く気はないようだ。

「そっか……」
 わかりやすく肩を落としてしまった少年の姿がいたいたしくて見ていられない……。その場にいた僕らは、「くぅ……、少年よ、これにめげずにがんばるんだぞ」と彼をおもんぱかり、彼のかわりに涙をのんだ。

「じゃあ、そろそろ行こうぜ! いざゆかん、謎と不思議のダンジョンへ!」
「「「ダンジョンへ!」」」
 男子チームは彼らだけで行くことにしたらしい。掛け声があがる。

「じゃーなー」
「またなー」
 と、僕らやアシュリンちゃんたち女子チームに手を振りつつ、ダンジョン探索へむかう男子たち。その最後尾で、しゅん……と肩を落とし気味の少年が一人、ぽつんと歩いていく。がんばれ少年! 負けるな少年! と勝手にエールを送っていると、

「ね、おにいさん?」
 スヴァンくんの想い人? であるところのアシュリンちゃんが話しかけてきた。

「違うよアシュリン。その人は、ろしゅつきょーのおにいさん? だよ?」
 隣の女の子がきっちり訂正する。
 いやもう普通に「おにいさん」でいいんだよ!?

「そっか。ろしゅつきょーだね!」
「ろしゅつきょー」
「ろしゅつきょー」

 すると別の女の子が、
「そうだ。ママがね、暗くなったら、墓地の近くに? っていうのが出るから気をつけなさいって言ってた」

「ろしゅつま!」
「ろしゅつま!」

「そっか! ろしゅつま。それで、ろしゅつまのおにいさんは、何ができるの……かな?」
 とアシュリンちゃんからの質問。

 僕の職業ジョブが〈露出狂〉から〈露出魔〉にレベルアップしてしまった……! 
 いや、では、どっちが上なんだろう? ……どうでもいいか。それに「何ができるの」とは?
 質問の意味がわからずとまどっていると、リーシアさんが助け舟をだしてくれた。

「ふふふ、どうなのかな……? 露出魔のおにいさんは、くふふふ……魔法とか使えたりするの? と、その子は聞きたいんだろう……ぷくくく」
 ちょっと! リーシアさんがものすごく笑いをこらえてるんですけど!

「魔法とか、特には……」
 僕は、自分の能力についてはまだよくわかっていない。何ができるのかもわからない。たぶんチート的な何かは、あの駄女神様たちに付与してもらってる……とは思うんだけど。あのいい加減なチュートリアルじゃなあ……。さっぱりわからない。

 転生前のあのドタバタを思い出して遠い目をしていると、

「なんだー、役立たずかー」
 と別の女の子からの率直かつ辛辣な意見。正論のやいばが、僕の胸をグサリと刺しつらぬいて、

「役立たずで、ろしゅつまかー」
 さらに別の子からさらに追撃がきた。

 いや、なんだかほんとに胸がいたい……。あれ? 僕なんの役にも立っていない? 足も動かなくて、ここまで二人のお世話になりっぱなしだし、と落ちこんでいると、

「そうだっ。アシュリンはね、魔法が使えるんだよ。すっごいんだよ!」
 と女の子の一人が話しだした。よかった! 話題がかわった!

「ほう」リーシアさんが目を見開き、
「それはすごいですわね」エミーさんが素直に驚き、
「魔法かー」僕はまだよくわかっていない。

「え、そんなことないよ……っ」
 当のアシュリンちゃんは、顔の前で手をぶんぶん振っている。いきなり注目されて恥ずかしくなったのか、顔が真っ赤になった。さっきはやしたてられていたスヴァンくんよりも真っ赤だ。

「えー、でも出せるじゃん。見せちゃいなよー」
「ちゃいなよー」
 女の子たちがおだて上手。

「えー、でも……。うーん、じゃあ……」
 見事におだてられたアシュリンちゃんがベンチを、ぴょんと飛びおりた。謙遜はしてるけど、ちょっぴり自慢もしたいお年頃なんだな。

「ちょっとだけだよ? ……すぅ……はぁ……」
 気息を整え、
「ええと……、〈大気にあまねくおわしますマナよ、しばしわた……我に力をかしておくれ——ええと、舞いあがる塵にひらめく一瞬の光、山の端にしずむ入り日のなごり、我が息に吹かれて舞い踊る熾火おきびの火、その一瞬のきらめきをしばしのあいだ我が手の中で燃やしたまえ——ファイヤーボール〉!」

 詠唱というのかな。
 アシュリンちゃんが言葉を紡ぐたびに、彼女の周囲の気配がかわり、何かが集まっていくのが感じられた。
 そして彼女が〈ファイヤーボール〉! と言った瞬間、彼女の手のひらから——

 ほょん、とかわいい火の玉が出て……すぐに消えてしまった。

 あれ、これだけ? と僕がとまどっているのをよそに、

「おお~、すごい!」
 と子どもたちが拍手。

「おお~、すごいのぉ~」
 まだベンチに残っていたおばあちゃんズも大拍手。

「おお~、すごい、すごいっ」
 リーシアさんとエミーさんもパチパチと手を叩く。
 な、なるほど、すごいのかー、と僕も拍手する。

「え、えへへへ……」
 アシュリンちゃんは恥ずかしそうにぴょこんとお辞儀をすると、僕の隣に座ろうとして、

「お、おっととと……」
 ちょっとふらついて、バランスを崩した。

 そのまま僕の方へ倒れかかってしまって——
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