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第34話 伏兵(1)
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——ここで、すこし時間はさかのぼる。
——襲撃を受けたばかりの村の中は混乱のきわみにあった。
「どうした!?」
「何があった!」
「わからん!」
「物見が落とされてる!?」
「だれが襲ってきた?」
「ルバローだ! やつらが来た!」
「なんだって!?」
避難しながら、村の人たちが口々に叫びあう。
僕は宿のおかみさんにお姫様抱っこされつつ、エミーさんと一緒に村の奥へむかっているところだ。と、近くを走っている人がつまずいた。
「きゃあっ」
「大丈夫ですか? しっかり!」
つまずいた人にエミーさんが手を貸す。するとまた一人、
「あんれ、まあっ」
「おばあちゃん、しっかり!」
そうこうしているうちに、いつのまにか僕らは避難の最後尾になっていた。
「逃げ遅れてるの! このへんにまだいないかい? いたら返事しな!」
おかみさんがときどき声を張り上げる。返事はないので、たぶんもうこのあたりには誰もいない。
「さ、私たちも早く……」
エミーさんが急かしたところで——ゾワッ……という気配がして、背筋が粟立つ。
背筋というか、後頭部、耳の後ろあたりまで寒気が走って——
何かいる! と僕が思うよりはやく、
「っ!? まわりに気をつけて!」
エミーさんが叫んだ。
すぐさま音が聞こえてきた。
頭上で広がる、ザザァッという音。
それは、いきなり降ってくるにわか雨の音に似ていた。
けれどそれは雨じゃなくて。
黒いもので。
そのすべてに鋭い刃がついていて。
そのすべてが僕らを傷つけようとするものだ。
それらが空から降りそそぐ。
軒下に逃げるひまもない。
「うわっ!」
「ひぃ……!」
「きゃあぁぁーーーっ!」
村の人たちは、なんとか身を守ろうと、その場で頭を抱えてうずくまる。
すると急に僕の視線が地面近くにまで下がり、フッと視界がかげった。
え、ちょっと!? おかみさんが僕をかばうように覆いかぶさって!?
「くっ……、〈防御盾〉!」
エミーさんが呪文を唱えた。僕らの頭上にいくつもの魔法陣が描かれる。
——ガガガガッ!
衝撃音がいくつも響いた。
襲ってきた攻撃を防御魔法が跳ねかえす音だ。
けど、そのうちのいくつかがすり抜けてしまって、
「ぐ……っ」
「いたっ」
声があがる。何人かが負傷してしまったらしい。
「つぅ……!」
そしてその声は僕を抱えている、おかみさんからもあがった。声を抑えてるけど、どこかケガした!?
ぐらり、と僕らの体勢がくずれていく。おかみさんが地面につっぷしてしまった。それでも僕をかばおうとしてくれていたけど、転倒の反動で逆に投げ出されてしまった。
「こなくそっ! 足をやられちまったよ!」
おかみさんが悪態をついた。
「おかみさん! みなさん! 今ヒールを——ハッ!?」
エミーさんが駆け寄ろうとして、さっと顔を前方に向けた。
僕らの前に立ちふさがる人物。
たった一人だけど、明らかに異様な雰囲気。
たった一人で、ここにいるみんなの足をすくませてしまう、そういう圧力を体中から発している細身の男。
「さてと、ここは通さねえよっと」
そいつが腕を振った瞬間、ヒュンッと空を切る音が響く。
「ぐあぁ!?」
男からいちばん近いところにいた村の人が崩れ落ちた。
「——あんた!?」
奥さんらしき人の悲鳴があがる。
「んじゃ、次はおまえらな」
そして男が、宙空を手でなでるようにスーッと横に動かしていくと、黒い物体がずらりと並んだ。
今さっき、雨のように降ってきた刃だ。
今度はそれらが切っ先を僕らにむけて、水平に静止している。
いつでも飛び出して、おまえらを刺し殺せるぞと、鈍い光をその切っ先にきらめかせている。
「このっ! 死なず者っ!」
棒切れをもった村の一人が打ちかかった。けれど、
「はい、死んだ」
男の放った鋭い刃が村の人に——
——襲撃を受けたばかりの村の中は混乱のきわみにあった。
「どうした!?」
「何があった!」
「わからん!」
「物見が落とされてる!?」
「だれが襲ってきた?」
「ルバローだ! やつらが来た!」
「なんだって!?」
避難しながら、村の人たちが口々に叫びあう。
僕は宿のおかみさんにお姫様抱っこされつつ、エミーさんと一緒に村の奥へむかっているところだ。と、近くを走っている人がつまずいた。
「きゃあっ」
「大丈夫ですか? しっかり!」
つまずいた人にエミーさんが手を貸す。するとまた一人、
「あんれ、まあっ」
「おばあちゃん、しっかり!」
そうこうしているうちに、いつのまにか僕らは避難の最後尾になっていた。
「逃げ遅れてるの! このへんにまだいないかい? いたら返事しな!」
おかみさんがときどき声を張り上げる。返事はないので、たぶんもうこのあたりには誰もいない。
「さ、私たちも早く……」
エミーさんが急かしたところで——ゾワッ……という気配がして、背筋が粟立つ。
背筋というか、後頭部、耳の後ろあたりまで寒気が走って——
何かいる! と僕が思うよりはやく、
「っ!? まわりに気をつけて!」
エミーさんが叫んだ。
すぐさま音が聞こえてきた。
頭上で広がる、ザザァッという音。
それは、いきなり降ってくるにわか雨の音に似ていた。
けれどそれは雨じゃなくて。
黒いもので。
そのすべてに鋭い刃がついていて。
そのすべてが僕らを傷つけようとするものだ。
それらが空から降りそそぐ。
軒下に逃げるひまもない。
「うわっ!」
「ひぃ……!」
「きゃあぁぁーーーっ!」
村の人たちは、なんとか身を守ろうと、その場で頭を抱えてうずくまる。
すると急に僕の視線が地面近くにまで下がり、フッと視界がかげった。
え、ちょっと!? おかみさんが僕をかばうように覆いかぶさって!?
「くっ……、〈防御盾〉!」
エミーさんが呪文を唱えた。僕らの頭上にいくつもの魔法陣が描かれる。
——ガガガガッ!
衝撃音がいくつも響いた。
襲ってきた攻撃を防御魔法が跳ねかえす音だ。
けど、そのうちのいくつかがすり抜けてしまって、
「ぐ……っ」
「いたっ」
声があがる。何人かが負傷してしまったらしい。
「つぅ……!」
そしてその声は僕を抱えている、おかみさんからもあがった。声を抑えてるけど、どこかケガした!?
ぐらり、と僕らの体勢がくずれていく。おかみさんが地面につっぷしてしまった。それでも僕をかばおうとしてくれていたけど、転倒の反動で逆に投げ出されてしまった。
「こなくそっ! 足をやられちまったよ!」
おかみさんが悪態をついた。
「おかみさん! みなさん! 今ヒールを——ハッ!?」
エミーさんが駆け寄ろうとして、さっと顔を前方に向けた。
僕らの前に立ちふさがる人物。
たった一人だけど、明らかに異様な雰囲気。
たった一人で、ここにいるみんなの足をすくませてしまう、そういう圧力を体中から発している細身の男。
「さてと、ここは通さねえよっと」
そいつが腕を振った瞬間、ヒュンッと空を切る音が響く。
「ぐあぁ!?」
男からいちばん近いところにいた村の人が崩れ落ちた。
「——あんた!?」
奥さんらしき人の悲鳴があがる。
「んじゃ、次はおまえらな」
そして男が、宙空を手でなでるようにスーッと横に動かしていくと、黒い物体がずらりと並んだ。
今さっき、雨のように降ってきた刃だ。
今度はそれらが切っ先を僕らにむけて、水平に静止している。
いつでも飛び出して、おまえらを刺し殺せるぞと、鈍い光をその切っ先にきらめかせている。
「このっ! 死なず者っ!」
棒切れをもった村の一人が打ちかかった。けれど、
「はい、死んだ」
男の放った鋭い刃が村の人に——
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