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第三章
彼の旅路⑤
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真っすぐに続く階段を駆け上がり出口が見えると、私は静かに足を止めた。
後ろを振り返り蔓を消すと、地下の出入り口に防御魔法を張り巡らせていく。
これ以上仲間が増えると面倒ですからね。
出口を塞ぎ終え、廊下へと顔を出すと探るように辺りを確認する。
長く続く廊下には紅い絨毯が引かれており、そこには誰の姿もない。
慎重に廊下へと出ると、私は彼女の存在を確認する様に、ポケットにあるシルバーのリングへを握りしめた。
そのままリングへ魔力を流そうとすると、なぜだが魔力の流れを掴む事が出来ない。
これは……おかしいですね。
私は今一度地下へと戻ってみると、そこでは魔力を感じる事が出来た。
屋敷内だけに……何か仕掛けがあるようですね。
私は屋敷の中を探るように視線を向けると、紅の絨毯の切れ目に、薄っすらと魔法陣が目に映った。
そっと絨毯を持ち上げてみると、床一面に魔法を封じる為の魔法陣が、隙間なく埋められている。
ほう……中々に厄介ですね。
外にあれほどの魔力を使いながら、屋敷の中には魔法封じ。
ここに居る人物は、相当な魔力の使い手ですね。
まぁ……私ほどではありませんが。
魔法陣を確認し、私は再度リングを強く握りしめると、迷うことなく足を進めていく。
彼女の座標は召喚しようとした際に確認済みです。
彼女が捕らえられているのはもっと上……とりあず上へ続く道を探しましょうか。
私は広い廊下を慎重に進む中、二階へと続く階段を探していく。
幾つもの扉が並ぶ廊下には、高そうな装飾品がいくつも並んでいた。
しかしそのまま廊下を歩けど歩けども、人がいる気配は全くない。
辺りに注意を払い、音を殺しながら歩き続けていると、広いエントランスへとたどり着いた。
そこには一面に真っ赤な絨毯がひかれ、まるで血の海のようだ。
不気味なエントランスには、やはり人は誰もおらず、辺りはシーンと静まり返っている。
エントランスの先には、先ほど開かなかった大きな扉が見える。
そちらへ足を向けてみると、扉には内側からも魔法陣が描かれ、厳重に守られていた。
先ほど無理矢理に開けようとしなくて正解でしたね。
二重に魔法陣が展開されていれば、開ける為にきっと相当な魔力を消費したはずです。
それに屋敷の中には魔法封じ……うまい罠ですね。
この床に張られた魔法陣は絨毯で隠れている上、発見しづらい様薄く描かれている。
咄嗟にこの部屋に入った際、すぐに気が付くことは出来なかったでしょう……。
この入口の扉を魔法でこじ開けた者が中に入れば、魔法封じで抑え込み、逆に魔法を使わない者はあの強固に守られた扉を開ける事すら出来ない。
一般的に魔導師と騎士とではあまり相性がよくありませんし、王の命令でもなければ一緒に行動することはありません。
まぁ王の命令で、大人数でここへ突撃してくれば意味はなさないですが……王が簡単に手を出せない様、オズワルド公爵を引き入れているのでしょう。
私は深く息を吐きだすと、そっと扉から離れ、上へ続く階段へと視線を向けた。
広いエントランスの中央には白い彫刻がインテリアとして飾られ、その左右には螺旋状の階段が伸びている。
私はゆっくりと左側の階段へ足を進めてみると、上の方から微かに話し声が聞こえた。
その声を頼りに階段を駆け上がっていくと、二階は左右と真っすぐに廊下がT字路に続いている。
座標の位置からすると、左ですね……。
慎重に左の廊下を覗き込むと、一番奥の扉の前に人影が見えた。
私はその場にしゃがみ込み様子を覗っていると、廊下には顔に傷のある男と、全身黒いローブ姿の小柄な人物が扉の前で何やら話し込んでいる。
あの男……危険ですね。
体格も良いが、……彼が纏う空気が違う。
それにもう一人……あれは魔導師の様ですね。
魔力をはっきりと感じられないので、わかりませんが……。
私はコソコソとした話し声に耳を澄ませてみると、彼らの話し声が微かに耳に届いた。
「……おちたらこれを使え、これで記憶を引き出すことが出来る」
「あんたが自分でやらないのか?」
ローブの男は小さな箱を手渡すと、コクリと深く頷いた。
「俺は別の仕事がある。これぐらいの魔法ならお前でも出来るだろう」
その姿に顔に傷のある男は楽しそうに笑うと、箱を胸の中へと忍ばせる。
「なぁ~そういえば記憶を抜けば、後は好きにしていいんだよな?」
「あぁ、好きにしろ。だが壊すなよ。そいつは使える」
はいはいとから返事をした男は、扉への中へと消えていく。
その様子に私は姿を隠す様階段へと戻り、息をひそめていると、もう一人がこちらへ向かって歩いて来た。
コツコツと足音が大きくなる中、私は手にしていた杖を握りしめる。
まずいですね……。
魔導師とあの男二人を相手にするのは不利……。
今見つかれば……間違いなくあの男も戻って来るでしょうし。
私はすぐに階段を下っていくと、彫刻を挟んだ右側の階段へと移動する。
身を低くしながら階段を上りきると、階段と階段の間に飾られた高そうな花瓶が置かれた棚へと身を潜めた。
後ろを振り返り蔓を消すと、地下の出入り口に防御魔法を張り巡らせていく。
これ以上仲間が増えると面倒ですからね。
出口を塞ぎ終え、廊下へと顔を出すと探るように辺りを確認する。
長く続く廊下には紅い絨毯が引かれており、そこには誰の姿もない。
慎重に廊下へと出ると、私は彼女の存在を確認する様に、ポケットにあるシルバーのリングへを握りしめた。
そのままリングへ魔力を流そうとすると、なぜだが魔力の流れを掴む事が出来ない。
これは……おかしいですね。
私は今一度地下へと戻ってみると、そこでは魔力を感じる事が出来た。
屋敷内だけに……何か仕掛けがあるようですね。
私は屋敷の中を探るように視線を向けると、紅の絨毯の切れ目に、薄っすらと魔法陣が目に映った。
そっと絨毯を持ち上げてみると、床一面に魔法を封じる為の魔法陣が、隙間なく埋められている。
ほう……中々に厄介ですね。
外にあれほどの魔力を使いながら、屋敷の中には魔法封じ。
ここに居る人物は、相当な魔力の使い手ですね。
まぁ……私ほどではありませんが。
魔法陣を確認し、私は再度リングを強く握りしめると、迷うことなく足を進めていく。
彼女の座標は召喚しようとした際に確認済みです。
彼女が捕らえられているのはもっと上……とりあず上へ続く道を探しましょうか。
私は広い廊下を慎重に進む中、二階へと続く階段を探していく。
幾つもの扉が並ぶ廊下には、高そうな装飾品がいくつも並んでいた。
しかしそのまま廊下を歩けど歩けども、人がいる気配は全くない。
辺りに注意を払い、音を殺しながら歩き続けていると、広いエントランスへとたどり着いた。
そこには一面に真っ赤な絨毯がひかれ、まるで血の海のようだ。
不気味なエントランスには、やはり人は誰もおらず、辺りはシーンと静まり返っている。
エントランスの先には、先ほど開かなかった大きな扉が見える。
そちらへ足を向けてみると、扉には内側からも魔法陣が描かれ、厳重に守られていた。
先ほど無理矢理に開けようとしなくて正解でしたね。
二重に魔法陣が展開されていれば、開ける為にきっと相当な魔力を消費したはずです。
それに屋敷の中には魔法封じ……うまい罠ですね。
この床に張られた魔法陣は絨毯で隠れている上、発見しづらい様薄く描かれている。
咄嗟にこの部屋に入った際、すぐに気が付くことは出来なかったでしょう……。
この入口の扉を魔法でこじ開けた者が中に入れば、魔法封じで抑え込み、逆に魔法を使わない者はあの強固に守られた扉を開ける事すら出来ない。
一般的に魔導師と騎士とではあまり相性がよくありませんし、王の命令でもなければ一緒に行動することはありません。
まぁ王の命令で、大人数でここへ突撃してくれば意味はなさないですが……王が簡単に手を出せない様、オズワルド公爵を引き入れているのでしょう。
私は深く息を吐きだすと、そっと扉から離れ、上へ続く階段へと視線を向けた。
広いエントランスの中央には白い彫刻がインテリアとして飾られ、その左右には螺旋状の階段が伸びている。
私はゆっくりと左側の階段へ足を進めてみると、上の方から微かに話し声が聞こえた。
その声を頼りに階段を駆け上がっていくと、二階は左右と真っすぐに廊下がT字路に続いている。
座標の位置からすると、左ですね……。
慎重に左の廊下を覗き込むと、一番奥の扉の前に人影が見えた。
私はその場にしゃがみ込み様子を覗っていると、廊下には顔に傷のある男と、全身黒いローブ姿の小柄な人物が扉の前で何やら話し込んでいる。
あの男……危険ですね。
体格も良いが、……彼が纏う空気が違う。
それにもう一人……あれは魔導師の様ですね。
魔力をはっきりと感じられないので、わかりませんが……。
私はコソコソとした話し声に耳を澄ませてみると、彼らの話し声が微かに耳に届いた。
「……おちたらこれを使え、これで記憶を引き出すことが出来る」
「あんたが自分でやらないのか?」
ローブの男は小さな箱を手渡すと、コクリと深く頷いた。
「俺は別の仕事がある。これぐらいの魔法ならお前でも出来るだろう」
その姿に顔に傷のある男は楽しそうに笑うと、箱を胸の中へと忍ばせる。
「なぁ~そういえば記憶を抜けば、後は好きにしていいんだよな?」
「あぁ、好きにしろ。だが壊すなよ。そいつは使える」
はいはいとから返事をした男は、扉への中へと消えていく。
その様子に私は姿を隠す様階段へと戻り、息をひそめていると、もう一人がこちらへ向かって歩いて来た。
コツコツと足音が大きくなる中、私は手にしていた杖を握りしめる。
まずいですね……。
魔導師とあの男二人を相手にするのは不利……。
今見つかれば……間違いなくあの男も戻って来るでしょうし。
私はすぐに階段を下っていくと、彫刻を挟んだ右側の階段へと移動する。
身を低くしながら階段を上りきると、階段と階段の間に飾られた高そうな花瓶が置かれた棚へと身を潜めた。
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