257 / 358
第五章
新章6:とある密会
しおりを挟む
それからしばらく尋問のような質問は続き気を張り続ける中……ようやくセドリックは静かに手帳を閉じると、そっとペンを胸ポケットへと忍ばせる。
その姿にようやく解放されるのだとほっと胸をなでおろしてみせると、彼はクスクスと笑っていた。
「この度はお時間を割いて頂き、ありがとうございました」
「いえ……こちらこそあまり答える事が出来なくてごめんなさい」
そう謝って見せると、彼はとんでもないと言いながらに、笑顔を絶やさない。
その姿に何とも言えない不気味さを感じる中、彼は徐に立ち上がると、帽子を深く被ってみせた。
「では私は失礼致しますね。あっ、もし何か欲しい情報がございましたら、いつでも店へ来店頂ければ……歓迎しますよ」
そう言いながらに彼は名刺のような小さな紙を取り出すと、机の上へ置いていく。
その紙へ視線を向けてみると、そこには店の名前と、地図が描かれていた。
この場所……ここからだと結構距離がありそうね……。
置かれた紙を手に取り、静かに背を向ける彼の姿へ顔を向けると、私は咄嗟に立ち上がった。
そんな私の様子に彼はそっと帽子を上げると、こちらへと振り返る。
「おや、どうかされましたか?」
そうと問いかけると、彼は優し気な笑みを浮かべたままに首を傾げていた。
欲しい情報なら……あるわ。
私は最初からこんな得体のしれない変な女を傍に置く彼を不審に思っていた。
そんな中カミールと一緒に行動してきて、彼の性格は少しだが理解してきている。
彼は自分の利にならないことは基本しない。
例えば崖から落ち、悲痛な声を上げながらに助け求める人を見つけたら……彼は振り向くことも気にする様子なく、素通りする事だろう。
もしくは絶望の淵にたった相手に、助けたらお前は俺の為に何をしてくれる?とそう真顔で問いかける男だ。
だからこうやって助けてくれているのには、私が彼にとって何かしらに利益があるのだろうと、そう確信している。
ギルドの依頼を楽にこなせるぐらいでは、わざわざ人を養うほどの気兼ねを持ち合わせていない。
もっと何か大きな理由があるはず。
でもそれを彼に聞くことは出来ない。
自分の事を話さない相手に、何かを語ってくれるとは思えない。
だから私は……彼の事を何も知らないわ……。
でも先ほどノエルと言う名前に、カミールは過剰に反応を見せたわ。
わざわざ彼の話を遮るほどに、突然に感情を露にした。
それは即ち……ノエルという人物について、私には聞かれたくないと言う事。
それに壁へ行くと話していた時に、彼の名が出てきたということは、彼は壁の傍にいる。
カミールは私が壁に行くことを知っているわ。
ならそのノエルという人こそが……私を傍に置く理由と何か関係しているのかもしれない。
これから先どれぐらい彼と一緒に行動するかはわからないけれど、私が利用されるかもしれないその情報を、少しでも仕入れておきたいわね。
「待って……、欲しい情報があるの」
私の言葉にセドリックは驚いた様子を見せると、楽しそうに笑みを深めていく。
「なんでしょうか?」
本当であれば……カミールが居ないときに聞くことが出来ればいいのだけれど……きっとそれは難しい。
今まで一人で外出することがなかった私が、突然どこかへ行くと言えばきっと彼は怪しむだろう。
それに仮にもし彼がいないところでノエルの情報を仕入れても、彼にばれてしまう可能性の方が高い。
彼とこのセドリックという男は、そこそこ関係が深いように見えるし……。
なら彼の前でここは包み隠さず聞いた方が利口よね。
もう一度彼に会う機会が出来るとは限らないしね。
「さっき言いかけていた ノエルと言う人物について教えてほしいの」
「お前……っっ、関係ないと言っただろう!」
カミールは怒鳴るようにそう叫ぶと、私の肩を強く掴み、見下ろすように視線を向ける。
その瞳に畏怖する中、私はそれを振り払うように軽く首を横に振ると、エメラルドの瞳へ真っすぐに視線を向けた。
「それこそ……私がノエルの事を聞こうと、あなたには関係ないでしょう。ですよね……セドリックさん?」
そう強く出ると、彼は苛立った様子で私の肩を強く突き飛ばす。
そんな私たちの様子に、セドリックはニコニコと笑みを浮かべながらに頷いて見せると、帽子を取りながらに、私の体を優しく支えた。
「ほらほら、こんなところで痴話げんかはやめてくださいね。ですがノエルについてですか……。残念ですが……ノエルの情報は高いですよ、あなたに支払えるとは到底思えませんが……」
セドリックは見定めるように私の姿を上から下まで眺めると、笑みを深めながらに、考え込むような仕草をみせる。
そんな彼の藍色の瞳の奥には、何かを図るように静かに揺れ動いていた。
その姿にようやく解放されるのだとほっと胸をなでおろしてみせると、彼はクスクスと笑っていた。
「この度はお時間を割いて頂き、ありがとうございました」
「いえ……こちらこそあまり答える事が出来なくてごめんなさい」
そう謝って見せると、彼はとんでもないと言いながらに、笑顔を絶やさない。
その姿に何とも言えない不気味さを感じる中、彼は徐に立ち上がると、帽子を深く被ってみせた。
「では私は失礼致しますね。あっ、もし何か欲しい情報がございましたら、いつでも店へ来店頂ければ……歓迎しますよ」
そう言いながらに彼は名刺のような小さな紙を取り出すと、机の上へ置いていく。
その紙へ視線を向けてみると、そこには店の名前と、地図が描かれていた。
この場所……ここからだと結構距離がありそうね……。
置かれた紙を手に取り、静かに背を向ける彼の姿へ顔を向けると、私は咄嗟に立ち上がった。
そんな私の様子に彼はそっと帽子を上げると、こちらへと振り返る。
「おや、どうかされましたか?」
そうと問いかけると、彼は優し気な笑みを浮かべたままに首を傾げていた。
欲しい情報なら……あるわ。
私は最初からこんな得体のしれない変な女を傍に置く彼を不審に思っていた。
そんな中カミールと一緒に行動してきて、彼の性格は少しだが理解してきている。
彼は自分の利にならないことは基本しない。
例えば崖から落ち、悲痛な声を上げながらに助け求める人を見つけたら……彼は振り向くことも気にする様子なく、素通りする事だろう。
もしくは絶望の淵にたった相手に、助けたらお前は俺の為に何をしてくれる?とそう真顔で問いかける男だ。
だからこうやって助けてくれているのには、私が彼にとって何かしらに利益があるのだろうと、そう確信している。
ギルドの依頼を楽にこなせるぐらいでは、わざわざ人を養うほどの気兼ねを持ち合わせていない。
もっと何か大きな理由があるはず。
でもそれを彼に聞くことは出来ない。
自分の事を話さない相手に、何かを語ってくれるとは思えない。
だから私は……彼の事を何も知らないわ……。
でも先ほどノエルと言う名前に、カミールは過剰に反応を見せたわ。
わざわざ彼の話を遮るほどに、突然に感情を露にした。
それは即ち……ノエルという人物について、私には聞かれたくないと言う事。
それに壁へ行くと話していた時に、彼の名が出てきたということは、彼は壁の傍にいる。
カミールは私が壁に行くことを知っているわ。
ならそのノエルという人こそが……私を傍に置く理由と何か関係しているのかもしれない。
これから先どれぐらい彼と一緒に行動するかはわからないけれど、私が利用されるかもしれないその情報を、少しでも仕入れておきたいわね。
「待って……、欲しい情報があるの」
私の言葉にセドリックは驚いた様子を見せると、楽しそうに笑みを深めていく。
「なんでしょうか?」
本当であれば……カミールが居ないときに聞くことが出来ればいいのだけれど……きっとそれは難しい。
今まで一人で外出することがなかった私が、突然どこかへ行くと言えばきっと彼は怪しむだろう。
それに仮にもし彼がいないところでノエルの情報を仕入れても、彼にばれてしまう可能性の方が高い。
彼とこのセドリックという男は、そこそこ関係が深いように見えるし……。
なら彼の前でここは包み隠さず聞いた方が利口よね。
もう一度彼に会う機会が出来るとは限らないしね。
「さっき言いかけていた ノエルと言う人物について教えてほしいの」
「お前……っっ、関係ないと言っただろう!」
カミールは怒鳴るようにそう叫ぶと、私の肩を強く掴み、見下ろすように視線を向ける。
その瞳に畏怖する中、私はそれを振り払うように軽く首を横に振ると、エメラルドの瞳へ真っすぐに視線を向けた。
「それこそ……私がノエルの事を聞こうと、あなたには関係ないでしょう。ですよね……セドリックさん?」
そう強く出ると、彼は苛立った様子で私の肩を強く突き飛ばす。
そんな私たちの様子に、セドリックはニコニコと笑みを浮かべながらに頷いて見せると、帽子を取りながらに、私の体を優しく支えた。
「ほらほら、こんなところで痴話げんかはやめてくださいね。ですがノエルについてですか……。残念ですが……ノエルの情報は高いですよ、あなたに支払えるとは到底思えませんが……」
セドリックは見定めるように私の姿を上から下まで眺めると、笑みを深めながらに、考え込むような仕草をみせる。
そんな彼の藍色の瞳の奥には、何かを図るように静かに揺れ動いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる